国営企業部会情報
2002年10月30日


中労委、マイナス仲裁裁定を提示
国営企業部会 強く批判の声明を発表

 本日、中央労働委員会は、「基準内賃金の1.36%相当額に1,620円を加えた額5,739円(国営企業加重平均)」の12ヶ月分に相当する額の原資をもって引き下げることを内容とした仲裁裁定を提示した。
 国営企業部会は、この間、歴史的に形成されてきた民間賃金準拠の原則と国営企業の賃金交渉ルールに基づく解決と公正な仲裁作業を強く求めてきた。しかし、本日の仲裁裁定は、調停の経緯を踏まえず、民間賃金準拠の原則から大幅に逸脱した不当な内容であり、強く批判せざるを得ない。
 しかしながら、仲裁裁定は労使を最終的に拘束するものであることから、遺憾ながらこの仲裁裁定の処理(実施)を巡る労使交渉に入らざるを得ない。
 国営企業部会は、裁定提示後、労働者委員を含めた企画調整・労働条件対策委合同会議を開催し、別紙「声明」を確認するとともに、仲裁裁定の処理(実施)に関する具体的対応について統一して対応することとした。

仲裁裁定による賃金改定額

2002国営企業賃金紛争仲裁裁定に対する声明


1.中央労働委員会は、本日、国営企業6組合の賃金引き上げ要求に対する賃金紛争に対し、「基準内賃金の1.36%+1620円」の12ヶ月分に相当する額の原資をもって引き下げることを内容とした仲裁裁定を提示した。
2.この仲裁裁定の内容は、先の調停作業の中で調停委員長が強く示唆した賃金引き下げ案とは異なり、その後8月8日に示された人事院のマイナスベア勧告を踏まえた、極めて政治的マイナスの不当な裁定であり、国営企業労働者の生活防衛はおろか、生活水準の切り下げとなる極めて許し難い内容である。しかしながら、仲裁裁定は労使を最終的に拘束するものであることから、遺憾ながらこの仲裁裁定の処理(実施)を巡る労使交渉に入らざるを得ないと考える。
3.国営企業6組合は、2002新賃金要求の取り組みにあたって、国営企業労働者の世間並み賃金水準到達のための格差是正分を含めた賃金水準改善を求めた。
 しかし、各国営企業当局は、我々が求めた要求を一顧だにせず、4月23日突如として「本年度の賃金水準を実質引き下げる必要がある」との具体的根拠すら明示しない回答を示してきた。
 国営企業労働者の賃金決定基準たる民間賃金準拠からみると、現在の厳しい経済情勢の下で、確かに一部民間企業における定昇延期や、賃上げストップが行われている事実はあるが、この回答の背景には、国民に一方的に痛みを押しつける小泉構造改革政策が本格化する中で、政府・財政当局による総人件費抑制=公務員給与削減が強まる動きがあったことはいうまでもない。
4.このため、その後の賃金交渉は進展せず、当事者間での解決は困難となり、6月7日調停申請に至った。
 本格的な調停作業は、8月1日〜2日にかけて17時間に及び進められた。しかし、各国営企業当局は具体的回答を示さず、調停作業は難航した。さらに、一部民間企業の賃金カット、定昇ストップの動向の判断を巡って、公・労・使の主張は全面的に対立し、調停作業の継続は不可能となり、調停不調となった。
5.調停不調後に再開された団体交渉において、組合側は民間賃金準拠の原則と調停作業の経緯を踏まえた具体的回答を各国営企業当局に求めたが、具体的回答は示されず、このため9月5日、組合側は仲裁申請を行った。
6.一方、人事院は8月8日、一般公務員に対し、月例賃金を2.03%引き下げる勧告史上初のマイナスベア勧告を行い、国営企業の賃金を取り巻く情勢は一段と厳しさを増したものとなった。
7.仲裁委員会事情聴取は、9月27日に行われ、席上、各国営企業当局は「基準内賃金を2%程度引き下げる必要がある」との回答を突如示してきた。
 これは、人事院勧告の動向を見て初めて見解を示すという団体交渉権を自ら否定する行為であり、組合側はあくまでも民間賃金準拠の原則と国営企業の賃金交渉ルールに基づく解決と公正な仲裁作業を強く求めた。
8.中央労働委員会の本日の仲裁裁定は、政府・財政当局の官公労働者に対する総人件費抑制ありきの攻撃が背景にあるとはいえ、以上の経緯からみても、調停作業の経緯を踏まえず、民間賃金準拠の原則からの大幅な逸脱の不当な内容であり、強く批判せざるを得ない。
 歴史的に形成されてきた国営企業労働者の民間賃金準拠の賃金決定ルールは、民間賃金の最近の厳しい情勢を反映するものであることは、事実として受け止めざるを得ないが、同時にこのルールは一切の不当な政府介入や恣意的な賃金決定を排除するものとしてのシステムであり、国営企業の賃金問題への政治的抑制攻撃は許すことはできない。
9.また、今次賃金交渉の過程の中で、国営企業当局の当事者能力の欠如や、判断停止は政府・財政当局の介入や拘束があるとはいえ、現行の国営企業の賃金交渉システムの本質的欠陥と限界を示したものであり、このことが、本年度の国営企業の賃金問題の解決を半年以上も遅らせる原因となったことは否めない。
 国営企業当局の経営当事者としての責任の所在を全く欠いた対応に強く抗議するとともに、実質的団体交渉権の否定にもつながるこのような欠陥の是正を、我々は強く求める。
10. 国営企業の賃金交渉は引き続きこの仲裁裁定に関する具体的実施の個別労使交渉に移行する。
 今次仲裁裁定は、史上初のマイナスという厳しいものとなったが、その具体的処理について、仲裁裁定は我々の主張を踏まえ、組合員の生活への負担や不利益不遡及の原則を考慮し、人事院勧告のような月例賃金のマイナスの措置は適用せず、本年度の一時金等の中で適切に処置することを求めている。この点については、当然のこととはいえ、我々は受け止めて各当局との交渉を進める。
 我々6組合は引き続き、組合員の生活防衛の観点から、賃金引き下げという異例の仲裁裁定の処理において、全組合員にとって公平な調整をするための交渉を強化する。

2002年10月30日

連合官公部門連絡会国営企業部会
全逓信労働組合
全日本郵政労働組合
全林野労働組合
全印刷局労働組合
全造幣労働組合
日本林業労働組合

国営企業平成14年度新賃金仲裁裁定について


仲裁委員長談話
平成14年10月30日

1 仲裁委員会は、本日、国営四企業の新賃金紛争について、平成14年度賃金を「基準内賃金の1.36%+1,620円」の12ケ月分に相当する額の原資をもって引き下げることを内容とした仲裁裁定書(写)を、労使当事者に交付しました。また、その処理方法について、期末手当での処理も含めて労使で協議し、決定するよう求めています。
2 委員会は、長年にわたり定着している民間賃金準拠を基本において、国営企業の職員の賃金を決定する際考慮すべき重要な事項である生計費の動向、民間賃金水準との比較、国家公務員給与との関係、今期の民間における賃金改定の動向などについて、労使の主張を含め慎重に検討を加え、総合的に勘案して裁定を行いました。
(1)生計費の動向を消費者物価指数でみると、平成13年度平均の対前年度比は1.0%の下落でした。
(2)民間賃金との関係については、労働者側は、官民の賃金水準の格差は存在しており、格差の全面解消に向けた作業を進めるよう主張しました。
委員会は、民間賃金水準との比較については、昨年と同様に、企業規模100人以上を対象とし、性、学歴、年齢別のラスパイレス方式により、賃金構造基本統計調査などを用いて、一人平均賃金額の比較を行いました。この結果、昨年の賃金引上げ後の状況において格別の措置を必要とするほどの差は無いものと認めました。
(3)国家公務員給与との関係について、本年は、給与の引下げ改定を内容とする人事院勧告が行われ、勧告どおり実施する旨閣議決定されたことを考慮しました。
(4)今期の民間における賃金改定の状況について、従来同様、現時点で具体的数値が把握できる主要企業の動向を検討した結果、賃金カット、定期昇給延期分を含めた平均賃上げ率の加重平均は、1.2%台半ばになるものと推定しました。それに加えて、民間企業の厳しい雇用情勢や中小企業の賃金改定の動向などについても考慮しました。
3 委員会は、この裁定によって、今次紛争が早期かつ円満に解決されることを期待します。
4委員会は、特にこの際、労使双方に対し、国営企業の重要性を十分認識し、今後とも労使関係の安定に努めるとともに、引き続き企業経営の合理化、経費の節減及び生産性の向上のために努力を払い、もって広く国民一般の期待に応えるよう強く要望します。

以上