2002年度公務員連絡会情報 43 2002年9月17日

公務員労働組合連絡会

秋闘第1次中央行動実施して総務省人事・恩給局長と交渉−9/17
−「減額調整措置」実施の見解に強く抗議−

 公務員連絡会は17日午後、2002秋季要求実現9.17第1次中央行動を実施した。午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた中央集会には全国の仲間800人が参加、人勧閣議決定や退職手当見直しに対する取り組み方針などについて意思統一を行うとともに、総務省人事・恩給局長と交渉し、減額調整措置を行わないよう求めた。
 総務省は8月8日の第1回給与関係閣僚会議後、減額調整措置を含めて勧告通り実施する方向で調整を進めており、今月末にも第2回給与関係閣僚会議が開かれる予定。公務員連絡会は、本日の第1次中央行動を皮切りに、勧告の取扱いについては十分交渉・協議、合意するよう求めて、取り組みを強めることとしている。

 社会文化会館ホールで開かれた中央集会では、冒頭挨拶にたった丸山代表委員が「今年の秋季闘争は、人勧の取扱い、退職手当見直し、公務員制度改革と、課題山積の困難な情勢のもとでの取り組みとなる。本日の中央行動を機に、臨時国会段階までねばり強く闘い抜こう」と呼びかけた。
 続いて基調報告にたった山本事務局長は「本日の交渉で、総務省から減額調整措置の考え方が示される。われわれはあくまで交渉による合意を求めて、臨時国会段階まで取り組みを強めていく。退職手当の見直しについても、政治的枠組みではなく労使関係上の課題として位置づけ、交渉・協議を求めていく」と、今後の方針を提起した。
 このあと、決意表明では自治労(菅家労働局次長)、全水道(久保田中央執行委員)、国公総連(金谷全財務書記長)、税関労連(田村東京税関労組執行委員)が力強く闘う決意を表明し、最後に丸山代表委員の音頭で団結がんばろうを三唱して集会を締めくくった。

 集会を終えた参加者は、総務省人事・恩給局長との交渉を支援する行動に移動。総務省前で「減額調整措置は行うな!」「一方的退職手当見直しを行うな!」とシュプレヒコールをあげた。
 この日行った総務省人事・恩給局長との交渉経過は次の通り。

<総務省人事・恩給局長交渉の経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、人事院勧告の取り扱いに関わる政府の検討状況を質すため、9月17日午後2時30分から、総務省久山人事・恩給局長との交渉を実施した。
 冒頭、公務員連絡会側は、「例年では不満があっても、人事院勧告の取り扱いが社会全般に与える影響等を考慮し、勧告通りの実施を求めてきた。しかし本年は勧告後に政府に提出した申入れ書の中でも、勧告実施に触れていない。それは減額調整措置が不利益不遡及の原則に照らして違法性の疑いが強く、また、その決着の仕方によっては、賃金を協約において決定する民間の労働組合への影響が危惧されるからだ。われわれとしては減額調整を行うべきではないとの考え方に立っている」とし、9月9日に実施された幹事クラス交渉において、総務省側が「17日の会見で総務省としての統一見解は示したい」とした減額調整問題について、その見解を示すよう迫った。

 これに対し、人事・恩給局長は、「8月8日に第1回給与関係閣僚会議が開催され、政府としての検討に着手した。今後、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国政全般を考慮し、国民の理解が得られる結論を得るよう、誠意を持って検討していくことになろう。総務省としては、現下の経済情勢、国の財政状況等が厳しい環境にあるが、人事院勧告は労働基本権制約の代償措置の根幹であることや良好な労使関係を維持していくことが重要であることなどを踏まえ、適切に対応していきたい」と、政府の検討状況と総務省の基本姿勢について説明した。また、懸案の減額調整問題については、「給与関係閣僚会議の場で方針が決定されておらず、政府としての結論に至っていないので、本日お示しするのは局内で議論を重ねてきた中間段階の見解だ」とし、概要、次のように総務省の考え方を提示した。

(1) 人事院勧告は、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則(国家公務員法28条)の下、専門・第三者機関である人事院が、毎年4月における官民の給与実態の客観的調査に基づき、国家公務員の給与と民間企業における給与との均衡を確保すべく行っているものと認識している。
(2) 給与の改定方式については、情勢適応の原則に基づき、調査時点である4月に遡及して改定する方式が昭和47年(1972年)以来長期間にわたり定着しており、このことにより、4月からの年間給与において官民の均衡が図られてきているところである。
(3) 本年においては、俸給について引き下げが必要となるところ、既に適法に支給された給与を遡って不利益に変更することは、法的安定性や既得権尊重の観点から慎重であるべきものと考える。この考え方を踏まえつつ、従来どおり4月からの官民の年間給与の均衡を図るとの観点から、今回の措置は、法施行日以降の給与、具体的には期末手当の額の調整を行うこととしており、このことは情勢適応の原則に照らして十分合理性があると考える。
(4) なお、12月期の期末手当による調整措置は、期末手当の生活補給金的な性格、調整措置を早期に終了させることができること等を勘案すると、最も適当な手段であり、また、これをもって、期末手当の一時金としての性格を何ら変更するものではないと考える。

 こうした見解に対し公務員連絡会側は、「今、局長から示された中間的な見解では、不利益不遡及の原則に対する総務省としての答え、統一的な見解が示されていない。すなわち、『既に適法に支給された給与を遡って不利益に変更することは、法的安定性や既得権尊重の観点から慎重であるべき』としているが、これは取り扱いを慎重にするということをいっているに過ぎず、不利益不遡及の原則についての考え方を示したものではない。総務省としては、不利益を遡及することが法理論的に見て、不可能なのか可能なのか、一体どのように考えているのか、はっきりしてもらいたい」と、さらに見解を質したのに対し、総務省側は、「現段階の見解としては、不利益を遡及することは不可能だとまでは言えないが、法的安定性や既得権尊重の観点から慎重に取り扱うべき問題であることを申し上げている。また、どのように慎重に取り扱うかは、時と場合にもより、ゆえに慎重に取り扱うべきとしている」との見解を示した。そのため公務員連絡会側は、「その見解は、不利益の遡及はできるが今回のケースでは慎重に取り扱うという見解であり、不利益不遡及の原則を否定したことになる。不利益不遡及の原則を認めて遡及しないとしている人事院の見解とも異なっており、到底認めがたい見解だ」と追及したのに対し、総務省側は不利益遡及は「かならずしも不可能ではないが、慎重に取り扱うこととした。人事院の見解とすべて一致するものではない」と、人事院の見解と異なっていることを認めつつ、不利益不遡及の原則を否定する見解を繰り返すに止まった。
 また、公務員連絡会側が、減額調整措置の方法について、@これまでは、月例給は月例給、一時金は一時金でそれぞれ官民比較が行われ、月例給については、4月に遡及して改定するという方法が取られてきた。今回ははじめて官民の年収による比較になっている、A仮に期末手当で調整するとした場合、期末手当の性格が変更されることとなる。すなわち、期末・勤勉手当は、1年遅れであるが、それ自身で官民の均衡を図ろうとしてきたのであり、今回の措置は、勧告に盛られた一時金の月数による金額と実際の支給額が異なるばかりか、一時金の民間との均衡が図られないことになる、B年収による比較、期末手当の性格の変更というように従来のルールを大幅に変更するとしているのではないか、とさらに総務省側の考え方を質したの対し、総務省側は、概要、次の通り応じた。

@中立第三者機関の勧告を尊重することは、これまでにおいても、これからも変更がないというのが総務省の立場である。したがって、人事院が引き下げ勧告を行った以上、これを尊重することになる。
A調査時点である4月に遡及して改定する方式は、昭和47年以来長期間にわたり定着している。4月に遡及することにより、結果として、年間給与においても官民の均衡が図られてきているところである。こうした経過からして、年収ベースで官民給与を均衡させることが、情勢適応の原則に合致しているものと考えている。
B調整の方法としては、月例給と一時金の2つがあるが、月例給は生活給的な性格が強く、一時金(期末手当)は生活補給的なものであり調整しやすい。また、来年度は勧告通りの支給月数となるので、性格が変更されたとはいえない。
C従来は4月遡及することにより、官民の年収が結果として均衡するようになってきたと考えるとしても、これを維持するためには、年収で調整する以外に方法はない。調整するには、期末手当によるものが適しているのであり、本年限りの止むを得ない措置である。

 こうした説明に対し公務員連絡側は、なお、納得できないとし、@総務省の本日の見解は使用者による一方的な不利益遡及を認めるものであり、人事院の見解とも異なる極めて問題のある見解であり、到底、減額調整を行う理由足り得ない、A過去、結果として官民の均衡が取られてきたことをもって、今回一方的にルール変更して年収ベースの比較を行うことの根拠とすべきではない、A月例給と一時金では比較方法から見れば、財布が違うと考えるべき。これを一緒くたにして、月例給の減額部分を一時金から精算することは、期末手当の法的な性格を変更することである、B人勧完全実施を言うのであれば、まずは、一時金を勧告通りの月数で支給すべきである、と主張したが、総務省側はこれ以上明確な見解を示さなかった。そのため公務員連絡会側は、「(上記のような考え方では)納得できないし、容認もできない。今日は、中間的な見解ということなので、われわれが納得いく明確な見解を示してもらいたい。今後とも議論を続けていきたい」とし、減額調整措置問題に関する本日の議論を終えた。
 最後に公務員連絡会側は、「いつ閣議決定となるのか」と質したのに対し、局長は「極力早く結論を出すよう努力したい」と、早期閣議決定に努力しているとの見解を示した。

以上