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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2023年度 公務労協情報 No. 9

人事院に2023春季要求書を提出-2/22

 公務員連絡会は2月22日、委員長クラス交渉委員が川本人事院総裁に要求書を提出した(別紙)。要求書では、賃金の積極的な引上げ、超過勤務の更なる縮減と適切な人員の確保、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備のあり方、非常勤職員等の処遇の改善などを求めている。今後、幹事クラス交渉、書記長クラス交渉などを配置し、3月22日の回答指定日に向け交渉を重ねていくこととしている。
交渉の経過は次のとおり。

 川本人事院総裁との交渉は、16時30分から行われた。
 要求提出に当たって武藤議長は次のように述べ、今後十分交渉・協議を重ね、誠意ある回答を示すよう強く求めた。

 昨年の春闘で連合は、コロナ禍からの回復基調のもと「平均で定昇込み2.07%」の賃金の引上げを勝ち取ったが、先ごろ厚生労働省が公表した昨年の実質賃金は前年比0.9%減であり、賃金引上げが物価上昇に追いついていない実態が明らかとなっている。このような中、私どもの調査でも組合員の生活への不満度が近年になく高まっており、特に「昨年に比べ生活が苦しくなった」と回答した組合員が大きく増加している。エネルギーや食料品などの価格の高騰は、公務員にも多大な影響を与えており、人事院におかれては、全職員の積極的な賃金引上げの重要性について強く意識していただくようお願いする。
 また、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(給与制度のアップデート)」については、国家公務員はもちろん、地方公務員や政府関係法人等の職員も強い関心を持っているところ。そのため、中央のみならず地方で勤務する職員など、全体のモチベーションが維持・向上するような方向で是非とも検討いただきたい。
 なお、昨年の人事院勧告時の報告でも指摘のあった、国会対応業務が職員の長時間労働の大きな要因になっている点について、私どもは今月から来月にかけて、野党を中心に国会審議への対応について、超過勤務時間の縮減に向け協力すること、特に質問通告の時間については、この間の国会における申し合わせ等を踏まえ「前々日の正午までの質問通告」を再度徹底することなどを申し入れる予定であることを報告しておく。
 最後に、これから、事務レベルでの交渉を積み重ね、3月22日の最終回答の際には、総裁から、直接、春の段階の誠意ある回答を求める。

 続いて、森永事務局長が要求項目のポイントを説明し、回答日に向けた公務員連絡会との交渉・協議や要求への積極的な対応を強く求めた。

川本裕子 人事院総裁

 これに対して川本総裁は、「皆さんからの要求は承った。公務を巡る情勢は厳しい状況にある。各要求事項については、今後、誠実に検討し、しかるべき時期に回答する」と応え、今後公務員連絡会と交渉・協議していく姿勢を示した。


(別紙)


2023年2月22日

人事院総裁
 川 本 裕 子 様

公務員労働組合連絡会
議 長  武 藤 公 明
(公 印 省 略)

要 求 書

 貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、新型コロナウイルス感染症がなおも社会・経済活動に大きな影響を与え続ける中、国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、国民の信頼と期待に応えるべく、職員は高い使命感と責任感を持って懸命の奮闘を続けています。これらの職員の奮闘に応え、職員が安心し、安全に働くことのできる勤務環境の整備や、必要とされる人員と適切な賃金・労働条件の確保等が喫緊の課題といえます。
 そのような中、我が国における社会・経済情勢は、総務省調査において2022年12月の消費者物価指数が前年同月比で4%上昇するなど、電気、ガソリン等のエネルギー価格をはじめ、あらゆる物価が高騰する局面が続いています。このような状況のもと、我々が実施した調査においても前年に比べて生活が「苦しくなった」と回答した組合員の割合が大幅に増加する等、公務・公共サービスの現場で働く労働者の生活は大変厳しくなっており、全世代にわたる積極的な賃上げが求められています。
 公務員連絡会は、これらの情勢認識に基づき、「人への投資」と月例賃金の改善を積極的に求める連合2023春季生活闘争に結集し、「底上げ」「底支え」「格差是正」をめざして取組を進めます。貴職におかれましては、下記事項の実現に向けて、最大限努力されるよう要求します。

1.賃金要求について
(1) 2023年度賃金の引上げについて
 2023年度の給与勧告に当たっては、民間賃金実態を精確に把握し、初任給をはじめ全世代にわたって職員の賃金を積極的に引き上げること。なお、期末・勤勉手当の配分のあり方等について公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) 社会的に公正な官民比較方法の確立について
 官民給与比較方法については、現行の比較企業規模を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
(1) 月例給および各種手当を取り扱う総合的な見直しであることを踏まえ、職員各層から理解を得られ、その意欲を引き出すものとすること。
(2) 社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえ、中堅層・高齢層職員を含む全職員の賃金改善を図った上で、特に公務における人材の確保に向け引き続き若年層の賃金改善を重視すること。
(3) 再任用職員については、再任用職員をめぐる状況や位置づけの変化に応じ、その経済的負担および定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、現在生活関連手当とされている手当の支給を含めた全体的な見直しを行うこと。
(4) 地域手当については、これ以上の地域間格差の拡大を行わないこと。

3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員制度について、法律上明確に位置づけ、勤務条件等について、同一労働同一賃金及び常勤職員との均等待遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
(2) 非常勤職員の給与を1時間当たり「1,150円以上」とすること。また、国に雇用される労働者の最低賃金(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善がはかられるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。あわせて、常勤職員と同等の勤務を行っている期間業務職員の給与を「均等待遇の原則」に基づき俸給表に位置づけること。
(4) 非常勤職員の休暇制度等について、常勤職員との均等待遇をはかるとともに、無給休暇を有給化すること。

4.新型コロナウイルス感染症対策について
 職員の感染防止、健康確保のため、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて、適宜、必要な措置を講じること。

5.労働時間の短縮及び休暇、休業等について
(1) ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、本年については、次の事項を実現すること。
① 各府省に対して、適正な勤務時間管理を行うよう指導すること。また、本府省における在庁時間削減の取組についても、人事院として積極的に役割を果たすこと。
② 超過勤務命令の上限を超えた場合における各府省による要因の整理・分析・検証の状況を把握した上で、各府省を適時適切に指導すること。また、各府省における「他律的業務の比重の高い部署の指定」の統一性の確保や上限規制の特例業務の厳格化を含め、超過勤務の状況の総点検を行い、これを踏まえ必要な対応策を講じること。
③ 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。
(2) ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度を改善・拡充することとし、休暇・休業制度の利用実態を検証し、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(3) 両立支援制度が円滑に活用できるよう、その周知をはかるとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
(4) フレックスタイム制及び休憩時間制度の柔軟化にあたっては、各府省に対して制度の周知徹底をはかること。
(5) テレワーク実施に伴う在宅勤務関連手当について、公務員連絡会と十分な協議の上措置をすること。
(6) 公務において、国内外の事例・基準等を踏まえたうえで「勤務間インターバル」を措置すること。

6.障害者雇用について
 公務職場における障害者雇用については、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働き続けることができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。

7.女性公務員の労働権確立について
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題として位置づけ、必要な施策の確立をはかること。
(2) 女性国家公務員の採用・登用・職域拡大をはかるとともに、メンター制度の実効性を確保するなど積極的な役割を果たすこと。

8.高齢者雇用施策について
(1) 2023年4月1日の段階的定年引上げの施行にあたって、その円滑かつ安定的な実現のための環境整備に向けて、人事院としての役割を果たすこと。
(2) 定年引上げに伴うシニア職員の在職者の増加に応じ、級別定数について弾力的に措置をすること。

9.福利厚生施策の充実について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) 心の健康づくりについては、勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいて、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進をはかること。また、オンラインによる「こころの健康相談室」について早期に全窓口での実施をはかること。
(4) ハラスメントの防止について、問題の重要性を認識し、一層有効な対策を着実に実施すること。とくに、パワー・ハラスメントの防止対策については、人事院規則10-16等に基づいた各府省の取組状況を把握し、必要な指導を行うこと。また、苦情相談、紛争解決における人事院の役割を着実に果たすこと。

以 上