2002年度公務員連絡会情報 40 2002年8月8日

公務員労働組合連絡会

人事院が内閣と国会に2002勧告・報告−8日
−公務員連絡会は声明発表し、政府に申入れ−

 人事院中島総裁は、本日午前11時30分から小泉総理と会い、2002勧告と報告を行った。また、このあと勧告・報告は衆参議長にも行われた。政府はこの勧告を受けて、12時30分から第1回給与関係閣僚会議を開いて取り扱いを協議し、総務大臣等が勧告通り実施することを主張したが、なお事務的に調整することとなり、結論は次回以降に繰り延べられた。次回の日程は未定。
 公務員連絡会は、6日の総裁回答を踏まえて7日午後から代表者・幹事合同会議を開き、本年の勧告に対する態度と今後の対応を協議した。その結果、8日に予定される勧告に対する公務員連絡会としての基本態度を声明として確認し、勧告後主要な給与関係閣僚に「勧告の取り扱いに当たっては公務員連絡会と十分交渉・協議、合意すること」を求める申入れを行うことを確認。9日には、第4次全国統一行動を実施して勧告内容の報告と今後の取り組みの決意を固める時間外職場集会を実施することとした。また、勧告の取り扱いを中心とする秋季闘争では、政府・与党内部に公務員給与削減の動向が強まっていることを警戒し、政府が勧告を上回る給与引き下げ等を行わないことや減額調整措置を行わないことを中心に、総務省人事・恩給局等との交渉を強めることを確認した。

 公務員連絡会はこの確認を踏まえ、勧告後、直ちに声明(資料1参照)を発表し、午後から委員長クラス交渉委員が総務大臣、厚生労働大臣に勧告の取り扱いに関わる申入れ(資料2参照)を行った。なお、地公部会は明日、全国人事委員会連合会に申入れを行う予定。 総務大臣、厚生労働大臣申入れの経過は次の通り。

<総務大臣申入れの経過>
 北岡・丸山代表委員ほか委員長クラス交渉委員は、午後1時30分から、片山総務大臣に対し申し入れを行った。
 冒頭、丸山代表委員から申入書を手交し、@民間賃金の動向を反映したものとはいえ、大幅な月例賃金がマイナスとなったこと、A一時金が4年連続で引き下げられたこと、B4月に溯って給与減額措置は不利益不遡及の原則に対し、違法性の疑いが強いことなど、公務員労働者の生活に大きく影響するものであり、本年の勧告は極めて遺憾な内容と厳しく批判。
 そのうえで、公務員連絡会は本年の給与勧告の取り扱いに対し、@公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づくこと、Aデフレ経済が深刻となるなかで、政府が公務員の総額人件費抑制の姿勢を強めていることに対し、勧告以上の賃金削減を行うことがないよう強く要請した。
 これに対し、片山総務大臣は、「本日給与関係閣僚会議で人事院総裁から、本年の勧告について報告を受けたところ。人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、これを尊重するとの姿勢に変わりはない。この基本認識にたって、給与の取り扱いについては検討していきたい」と見解を述べた。また、「財政諮問会議の閣議決定に基づき、小泉首相から総額人件費抑制についての検討が指示されている。どのような答えが出るか、みなさんの意向を聞きながら十分検討していきたい」と述べた。
 公務員連絡会側は、「本年の勧告は組合員の士気に影響する問題であり、生活が苦しくなるなかで切実な声が出されている。給与勧告の取り扱いにあたっては、十分な交渉・協議を重視してもらいたい」と再び、釘を差した。
 これに対し、片山総務大臣は、「皆さんの意向はできるだけ聞きたい。引き続き皆さんと十分に協議していきたい」との見解を述べ、申し入れを終えた。

<厚生労働大臣申入れの経過>
 続いて、3時から坂口厚生労働大臣に対し、申し入れを実施した。丸山代表委員から別紙の申し入れ書を手交した。
 公務員連絡会は、「人勧史上初の月例賃金のマイナスとなったことを受け、地方公務員、民間中小の労働者の生活への影響ははかりしれない。このことは、医療費など社会保障の負担が重くなるなかで、デフレ経済を一層深刻にさせるものだ」と勧告の内容を厳しく批判。給与勧告の取り扱いについて公務員連絡会との十分な交渉・協議、勧告以上の賃金削減を行うことがないよう強く求めた。
 これに対し、坂口厚生労働大臣は、「民間賃金は昨年後半から下降しており、このデフレ経済は深刻な状況だと受け止めている。どのように止めていくかが大きな課題。景気低迷から一刻も早く脱却しなければならない」と認識を述べた。そのうえで、今日の皆さんの申し入れの趣旨は十分理解したと述べ、この日の申し入れを終えた。



資料1−公務員連絡会の声明

声 明


1.人事院は本日、政府と国会に対して、月例給を7,770円、2.03%引き下げる勧告史上初のマイナスベアと一時金を0.05月削減する給与勧告を行った。
2.2002人事院勧告期の取り組みに当たってわれわれは、厳しい春闘結果を踏まえつつも、公務員労働者の生活を維持・防衛するための給与水準を確保することを基本目標に据え、従来の枠組みを超えた十分な交渉・協議と合意に基づく給与勧告を目指して、ぎりぎりの段階までねばり強い取り組みを進めてきた。
 本年の給与水準に関わる勧告は、@民間賃金の動向を反映したものとはいえ月例給が大幅なマイナスとなったことA最小の月数とはいえ4年連続で一時金が引き下げられたことなど、われわれの切実な要求に応えず生活に大きな影響を与えるものとなったことは極めて不満であり、遺憾な内容である。しかしながら、われわれの賃金・労働条件が民間準拠の枠組みのもとで決定されるシステムであり、現下の厳しい社会経済情勢や民間賃金の動向と実勢を正確に反映したものであれば、われわれとしてもこの水準勧告については受け止めざるを得ないものと判断する。
 あわせて本年勧告された、実質的に4月に遡る減額調整措置については、不利益不遡及の原則に照らして違法性の疑いが強く、その勧告を明確な法的根拠を説明することなく人事院が一方的に行ったことは極めて不当であると批判せざるを得ない。この勧告は、単に経済的利害の問題に止まらず公務員労働者の労働債権の侵害であり、このことが民間等に与える影響も考慮すれば、われわれがこれを了解することはできない。
 配分について、俸給表を一率的な引き下げとしたことや諸手当の改定内容をわれわれの要求を踏まえたものとしたこと、育児休業の男性取得について引き続き検討するとしたことなどは、ねばり強い交渉・協議の結果といえるが、決して十分ではない。
 給与制度見直しの報告については、公務員制度改革大綱による新人事制度の検討との関連性の明確化を含め、われわれとの交渉・協議に基づく慎重かつ透明な検討作業を求めていかなければならない。また、本年は政府の公務員制度改革大綱に対応する形で公務員制度改革に関する報告が行われ、セクショナリズムの是正、キャリアシステムの見直し、短時間勤務制や非常勤制度の整備などが提言されているが、問題はそれをいかに具体的に実行していくかであり、人事院には文字通り「オープンな議論」とわれわれとの十分な交渉・協議を強く求めておきたい。
3.以上のことから本年の給与勧告は、社会経済情勢の大きな変化のもとで、民間から半年以上も遅れて年末に給与決定が行われるという現行の公務員の決定システムの歴史的限界やその決定過程に労働組合の参加が保障されていない人事院勧告制度の本質的な欠陥が如実に露呈したものといわざるを得ない。われわれは、このことを十分踏まえつつ、今後の取り組みを進めていかなければならない。
 われわれの闘いは、本日をもって秋の確定闘争の段階に移行することとなる。その取り組みは、国民に一方的に痛みを押しつける小泉構造改革路線が本格的に進められるもとでの極めて厳しいものとなることが予想される。政府・与党の内部では、退職手当を含めた公務員給与削減の動きが一段と強まりつつあり、そのことを十分警戒しつつ秋季闘争を進めなければならない。
 こうした情勢を踏まえつつわれわれは、政府が本年の給与改定の方針を検討するに当たって、水準勧告を無視した改定や遡及減額調整措置を行わないことなどを含め、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意することを強く求めていくこととする。また、これから本格化する地方自治体の確定闘争、独立行政法人や政府関係特殊法人等の闘いがさらに困難なものとなることを踏まえ、公務員連絡会全体としての態勢を一層強化し、調停不調に終わった国営企業の仲間や連合とも連携しながら、本年の秋季闘争を全力で進めていくこととする。
 同時にわれわれは、この秋季年末段階で重要な局面を迎える公務員制度改革の取り組みを通じて、労働組合が参加する賃金・労働条件決定制度の確立を目指した本格的な取り組みを進め、「1千万署名」の大きな国民的な力を背景に、政府に対して大綱の撤回と民主的公務員制度の実現、労働基本権の確立などを強く求めていかなければならない。

2002年8月8日
公務員労働組合連絡会



資料2−政府への申入書

2002年8月8日


     殿

公務員労働組合連絡会
代表委員 北岡勝征
代表委員 丸山建藏


本年の人事院勧告に関わる申入書


 常日頃、公務員労働者の処遇改善にご努力頂いていることに心から感謝申し上げます。
 さて、人事院は本日、勧告史上初の月例給を7,770円、2.03%引き下げるマイナスベア勧告と一時金を0.05月削減する給与勧告を行いました。
 これらの給与勧告は、@民間賃金の動向を反映したものとはいえ大幅な月例給のマイナスとなったことA最小の月数とはいえ4年連続で一時金が引き下げられたこと、などわれわれの生活に大きな影響を与えるものであり、極めて不満、かつ遺憾な内容です。
 しかも、実質的に4月に遡って減額調整する勧告を行ったことは、単に経済的利害の問題に止まらず公務員労働者の労働債権の侵害であり、不利益不遡及の原則に照らして違法性の疑いが強く、極めて不当であると批判せざるを得ません。
 以上のことから、政府が本年の給与改定方針を決定するに当たっては、@水準勧告の取り扱いA遡及減額調整の取り扱いを含め、われわれと十分交渉・協議し、合意することを強く申し入れます。



一、政府は、本年の給与勧告の取り扱いを決定するに当たって、水準勧告や遡及減額調整の取り扱いを含め、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。

以上