国営企業部会情報
2002年7月31日


マイナス回答は許せない!民賃準拠の調停作業を求める
《労働者委員が意見陳述》

 本日14時、合同調停委員会が開かれ、事情聴取の報告、資料説明の後、労使各側意見陳述が行われた。このなかで、労働者委員は「定期昇給分が確実に確保され、現行水準が維持されている本年度の民間賃金に準拠した速やかな調停作業とともに、民間や一般公務員との賃金格差の解消などが必要である」と主張し、以下の諸点を調停作業にあたって留意するよう強く求めた。

1.郵政、林野、印刷、造幣の各事業は、国民生活に欠くことのできない社会的インフラを形成しており、日本の経済、社会を支えているうえに、常に社会的ニーズに応えるため、労使の共通の認識を持つ中で、効率的な事業運営への努力を積み重ねている。郵政、印刷、造幣の3現業については、来年4月からの新しい経営形態への移行を控え、事業の円滑な運営のための準備に労使一体となって邁進していること、林野においては、行政改革に先立って、平成10年の「国有林野事業改革関連法」に基づき、組織、要員の徹底した合理化・縮減等を図ってきたこと、など、多大な努力を続けていることを評価すべきである。このことは、これまで良好な労使関係を維持してきたことがなせることであり、本調停委員会は、そうした努力に応え、国営企業労働者の社会的に公正な処遇を実現する責務を負っている。
2.国営企業労働者の賃金水準が世間並みに到達していない中で、その生活水準も低位に置かれている。とくに、一時金が3年連続して大幅に削減されたことによって、年収が連年にわたって落ち込み、生活の質の低下を余儀なくされている。このことは、国営企業部会が昨年10月〜11月にかけて行った「組合員の生活実態に関する共同調査」で明らかとなっており、こうした生活実態について本調停委員会として十分留意すること。
3.組合から提出された国営企業部会賃金専門委員会の資料でも民間水準より低位にある国営企業の賃金水準の実態は明らかであり、今次調停作業で官民の賃金水準を議論するにあたっては、4国営企業体制が本年度が最後となることに鑑み、現存する格差を全面的に解消すること。
 また、同様に組合から提出された資料によると、現在の4国営企業体制となった87年度以降の国営企業の仲裁裁定と一般公務員に対する人事院勧告とを比べれば、賃上げ内容に格差があり、この連年にわたる格差の実態に配慮した調停作業を行うこと。
4.日本経済は、依然として低迷状況から抜け出していない。この経済の低迷状況は、地価・株価の下落などによってデフレが進行していることに起因している。当面の重要課題は、デフレスパイラルからの脱却であり、そのためには社会的なセーフティネットを確立し、同時に生活と雇用へのマイナスを最小限に止めることが重要であり、国営企業の賃上げの内容如何が社会的に与える影響をも考慮した調停作業を進めること。
5.本年の民間賃金動向は、厳しい状況下にあっても定期昇給分が確実に確保され、現行賃金水準が維持されているとの認識が常識的である。国営企業部会労働条件対策委員会の調査による本年の民間賃金動向は、1.79%となっている。この調査対象は、厚生労働省や中労委事務局の調査とほぼ同一のものとなっており、調停委員会の判断材料としては、活用が可能なものと判断している。
 また、各当局は、事情聴取において中小企業の賃上げ状況を大手企業と並列的に取り扱って回答しているが、これまでの国営企業の調停作業において、民間賃金動向の判断の基礎として使用されてきた資料は、民間主要企業のものであり、基礎となる資料を変更することは従来の調停委員会の判断を否定することにも繋がりかねず、採るべきでない。
 さらに、調停作業にあたって判断の基礎となる資料は、同一時点でのものを用いることが基本である。本調停事案は、春季賃金交渉に関わるものであり、民間賃金動向として使用される資料は春季賃金交渉に関するものが使用されるべきである。春季賃金交渉終了後のごく一部の民間企業の賃金カット等については、本事案と同一に論ぜられたり、扱われたりすることは適切でない。
6.国営企業の賃金が民間賃金準拠の原則に則って決定され、その原則を尊重するという立場は公労使とも完全に一致している。今次調停作業についても民間賃金準拠の原則を遵守するという立場で進めること。
 今次調停作業は、国営企業の経営形態が変わるという歴史的な節目にあたる調停作業であり、労働基本権制約の代償措置として設置された第三者機関である中央労働委員会はその社会的責任を果たすため、迅速で公正な調停作業を行うこと。


【明日14時以降、調停作業が本格化!】

 明日、14時からの調停委員長会議開催以降、労使各側委員個別折衝が行われ、調停のヤマ場を迎える予定。

以上