2003年度公務員連絡会情報 28 2003年4月21日

公務員労働組合連絡会

勧告基礎作業に関わる人事院交渉実施−4/21

−5月連休明けから民調実施、昇給制度や地域給与等も調査−

 人事院は、4月21日、本年の民調作業に関する方針が固まったとして、公務員連絡会賃金・労働条件専門委員会に提示した。人事院は例年5月連休明けから、夏の人勧にむけた基礎作業として民間給与実態調査を実施しており、その調査内容等を事前に公務員連絡会に明らかにしているもの。

 冒頭、小林労働条件専門委員長から民調の基本事項について回答していただきたいとしたのに対し、宮本参事官は「民調作業についてはいろいろとご要望をいただいているが、基本的骨格は例年通りである」として、次のとおり内容を明らかにした。

(1) 調査時期については、5月6日(火)〜6月13日(金)の39日間。調査対象事業所は、企業規模100人以上、事業所規模50人以上とする母集団38,000事業所から抽出した8,100事業所を対象に、実人員約40万人を調査したいと考えている。
(2) 調査職種は94職種であり、そのうち初任給を調べるのは19職種で、例年と同様である。
(3) 調査項目については、初任給、個人別給与、事業所単位の給与総額、賞与等の支給状況、給与改定状況、厳しい状況における雇用調整状況等を調べる。また、最近における民間賃金動向把握のための制度調査を実施する。
(4) 調査項目については次のとおり。
@ 給与改定の実施状況、定昇制度(昇給率・昇給額含む)、ベア改定の有無とその内容、新規採用の有無と初任給の増減などを詳しく調べる。
A 昇給制度については、基本賃金を構成する職務・職責、役割、職能・資格、成果、年齢・勤続等の要素に伴うものであるのか、または、複合的なものであるのかなどについて調べる。あわせて、査定昇給の状況に関して査定期間や査定事由について調査する。同時に、昇給の上限設定の状況(設定する期間や内容)についても調べる。
B 賃金カットの状況について、本年4月以降賃金カットを行うのか否か、行う場合の内容について調査する。
C 雇用調整の状況ついて調査する。
D 一時金については、昨年の支給状況について、支給日における支給人員、支給総額を調査するとともに、月例給の支給月ごとの支給状況を調べ、民間賞与を精確に把握する。また賞与の配分として一定率分・考課査定分の割合及び本年夏季の支給状況について調査する。これらは管理職と非管理職とに分けて調べる。
E 家族手当の支給状況について、例年同様の調査に加え制度の見直し状況を調べる。とりわけ、配偶者に係わる支給状況についてその支給要件や手当額について調査する。
F 昨年は調査しなかった住居手当について、自宅に係わる住居手当についてその支給状況を把握する。
G 昨年調査しなかった通勤手当についても、交通機関利用、交通用具利用別に調べる。交通用具利用に関しては、距離段階区分に応じて支給額を調べる。
H 勤務地域が異なる場合の給与の支給状況について、住居移転をともなう異動の有無、異動の期間、異動保障の状況を調査するとともに、勤務地による給与支給額や給与種目が異なる場合の状況について、支給額そのものや、地域手当、寒冷地手当、単身赴任手当、異動手当等の状況についても詳しく調べる。このうち寒冷地手当については、昨年は支給回数と支給方法を調べたが、今回は札幌市と当該企業における最も支給額が高い事業所の2つのポイントについて、妻・子2人、本人年齢45歳ぐらいという条件を付して調査する。
(5) 昨年試験的に実施した、企業規模100人以上で、事業所規模30〜49人の事業所調査については、役職段階が極めて少なく、全体的に給与実調としてはサンプルとして耐えられないことがわかったので、本年は実施しない。

 これらの回答に対し、連絡会側は@勤務地域に係わる調査、扶養手当・家族手当・住居手当の調査は昨年の報告以来、本年春に至るまで協議を行ってきたものであるが、昇給制度の調査は唐突の感が否めない。何のために調査するのか目的を明確にすべきである、A交通用具使用者の通勤手当の距離区分の上限は調査上、どのように扱っているのか、B寒冷地手当にかかわって、2つのポイントを取る意味はどういうことか、C昨年は民調方法の技術的見直しに伴って調査実人員が2〜3割減るのではないかとわれわれとして危惧したところだが、実際にそうなってしまった。今回の調査で200事業所増加しているが、これは昨年の状況を斟酌したものか、D今次春闘では、トヨタのようにベア部分を月例給ではなく一律に支給するということで妥結した組合もある。今回の民調でどのように把握するのか、などと人事院の見解を質した。
 これに対し参事官は、@従来から人事院としては俸給制度の一環としての定昇制度について問題意識をもって検討を行ってきた。現行制度においても、例えば上限に係わるものとして、枠外昇給や一定年齢における昇給停止措置がある。民間では、昇給制度を見直し、成果や能力等の要素別の昇給としたりする制度見直しが進んでいる。人事院としてもその制度見直し状況をこの際把握すべきであると考えている。今回の調査が勧告につながるかはどうかは定かではない、A通勤手当は10キロ毎に段階区分し、60キロまで調べる、B札幌市は、全国展開をしている企業で北海道に事業所があれば札幌市に事務所があるという、いわば象徴的な意味で選定した。その他の事業所は、寒冷度の高いところについて調べるというもの。地域に係わる給与種目は他にもあり、今回の調査では、勤務地が異なることによる給与の支給額や給与種目が異なるものに着目した調査である、C200事業所が増加したのは、さいたま市が政令市となり人事委員会を持つことから、130事業所が新規に増加したことによるのが主な要素だ、D月例給は毎月決まって支給される給与を把握し、一時金調査はそれ以外のすべての給与、具体的には賞与や臨時賞与を把握するものである。どちらで把握するかは支給方法による。したがって、ベア分をどのように支給するかによって決まってくるのではないか、との考え方を明らかにした。

 最後に連絡会側は、「定昇調査結果の扱いについては、われわれとの交渉・協議を行うべき性格のものである。本年人勧に反映させることは慎重にあるべきだ。その他の調査結果についても人勧期にきちっと明らかにし、官民比較の方法を含め今後交渉・協議することを求める」とし、民調作業に関する交渉を終えた。