2003年度公務員連絡会情報 46 2003年8月8日

公務員労働組合連絡会

人事院が内閣と国会に2003勧告・報告−8日
−公務員連絡会は声明発表し、政府に申入れ−

 人事院中島総裁は、本日午前11時40分から小泉総理と会い、2003勧告と報告を行った。また、勧告・報告は12時30分から衆参議長にも行われた。政府はこの勧告を受けて、本日午後5時30分から第1回給与関係閣僚会議を開いて取り扱いを協議する予定だが、結論は次回以降に繰り延べられる見通し。
 公務員連絡会は、6日の総裁回答を踏まえて7日午後から代表者・幹事合同会議を開き、本年の勧告に対する態度と今後の対応を協議した。その結果、8日に予定される勧告に対する公務員連絡会としての基本態度を声明として確認し、勧告後主要な給与関係閣僚に「勧告の取り扱いに当たっては公務員連絡会と十分交渉・協議、合意すること」を求める申入れを行うことを確認。8日夕刻または11日早朝には、第3次全国統一行動を実施して勧告内容の報告と今後の取り組みの決意を固める時間外職場集会を実施することとした。また、勧告の取り扱いを中心とする秋季闘争では、公務員給与バッシングが一段と強まっていることなど厳しい情勢を踏まえ、総務省人事・恩給局等との交渉を強めることを確認した。

 公務員連絡会はこの確認を踏まえ、勧告後、直ちに声明(資料1参照)を発表し、午後から委員長クラス交渉委員が総務大臣、厚生労働大臣に勧告の取り扱いに関わる申入れ(資料2参照)を行った。なお、官房長官、財務大臣等にも後日申し入れる予定。地公部会は11日、全国人事委員会連合会に申入れを行う。
 総務大臣、厚生労働大臣申入れの経過は次の通り。

<総務大臣申入れの経過>
 北岡・丸山代表委員ほか委員長クラス交渉委員は、午後3時から、片山総務大臣に対し本年の人勧の取扱いに関する申し入れを行った。
 冒頭、丸山代表委員から申入書を手交し「本年の給与勧告は、2年連続の月例給のマイナス、5年連続の一時金のマイナスで、過去最大の年収減となる。これは、公務員の生活に大きな影響があり、私たちにとって非常に不満な内容だが、民間準拠という仕組みのもとでは受けいれざるを得ないものと考えている。今後、人事院勧告の取扱いの決定に当っては公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意を得て行ってもらいたい」と要請した。
 さらに代表委員は、「最近、調整手当の異動保障の見直し問題のように、公務員の勤務条件の変更が労使関係を超えて国会の場で議論され、それが事実上決まってしまうような風潮があるが、これは労使関係のうえから問題があり、見過ごすことはできない。担当大臣として、毅然とした対応をよろしくお願いしたい。また、公務員制度改革については、第156国会には法案が提出されない結果となった。今後、政労協議が行われるなど新しい段階の議論が進められることになると思うが、21世紀にふさわしい公務員制度が実現できるよう努力をお願いしたい」と、大臣の特段の努力を要請した。
 これに対して総務大臣は、「本日、11時40分頃総理大臣に人事院総裁から勧告が提出された。午後5時30分すぎに第1回目の給与関係閣僚会議を開いて意見交換する。勧告は労働基本権制約の代償措置であり、十分尊重し、かつその他の国政全般の状況を勘案しながら結論を出していきたい。昨年、組合と十分話し合えとの国会附帯決議も採択されているので、それも尊重しながら、皆さんの意を体してやっていきたい。国会は議論を行うところであり、それを聞きながら、皆さんと相談していくことが重要だ」と、今後十分話し合っていくとの見解を示した。
 また、公務員制度改革に関して大臣は、「結局皆さんのことを参酌して法案提出を見送った。今後どうするかはまた相談していきたい。皆さんも納得できる公務員制度改革が一番いいと考えているので、十分相談していきたい」と、われわれと十分協議していくことが重要だとの考え方を示した。

<厚生労働大臣申入れの経過>
 続いて、午後3時30分から坂口厚生労働大臣に対し、申し入れを行った。
 冒頭、北岡代表委員が「勧告の取扱いは十分交渉・協議、合意して決定すること」を申し入れるとともに、公務員制度改革についての大臣のこれまでの努力に感謝の意を表しながら、今後は政労協議を十分行いそれに沿った改革を行うこと、などを申し入れた。
 これに対し、坂口厚生労働大臣は、人勧問題については「民間賃金との関係も理解しているが、賃金のマイナススパイラルや消費の冷え込みも心配だ。やむを得ざることとは思うが、困ったことだと思っている。こういう状況がずっと続くことは避けなければならず、早く解消するための対策を併せて行うべきだと考えている。私の立場でいうべきことはきちっと主張していきたい」との見解を示した。
 また、公務員制度改革については、「わたしのILOでの約束もある。早まってはいけない。組合ともよく相談しながら処理すべきだと、官房長官にも申し上げてある。前国会で法案の提出はなかったが、いずれにしても早く話し合いの場をスタートさせることが大事だと考えている。今後も組合の立場を十分踏まえて発言していきたい」と、労働行政の立場から十分政府と組合が協議できるよう努力するとの見解を示した。


資料1.公務員連絡会の声明

声 明


1.人事院は本日、政府と国会に対して月例給を4,054円、1.07%引き下げ、一時金を0.25月削減することを中心とする給与勧告や地域給与・給与制度見直し、公務員制度改革に関わる報告を行った。
2.2003人事院勧告期の取り組みに当たってわれわれは、公務員給与をめぐる厳しい情勢のもとで、公務員労働者の生活防衛に向け、十分な交渉・協議と合意に基づく給与勧告や実質的な不利益遡及となる昨年方式の減額調整措置を行わせないことを最重点課題に設定し、ぎりぎりの段階までねばり強い取り組みを進めてきた。
 本年の給与勧告は、月例給の2年連続大幅なマイナスや一時金の大幅な月数削減で過去最大の年間給与の引き下げとなり、われわれの生活に大きな影響を与える内容となったことは極めて不満である。しかも、この勧告が民間に波及し、賃金のマイナススパイラルを加速させることに強い危惧を持つものである。しかしながら、われわれの賃金・労働条件が民間準拠の枠組みのもとで決定されるシステムである限り、われわれとしてもこの水準勧告については受け止めざるを得ないものと判断する。
 減額調整措置については、実質的に不利益遡及となる昨年方式ではなく、4月分の官民比較給与をベースに官民較差分を制度調整する方式となった。これは、われわれが昨年の給与法改正法案に関わる国会附帯決議に基づき、終始基本姿勢を堅持し強い決意で交渉・協議に臨んできた到達点であり、成果である。しかし、このことをもって、公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度固有の制度的矛盾や歴史的限界が決して克服されたわけではないことを認識しておかねばならない。
 配分について、俸給表を一率的な引き下げとしたことや諸手当の改定内容をわれわれの要求を踏まえたものとしたこと、ワークシェアリングや短時間勤務制度についての研究会の設置に言及させたことなどは、ねばり強い交渉・協議の結果といえる。
 先行して人事院との間で交渉・協議を進めてきた調整手当の異動保障の見直し内容については、該当者にとっては厳しいものであるが、ぎりぎりわれわれの考え方が受け入れられたものといえる。自宅に関わる手当の見直し内容や通勤手当制度の改善についてもわれわれの要求が基本的に反映されたものといえる。しかし、賃金・労働条件の見直しが今回のように国会での議論の中で実質的に確定されたことについては、公務員の労使関係の軽視であり、それが勤務条件法定万能主義につながるとすれば、われわれとしても毅然として対応していかなければならない。
 地域給与や給与制度の見直し、寒冷地手当の調査等については、人事院はこの秋から本格的な作業を進める考えである。われわれとしても公務員連絡会全体で対応する体制を早急に確立し、「交渉・協議の場」の設置を含め、十分な交渉・協議と合意を求めていかなければならない。いずれにしても、あらゆる既存の公務員の人事・給与諸制度が本格的に見直される時代に入っていることを認識し、体系的かつ総合的な取り組みを進めていく必要がある。
3.われわれの闘いは、人事院勧告期の取り組みから確定闘争期の段階に移行することとなる。その取り組みは、総人件費抑制政策が継続し、公務員給与バッシングがかつてなく強まっているもとでの予断を許さないものとなる。
 われわれは、政府が本年の給与改定の方針を検討するに当たって、勧告を無視した改定を行わないことなどを含め、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意することを強く求めていくこととする。また、これから本格化する地方自治体の確定闘争、独立行政法人や政府関係特殊法人等の闘いが困難なものとなることを踏まえ、公務員連絡会全体としての態勢を一層強化し、本年の秋季闘争を全力で進めていくこととする。
 同時にわれわれは、連合や連合官公部門連絡会に結集して「政労協議」を軸とした取り組みを強め、労働基本権確立を含む民主的公務員制度の実現に向けて全力で取り組みを進めていかなければならない。

2003年8月8日
公務員労働組合連絡会



資料2.政府への申入書

2003年8月8日


         殿

公務員労働組合連絡会
代表委員 北岡 勝征
代表委員 丸山 建藏


本年の人事院勧告に関わる申入書


 常日頃、公務員労働者の処遇改善にご努力頂いていることに心から感謝申し上げます。
 さて、人事院は本日、月例給の4,054円、1.07%引き下げ、一時金の0.25月削減などを中心とする給与勧告を行いました。
 これらの給与勧告は、@2年連続で大幅な月例給のマイナスとなったことA一時金が大幅に引き下げられたこと、などわれわれの生活に大きな影響を与えるものであり、極めて不満な内容です。
 しかし、人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であること、公務員給与が極めて厳しい状況下にあることなどから、政府が本年の給与改定方針を決定するに当たっては、われわれと十分交渉・協議し、合意することを強く申し入れます。



一、政府は、本年の給与勧告の取り扱いを決定するに当たって、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。




資料3.連合事務局長談話

2003年8月8日


人事院勧告に対する事務局長談話


日本労働組合総連合会
事務局長 草野 忠義


1.人事院は本日、政府と国会に対して、国家公務員の月例給を4,054円(1.07%)の引き下げ、一時金を年間0.25ヶ月削減することを中心とする勧告を行った。マイナス勧告が実施されれば、月例給は、2年連続のマイナス、一時金を含めた年間賃金は、過去最大の引き下げとなる。

2.これは、民間企業労働者の賃金水準低下を受けたものであり、デフレ解消と景気回復無くしてはこの傾向が続きデフレスパイラルをますます加速していくことになる。いずれにしても、この結果から、国家公務員の生活への影響だけでなく、これから賃金改定を行う民間企業への影響が懸念される。

3.連合は、政府に対し、デフレ経済の打破に向け、雇用と生活を最優先とした政策転換を求める運動に全力をあげるとともに、人事院勧告制度のあり方を含め、既存の公務員の人事・給与制度が本格的に見直される時代に入っているとの認識のもと、公務員の生活防衛と労働基本権の回復に引き続き取り組んでいく。

以 上




資料4.民主党の談話

2003年8月8日


2003年度人事院勧告に対する談話


民 主 党       
政策調査会長 枝野 幸男


1.人事院は本日、内閣と国会に対して、月例給を1.07%引下げ、一時金を0.25月削減することなどを中心とする勧告を行った。
 本年の人事院勧告は、昨年に続いてのベースダウン等により過去最大の年間給与の引下げであり、5年連続して年間給与がマイナスになるという、極めて厳しい内容である。

2.勧告内容は人事院が専門機関として、官民比較調査の結果に基づいて勧告したものであり、長引く不況に苦しむ民間給与の実態、経済雇用状況を反映したものだが、小泉内閣の経済無策によるツケが民間・公務部門の労働者へ、しわ寄せられている証左であり、勤労者の生活と消費に与える影響は深刻であると言わざるを得ない。

3.加えて、公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度だが、公務員制度改革の議論の中で、労働基本権のあり方も含めて、人事院勧告制度自体の見直しをすすめ、ILO勧告を実施すべきである。

4.民主党としては、現下の賃下げやリストラ等をストップさせるため、一刻も早い景気回復をめざすとともに、国民のニーズに基づく公務員制度改革の実現をめざしていきたい。

以上



資料5.社民党の見解

2003年8月8日


2003年度人事院勧告についての見解


社会民主党公務員問題対策特別委員会


1.今回の人事院勧告は、月例給の2年連続の引き下げや一時金の5年連続の月数削減で、年間給与は5年連続、かつ過去最大のマイナスとなった。公務労働者の生活のみならず、 政府の社会的給付に依存する多くの国民の消費生活や、公務員に準拠する地方における中小・未組織労働者への影響はきわめて大きい。公務員給与のマイナス勧告は、現下の不況をさらに深刻化することにつながり、政府は本勧告の取り扱いについては、慎重を期すべきである。

2.官民較差分の差額調整については、実質的に不利益不遡及の原則に抵触する疑いが強かった昨年とは異なる方式がとられることになった。このことは当然のことであるが、デフレ下での減額調整が、労働基本権制約という現行の公務員制度の基本的な問題を浮き彫りにしており、労働基本権の回復、労使協議による賃金決定システムのための真摯な議論が必要であることには変わりはない。

3.今後、具体的な検討が始められる課題として、寒冷地手当や給与制度、地域給与、短時間勤務制度などがあげられている。関係当事者との十分な交渉・協議、合意を強く求めたい。

4.勧告とあわせて出された報告において、公務員制度改革に関する幅広いオープンな議論や、中立・公正性の確保、天下り・キャリアシステムの見直しが提言されている。これらの課題が今後の公務員制度改革の実現に活かされることを期待したい。

5.民間と公務員の相互の給与引き下げのマイナスの連鎖は、国民生活の破壊につながるだけでなく、公務労働の社会的基盤を掘り崩し、国民にとって大きな損失となることが危惧される。この悪循環を断ち切るとともに、透明で民主的な公務員制度改革を実現するには、何よりも公務労働者・民間労働者の自覚と猛省に基づく運動の強化・再構築と、国民との共闘が不可欠である。社民党は、官民労働者の一層の奮起を期待し、連帯する決意である。

以上