2002年度公務員連絡会情報 21 2002年3月1日

公務員労働組合連絡会

2002春季生活闘争中央行動実施して人事院・総務省と交渉−3/1

 連合官公部門・公務員連絡会は3月1日、全国の仲間2,000人が結集し、2002春季要求実現、労働基本権確立・民主的公務員制度改革を求める中央行動を実施、15時から日比谷公会堂で開かれた連合・連合官公部門共催の中央集会(対策本部ニュース79参照)に引き続いて、公務員連絡会の中央集会を行い、これに先立って春季要求事項に関わる人事院、総務省との交渉を実施した。

 公務員連絡会の中央集会は、日比谷公会堂に連合・連合官公部門の集会終了後、16時10分から始められた。冒頭、この日行った人事院職員団体審議官交渉及び総務省人事・恩給局次長交渉の経過を交渉団(幹事クラス交渉委員)が報告、続いて山本事務局長が3月19日の回答指定日に向けた取り組み方針を提起。最後に足立全水道委員長の音頭で団結がんばろうを三唱し、集会を締めくくった。

 この日の人事院及び総務省との交渉経過は次の通り。

<人事院職員団体審議官との交渉経過>
 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、11時から、佐久間人事院職員団体審議官と交渉を持った。
 冒頭、公務員連絡会側が、「2月19日に要求書を提出し、今後、3月15日の局長交渉、そして3月19日の最終交渉と積み重ねていくが、本日は、次の5点を重点課題として、現段階での人事院の見解を示していただきたい」とし、@賃金については、率・額を明示しない公務員連絡会の要求を重く受け止め、公務員労働者の生活の維持・防衛に向けて努力すること、A民調見直しについては、本年の官民較差や給与水準に影響を与えないよう最大限努力すること、B子どもの看護休暇を新年度から実施すること、C高齢者再任用の実態を正確に調査し、各府省によって任用や処遇に差が生じないようにすること、D育児休業の男性取得促進策について、体系的な施策を構築しその具体化に向けて検討すること、について人事院の今日段階の見解を質した。
 これに対し、佐久間職員団体審議官は、概要、次の通り回答した。

@ 現在、本年の勧告に向けた作業を進めているところだが、社会経済情勢一般について各種統計資料を見ると、設備投資は減少し、企業収益も落込み、企業の業況判断も悪化しており、良い材料は見当たらない。この中で本年の春闘を迎えている。
 率・額を明示しない公務員連絡会の要求については、人事院としても重く受け止めている。厳しい社会経済情勢の中で、公務員労働者の生活を維持・防衛することについて、いかなる措置・方策が必要なのか、従前の例にとらわれないみなさんとの議論の仕方も模索していきたい。
 なお、本年の勧告に向けては、厳しい民間情勢の中にあっても例年通りのスケジュールで民調をスタートさせ、まずは民間の状況をしっかり捉えたいと考えている。
A 民調方法の見直しについては、個々の人事委員会から見直し案について地方の実態を反映するようにとの要請をいただいたが、この間、見直しに関する基本的な考え方を説明するなどして個別に協議をすすめ、すべての人事委員会との間で合意をみることができた。
 民調方法を見直すことにより調査対象企業の入れ替えが多く、その影響もあるだろうが、どういう結果が出てくるかは今日段階では想定できず、やってみないとわからないところも多い。いずれにせよ、結果が出てから判断したい。
B 昨年、育児休業法が改正されたところだが、子どもの看護休暇の取扱いについて、ペンディングになっていることは認識している。要求をしっかり受け止め、前進できるよう、鋭意努力しているところである。
C 高齢者再任用制度については、本年4月から本格実施されることとなるが、各府省の状況については、人事院としても関心を持っている。これまでも担当者レベルで説明会を開催し、その趣旨を徹底してきたが、今後とも実態を調査し、対応を考えていきたい。
D 育児休業の男性取得策については、公務員連絡会から多くの要望や提言をいただいてきた。昨年12月に局長通知を出し、意識啓発を行ってきたところであるが、何よりも男性職員の意識を変えていくことが大事だと認識している。男性取得策については体系的な施策になっていないとの指摘は理解するが、一挙に前進させることは困難な課題でもある。また、公務員連絡会からは男性が取得した場合のプレミアム措置などについて提言をいただいてきたが、人事院としては取得期間を3年に延長することが両立支援策の第一歩だと考えたところであり、今後とも施策の充実に努めていきたい。

 こうした人事院側の回答に対し、公務員連絡会側は、@昨年暮れの基本要求書に対する人事院の回答では『マイナスベア勧告の現実的可能性もある』との認識を明らかにしているが、この認識は今日も変わっていないのか。また、従前の例にとらわれない方法を模索するとは、どういうことをさしているのか。われわれとしては、厳しい情勢の中でどのようにして公務員労働者の生活を防衛していくかと言うことを十分相互に議論する意味として理解したい、A子どもの看護休暇について従前より一歩前進と受け止めたいが、いつの段階で実施時期や内容について具体的な回答を示すのか、B高齢者再任用制度について、公務員連絡会として各府省の実施状況について独自に調査を行ったが、希望者全員再任用というところもあれば半分というところもあり、級の格付けや定数カウントも含め、各府省間の取り扱いにばらつきが生じている。高齢者再任用制度の趣旨は雇用と年金の連携にあり、この趣旨からしてばらつきが生じるのはおかしい。人事院として何らかの対処が必要ではないのか、とさらに人事院の考え方を追求した。
 これに対し人事院側は、@12月の基本要求書への回答時と認識は変わっておらず民間の状況を厳しいものと見ている。民間では定昇とベアが分離しているところは大手を除くと少ない。ベア要求しない組合がある中で、ベアもないとなると定昇に切り込むところもでてくるだろう。日経連の調査では民間の定昇率は1.8%〜1.9%としており、したがって2%以上の数値が出ないとベア分が出てこない。妥結水準として1.7%ぐらいと予想している数字もあり、これでは定昇分に割り込んでしまう。公務の定昇率は、1.75%ぐらいあるので、マイナスになるということも現実的視野に入れざるを得ない。『従前の例にとらわれない』とは、マイナス勧告を前提としているわけではない。こうした厳しい情勢の下で、率・額を表示しないという公務員連絡会の要求を重く受け止め、どのようにしていったらいいかについて、今後ともじっくり皆さんと話し合っていきたいとの趣旨だ、A(子どもの看護休暇の実現に向けて)少しでも前進できるように努力しているところだ。今後の局長、総裁との会見の日程を念頭に入れて検討していきたい、B高齢者再任用制度の本格実施にあたって様々な問題点が生じてくることは予想している。当初は再任用期間は1年だが、これが2年以上となれば、課題はより多く出てくるだろう。再度、各府省の担当の方に趣旨を伝え、対応をしていきたい、と応じた。

 これらの回答を受け、公務員連絡会側は、15日の書記長クラスの交渉にむけて、一層の努力を要請し、本日の交渉を終えた。

<総務省人事・恩給局次長との交渉経過>
 公務員連絡会幹事クラス交渉委員と総務省人事・恩給局花角次長との交渉は、午後1時30分から行われた。公務員連絡会側は、冒頭、以下の重点事項について、現段階での総務省の見解を求めた。

(1) 公務員連絡会は、今年初めて要求額・率を明示しない要求を行ったが、厳しい情勢を踏まえつつ、なんとしても公務員労働者の生活を防衛してほしいとの趣旨であるので、是非これを受け止めた対応をお願いしたい。
(2) 退職手当の見直しについては、昨年末の基本要求への回答の際、一定の見解をいただいているが、その後何か動きがあれば聞かせていただきたい。
(3) 公務員制度改革大綱の閣議決定に関わって、連合・連合官公部門連絡会として、2月26日に、日本政府を相手方として、ILO結社の自由委員会に提訴を行った。今後、ILO事務局の方から、政府に対し見解を求められると思うので、公務員制度を所管する総務省として、ILOの審査に誠実に協力するという立場での対応をお願いしたい。
(4) 公務員制度審議会は3月をもって解散することになるが、われわれはその審議経過の中で、労使の意思疎通を深めていくことが大切であることが確認されたものと考えている。したがって4月以降も、われわれと総務省の間で、労使の意思疎通を深めていくための協議を続けていきたいので、よろしくお願いしたい。
(5) 高齢再任用制度について、公務員連絡会として調査を行ったところ各府省間でバラツキがあるようなので、それが制度に対する信頼性を損ねることにならないよう、総務省として総合調整機能を発揮し、実態調査を行い適切な指導をお願いしたい。

 これらについて、花角次長は次の通り考え方を示した。
(1) 賃金については、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を堅持するという政府の基本姿勢に変わりはなく、勧告が出されれば、内閣がその責任において国政全般の上に立って判断するということになる。本年についても、人事院勧告が出されれば、それを尊重するとの基本姿勢に立って、総務省として適切に対応したい。
(2) 退職手当制度の見直しについては、現在、行政改革推進本部が退職手当を含めた公務員制度全般の検討を進めているので、その結果を踏まえて対処して参りたい。
(3) 提訴に関わってILOから政府の見解を求められることになるが、関係省庁と協議して適切に対応して参りたい。
(4) いろいろ議論があった経過をふまえつつ、労使の意思疎通を深めていくことについては、要望として承り、今後検討して参りたい。
(5) 高齢再任用については、昨年6月に決定した「国家公務員高齢者雇用推進に関する方針」にしたがって、関係機関と緊密な連絡を取りながら、計画的かつ円滑な実施に努めているところである。13年度及び14年度の実施状況については、各府省から報告を受けることになっているので、その報告方法などを検討しているところである。

 以上の考え方について、連絡会側は@民間では経営の状況が悪いときには使用者側が組合に十分説明しながら対応しているところであり、公務でも第3者機関である人事院の勧告を待って対処するだけではなく、使用者としての総務省が厳しい情勢の中でどうやって公務員の処遇を確保していくつもりなのか、連絡会との間できちんと論議すべきではないか、A退職手当の調査結果がまとまるのはもう少し時間がかかると理解してよいか、B高齢再任用について内定状況がどうなっているか調べたところ、希望者に対する内定率が府省で相当異なっているし、格付けもばらついている。定数のカウントもいろいろだ。このままでは、再任用制度に対する信頼が失われるのではないかと心配している。総務省としてきちんと調べて対応すべきだ。また、行(二)は再任用しないという府省があるとも聞いているがそうした指導をしているのか、CILOは厚生労働省が窓口と思うが、総務省としても公正、適切な対応となるよう努めていただきたい、とさらに見解を質した。
 これに対し、総務省は@賃金は人勧を待って対応するというのが基本であるが、それとは別に話をしたいというのであれば、総務省としてはいつでも窓口を開いているので要望に沿って話し合って参りたい。使用者としての立場ということになるが、同じ組織の一員であるので場を設けて十分話し合っていきたい、A退職手当については、郵送による調査をまず実施し、その後、補完調査を行い、いま集計作業を行っているところだ。しかしなお、記入の不備等があり、まだ、いつまでにまとまると言える段階には至っていない、B高齢再任用は「統一的に行う」ということではなく、年金とのブリッジを基本として、各府省がその事情に応じて実施するようお願いしている。再任用は、能力の実証が前提であるので希望したからといって全員が必ず再任用されるものではないことはご理解願いたい。今報告方法を検討しているが、4月中には各府省から報告をもらうことになるので、それを踏まえて必要な対応をしたい。まだ始まったばかりなので問題がいろいろあると思うので、各府省の要望を踏まえながら今後どうしていくかも検討していきたい。なお、行(二)は採用するなという指導はしていない、CILOの窓口は厚生労働省ということになるが、実際には行革推進事務局が中心になって、総務省も相談を受けながら対応することになる。総務省としては誠実に対応するし、推進事務局には皆さんの要望を伝える、と答えた。
 最後に、連絡会側が「3月15日には書記長レベルの交渉を行うので、とくに労使の意思疎通について積極的な対応をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を終えた。

以上