2003年度公務員連絡会情報 5 2002年11月7日

公務員労働組合連絡会

衆議院総務委員会で民主・社民共同の修正案否決し、附帯決議をつけて給与法改正法案可決
−公務員連絡会は傍聴行動と議面集会実施−

 10月18日に国会提出された一般職の給与法改正法案は、5日の総務委員会で趣旨説明が行われ、7日午前9時30分から開かれた同委員会で質疑が行われた。質疑の後、12時10分過ぎから行われた採決では、われわれの要請に基づいて民主党・社民党が共同で減額調整措置の附則削除等を内容とする修正案(資料1、2参照)を提案したが、民主・社民・共産の賛成少数で否決された後、政府提案が賛成多数で採択(社民、共産反対)された。また、同改正法案に対しては、全会一致で附帯決議が採択された。総務委員会審議を終えた給与法改正法案は、明日(8日)の本会議でも賛成多数で可決され、参議院に送付される予定。参議院総務委員会の審議日程は、特殊法人の整理・統合法案を審議する特別委員会が開かれることもあり、7日現在でまだ固まっていないが、14日頃審議される公算も高まっている。公務員連絡会としては、仮に14日の審議となった場合は、午後2時30分からの秋闘第2次中央集会に加え、傍聴行動と昼休み議面行動等を実施する予定。また、第3次全国統一行動も予定通り実施することとしている。

<傍聴行動と衆議面集会実施>
 公務員連絡会は、この日の総務委員会審議に対し20名の傍聴行動を実施するとともに、午前11時から衆議院議員面会所での集会を行い、審議を見守った。
 集会は午前11時から開かれ、主催者として丸山代表委員は「給与法改正案は実質的に不利益を遡及するもので判例法理に反する、また国営企業、独立行政法人、特殊法人、地方公務員そして民間に与える影響があまりにも大きい。民主、社民の共同で修正案が提案され、また附帯決議も準備されたことに敬意を表する。衆議院、参議院の審議を通じて公務員制度改革と結合させて私たちの主張を訴え、最後までねばり強く取り組んでいく」と挨拶した。
 政党を代表して、民主党からは安住淳衆議院総務委員会理事がかけつけ「民主党としても総務委員会影の内閣でいろいろ議論し、減額調整措置は問題ありということで社民党と共同で修正案を提出することとした。皆さんの意を体してがんばっていきたい」と挨拶。社民党からは又市征治国対副委員長が「今回の給与法改正法案は民間経済や賃金に与える影響も大きい。社民党としても最後まで取り組みたい」と決意を表明、また、参議院で質問を予定している高嶋良充参議院議員も激励にかけつけ「衆議院に続いて参議院でもがんばりたい」と決意を述べた。
 11時30分過ぎには、傍聴に入った加藤幹事が委員会審議の途中経過を報告、政府の『不遡及』等に対するかたくなな答弁を指摘した。
 委員会終了後、委員会質問で政府を追及した民主党桑原豊、社民党重野安正両議員が、それぞれ「力及ばず修正案は否決され、政府案が可決された。附帯決議や質問で今後の一定の足がかりは作れたと思う。参議院でさらにがんばっていく」と、総務委員会審議の経過を報告、参加者全員で今後もねばり強く取り組む決意を固め、12時30分すぎに議面行動を終えた。

<民主:安住・桑原議員、社民・重野議員が減額調整で政府、人事院を追及>
 11月7日午前9時30分から開かれた総務委員会では、民主党の安住淳議員、桑原豊議員、社民党の重野安正議員らが減額調整措置の不当性や現行人勧制度の不備などについて政府、人事院を追及した。3氏の質疑の概要は下記の通り。

 民主党の安住議員は、今回の給与法案について「引き下げを行うのであれば、職員が納得するようなプロセスを経て、その合意を得ることが必要だ」と、この間の交渉の経過と人事院の姿勢を質したのに対し、中島人事院総裁は、「勧告にあたり総裁から課長にいたるまで100回ぐらいの会見を行った。給与は国民の税金で賄われている以上、職員の納得性もあるが、精確な調査を行い、各地で国民各層からの意見を聴取するなどにより、国民に納得してもらう必要がある」と回答した。
 続いて質問に立った桑原議員は、「公務員給与が引き下げられることで、公務員に準拠する民間の賃金も引き下げられ、デフレスパイラルを加速する」と景気等に与える影響の大きさを指摘した上で、今次給与法改正法案の焦点である減額調整措置について、@法施行日を12月1日に想定し、4月以降にすでに支払われている賃金について、職員一人ひとりを再計算し、12月の期末手当から減額することは、最高裁判例で確定している不利益不遡及の原則に抵触する、A人事院勧告においては、月例給は月例給、一時金は一時金で比較し、それぞれについて官民均衡させてきた。しかし、12月の期末手当から減額調整すれば一時金の官民均衡は崩れ、0.3月分程度、官が民より少なくなる。これは従来のルールを崩すことになるのではないか、と総務大臣、人事院総裁の考え方を質した。
 これに対し、片山総務大臣は、「官民給与については、年間給与で均衡させる必要がある。さらに、今後支払われる給与で調整するのであって、支払ったものを返せというものではない。したがって、不利益不遡及の原則に触れるものではない」と回答、また、人事院総裁は、「年間を通じた期末・勤勉手当は、今回の給与法改正において4.65月とし、官民の月数はあわされることとなる。減額措置は、合わさった後の期末手当から調整するものであり、月数の官民均衡が崩れたとは認識していない」と応じた。
 これに対し桑原議員が、「そもそもこうした事態が生じるのは、現行の賃金決定制度の問題である。民間は交渉を通じて労使合意に基づき協約の改定が行われる。同様に協約権を持つ国営企業では、今般1.93%マイナスという中労委裁定が行われたが、月例給は引き下げていないし、遡って改定するということではなく、労使で話し合って別途調整せよとしている。人事院や政府はいろいろ方法があるのになぜ実質的な不利益遡及となるような方法を決定したのか。さらに問題なのは、こうした減額調整措置に組合側が納得しないまま勧告され、閣議決定されたことだ。右肩上がりの経済が終焉し、現行人勧制度は限界に来ているのであり、労働組合が決定過程に関与する仕組みが検討されてしかるべきではないか」と重ねて減額調整措置の問題点を追及し、労働組合が賃金決定制度から排除されている現行制度の問題点を指摘した。
 片山総務大臣は「国営企業には団体交渉権があり、非現業公務員とは法適用が異なるので、異なった方法を取ったのではないか。しかし、交渉権がないからといって職員団体とのコミュニケーションを怠ってはならないと認識しているが、公務員の雇用主は国民であり、特有の労使関係があっていい。基本権制約の仕組みを変えるのであれば、国民の納得が必要であり、国会の議決も必要で大議論が必要だ。個人の意見としては、労働基本権制約は、公務員制度の問題であり、公務員の法的性格をどう考えるかということだが、その性格からすれば労働基本権を制約し、代償措置を設置することは意味があると考えている」と応じた。
 さらに桑原議員は、「今回の減額調整措置は、民間の給与決定から8ヶ月も遅れざるを得ないという現行の公務員給与決定制度のあり方から発生する固有の問題だ。これが民間賃金や年金支給などに波及するとすれば重大な問題だ」と今回の減額調整措置が民間に波及することはあってはならないと追及したのに対し、総務大臣は「公務員の決定制度は人事院勧告に基づく法定主義であり、民間の決定制度とは異なる。今回の問題は公務員特有の問題だと認識している」と公務員特有の問題であり、民間への波及はあってはならないとの考え方を示した。
 続いて質問に立った重野議員は、減額調整措置に関わって、内閣法制局がこれを妥当と判断した経過について質問したのに対し、梶田内閣法制局第3部長は、「今次人事院勧告は、4月からの年間給与の均衡を図る観点から、施行日以降の12月の期末手当で減額調整を行うとしたところ。従来においては、4月に遡及して改定を行うことにより、年間給与の官民均衡が図られてきたが、今次給与法改正案では、俸給引き下げを行う必要があることから、すでに適法に支給された給与について遡って引き下げないという考え方の下に、施行日以降の期末手当で減額措置を行うことにより、4月以降の官民の年間給与を均衡させようとするもの。施行日以降の将来において支払われる給与で調整することは、適法に支給された給与を減額するわけではないので、不利益の変更には当たらず、遡及適用ではない。法的にも問題はないと考えている」と回答した。
 重野議員は、さらに「今回の減額調整措置は、民間労働者の賃金決定に与える影響が大きい。4月に協約で支払い賃金を確定したとしても、今回の国家公務員の措置に準じ、その後4月に遡及して賃金を引き下げる事態を許容することになるのではないか。民間労働者の賃金カットの口実とならないと確約できるのか」と迫ったのに対し、総務大臣は「民間労働者と公務員では賃金決定の仕組みが異なるが、今回の措置が民間労働者に影響があるべきではないと考えている」との見解を示した。
 質疑では、このほかに自由党、共産党の議員が質問に立ち、12時10分過ぎに終了した。

<民主・社民共同の修正案否決、原案賛成多数で可決。附帯決議は全会一致>
 質疑終了後採決に入り、まず、民主党・社民党等の共同修正案が提案された。この共同修正案は、資料1、2にあるとおり、減額調整措置を実施するための附則を削除し、改めて官民の年間給与を均衡させるための措置を、労使で協議して決定するよう求めたもの。
 その提案趣旨説明にたった民主党の後藤斎議員は、次の通り、減額調整値が不利益不遡及の原則に抵触し、民間にも波及しかねず、認められない、と述べた。


修正案の提案趣旨説明


 只今議題となりました修正案につきまして、民主党および社会民主党・市民連合を 代表してその趣旨及び概要をご説明申し上げます。
 平成14年12月に支給する期末手当および期末特別手当に関する特例措置は、「不利益不遡及」の原則に反し、既発生の労働債権を過去に遡って実質的に不利益に変更しようとするものであります。このような措置が国会で認められれば、公務員労働者にとどまらず、民間労働者へ影響が及ぶことは必至であり、このままでは到底認められるものではございません。また、「不利益遡及」に当たる措置は、人事院勧告制度下でのルール変更に相当するものであり、職員が全く関与できないもとで一方的に法定化されることについては疑念を抱かざるを得ません。
他方、官民均衡を図り年間給与について何らかの調整措置を講ずるとの立場から、民主党および社会民主党・市民連合は、新たに職員の意見を踏まえた年間給与減額調整措置を設けるとともに、政府案の年間減額調整措置については、これを削除することが必要であると考え、本修正案を提出することと致しました。

 この後修正案の採決に入り、民主党、社民党、共産党が修正案に賛成したが、少数で否決された。
 原案採決では、社民、共産が反対し賛成多数で可決され、この給与法改正法案に対して全会一致で次の通り附帯決議が採択された。
 附帯決議の一項目は、政府に二度と給与マイナス等を行わないよう努力することを求めたもの。二項目は、今回の減額調整措置が公務員の給与決定制度から発生する固有の問題であり、民間への波及はあり得ないことに言及したもの。三項目は、官民給与を均衡させる方法を決定するに当たってはわれわれと十分協議と納得を得るよう求めたもの。四項目は、今回のような問題が発生するのは人勧制度自体に問題があることを含め、今後の公務員制度改革に当たっては労働基本権のあり方を含めわれわれと十分協議するよう努力することを政府に求めたものである。

<一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議>

衆議院総務委員会
2002年11月7日


 政府及び人事院は、次の事項について、十分配慮すべきである。

1 今回の月例給与のマイナスが公務員の志気に与える影響、民間賃金・経済に与える影響等を重く受けとめ、政府は一刻も早くデフレ克服のための総合施策を実施すること。
2 今回の減額調整措置は、公務員給与の改定時期が民間と乖離している人事院勧告制度特有のあり方に起因していることに、政府は十分留意すること。

3 政府及び人事院は、年間における官民給与を均衡させる方法等を決定するに当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限の努力を払うこと。

4 政府は、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみ、公務員制度改革に当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限の努力を払うこと。

 衆議院総務委員会で可決された給与法改正法案は、明日(8日)の本会議で賛成多数で可決され、参議院に送付される予定。参議院の審議日程は、来週中は特殊法人の整理・統合法案等を審議する特別委員会が開かれることもあり、今日現在固まっていないが、場合によれば14日にも審議される可能性がある。民主・社民党は、衆議院に続いて参議院でも公務員連絡会の要請に基づいて、修正案を提出し、その成立を目指して取り組みを進めることとしている。また、否決された場合は、附帯決議の中で今回の法案の問題点の是正を強く求める意向である。
 公務員連絡会としても、仮に14日に審議が行われた場合は、13時からの地公部会の集会や14時30分の秋闘第2次中央集会などの行動に加え、総務委員会の傍聴行動と参議院議面での行動を追加して取り組みを強化し、最後までねばり強く取り組みを進めることとしている。


<資料1> 民主党・社民党の共同修正案要綱

一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案要綱


第1 平成14年12月に支給する期末手当及び期末特別手当に関する特例措置に係る規定の削除
 平成14年12月に支給する期末手当及び期末特別手当に関する特例措置に係る規定を削除するものとすること。(附則第5項及び第6項関係)

第2 平成14年度の分として支給する給与に係る特例措置
 1 政府は、平成15年3月31日までに、平成14年度の分として支給する給与の額と同年度の分として支払われる民間における賃金の額との権衡を図るため、同年度の分として支給する給与について必要な措置を講ずるものとすること。(附則新第6項関係)
 2 政府は、1の措置を講ずるに当たっては、職員の意見を聴かなければならないものとすること。(附則新第7項関係)

第3 平成14年度の期末手当及び期末特別手当の改定に係る改正規定の修正
 平成14年度の期末手当及び期末特別手当について、3月期の支給割合を現行より100分の5引き下げ、12月期の支給割合を現行どおりとするものとすること。(第1条中一般職の職員の給与に関する法律第19条の4及び第19条の8の改正規定関係)

第4 その他
 第1から第3までの修正に伴う所要の規定の整備を行うものとすること。


<資料2> 民主党・社民党共同の給与法改正法案に対する修正案

一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案


 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
 第1条中一般職の職員の給与に関する法律第19条の4の改正規定を次のように改める。
 第19条の4第2項中「100分の55」を「100分の50」に改め、同条第3項中「100分の55」を「100分の50」に、「100分の30」を「100分の25」に改める。
 第1条中一般職の職員の給与に関する法律第19条の8の改正規定を次のように改める。
 第19条の8第2項中「100分の55」を「100分の50」に改め、同条第3項中「100分の55」を「100分の50」に、「100分の30」を「100分の25」に改める。
 第2条のうち一般職の職員の給与に関する法律第19条の4第2項の改正規定中「100分の20」を「100分の50」に、「100分の185」を「100分の155」に、「100分の165」を「100分の135」に改める。
 第2条中一般職の職員の給与に関する法律第19条の4第3項の改正規定を次のように改める。
 第19条の4第3項中「「100分の50」とあるのは「100分の25」と、」を削り、「100分の145」を「100分の155」に、「100分の70」を「100分の85」に、「100分の155」を「100分の170」に、「100分の125」を「100分の135」に、「100分の60」を「100 分の75」に、「100分の135」を「100分の150」に改める。
 第2条のうち一般職の職員の給与に関する法律第19条の8第2項の改正規定中「100分の25」を「100分の50」に改め、「100分の170」に」の下に「、「100分の155」を「100分の180」に」を加える。
 第2条のうち一般職の職員の給与に関する法律第19条の8第3項の改正規定中「100分の25」を「100分の50」に、「100分の20」」を「100分の25」」に改め、「100分の90」に」の下に「、「100分の155」を「100分の180」に、「100分の90」を「100分の95」に」を加える。
 第3条の前の見出しを削り、同条に見出しとして「(一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の一部改正)」を付し、同条のうち一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律第7条第2項の改正規定中「100分の20」」を「100分の155」」に、「100分の25」及び「100分の185」を「100分の170」に改める。
 第4条を削る。
 第5条の前の見出しを削り、同条に見出しとして「(一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律の一部改正)」を付し、同条のうち一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第8条第2項の改正規定中「100分の20」」を「100分の155」」に、「100分の25」及び「100分の185」を「100分の170」に改め、第5条を第4条とする。
 第6条を削る。
 附則第1項ただし書中「第4条、第6条並びに附則第7項」を「第3条中一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律第7条第2項の改正規定、第4条中一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第8条第2項の改正規定並びに附則第5項」に改める。
 附則第4項中「第5条」を「第4条」に改める。
 附則中第5項の前の見出し、同項及び第6項を削り、第7項を第5項とし、同項の次に次の見出し及び2項を加える。
(平成14年度の分として支給する給与に係る特例措置)
6 政府は、平成15年3月31日までに、平成14年度の分として支給する給与の額と 同年度の分として支払われる民間における賃金の額との権衡を図るため、同年度の分として支給する給与について必要な措置を講ずるものとする。
7 政府は、前項の措置を講ずるに当たっては、職員の意見を聴かなければならない。

以上