2002年度公務員連絡会情報 39 2002年8月6日

公務員労働組合連絡会

委員長クラスが人事院総裁と最終交渉−8/6
−勧告日8日、月例給2%台・一時金0.05月のマイナス、「減額調整」措置実施−

 公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、勧告を直前に控えた6日午後3時50分から、人事院中島総裁と交渉を持ち、2002勧告・報告の概要を回答として引き出した。
 2002人勧期の取り組みは、マイナス勧告が想定されるかつてない厳しい情勢のもとで進められてきた。6月19日に委員長クラスが人事院総裁に要求書を提出して以降、3次の中央・全国統一行動を実施し、勤務条件局長等と精力的に交渉・協議を進めてきたが、事務レベル最終交渉となった5日の勤務条件局長交渉でも「減額調整」措置等の問題で決着が付かず、本日の総裁との最終交渉に持ち越された。
 総裁交渉で人事院側は、勧告日は8日であること、月例給のマイナスが2%を超えること、一時金が0.05月削減されること、12月期末手当で「減額調整」措置を実施するなどを明らかにした。これに対して丸山代表委員は、@月例給・一時金は生活に大きな影響を与える内容であり遺憾であるが、現行の民間準拠の仕組みのもとでは受け止めざるを得ないが、A減額調整措置については違法性の疑いが強く不当な勧告であって了解できない、との見解を表明し、総裁交渉は緊迫した雰囲気の中で終了した。
 公務員連絡会は、本日午後5時から開かれた企画・幹事合同会議でこの総裁交渉の経過を報告。明日(7日)午後3時から開く代表者(委員長・書記長)・幹事合同会議で、8日に行われる勧告に対する声明、政府への申入れ内容、当面の取り組み方針(骨子)などを決定することとした。
 本日行われた人事院総裁との最終交渉の経過は次の通り。

<人事院総裁交渉の経過>
 人事院中島総裁と委員長クラス交渉委員の最終交渉は、6日午後3時50分から人事院内で行われた。
 交渉の冒頭丸山代表委員は、「6月19日に総裁に対して要求を提出して以降、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答を頂きたい」として、総裁の回答を求めた。
 これに対して総裁は、「本年の勧告については、民間賃金の動向や雇用情勢が従来になく厳しい状況の中、中立第三者機関として真摯に検討を行ってきた。本年はベースアップ中止や賃金カットを行っている企業が増加し、公務員給与が民間のそれを上回ることも想定される状況にあって、人事院勧告の意義を念頭に置き、各界、各層の意見を幅広く聴取し、公務員連絡会の意見等も十分に踏まえ検討してきたところである。その結果は、次に示すとおり大変厳しい結果となった」として、次の通り本年の勧告内容を回答した。

<人事院総裁回答>


1 勧告日
 勧告日については、8月8日となる予定である。
2 官民較差及びその取扱い
 較差については、2%を若干超えるマイナスとなる見込みである。
 較差の取扱いについては、公務員連絡会の要求も踏まえ、現行の俸給と諸手当との配分比率を大きく変えないよう配慮した。
(1) 俸給表
 俸給表については、マイナス較差を踏まえ全俸給表の全ての級について引下げ改定を 行うが、改定に当たっては、皆さんの要求にも配慮した。
(2) 諸手当等
諸手当については、扶養手当のうち配偶者に係る手当を2,000円引き下げることとした。また、子等に係る手当のうち3人目以降について2,000円引き上げることとした。これらの措置は、較差がマイナスであることへの対応であるほか、職員の家計負担の実情、女性の社会進出などに伴う家族の就業形態の変化及びこれらに伴う民間における配偶者手当見直しの動き等も考慮したものである。今後、扶養手当についてはその在り方について見直しも必要になると考えている。
 なお、住居手当のうち、自宅に係る手当の在り方について速やかに検討を進めたい。
 また、俸給の調整額の平成8年改正に係る経過措置を廃止し、新たな措置を講ずる。
3 一時金
 期末・勤勉手当については、民間の一時金が昨年の夏は対前年比で伸びたものの、冬が大きく落ち込んだと指摘されていたことから心配していたが、最小限のマイナスに止まった。この減について、本年度3月期の期末手当で措置する。
 このほか、民間における支給実態を踏まえ、年2回の支給に改めることとし、民間における一律支給分と考課査定分の比率に合わせる形で3月期の期末手当を6月期と12月期の期末手当、勤勉手当にそれぞれ配分する。
4 改定の実施時期等
 本年の給与改定は、給与水準を引下げる内容であり、改正給与法は施行日からの適用とする。その際、官民給与を実質的に均衡させるため、12月期の期末手当の額において所要の調整措置を講ずる。
 給与勧告は、4月時点における民間給与と合わせており、4月に遡って改定してきた経緯がある。法律上、上がる場合も下がる場合も想定されており、実質的に4月時点で合わせることが情勢適応の原則にかなうものであると考えている。
5 地域における公務員給与の在り方
 各地域に勤務する公務員の給与の在り方については、昨年の報告で人事院としての問題意識を表明し、本年は民間給与の実情等をより的確に把握するため、標本事業所の層化・抽出方法の見直しを行った。今後、関係方面と意見交換しながら、早急に結論を得るべく具体的な検討を進めていきたいと考えており、公務員連絡会も前向きに対応していただきたい。

 本年の勧告は、月例給を引き下げるという初めての勧告であり、公務員にとって極めて厳しい内容のものであるが、人事院としても検討に検討を重ね、苦慮しつつ決断したものであることを重く受け止めていただきたい。
 また、本年は給与に関する報告に併せ、公務員制度改革について報告し、人事院の考えを表明している。立場こそ違え、よりよい公務員制度としていくことはお互い異存のないことと考えられ、今後とも議論を尽くしていきたいので、よろしくお願いしたい。

 これに対して丸山代表委員は、次の通り公務員連絡会としての見解を述べ、本年の勧告内容を強く批判した。
(1) 2002年人勧期の要求の中でわれわれは、厳しい社会経済情勢や春闘結果を踏まえつつも、公務員労働者の生活を維持・防衛するための給与水準の確保や従来の枠組みを超えた十分な交渉・協議と合意に基づく給与勧告を求めて、ぎりぎりの段階まで事務レベルの交渉を行ってきた。
(2) ただいまの総裁回答は、@民間賃金の動向を反映したものとはいえ月例給が大幅なマイナスとなったことA最小の月数とはいえ4年連続で一時金が引き下げられたことなど、われわれの切実な要求に応えず、生活に大きな影響を与えるものとなったことは極めて不満であり、遺憾な内容である。しかも、実質的に4月に遡る減額調整については、不利益不遡及の原則に照らして違法性の疑いが強く、その勧告をわれわれが納得いくような説明もなく行うことは極めて不当であるといわざるを得ない。
(3) これらの勧告のうち水準勧告については、われわれの賃金・労働条件が民間準拠の枠組みのもとで決定されるシステムであり、現下の厳しい社会経済情勢や民間賃金の動向と実勢を正確に反映したものであれば、われわれとしても受け止めざるを得ないものと判断する。また、配分についてもわれわれの要求を一定程度考慮したものとしたことについても受け止めたい。しかしながら、減額調整措置は、単に経済的利害の問題に止まらず公務員労働者の労働債権の侵害であり、このことが民間に与える影響も考慮すれば、われわれがこれを了解することはできない。
 また、給与制度見直しの報告については、公務員制度改革大綱に基づく新人事制度の検討との整合性がまず問われる問題であり、検討に当たっては拙速を避け、われわれとの交渉・協議に基づく慎重かつ透明な検討作業を強く求めておきたい。
(4) いずれにしろ、8日に行われる予定の本年の給与勧告は、社会経済情勢の大きな変化の中で、毎年年末にならないと給与が確定できない現行の決定システムやその決定過程に労働組合の参加が保障されていない人事院勧告制度の本質的な問題点が表面化したものといわざるを得ない。
 したがってわれわれは、今後、勧告の取り扱いを検討する政府に対しては、水準勧告や減額調整の取り扱いを含め、十分われわれと交渉・協議し、合意の上で決定することを求めていきたいと考えている。
 公務員連絡会として本日機関会議を開いて、ただいまの総裁回答を報告し、今後の対応を協議することとしたい。

以上