2003年度公務員連絡会情報 19 2003年2月20日

公務員労働組合連絡会

人事院総裁へ2003春季要求書を提出−2/20

 公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、19日の総務大臣への要求提出に続き、20日午後2時から中島人事院総裁に2003春季要求を提出した(要求書は資料参照)。
 要求提出に当たって丸山代表委員は、以下の通り述べ、人事院の誠意ある対応を求めた。
(1)今日の日本経済の状況は、デフレから脱却する道筋が全く見えないまま、依然として高失業率が続くなど、危機的な状況にある。そうした中で、民間の仲間は雇用の確保と賃金カーブの維持などを柱とする2003春季生活闘争に懸命に取り組んでいるところである。
(2)われわれとしても、民間のこうした厳しい状況は十分認識しているところであるが、公務員給与はすでに4年連続で年収マイナスとなっている。加えて、昨年、われわれが納得しないまま「減額調整措置」が一方的に実施されたことによって、組合員の間には公務の賃金・労働条件決定システムとしての人事院勧告制度に対する不信が強まっている。公務員制度改革をめぐる動向の中で、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度のあり方が問われているときでもあり、本年こそ、人事院には「職員の利益保護」という本来の使命を果たすことを強く要請しておきたい。
 その意味でも、昨年の給与法改正法案の審議の際の総裁答弁や国会附帯決議の意を十分踏まえ、交渉・協議と合意に基づく給与勧告となるよう最大限努力してもらいたい。
(3)そのほか本年の要求では、公務におけるワークシェアリングの実現を重点課題として設定している。短時間勤務制度や臨時・非常勤制度の抜本改革も含め、是非、前向きに取り組んでもらいたい。
(4)本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ねていくこととしたい。
そして、3月18日には、総裁から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたいと考えている。
 続いて山本事務局長が、要求事項の重点ポイントを説明、@交渉・協議、合意による給与勧告A公務のワークシェアリングの実現、などを強く求めた。
 これに対して総裁は「民間の情勢は厳しい。実態をよく調べてみたい。いずれにしろ、皆さんとよく話し合いながら、検討していきたい」と、今後検討していくとの見解を示した。


【別紙】

2003年2月20日


人事院総裁
 中島 忠能 殿

公務員労働組合連絡会
代表委員 北岡勝征
代表委員 丸山建藏


要 求 書


 貴職におかれては、常日頃から私ども公務員労働者の生活と処遇改善にご尽力いただき、心から敬意を表します。
 日本経済はデフレから脱却する道筋が見えないまま、依然として高失業率状態が継続するなどきわめて危機的な状況にあります。公務員労働者の賃金も4年連続年収マイナスとなっていることに加え、昨年の減額調整措置などにより、組合員の間には公務の賃金・労働条件決定システムとしての人事院勧告制度に対する不信がかつてなく強まっています。
 公務員制度改革をめぐる動向が重要段階を迎え、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度のあり方が根底から問われる中で、昨年のような、われわれの納得を得ないままの一方的な勧告は決して認めることができません。その意味で、本年こそ、公務員労働者の生活を防衛し、交渉・協議と合意に基づく勧告を行うことが強く求められています。
 公務員連絡会は、2月4日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記のとおり2003年春季の賃金・労働条件等の改善や公務のワークシェアリングの実施についての要求を提出いたします。
 貴職におかれては、これらの趣旨を十分認識され、その実現に最大限の努力をいただきますよう要求します。 



1.2003年度賃金要求について

(1) 2003年度の賃金改善について
@2003年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の生活を維持・防衛するための賃金水準を確保すること。また、国会附帯決議、人事院総裁答弁を踏まえ、水準・配分・体系等について公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。
A 調整手当の異動保障の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
B 自宅に関わる住居手当のあり方の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
C 国に雇用される労働者の最低賃金を行政職(一)表高卒初任給並みに引き上げること。また、非常勤職員及びパート職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき抜本的に改善すること。

(2) 「地域における公務員給与のあり方」の検討について
@ 「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」の報告等のとりまとめに当たっては、公務員連絡会に対する意見聴取を十分行い、その意見を反映したものとすること。
A 貴職としての施策の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意を得ること。また、拙速な勧告・報告を行わないこと。

(3) 「公務員給与制度の基本的見直し」等について
 公務員給与制度の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意しながら作業を進めること。また、給与制度の根幹に関わる事項については、行革推進事務局の新人事制度の検討との関わりを明確にし、当面、具体的な検討は行わないこと。

2.ワークシェアリングの実現、労働時間並びに休暇、休業等について

(1) 公務のワークシェアリングについて
@ 別記に基づき、2005年度までに公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現し、新たに35万人の雇用を創出すること。
A ワークシェアリングの実現に向けた制度的な検討・研究に着手することとし、そのために公務員連絡会が参加する「研究会」を設置すること。

(2) 短時間公務員制度の発足と臨時・非常勤職員制度の抜本的な改善について
 2002年の報告の中で提言した「短時間勤務制度」の発足や臨時・非常勤職員制度の抜本的な整備に向け、直ちに検討に着手することとし、その実現に向けて公務員連絡会との協議を開始すること。

(3) 労働時間の短縮並びに休暇、休業制度の拡充について
 公務におけるワークシェアリングの実現に向け、@年間総労働時間1800時間体制Aゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度の拡充B少子・高齢社会に対応し自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを実現すること。

3.男女平等の公務職場の実現について

(1) 公務の男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、@職業生活と家庭生活の両立支援策の強化A女性公務員の採用、登用の拡大B女性の労働権確立に向けた休暇制度の拡充や環境整備などを積極的に推進すること。

(2) 本年はとくに、職業生活と家庭生活の両立に向け、取得率の数値目標等を明確にした育児休業の男性取得の促進策をとりまとめること。

4.その他の労働諸条件の改善に関わる事項について

(1) 高齢者再任用制度の定着と円滑な運用のため、必要な施策を引き続き推進し、雇用と年金の接続を確保すること。

(2) 公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。

(3) 刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職等をさせない措置を行なえるよう、人事院規則を制定すること。


−別記−

公務におけるワークシェアリングについて



一、公務のワークシェアリング実現に向けた基本的要求について

1.社会全体の厳しい雇用情勢を踏まえ、公務部門において労働時間を短縮し、仕事を分かち合うことによって雇用を創出する雇用創出型のワークシェアリングを実現すること。その際、現下の公務をめぐる厳しい情勢を踏まえ、総人件費と総定員は増やさないことを前提とした政策・制度を設計すること。

2.同時に、職業生活と家庭生活の両立支援、地域における市民的活動への積極的参加、職員個人の能力開発・自己実現による行政の質の向上などを目指し、柔軟かつ多様な働き方を選択できる仕組みを導入し、多様就業型ワークシェアリングを実現すること。

3.このため、超過勤務の縮減など総労働時間短縮、短時間公務員制度(仮称)の新設、家庭生活と職業生活の両立支援策、能力開発等を推進するための休業・休暇制度等を改善・整備し、加えて臨時・非常勤職員制度を抜本的に見直すこと。

4.雇用創出型・多様就業型ワークシェアリングの下における雇用は、「同一価値労働同一賃金」の原則により、雇用・勤務形態(正規・臨時、常勤・非常勤、定期・不定期、無期・有期等)、勤務時間の違いによる処遇の格差を一掃し、真の均等待遇を実現すること。


二、ワークシェアリング実現に向けた具体的要求について

1.年間総労働時間の短縮

 年間総労働時間1800時間体制を実現するため、以下の措置を講じること。
(1) 公務員の労働時間を1日7時間30分、1週間37時間30分に短縮すること。とりわけ厳しい勤務実態にある交替制・不規則勤務職場では、直ちに実現すること。
(2) 超過勤務を原則禁止し、真にやむを得ない場合にあっても年間150時間に制限し、その厳守に努めること。
 また、超過勤務手当を150/100に、深夜・休日勤務の場合には200/100に引き上げることとし、「サービス残業」は禁止すること。
 その他、国会対応の改善、休日勤務の場合の振替・代休の徹底等に努めること。
(3) 年次休暇の完全取得のため、職員の要求に基づく計画的・連続的取得を一層促進するとともに、業務運営方法の点検・改善、要員確保など環境整備を図ること。
 あわせて、子ども看護休暇、介護休暇の改善、非常勤職員等への特別休暇等の適用を拡大すること。
(4) 夏季休暇を年間5日に改善すること。

2.短時間公務員制度の導入

 正規の職員として短時間公務員制度を導入し、勤務時間及び勤務時間に比例した賃金以外はフルタイム職員と同様に扱うこと。
(1) 1週間の勤務時間は現行の短時間勤務再任用職員の例を参考として、勤務時間の割り振りを含めて本人の選択に任せること。
 また、短時間勤務とフルタイム勤務の選択を可能とすること。
(2) 職責が同一である職員に対しては、勤務時間の多寡にかかわらず勤務時間1時間当たりの賃金単価を同一とすること。
(3) 休日・休暇・育児休業等は、フルタイム職員と同様に適用すること。なお、休日・休暇等の性質上必要がある場合には勤務時間割合を配慮すること。
(4) 共済組合制度の組合員資格をあらため、短時間勤務職員にも組合員資格を付与すること。
(5) 兼職禁止など服務のあり方を弾力化し、短時間勤務に相応しい仕組みにあらためること。

3.臨時・非常勤職員制度の抜本的改善

 上記2の短時間公務員制度の活用を含め、正規職員化・定員化を図り、雇用・勤務形態・勤務時間等による身分、処遇、休日・休暇・休業、福利厚生上の差別的取扱いを解消すること。

4.働き方の改革
 働き方を抜本的に改革し、職業生活と家庭生活の両立、市民活動への積極的参加、自発的能力開発・自己啓発等を促進すること。
(1) 勤務時間・勤務日の選択など勤務形態の弾力化を図るため、短時間勤務制度の導入に加えて、フレックスタイムの適用範囲の拡大や休暇・休業制度の整備を図ること。
(2) 職業生活と家庭生活の両立支援のため、育児時間、育児休業、育児部分休業、介護休暇、子ども看護休暇等を改善すること。
 あわせて、育児休業の男性取得促進策を具体化すること。
(3) 自発的な能力開発や自己啓発、海外ボランティア活動が可能となるよう、リカレント休暇、海外ボランティア休業、長期自己開発・啓発休業、一定の範囲で自由に取得できる総合的休業制度などを検討・整備すること。
(4) 人事管理制度においても、職員が希望する働き方を尊重できるよう、キャリアパスを複線化するなど、弾力化を図ること。

5.直ちに実現すべき事項

 上記1〜4の課題については、計画的かつ着実な実現をめざすこととし、当面、次の事項を直ちに実現すること。
(1) 政府・自治体の責任・主導によって120万人の雇用を新たに創出することとし、そのため、所要の措置を講じること。
(2) 超過勤務の年間上限時間を150時間とすること。
また、超過勤務単価を改善するとともに、必要な予算を確保すること。
(3) 夏季に10日間程度の計画的連続休暇を取得できるよう条件整備や啓発活動に取り組み、年休の完全消化を促進すること。
(4) 臨時・非常勤職員の給与について、最低保障制度として、高卒初任給水準を確保すること。

以上