2003年度公務員連絡会情報 32 2003年5月28日

公務員労働組合連絡会

調整手当の異動保障見直しで第1回交渉−5/28

―見直しの必要性や支給実態への配慮、地域給与見直しとの関係を質す―

 公務員連絡会賃金・労働条件専門委員会は、28日、調整手当の異動保障見直しに係わる人事院との第1回交渉を実施した。異動保障の見直しについては、20日に人事院から見直しの基本的考え方が示されたが、@人事院として見直す必要があると認識するに至った理由、A現行の支給実態とそれへの配慮、B地域給与研究会で調整手当そのもの見直しが検討されていることから、それとの関係、について、改めて見解を示すよう求めて行ったもの。交渉には小林専門委員長以下専門委員会メンバーが参加し、人事院は宮本参事官のほか給与3課の担当補佐が対応した。質問に対する人事院の見解は、以下の通り。

(1) 異動保障を今年の勧告で見直す理由
 調整手当の異動保障については、昨年来、国会で、短期間異動のあとに調整手当の異動保障を適用させるという運用の問題だけでなく、@一律に異動後3年間、異動日前日の支給割合を保障するという、現行の異動保障制度の廃止を含めた見直し、A人事異動に当たっての経費の補填等や異動促進のための措置を行う必要があるのであれば、異動保障でなく別途の措置を考えるべきではないか、という指摘もなされている。
 また、各大臣の答弁という形で政府部内からも、異動促進のための措置は人事管理上必要であるとしながらも、現行の異動保障制度の見直しも考えられるのではないかという意見があったし、職員の中からも異動保障制度の問題点の指摘が従来からあった。
 これまでも、異動保障制度の運用については、国民から疑念を持たれることのないよう、制度の趣旨に沿った適正な運用が確保されるよう、人事院としても努力してきたところである。しかし、経済情勢が厳しい現状においては、国家公務員に対する信頼性確保のためには、国民からの納得性の高い給与制度の構築が一層重要であると考えており、この際、異動保障制度のあり方について、必要な見直しを早急に行う必要があると考えるに至ったものである。
(2) 現行の支給実態への配慮
 各府省においては、国民に対する行政サービスの安定的な提供のために全国各所に官署を置いており、これらの官署での均質な行政サービスの提供、公務の効率的かつ適正な執行の確保や職員の負担の平準化を図るため、広域にわたって頻繁に異動させているのが現状と認識している。
 調整手当の異動保障の支給実態については、本省からの異動だけではなく、管区内異動等の場合も含めて広く適用されており、職員の異動に伴う様々な経済的影響を緩和し、もって、人事異動を円滑に行う上で重要な機能を果たすものとして定着していると認識している。
(3) 地域給与見直しとの関係
 人事院では、昨年9月以来「地域給与研究会」を開催しており、その中で地域に勤務する公務員にふさわしい給与のあり方について議論する中で、各府省の人事管理の実態を考慮して、異動の円滑化に資する手当の導入についても検討されている模様だ。これを含めた調整手当等の見直し内容については、研究会における議論が継続している現時点では、まだはっきりしていないので、どうなるかについてはいえない。

 以上の見解に対し、連絡会側は次の通りさらに考えを明確に示すよう人事院を質した。
(1) 異動保障は、人事管理上、有効に機能しているが、国会での指摘もあり、他方研究会でも検討していることから、人事院として見直すことにしたというスタンスであると受け止めるが、それにしても外からの指摘の影響が大きいとの印象を受ける。労使関係を無視して、外から指摘があったので見直すというのでは、労働組合としては納得できない。
(2) 勧告前に、研究会報告に基づく地域手当の見直し内容が明確にならないと、異動保障だけ縮小するという話になってしまう。将来は制度全体をこうしていくんだという話があって、その中で今回の異動保障の見直しを位置づけてもらわないと理解しにくい。異動保障の見直しと将来こうするんだという提案はセットで行われるべきではないか。
(3) 「人事異動を円滑に行う上で重要な機能を果たすものとして定着している」との説明であるが、今後の見直しに当たってもそういう機能は維持していくことや、現行の支給実態への十分な配慮は当然のことと受け止めてよいか。
(4) 研究会では異動リスクへの対応といった観点から論議されていると聞いているが、現在の異動保障と異なる考え方だ。今回の見直しと将来の制度見直しの整合性はどうするつもりか。
 これらに対し、宮本参事官は、@国会の議論は、いわば国民の見方を反映したものであり、人事行政を所管する人事院としても無視できないということで見直すことにしたものである。これまでも職員の側、使用者の側も含めていろいろ対応してきたことをご理解願いたい、A今年の夏の見直しの時点で、新しい手当制度についての結論は間に合わない。したがって、今回は現行の異動保障だけは見直したいということだ、Bいろんな意見はあるが、「異動保障が定着している」という認識の下での見直しであり、実態には配慮していく考えだ、C研究会報告はまだ検討中であり、今回示した異動保障の見直しについては、現行の異動保障の考え方を維持しながら見直すということである、との考え方を示した。
 以上の論議を踏まえ、小林委員長から「基本的な考え方について、まだ明確に示されたとは言い難い点がある。将来の異動に伴う手当のあり方を含め明確にした上で、異動保障の見直しをどうするかということを検討すべきというのが公務員連絡会の意見であるので、今後の見直し作業の中で明確にしてもらいたい」と、強く求めた。また、公務員連絡会側は「支給実態に配慮するとの見解もあったが、見直しが行われるとなれば、その影響は大きいので、厳しい状況に置かれることになる現場の声をしっかり聞いていただきたい」と申し入れ、個別に地域や職場の声を直接聞く場を設けるよう求めた。これに対し、参事官が「十分話を伺いながら進めていきたい」と約束したことから、来月上旬にも重大な影響を受ける構成組織を中心に地域・職場の代表の意見を聞く場を設けて人事院の見直し作業に反映させていくことを確認し、第1回交渉を終えた。

以上