2003年度公務員連絡会情報 21 2003年3月4日

公務員労働組合連絡会

春季要求事項で幹事クラスが人事院・総務省と交渉−3/4
給与改定での交渉・協議と合意、ワークシェアリングの実現を強く主張

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は4日午後、人事院職員団体審議官および総務省人事・恩給局次長と交渉を持ち、2月19日、20日に提出した春季要求に関わって@本年の給与改定に関わる交渉・協議と合意Aワークシェアリングの実現などを強く求め、中間的な回答を引き出した。しかし、その内容は春闘の厳しい情勢を反映してまだまだ抽象的なものに止まっており、18日の総務大臣、人事院総裁回答に向けては、書記長クラス交渉をはじめ、一層の追い上げが必要となっている。公務員連絡会は、3.11中央集会や全国統一行動を強化し、要求実現に向けて取り組みを強化することとしている。
 本日行われた人事院・総務省との交渉経過は次のとおり。

<人事院職員団体審議官との交渉経過>
 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、4日13時30分から、佐久間人事院職員団体審議官と交渉を持った。
 冒頭、公務員連絡会側が、「2月20日に要求書を提出して以来、人事院内での検討が進んでいると思うが、2003春闘要求のうち次の重点課題に絞って、本日は中間的な回答をしていただき、意見交換をしたい」とし、@本年の給与改定については、人事院は労働基本権制約の代償機能として公務員の生活防衛に向けた使命を十全に果たすべきである。そのため、春の段階から十分な交渉・協議と合意のうえで勧告する姿勢を表明すること。公務員連絡会としては昨年のような減額調整措置は認められないことを踏まえ、対応すること。Aワークシェアリングについて、検討に着手することを明確に回答すべきである。制度的には短時間職員制度や非常勤職員制度と深く関連した課題であり、昨年の人勧時の報告を踏まえて、人事院の問題意識を明確に示すべきである。地方公務員は2004年度通常国会に地方公務員法改正案を出すべく準備をすすめているが、国家公務員がこれより遅れることは考えられない。研究会の設置を行うなど具体的に着手すべきである。B給与に関連して、調整手当の異動保障、自宅に関わる住居手当、地域に勤務する公務員給与のあり方など、具体的には勧告に向けてのものとなるが、われわれとの交渉・協議と合意に基づき実施することの態度表明をすべきである。C育児休業の男性取得促進策を前進させるための施策を講じるべきである、と人事院の今日段階の見解を質した。

 これに対し、佐久間職員団体審議官は、概要、次の通り回答した。
@ 20日に要求書を頂いてから、担当部局でそれぞれ検討に着手している。民間の春闘も様変わりし、公務員の給与・勤務条件のあり方も大きな転換点にあると思う。昨年、民間実勢を反映し史上初の月例給の引き下げを勧告したが、今年はさらに厳しいものとなるのではないかと認識している。
 公務員の給与改定は、今後とも民間準拠を基本とすべきであるが、いずれにせよ、公務員の皆さんはもちろんのこと、国民からも理解と納得が得られるようにするため、人事院としては、厳しい選択を迫られていると認識している。
 民間実態の正確な把握を行い、その上で交渉・協議を通じて、どのような合意を図っていくのかが課題であると認識している。減額調整措置についての皆さんの態度表明は理解している。国会の附帯決議、人事院総裁答弁を念頭に置き、どのような対応ができるのか十分検討させていただく。
A ワークシェアリングの実現について、皆さんが非常に強い関心を持っていることは理解している。昨年末にも政労使合意が成立したことも承知している。人事院としては従来ワークシェアリングという切り口で考えてこなかったが、多様な就業形態の実現は、人事院の問題意識にある多様な働き方にもつながる。今後はワークシェアリングを意識して検討をすすめるが、国全体の雇用政策を含め制度の枠組みについては多方面の検討が必要で、総務省をはじめとする他の機関との連携も必要で人事院だけで進めることはできない。
 問題意識は先に述べた通りで必要な研究・検討は進める。要請にあるような研究会の設置は一つの考え方ではあるが、まずは条件整備のための部内的研究・検討が必要だと考えている。
 非常勤職員制度の抜本的改革や短時間勤務のあり方など、人事院としても十分問題意識は持っているし、厚生労働省内の審議会で議論が進められていることも注視している。真剣に検討をすすめているが、今時点でどのようなものとなるか、不明といわざるをえない。
B さまざまな給与の課題のうち、調整手当の異動保障に関しては国会でも取り上げられた課題であり、その状況は覆しようがない。各府省、当局、職員団体の皆さんの意見を聞きながら対応を考えざるを得ない。地域給与のあり方との関連もあるが、関係者の意見を聞きながら必要な見直しについて検討を進め、本年の勧告・報告でなんらかの対応をせざるを得ないと考えている。
 自宅に関わる住居手当に関しては、本年の民間の給与水準がどのようになるかという要素も併せて考えていかねばならないが、創設当時の意義が薄れた手当等については、整理するというのが基本的な考え方である。
 地域に勤務する公務員の給与のあり方については、昨年9月に研究会を設置し、当局や組合からもヒアリングを実施し、先般、中間整理を公表したところである。研究会は自主的に検討をすすめているが、議論は多岐にわたる。人事院としては検討結果をいただいたら、具体的な施策について組合も含めて各方面と意見交換を行いながら検討していきたい。本年の勧告・報告でどの程度まで触れるのかは、今の段階では不明である。
C 育児休業の男性取得策については、具体的な施策に結びついていないことで不満をもたれているものと認識している。人事院としては来年度予算でこの件で予算措置を組んだ。具体的に何が出来るかこれからの課題としたい。

 こうした人事院側の回答に対し、公務員連絡会側は、@われわれは、一方的に勧告したことに強い不満をもっている。われわれの主張はあくまでも納得を得て勧告することであり、納得の意味は、十分な交渉・協議に基づき合意を得るということである。国会の附帯決議や人事院総裁答弁を踏まえれば、本年の勧告は納得を得て勧告するという回答しかないはずだ、A減額調整措置に関わって、われわれの立場はあくまでも労使間での決着というものだ。したがって、納得を得ないまま減額調整ということで実施することはあくまでも反対である、B今年はさらに厳しいとの裏づけはあるのか、Cワークシェアリングについて総務省も検討しているようだが、制度については人事院が所管であり、是非、来年度に研究会を立ち上げていただきたい、D異動保障問題について、今年の勧告・報告で何らかの対応をするというならば、まず各省庁の実態を十分ヒアリングし、見直しの是非を含め、早い段階から意見交換が必要ではないのか。自宅に関わる住居手当についても、早急に具体案を示すべきだ、E男性取得策については、男性が1ヶ月でも取得できるようグループ作業とするというような自治体における先行事例もある。具体的な手立てが遅れているのではないか、とさらに人事院の考え方を質した。

 これに対し人事院側は、@勧告制度において労使関係は重要なファクターである。皆さんと協議・交渉を行い、理解と納得を得ておこなうことに異存はない、現行制度でなにを整備していったらよいのか、われわれの頭の中を整理する時間も欲しい。さらに、社会的に与える影響も考慮しなければならない、A減額調整については、国会等で議論があり、地方でもさまざまな取り組みがあった。また、国営企業が必ずしも国と同じ対応をしたわけではなかった。しかし勧告は、民間との較差(水準)ばかりか、配分を含めたものでないと代償機能を貫徹したものとはならない、Bベアや定昇をめぐる動きを考えていくと、厳しい状況と見なければならない。いずれにせよ民調で把握することになるが、その下準備を進める中では厳しい認識に基づかざるを得ない、C短時間勤務については、地方公務員について導入しようという動きがあるが、国の方は多少遅れても差し支えないのではないか。むしろ政策的な観点から、政府が国・地方を通じて、何を目的として、何をしようとするのかをより明確にすべきであると考えている。研究会の設置はそれも視野に入れておきたい、Dヒアリングを含めて不足した側面もある。我々だけで一方的に進めようとは考えていないので、今後十分組合の意見を聞いていきたい、E育児休業については制度的な枠組みはある程度進んだ。男性の取得策は職場での具体化の課題であると認識している。各府省の職場で活発に議論をしていただきたい。予算措置の具体化は、啓発活動を重視したものとなっていくだろう。

 これらの回答を受け、公務員連絡会側は、「本年の給与改定のあり方についてはわれわれの要求の趣旨を十分認識し検討を進める、という回答があったものと受け止める。ワークシェアリングについては総務省と連携を取って進めてもらいたい。いずれにせよ、11日の書記長クラスの交渉では、より明確な見解を示すよう検討してもらいたい」と要請し、本日の交渉を終えた。

<総務省人事・恩給局次長との交渉経過>
 公務員連絡会幹事クラス交渉委員と総務省人事・恩給局花角次長との交渉は、同日午後2時45分から行われた。公務員連絡会側は、冒頭、以下の重点事項について、総務省の中間的な見解を質した。

(1) 本年の給与改定についてだが、昨年はいろいろな経過があり政府の対応には不満が残った。そうしたことは2度と繰り返してほしくないというのがわれわれの強い意思である。われわれは、今年の状況も厳しいとの認識を持っているが、総務省には「使用者としての政府」としてわれわれ公務員の生活を守る責務がある。そういう立場で公務員の生活防衛に努力いただきたい。国会の附帯決議を踏まえて、「交渉・協議・合意に基づいた給与改定を行う」という回答をいただきたい。
(2) 公務におけるワークシェアリングについては、昨年秋以降、意見交換をさせていただいているが、総務省としても問題意識を持って検討されていることは評価したい。この春闘では、われわれとの協議の場を設けることを含めて、明確な見解表明をお願いしたい。短時間勤務の導入、臨時・非常勤職員の問題について議論したいと考えているが、制度は人事院の所管であるとしても、政策を決めるのは総務省であり、地方公務員について2004年度の通常国会に法案を提出するとの方針も決まっている。地公が先に実施して国公はやらないということは考えられないことであり、同時決着を含めて積極的な検討をお願いしたい。
(3) 昨年のILO勧告に係わって、総務大臣などが、3月中に政府見解をILOに情報提供すると国会答弁しているが、最終とりまとめは厚生労働省が行うにしても、現行公務員制度は総務省が担当すると聞いているので、どういう内容になるのか示していただきたい。昨年批准した144号条約(三者協議)でも、昨年のILO勧告でも「社会的対話」の重要性が強調されており、事前に関係者と意見交換するのが基本である。事前に示してもらって合意の上で出すよう求めておきたい。

 これらについて、花角次長は次の通り考え方を示した。
(1) 今年の給与改定については、人事院勧告を受けた内閣が責任を持って対応するという政府の基本姿勢に変わりはない。労働基本権制約の代償措置である人事院勧告を尊重するとの基本姿勢に立って、内閣が国政全般から判断するということになる。総務省としても、人事院勧告が出されれば、適切に対処して参りたい。
(2) 公務におけるワークシェアリング、短時間勤務制度の導入については、公務員の給与、勤務時間などの勤務条件、社会保障など幅広い検討が必要と認識している。導入することとした場合の影響、人事管理上の問題、民間における導入状況、地方公務員における論議、国家公務員に多様な勤務形態を導入するニーズなどを見極める必要があると考えている。
(3) わが国公務員制度は、国民の間に長く定着し、広く受け入れられてきたものであり、ILOも一定の理解を示してきたものと認識しているが、今回の勧告は、わが国の実情を十分理解したものとはいえない。「ILO条約違反」とされたことについては、わが国の公務員法制やその運用について理解したものではないし、ILOのこれまでの見解と異なるものであり、承服しがたいものである。関係省庁と連携して政府見解を取りまとめILOに情報提供するとともに、担当者を派遣し、理解を得られるよう働きかけて参りたい。情報提供の内容については、政府は訴えられた側であり、その内容を事前に他方の当事者である組合に示し、その合意を求めるようなものではないと考えているが、基本的考え方や組合からの質問などについては意見交換をして参りたい。

 以上の見解に対し、連絡会側は以下の通りさらに見解を質した。
(1) 給与については昨年の反省に立って、国会決議を踏まえて、組合が納得できるように対応することを明確にしていただきたい。
(2) デフレ下においては、人事院が勧告して、政府が一方的に給与法案を決めればそれでいいということにはならない。組合の納得が必要であり、昨年の減額調整のような手法は認められないし、2度とあってはならないということがわれわれの強い意思であり、それを受け止めた対応を行うべきである。
(3) ワークシェアリングに対する総務省の姿勢は冒頭評価したところであるが、「ニーズを見極める必要がある」ということに関して、ニーズがあれば積極的に対応する姿勢であると受け止めたい。まず「導入する」という方針を決めて検討すべきである。地方公務員の検討も始まることになっているし、政労使3者の協議の中で公務の問題も扱えるよう、われわれも連合を通じて努力するので、ぜひ、この春の段階で、政策として進めることや協議の場を設けることを明確に回答していただきたい。
(4) ILO勧告は、関係者が率直な協議を行って対応すべきだというものであり、事前の協議なしに情報提供するという考え方は、納得できない。この問題については、別途申しれを行うので改めて検討していただきたい。

 これに対し総務省側は次の考え方を示した。
(1) 給与については、国会決議を踏まえ、「職員団体の理解を得られるように最大限努力する」(衆議院)し、「納得を得られる」(参議院)よう対応して参りたい。昨年、見解が変わり混乱したことはお詫びし、今年はそういうことがないよう努力したい。
(2) 組合が、昨年のようなことがあってはならないという思いであることは受け止める。
(3) ワークシェアリングについては、まずニーズを見極める必要があると考えており、内部でいろいろ議論し検討したいということであり、諸外国の例も勉強したいと考えている。精一杯努力して参りたい。財政危機の下で、短時間勤務がどう見られるかということも心配しており、いま、超勤縮減対策検討会議を設けて検討しているところなので、まずそうした点からしっかり進めたい。
(4) ILO勧告への対応は、厚生労働省が関係省庁との調整を含めて政府としての最終とりまとめを行っており、政府という立場では対応できないが、総務省としてどういう意見交換ができるか検討してみたい。

 最後に連絡会側は「超勤縮減については、5年前にも同じことを言っていたが成果は全然上がっていないし、労使関係の中で具体的論議をしたこともない。全体として、本日の回答を聞いてもはなはだ不十分だ。今日の論議でわれわれの気持ちは十分わかってもらったと思うので、労使関係の重要性をしっかり認識してもらって、11日の局長との交渉では一層具体的な回答を示してもらいたい」と要請し、本日の交渉を終えた。

以上