2003年度公務員連絡会情報 18 2003年2月19日

公務員労働組合連絡会

総務大臣へ2003春季要求書を提出−2/19

 公務員連絡会北岡代表委員ほか委員長クラス交渉委員は、19日、総務大臣に対して2003年春季要求書を提出した。政府・人事院への統一要求日は20日に設定したが、総務大臣については国会日程の関係で急遽本日の要求提出となったもの。人事院総裁への要求提出については明日(20日)午後2時から行われる。
 本日の要求書提出を機に、2003春季生活闘争は本格的にスタートすることとなる。公務員連絡会では、雇用創出、公務員制度改革、春季要求実現を目標に、3.11中央行動などを実施しながら、政府、人事院と交渉を積み上げ、3月18日の回答引き出しを目指すこととしている。

 片山総務大臣への要求提出(資料1.2)は、19日午後1時55分から総務省・省議室で行われた。
 要求提出に当たって北岡代表委員は、公務員労働者全体に係る要求と地方公務員に関する要求を合わせて次のように説明し、総務大臣の誠意ある対応を求めた。

(1)今日の日本経済の状況は、デフレから脱却する道筋が全く見えないまま、依然として高失業率が続くなど、危機的な状況にある。そうした中で、民間の仲間は雇用の確保と賃金カーブの維持などを柱とする2003春季生活闘争に懸命に取り組んでいるところである。
(2)われわれとしても、民間のこうした厳しい状況は十分認識しているところであるが、公務員給与はすでに4年連続で年収マイナスとなっている。加えて、昨年、われわれが納得しないまま「減額調整措置」が一方的に実施されたことによって、組合員の間には公務員の給与改定のあり方や使用者としての政府に対する不信が強まっている。昨年の臨時国会における附帯決議の趣旨も踏まえ、本年こそ、公務員の生活を防衛し、交渉・協議と合意に基づいて給与改定を行うことを強く申し入れておきたい。
(3)そのほか本年の要求では、公務におけるワークシェアリングの実現を重点課題として設定している。地方公務員については検討を始めると聞いているが、全体としても短時間勤務制度や臨時・非常勤制度の抜本改革も含め、是非、前向きに取り組んでもらいたい。
(4)地方公務員に関わっては、@厳しい財政状況から、少なくない自治体で職員給与のカットが行われている。地方公務員の生活の維持・改善と、地方税財政を確立するために更なる努力をお願いしたい。A誠実な交渉と円滑な労使関係は、国・地方を問わず重要な課題だ。給与カットにしても組合が交渉して合意しているので職員もやむを得ず納得している。給与や労働条件について、労使でよく交渉・協議する仕組みをつくることが大切だ。この点、大臣としてのご努力をお願いしたい。
(5)本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ねていくこととしたい。そして、3月18日には、大臣から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたいと考えている。

 これに対して片山大臣は、「ただいま春闘要求の趣旨を承ったので、検討し、3月中下旬には回答したい。ILOの勧告に対しては、国会審議でも関心が強い。いずれ政府見解をとりまとめて示すようにしたい。(公務員制度改革担当の)石原大臣には、組合とよく話し合うようにと要請している」との見解を示した。



【資料1】

2003年2月20日

総務大臣
 片山 虎之助 殿

公務員労働組合連絡会
代表委員 北岡勝征
代表委員 丸山建藏


要 求 書


 貴職におかれては、常日頃から私ども公務員労働者の生活と処遇改善にご尽力いただき、心から敬意を表します。
 日本経済はデフレから脱却する道筋が見えないまま、依然として高失業率状態が継続するなどきわめて危機的な状況にあります。公務員労働者の賃金も4年連続年収マイナスとなっており、昨年の一方的な減額調整措置の実施などをめぐって、組合員の間には給与改定のあり方に対する不満がかつてなく強まっています。
 公務員制度改革をめぐる動向が重要段階を迎え、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度のあり方が根底から問われる中で、昨年のような、われわれの納得を得ないままの一方的な給与改定は決して認めることができません。その意味で、本年こそ、公務員労働者の生活を防衛し、交渉・協議と合意に基づく給与改定を行うことが使用者としての政府に強く求められています。
 公務員連絡会は、2月4日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記のとおり2003年春季の賃金・労働条件等の改善、並びに公務におけるワークシェアリングの実施などについての要求を提出いたします。
 貴職におかれては、これらの趣旨を十分認識され、その実現に最大限の努力をいただきますよう要求します。 



1、2003年度の賃金改善について

(1) 2003年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の生活を維持・防衛するための賃金水準を確保することとし、国会附帯決議の趣旨を踏まえ公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。
(2) 国に雇用される労働者の最低賃金を行政職(一)表高卒初任給並みに引き上げること。また、非常勤職員及びパート職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき抜本的に改善すること。

2、国際労働基準・労働基本権等の確立について

(1) 結社の自由委員会第329次報告を直ちに、全面的に受け入れる態度決定を行い、公務員労働者に労働基本権を完全に保障するとともに、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。
(2) 国際労働基準確立の観点からILO第151号条約を批准すること。
(3) 刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職等をさせない措置を行なうこと。

3、ワークシェアリングの実現、労働時間並びに休暇、休業等について

(1) 公務のワークシェアリングについて
@別記に基づき、2005年度までに公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現し、新たに35万人の雇用を創出すること。
Aワークシェアリングの実現に向け、直ちに公務員連絡会との協議の場を設置すること。
(2) 短時間公務員制度の発足と臨時・非常勤職員制度の抜本的な改善について
 短時間公務員制度の発足や臨時・非常勤職員制度の抜本的な整備に向け、直ちに検討に着手することとし、その実現に向けて公務員連絡会との協議を開始すること。
(3) 労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
公務におけるワークシェアリングの実現に向け、@年間総労働時間1800時間体制Aゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度の拡充B少子・高齢社会に対応し自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを実現すること。

4、在職期間の長期化、公務の高齢対策の推進について

(1) 早期勧奨退職慣行の見直し・在職期間の長期化を進めるに当たっては、天下りを廃止し国民から信頼される透明で民主的な仕組みとするとともに、当面、2002年12月17日の閣議申合わせを着実に推進すること。
(2) 高齢者再任用制度の定着と円滑な運用のため、再任用の実態把握に努めるとともに、必要な施策を引き続き実施し、雇用と年金の接続を確保すること。

5、男女共同参画社会の実現、女性労働者の労働権確立について

 公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、必要な施策の確立を図りつつ、政府全体として取り組むこと。

6、その他の事項

 公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。そのための職場環境の整備を進めること。



−別記−

公務におけるワークシェアリングについて


一、公務のワークシェアリング実現に向けた基本的要求について

1.社会全体の厳しい雇用情勢を踏まえ、公務部門において労働時間を短縮し、仕事を分かち合うことによって雇用を創出する雇用創出型のワークシェアリングを実現すること。その際、現下の公務をめぐる厳しい情勢を踏まえ、総人件費と総定員は増やさないことを前提とした政策・制度を設計すること。

2.同時に、職業生活と家庭生活の両立支援、地域における市民的活動への積極的参加、職員個人の能力開発・自己実現による行政の質の向上などを目指し、柔軟かつ多様な働き方を選択できる仕組みを導入し、多様就業型ワークシェアリングを実現すること。

3.このため、超過勤務の縮減など総労働時間短縮、短時間公務員制度(仮称)の新設、家庭生活と職業生活の両立支援策、能力開発等を推進するための休業・休暇制度等を改善・整備し、加えて臨時・非常勤職員制度を抜本的に見直すこと。

4.雇用創出型・多様就業型ワークシェアリングの下における雇用は、「同一価値労働同一賃金」の原則により、雇用・勤務形態(正規・臨時、常勤・非常勤、定期・不定期、無期・有期等)、勤務時間の違いによる処遇の格差を一掃し、真の均等待遇を実現すること。


二、ワークシェアリング実現に向けた具体的要求について

1.年間総労働時間の短縮

 年間総労働時間1800時間体制を実現するため、以下の措置を講じること。
(1) 公務員の労働時間を1日7時間30分、1週間37時間30分に短縮すること。とりわけ厳しい勤務実態にある交替制・不規則勤務職場では、直ちに実現すること。
(2) 超過勤務を原則禁止し、真にやむを得ない場合にあっても年間150時間に制限し、その厳守に努めること。
 また、超過勤務手当を150/100に、深夜・休日勤務の場合には200/100に引き上げることとし、「サービス残業」は禁止すること。
 その他、国会対応の改善、休日勤務の場合の振替・代休の徹底等に努めること。
(3) 年次休暇の完全取得のため、職員の要求に基づく計画的・連続的取得を一層促進するとともに、業務運営方法の点検・改善、要員確保など環境整備を図ること。
 あわせて、子ども看護休暇、介護休暇の改善、非常勤職員等への特別休暇等の適用を拡大すること。
(4) 夏季休暇を年間5日に改善すること。

2.短時間公務員制度の導入

 正規の職員として短時間公務員制度を導入し、勤務時間及び勤務時間に比例した賃金以外はフルタイム職員と同様に扱うこと。
(1) 1週間の勤務時間は現行の短時間勤務再任用職員の例を参考として、勤務時間の割り振りを含めて本人の選択に任せること。
 また、短時間勤務とフルタイム勤務の選択を可能とすること。
(2) 職責が同一である職員に対しては、勤務時間の多寡にかかわらず勤務時間1時間当たりの賃金単価を同一とすること。
(3) 休日・休暇・育児休業等は、フルタイム職員と同様に適用すること。なお、休日・休暇等の性質上必要がある場合には勤務時間割合を配慮すること。
(4) 共済組合制度の組合員資格をあらため、短時間勤務職員にも組合員資格を付与すること。
(5) 兼職禁止など服務のあり方を弾力化し、短時間勤務に相応しい仕組みにあらためること。

3.臨時・非常勤職員制度の抜本的改善

 上記2の短時間公務員制度の活用を含め、正規職員化・定員化を図り、雇用・勤務形態・勤務時間等による身分、処遇、休日・休暇・休業、福利厚生上の差別的取扱いを解消すること。

4.働き方の改革

 働き方を抜本的に改革し、職業生活と家庭生活の両立、市民活動への積極的参加、自発的能力開発・自己啓発等を促進すること。
(1) 勤務時間・勤務日の選択など勤務形態の弾力化を図るため、短時間勤務制度の導入に加えて、フレックスタイムの適用範囲の拡大や休暇・休業制度の整備を図ること。
(2) 職業生活と家庭生活の両立支援のため、育児時間、育児休業、育児部分休業、介護休暇、子ども看護休暇等を改善すること。
 あわせて、育児休業の男性取得促進策を具体化すること。
(3) 自発的な能力開発や自己啓発、海外ボランティア活動が可能となるよう、リカレント休暇、海外ボランティア休業、長期自己開発・啓発休業、一定の範囲で自由に取得できる総合的休業制度などを検討・整備すること。
(4) 人事管理制度においても、職員が希望する働き方を尊重できるよう、キャリアパスを複線化するなど、弾力化を図ること。

5.直ちに実現すべき事項

 上記1〜4の課題については、計画的かつ着実な実現をめざすこととし、当面、次の事項を直ちに実現すること。
(1) 政府・自治体の責任・主導によって120万人の雇用を新たに創出することとし、そのため、所要の措置を講じること。
(2) 超過勤務の年間上限時間を150時間とすること。
また、超過勤務単価を改善するとともに、必要な予算を確保すること。
(3) 夏季に10日間程度の計画的連続休暇を取得できるよう条件整備や啓発活動に取り組み、年休の完全消化を促進すること。
(4) 臨時・非常勤職員の給与について、最低保障制度として、高卒初任給水準を確保すること。



【資料2】

2003年2月20日


総務大臣
 片山 虎之助 様

公務員労働組合連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合   
中央執行委員長 北岡勝征
日本教職員組合       
中央執行委員長 榊原長一
日本都市交通労働組合    
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合     
中央執行委員長 足立則安
全国自治団体労働組合    
中央執行委員長 武田幸男


要 求 書


 貴職の地方自治確立、地方公務員の処遇改善にむけたご努力に敬意を表します。
 地方公務員の給与について、年収減の改定が続き、2002年はマイナスの給料表改定が行われました。また、人事院や人事委員会のマイナス勧告をも無視して勧告を上回る賃金切り下げを行う自治体当局が後を絶たないなど、異常な事態が生じています。地方財政危機を、行政サービスの質や水準の引き下げ、地方公務員の賃金にしわ寄せすることは許されません。
 一方で、地方財政の確立と地方分権のいっそうの推進は直面する重要課題です。
 貴職におかれましては、地方公務員の生活を維持・改善することをはじめ、下記事項の実現に尽力されますよう要求します。



1.地方公務員の生活の維持・改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。
2.各自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使の自主的交渉を尊重すること。
3.地方財政危機を公務員賃金や行政サービスにしわ寄せしないこと。また、地方財政確立のために税財源の地方への移転を図るとともに、交付税総額を確保すること。
4.地方公務員制度の改革にあたっては、労働基本権を保障した民主的地方公務員制度を確立すること。また、制度設計にあたっては公務員連絡会地公部会と協議して進めること。
5.年間総実労働時間1,800時間のために、所定内労働時間の計画的な短縮および時間外労働の縮減と年休取得の促進を図ること。とくに、恒常的な時間外労働が生じている職場をなくすために必要な措置を講ずること。時間外労働の縮減について、36協定締結義務職場での締結促進のための施策を講ずるとともに、労働基準法33条3項の「公務のために臨時の必要がある場合」について、厳格な運用を推進すること。
6.各種休暇制度を新設・拡充すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇・有給教育休暇の新設、夏期休暇日数の拡大をはかること。また、公務員としての自己啓発、自己実現のための休業制度の新設を含め、総合的な休業制度を確立すること。また、育児休業、介護休暇の男性取得促進のための措置を講ずること。
7.高齢者再任用制度については、雇用と年金の接続の考え方から希望者全員を雇用するとともに、賃金・労働条件、職種・職務のあり方、定数管理等については労使合意を基本に円滑な運用と定着に必要な情報提供等を行うこと。
8.自治体職場での男女平等・共同参画のための諸施策を推進すること。とくに、女性の雇用安定・権利確立のための施策を進めるとともに、各自治体で労働組合との協議に基づき、「女性職員の採用・登用拡大のための基本計画」を策定し、実効が上がるよう必要な情報提供を行うこと。
9.自治体の臨時・非常勤職員について、雇用の安定と賃金・労働条件の改善に向け法整備をはかること。
10.刑事事件での起訴にともなう休職や禁固以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務にかかわる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう分限条例の改正を行うこと。
11.年金制度については、公務員制度の一環としての共済年金制度の基本的役割・機能を維持すること。また、国家公務員共済と地方公務員共済の財政単位一元化の検討にあたっては公務員連絡会地公部会との合意を尊重して進めること。
12.ILO151号条約を批准し、公務員の賃金・労働条件を団体交渉によって決定する制度を確立すること。
13.自治体での行政改革については、地方自治の本旨に基づき各自治体の自主性を尊重すること。
14.地方公務員の退職手当の見直しに当たっては、公務員連絡会地公部会と協議すること。
15.地方独立行政法人の制度化に当たっては、公務員連絡会地公部会と協議すること。
16.自治体における雇用創出・多様就業型のワークシェアリングの実現に向け、検討を行うこと。
17.自治体職場の安全衛生体制を確立するとともに、メンタルヘルス対策を充実するよう取り組むこと。

以上