2002年度公務員連絡会情報 23 2002年3月19日

公務員労働組合連絡会

総務大臣、人事院総裁と交渉して春の段階の回答引き出す
−公務員連絡会は「声明」確認、厳しい情勢踏まえ人勧期闘争に全力−

 公務員連絡会は2002春季生活闘争の回答指定日に設定した19日、11時から人事院総裁、12時30分すぎから総務大臣と委員長クラス交渉委員が春の段階の最終交渉を行い、それぞれ回答を引き出した。
 この回答を受けて公務員連絡会は、午後2時から企画調整・幹事合同会議を開き、政府・人事院回答内容(資料1、2)と「声明」(資料3)を確認した。また、明日(20日)を第3次全国統一行動として設定、各構成組織ごとに、本日の政府、人事院回答内容を報告するとともに、今後の人勧期に向けた闘いの決意を固めるための時間外職場集会を中心とした行動を実施することとした。
 今年の春季生活闘争では、われわれを取り巻く厳しい情勢を認識し、4年連続の年収マイナスや「マイナスベア勧告」を阻止することに取り組みの焦点を据え、生活の維持・防衛を柱にした要求を提出し、政府、人事院から誠意ある回答引き出しに向け、全力で取り組みを進めてきた。19日の最終交渉では、別紙資料にあるとおり、政府、人事院の基本姿勢については確認したものの、本年の給与改定に向けた具体的な方向性は引き出せなかったが、公務員連絡会としては、厳しい民間春闘結果などを考慮し、それを人勧制度のもとでの春の段階の回答として受け止めることとした。今後、人勧期において改めて生活の維持・防衛に向けた取り組みを開始することとなるが、本年の給与勧告を巡る厳しい情勢は解消されておらず、その闘いがかつてなく厳しいものとなることを覚悟しながら全力で要求実現に向けた取り組みを進めていく必要がある。公務員連絡会では、政府、人事院と事前の十分な交渉・協議を行い、われわれが賃金・労働条件決定過程に実質的に関与することを強く求めていくこととしている。
 本日の人事院総裁・総務大臣交渉の経過とその回答、公務員連絡会の「声明」は次のとおり。

<人事院総裁交渉の経過>
 中島人事院総裁との交渉は、午前11時から公務員連絡会委員長クラス交渉委員が出席して人事院内で行われた。
 冒頭、丸山代表委員は、「公務員連絡会としては、2月19日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、総裁から春季段階の最終回答をいただきたい」として、春闘要求に対する総裁回答を求めた。
 これに対し、総裁は資料1のとおり回答を示した。
 総裁回答を踏まえ公務員連絡会側は、「本年の春闘は、12〜15日の民間大手を中心とした最大の山場を越え、中小・地場や国営企業の闘いに移っているが、ベアゼロ回答があいつぐなど極めて厳しい結果となりつつある。こうした民間春闘の経過からして、われわれ公務員の本年の給与改定を巡る情勢もさらに厳しいものとなることが十分予想される。これまでもわれわれは、決定過程への参加を求めてきたが現実はそうなっておらず、厳しい情勢の中で人事院勧告制度が公務員の賃金・労働条件決定制度として機能する社会経済的条件が失われつつあることを指摘してきたが、本年の給与改定を巡る情勢はそうした疑念がまさに現実的可能性を持った深刻な情勢であるといえる。総裁には、現下の厳しい情勢の中で、どうしたら労働基本権の代償機能としての役割を十分はたせるのか、これまでの枠組みや手続きにとらわれず、われわれと十分事前の協議を行いながら本年の勧告作業を進めていくよう、特段のご要請を申し上げておきたい」として、人勧期においてこれまでの枠組みを越えた十分な協議を行うことを重ねて求めた。
 その上で公務員連絡会側は、「人事院の春の段階の最終回答として組織に持ち帰って協議したい」として、人事院の春の段階の最終回答として受け止めるとの見解を明らかにし、交渉を締めくくった。

<総務大臣交渉の経過>
 片山総務大臣との交渉は、12時30分から総務省内で行われ、委員長クラス交渉委員が出席した。
 冒頭、丸山代表委員が「公務員連絡会としては、2月19日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み上げてきたが、本日は、こうした交渉経過を踏まえながら、地公部会への回答を含め長官から春季段階の最終回答をいただきたい」として、春闘要求に対する回答を求めた。
 これに対して大臣は資料2のとおり回答を示した。
 この回答を受けて丸山代表委員は、本年の春闘でベアゼロが相次ぎ、今後の給与改定を巡る情勢がますます厳しいものとなるとの認識を示しながら、「これまでもわれわれは、決定過程への参加を求めてきたが現実はそうなっておらず、本年の厳しい情勢の下では、人事院勧告制度が公務員の賃金・労働条件決定制度として機能しなくなることを心配しなければならない深刻な情勢であるといえる。中央人事行政機関としての内閣総理大臣を補佐する立場である総務大臣には、これらの点を十分認識いただき、政府としても単に人事院勧告を待って対処するのではなく、労使関係の安定の観点から使用者としての責任において、われわれと前広の交渉・協議を十分行い、労使の意思疎通を促進させるよう特段の努力を要請したい」として、総務大臣の特段の努力を求めた。
 また、地公部会を代表して松島世話役委員長は「少なくない自治体で、厳しい財政状況からぎりぎりの決断として、職員給与のカットが行われている状況にある。また、『ワークシェアリング』についても、いくつかの団体で進められているが、われわれはそれらは本当のワークシェアリングではなく緊急雇用対策だと認識している。これらの課題についてわれわれと十分交渉・協議を行うよう尽力してもらいたい。ワークシェアリングのあり方については別途協議する場を求めたいと考えている」と、総務省の努力を重ねて求めた。
 これらに対して大臣は「しっかり承った」とし、今後様々な問題で話し合っていくことに同意した。
 最後に公務員連絡会側は、「本日の回答は、総務大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」とし、総務大臣交渉を締めくくった。



<資料1>

人事院総裁回答

平成14年3月19日


1 官民較差に基づき、適正な公務員の給与水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。また、公務員連絡会が給与改定を求めていることについては理解する。

2 公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で、公務員連絡会の要求及び公務員の生活を考慮して、人事院の重要な使命として、適切に対処する。
 民間給与実態調査の見直しに当たっては、基本的枠組みを維持するとともに、調査の信頼性・安定性が損なわれないよう十分配慮する。

3 給与勧告作業に当たっては、公務員連絡会と十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。

4 一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。

5 公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者及び公務員連絡会の意見を聞きながら引き続き検討を進める。
 子どもの看護に係る休暇制度については、年5日の範囲内の期間とする特別休暇として、本年4月1日から実施する。
 また、育児休業の男性取得の促進に向け、引き続き努力する。
 超過勤務の縮減については、育児・介護を行う職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの実施状況を踏まえつつ、一層の縮減に向けて努力する。

6 自己啓発等のための休業制度については、引き続き検討を進める。

7 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。



<資料2>

総務大臣回答

平成14年3月19日


<公務員連絡会全体に関わる回答>

1 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
 平成14年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。

2 退職手当制度の検討に当たっては、十分職員団体の意見も聞きつつ、適切に対応してまいりたい。

3 ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
 なお、連合及び連合官公部門連絡会の結社の自由委員会への提訴に関わってILO事務局から政府見解が求められており、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。

4 労使の意志疎通の在り方については、公務員制度調査会「労使関係の在り方に関する検討グループ」の審議経過を踏まえつつ、様々な角度から適宜、意見交換をしながら検討してまいりたい。

5 労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。

6 高齢者再任用制度については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対応を進める。

7 男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。

8 安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意志疎通に努めたい。

<地公部会に関わる回答>

1 地方公務員の給与改定については、労使間の交渉もあるが、現行制度上は、議会の議決による条例で定めることとされており、その内容は、基本的に人事院勧告に基づく国家公務員の給与改定に準じて、国及び他の地方公共団体との均衡が失われないようにすべきものと考えている。
 今後とも、このような考え方にたって、必要な助言等を行ってまいりたい。

2 税源移譲を含めた国と地方の税源配分については、偏在性の少ない税目の充実により、国税と地方税の比率を1対1にすることを目指して検討していきたいと考えている。
 また、法人事業税の外形標準課税については、その実現のために最大限努力していきたい。

3 地方公務員制度改革については、「大綱」において、地方自治の本旨に基づき地方公共団体の実情を十分勘案しながら、国家公務員制度の改革に準じ、所要の改革を行うこととされたところである。今後の改正作業に当たっては、総務省自治行政局公務員部が中心となって行うことになるが、行政改革推進事務局と連携をとりつつ、関係者の意見も伺いながら、適切に対応してまいりたい。

4 「ワークシェアリング」については、地域の雇用機会の確保を図るための取組の一つとして、職員の時間外勤務の削減により捻出した財源を用いて臨時・非常勤職員を一定期間任用するなど、地域の雇用確保に向けて先行的に取り組んでいる意欲は評価したい。
 ワークシェアリングについては、各団体において様々に工夫しながら取り組んでいるところであり、こうした工夫に当たっては、各団体において自主的かつ適切に取り組んでいただきたいと考えている。



<資料3>
公務員連絡会声明


(1)本日、公務員連絡会は、総務大臣、人事院総裁と交渉を行い、2002年の春季要求に対する回答を引き出した。
(2)2002春季生活闘争は、日本経済が出口の見えない深刻なデフレ状況にある中で、民間の各組合が雇用と生活の確保に向けて懸命の取り組みを進めているが、ベアゼロ回答があいつぐなど厳しい闘いを余儀なくされている。
 重要段階に入った公務員制度改革を巡る取り組みとともに進められてきたわれわれの春季生活闘争も、公務員給与を取り巻く情勢が一段と厳しい局面に入ったことを認識し、4年連続の年収マイナスや「マイナスベア勧告」を阻止することを焦点に据えた要求を提出して、その実現に向けた取り組みを進めてきた。
(3)本日の回答では、政府、人事院から人事院勧告制度の下での基本姿勢は確認できたものの、本年の賃金・労働条件改善に向けた明確な方向性は示されず、今後「十分な意見交換を行う」(人事院)、「適切に対処する」(総務省)との回答に止まった。これらの回答は、生活の維持・防衛を中心としたわれわれの切実な要求に明確に応えたものではないが、かつてない厳しい民間春闘結果や現下の公務員給与を取り巻く情勢を踏まえれば、人事院勧告制度の下での春の段階の回答として受け止めざるを得ないものである。
 そのほか、人事院から両立支援策の残された課題である子どもの看護休暇(5日)を4月から実施するとの回答を引き出したことは、われわれのねばり強い取り組みの成果として確認できる。また、政府からILO提訴に対して誠実に対応することや労使の意思疎通のあり方について検討すると約束させたことも、今後の取り組みへの足がかりとして確認できる内容である。
(4)われわれは、これらの春闘結果を踏まえ、今後、生活の維持・防衛に向けた人事院勧告期の闘いを改めて開始していかなければならない。
 その闘いは、すでに人事院が「マイナスベア勧告もありうる」との認識を示しているように、人勧期の闘いの歴史の中でわれわれがかつて経験したことのない厳しい局面での取り組みとなることが想定される。われわれは、人事院が示した「十分な意見交換」との回答を足がかりに、従来の枠組みを超えた実質的な交渉・協議を十分行い、われわれが決定過程に参加し、要求に沿った勧告内容となるよう強く求めていくこととする。
(5)われわれは、明日、20日の第3次全国統一行動日には各構成組織ごとに本日の回答内容を報告し、引き続く人勧期の取り組みへの決意を確認する職場集会等を実施することとする。また、困難な情勢の下で闘いを進めている中小及び地域の仲間や国営企業部会の仲間と連帯し、雇用確保や医療制度の抜本改革などを求める連合のゼネラルアクションに積極的に参加するなど、春季生活闘争中・後半期の闘いを推し進めることとする。
 そして、「大綱」の撤回と国民本位の公務員制度改革の実現に向けて、4月から開始される一大署名運動を始めとした国民的運動の成功とILO闘争の勝利をめざし、連合に結集するすべての仲間とともに組織の総力を挙げて闘い抜くことを宣言する。
2002年3月19日
公務員労働組合連絡会

以上