2002年度公務員連絡会情報 15 2001年12月20日

公務員労働組合連絡会

人事院・総務省から基本要求に対する回答引き出す

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は20日午後、10月22日に提出した「2002年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」に対する回答を求めて、人事院佐久間職員団体審議官、総務省戸谷人事・恩給局審議官等と交渉を行った。
 その交渉概要は次のとおり。

<人事院交渉の概要>
 人事院佐久間職員団体審議官との交渉は、13時35分から行われた。
 冒頭、連絡会側が基本要求のうち、@来年の給与改定に向けた人事院の基本的な考え方A民調見直しに関わって連絡会との話し合いを含めた考え方B職業生活と家庭生活の両立支援策のうち、育児休業の男性取得促進と子どもの看護休暇の見通しC新たな人事評価制度の試行への対応D女性の採用・登用促進計画の策定状況、に重点を置いた現段階における考え方を示すよう求めたのに対し、審議官は「要求をいただいてから関係各課で様々な検討をしてきた」として、重点事項について次の通り見解を示した。

(1) 来年の給与勧告に向けては、民間の状況を適確に把握して対応するということに尽きるが、民間の情勢については相当の懸念を持っており、相当厳しい状況と思っている。政府の来年度の経済成長見通しがゼロである状況の中で、各企業が春闘でどういう対応をするかはつかめないが、いろいろな経済指標の中で失業率が悪いことはもちろんのこと、先頃発表になった日銀短観でもDI(景気の先行き見通しについて「よい」から「悪い」を差し引いた代表的景気判断指数)が秋口から年末にかけて悪化し、経営側が先行きは暗いと見ていることは間違いない。さらに、大企業を中心に賃金カットが行われることが新聞紙上をにぎわしているという状況もある。
 そういう動きが春闘を通じて調査にどう現れるか、相当厳しい情勢と考えている。連合も、ベア要求でなく「定昇+α」という要求方式であり、来年の民間調査を行っても、ほとんど上がっていない、逆に、程度の問題はあるとしても下がる結果になり、公務と比較するとマイナスになるということも現実的にあるのではないかと思っている。そういうことも明確に認識しておかなければならないと考えている。
(2) そうした情勢の下で、「地域の公務員の給与は高いのではないか」との指摘があることから、今年の勧告で「民調見直し」に言及し、部内でどういうやり方があるか検討しているところであるし、本日は各人事委員会を集めて説明会を行っており、そこでの意見などを踏まえ、考え方を整理したいと考えている。民調のスケジュール上、1月末には確定する必要があるが、公務員連絡会には説明をし、意見を聞かせていただきたいと考えており、引き続き議論して参りたい。
(3) 両立支援策については、関係法律が民間の法律と合わせ成立しているが、男性取得や子どもの看護休暇が引き続きの課題であるという認識は、公務員連絡会と同様である。育児休業の男性取得促進については、規則改正の際に、各府省に取得促進を求める通知を出したが、さらに何ができるか検討したい。
 子どもの看護休暇は、報告で述べたし国会でも質疑があり、民間の法律の附帯決議の趣旨や普及に向けた政府の取り組みを踏まえて、導入に向け引き続き努力していきたい。
(4) 人事評価については、人事院でも研究会を設け公務員連絡会の意見も聞きながら報告を取りまとめ試行に入ろうとしてきた経緯があるが、行革推進事務局が進めている公務員制度改革の課題として評価の試行が入っているので、それとは別に人事院としてやるという状況ではない。したがって、推進事務局の評価制度の内容を踏まえて、どのような対応になるのか検討していきたい。
(5) 女性の採用・登用の促進については、「指針」を定め、各府省に「計画」を策定するよう求めてきた。現段階でまとまった府省とまだのところがあるが、人事院としては早い段階で策定状況を取りまとめて公表したいと考えている。

 以上の見解に対し、連絡会側は、@「来年は相当厳しい」という話であるし、厳しさはわれわれも承知しているが、人事院の使命は職員の利益の保護にあるのだから、仮にマイナス勧告というような事態となれば、われわれとしても賃金決定制度としての人事院勧告制度に対する基本的な評価を変えざるをえないことになる。そのようなことにならないよう人事院としても最善の努力をしてもらいたいA民調見直しは、先にわれわれが提出した「申入れ」を踏まえて検討していただきたいし、見切り発車せず、合意の下に進めるべきだB育休の男性取得の問題は意識の問題にされる傾向があるが、女性、U・V種登用策同様に施策として考えるべきであり、連絡会を含めた検討の場を設けてはどうかC子どもの看護休暇はいつごろ具体化するのか、などと再度見解を求めたところ、審議官は「要望があったことについては承っておく。子ども看護休暇は、スケジュールまでいう段階ではない」との見解を示すにとどまった。
 このため、最後に連絡会側は「基本要求は、春の要求につながっていくものであり、解決に向けて引き続きの検討をお願いしたい」と重ねて要望し、本日の回答交渉を終えた。

<総務省交渉の概要>
 総務省人事・恩給局戸谷審議官との交渉は、同日、午後2時30分から行われた。
 冒頭公務員連絡会側が、基本要求事項のうち、@退職手当の現在の作業状況と今後の見直しの見通しA2002年度予算における福利厚生経費、給与改定財源の状況B高齢者再任用の定数枠の査定状況C公務員制度改革への総務省の基本スタンスと評価の試行への対応、などの重点事項について回答を求めた。
 これについて審議官は次の通り見解を示した。
@公務員制度改革が最終調整の段階に入っており、退手法の取り扱いが明らかになり次第適切に対応していきたい。民間実態調査については、郵送調査が終了し現在点検中であるが、回収率の悪いところは補足調査等をやっているところで、とりまとめにはなお相当時間がかかる。
A職員厚生経費については、要求通り、現在の一人あたり5,854円から215円アップする見通しである。給与改善費については、来年度は計上しないと聞いているが、この問題は財政当局が時々の財政事情に応じて対応する問題であり、総務省としては人勧の取り扱いはその動向に左右されない。
B高齢者再任用の定数の査定は予算の最後と聞いており、適切な査定を期待しているところ。総務省としては、時期はわからないが、再任用の状況を調査し組合にも報告したい。
C人事評価については公務員制度改革でも重要な位置づけが行われており、今後内閣官房を中心に具体化されていくと思うが、各方面と連携し必要な協力を行っていきたい。

 これらの見解に対し公務員連絡会側は、@については内閣官房や総務省がそれぞれ別個に退手法の改正を行うということでは困るので、政府全体として方針を固め、われわれと十分交渉・協議の上作業を進めること、Cについては行革推進事務局の作業の進め方はあまりに誠意がなさすぎるので、使用者の代表としての立場から総務省としても適切な対応をすべきであること、などについて重ねて求めたが、審議官からはこれ以上の明確な見解は示されなかった。
 公務員連絡会側が、現在国会で議論されている議員歳費削減の動向に関連して「一般職に影響することについては人勧制度の在り方に直接影響することになるので、公務員連絡会としては反対であり、そのような動きがでてきた場合はわれわれと十分交渉してもらいたい」と、求めたのに対して審議官は「現在のところ総務省としては承知していない。今の話は意見として承っておく」と答えるに止まった。そのため、最後に公務員連絡会側は「来年度の給与改定状況は極めて厳しいものとなることが予想されるが、人勧制度自体が揺らぐこととならないよう政府としても特段の努力を行う」ことを求め、この日の交渉を終えた。

以上