2003年度公務員連絡会情報 6 2002年11月8日

公務員労働組合連絡会

人事院・総務省にワークシェアリングの実現など2003年度基本要求提出

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、8日午後、人事院職員団体審議官、総務省人事・恩給局次長と交渉を行い、それぞれ2003年度の賃金・労働条件改善に関わる「基本要求」を提出し、12月中旬には回答を示すよう求めた。
 この基本要求は、毎年、秋季賃金確定闘争の行方が定まった段階で、次年度の賃金・労働条件の重点改善課題について、政府・人事院と議論を開始する目的で行っているもの。この秋の基本要求をめぐるやりとりの内容を踏まえて2003春闘要求が提出されることとなる。
 例年は政府の閣議決定等を踏まえて10月中旬に行ってきたが、本年は、給与法改正法案の修正に取り組んでいることもあり、本日の要求提出となったもの。財務省主計局への要求提出は、13日に予定されている。

<人事院との交渉の経過>
 公務員連絡会の幹事クラス交渉委員は、8日午後1時30分から、人事院に「2003年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料1)を提出し、交渉を行った。人事院からは、佐久間職員団体審議官らが対応した。
 冒頭、公務員連絡会側から基本要求事項の重点ポイントを説明、12月にはあらためて回答を示すよう要請するとともに、今日段階の人事院の考え方を質した。
 これに対し職員団体審議官は、「マイナス改定により、職員の中に不満がたまっているという状況についてはよくわかる。要求を頂いた段階であり、今後、院内で十分検討を進め回答させていただくこととし、今日は、私見を含めお話させていただくこととする」とし、概要、次のように応じた。

@「地域における公務員給与のあり方」については、単に地方に勤務する職員の給与の水準だけではなく、公務員の給与がどうあるべきかという根本に関わる問題だと認識している。今後とも、情報開示を含め、皆さんと前広に議論をしていきたいと考えている。
A公務員給与制度の基本的見直しについては、今日段階で、明確にこうだというものはない。基本的には職務と職責に応じて処遇を考えていくことが原則ではないかと考えられるが、具体的にどうするかはこれからの課題だ。
B自宅に関わる住居手当については、来年の民間の給与水準がどのようになるかという要素も併せて考えていかねばならないが、右肩上がりの経済成長が今後想定されない中で、整理すべき手当等については、整理するというのが基本的な考え方である。その中で、自宅に関わる住居手当については大きな関心をもって検討せざるを得ないと考えている。
Cワークシェアリングに関しては、連合等の運動もあり、重要な課題になっていることは承知しているし、雇用問題は国全体として取り組むべき課題であると認識している。
 昨年の人事院勧告の折、報告の中で短時間公務員制度や非常勤制度の問題について触れたのは、ワークシェアリングの観点というよりも民間企業における勤務形態が多様化してきているという観点から触れたものだが、今日段階では、両者がオーバーラップしてきているといえるだろう。政府部内では、失業者を救済するためのセイフティーネットの構築という議論もあり、その中で公務が何を果たすのかという観点からワークシェアということも出てくるかもしれない。こうした議論を慎重に見極めながら、今後検討を進めたい。
D短時間職員や非常勤職員の課題についてだが、現行の勤務実態から考えると、フルタイムの職員だけで公務が動いているわけではなく、実質上、非常勤職員等にオンブした形で推進されているものと認識している。本年の勧告時の報告の中で、短時間職員や非常勤職員の課題について触れているが、現在、具体的な検討を進めている段階ではない。
E育児休業の男性取得策については、人事院としても様々な制度的な方策を打ったものの、実態がついてこないと認識している。先ごろ、厚生労働省の研究会で育児休業の男性取得について10%という数値目標を示したが、所得の裏づけがない中で実効性があがるかという問題もある。人事院としては、どのような対応ができるのか、問題意識を持って研究していきたいと考えている。
F再任用制度については、制度が実質的に動き出してからまだ1年ほどしか経過しておらず、また、定年と年金受給資格との発生の間の時間的な間隔もさほど離れていないので、比較的スムーズに動いていると理解している。今後とも雇用と年金の連携をはかるため、人事院としても関心を持って検討を進めていきたい。

 これらの回答に対し、公務員連絡会は、@短時間職員や非常勤職員についての課題についてだが、公務員定数の削減・定員管理の中で、相当数増加してきているのではないか。少なくとも、実数調査だけでもすべきではないのか、A現在の公務員制度はフルタイムで働くことを前提として設計されており、短時間職員の創設は公務員の概念を根本から変える議論になる。短時間職員制度について報告で触れた観点は異なるのだろうが、制度的に検討を行う時期にきており、人事院も少なくとも研究会を設置するなど、検討に着手すべきである、と重ねて人事院側の見解を質した。
 これに対して人事院側は、「短時間職員については、高齢者再任用制度の短時間再任用職員を制度化した。この応用問題という側面もあり、白地からの検討というものでもないだろうが、現段階では具体的には検討に着手していない」と応じた。

 最後に、連絡会側が「短時間職員制度については真剣に検討してもらいたい。他の課題について院内で十分検討し、12月に回答していただきたい」と要請し、本日の交渉を終えた。

<総務省との交渉の経過>
 公務員連絡会の幹事クラス交渉委員は、14時30分から、総務省に要求書(資料2)を提出し、交渉を行った。総務省からは、人事・恩給局の花角次長らが対応した。
 冒頭、連絡会側が「現在国会審議中の給与法改正案の内容は遺憾である」と強い不満を表明した上で、「2003年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料2)の重点事項を説明するともに、「現場では賃下げに対する不満が高まっており、この際、民間準拠のあり方や公務員賃金のあり方について政府として検討すべきではないか」などと補足し、12月中旬までに総務省としての回答を示すよう求めた。これに対し次長は「多岐にわたる要求項目をいただいたのでこれから誠意を持って対応して参りたい」と前置きし、次の通り現時点での考え方を示した。

(1) 本年度の国家公務員給与改定については、9月27日に人勧通り実施するとの閣議決定を行い、10月18日に給与法改正法案を閣議決定し、国会に提出したところである。来年度以降の国家公務員給与の取扱いについては、人事院勧告尊重を基本として国政全般を考慮しながら、誠意をもって対応して参りたい。
(2) 退職手当の取扱いについては、官民較差に基づいて次期通常国会に改正法案を提出するという閣議決定を行い、現在、法改正作業を行っているところである。退職手当が、皆さんにとって重要な関心事項であることは理解しており、職員団体の意見を十分承って参りたい。
(3) ワークシェアリングの問題については、賃金、勤務時間、社会保障など幅広い検討が必要であり、民間における導入動向を見極めたいと考えている。
(4) 早期退職の是正措置については、7月23日の総理の指示を受けて鋭意検討中であり、適切に対応して参りたい。
(5) 公務員制度改革については、昨年末に閣議決定された「公務員制度改革大綱」に基づいて内閣官房を中心として作業が進められている。人事行政を所管している総務省としても、内閣官房が進めている作業には連絡を取り合っているが、今後の検討に当たっては職員団体の意見を踏まえて対応して参りたい。
 その他、要求内容を十分検討しながら、しかるべき時期に回答したい。

 こうした考え方に対し連絡会側は、@退職手当については、連合官公部門として交渉・協議を行っているので、一方的な改正法案決定を行わず、先に提出した要求を踏まえ合意に基づいて作業を進めていただきたい、Aワークシェアリングは、社会的枠組みについて合意を得ていくことが重要であり、「民間における導入動向を見極める」ということではなく、政府としてどう対応していくかという観点で、連合・経団連・政府の三者協議の中に公務の問題も位置づけるなど検討作業をはじめてもらいたいということである、B公務員制度改革は推進事務局が作業を進めているが、中央人事行政機関たる内閣総理大臣の補助部局である人事・恩給局としてのこれまでの対応には疑義がある。われわれの意見を踏まえて、中央人事行政機関として正式に意見を提出するなど毅然とした対応をお願いしたい、C早期退職慣行の是正措置の検討状況はどうか、D高齢再任用制度について、定員事情の厳しいところでは再任用されず問題になっている。雇用と年金の連携を基本に対応していただきたい、と重ねて見解を質した。
 これに対し人事・恩給局側は、@退職手当を取り巻く情勢が厳しいことには変わりがない、Aワークシェアリングについてはこれから詳しい話を聞かせていただきたいが、政府が規範的態度を示せということについては国民に受け入れられるかどうか心配している、B公務員制度改革については、内閣官房の推進事務局で国公法改正案の中身を検討しているところであるし、人事・恩給局としても改革に値するものになるよう協議している。過日推進事務局から示された「たたき台」には人事・恩給局は関与しておらず、総務大臣が国会で答弁したようにまさに「たたくためのたたき台」と理解している、C早期退職の是正については、まだ固まっていないが、できるだけ早く是正計画がはじめられるよう作業を進めているところであり、できるところから地道に進めて参りたい、などの考えを示した。
 最後に連絡会側は、「12月中旬には、明確な回答を示してもらいたい」と要望し、提出交渉を終えた。



<資料1>

2002年11月8日

人事院総裁 中島忠能 殿

公務員労働組合連絡会   
代表委員 北岡勝征
代表委員 丸山建藏


2003年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済は、国民にだけ痛みを強要する小泉構造改革路線の失敗が明らかとなり、金融不安の再燃とあいまってデフレがさらに深刻化し、勤労者の間には雇用不安と生活不安が一層高まっています。
 現在、不利益不遡及の原則に抵触する給与法改正法案が国会で審議されようとしていますが、われわれは2002年の人事院勧告に基づくこの給与法改正法案こそ、公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度の歴史的・制度的な欠陥を如実に露呈したものと受け止めています。加えて、行政改革推進事務局の進める公務員制度改革では、現行の不十分な代償機能さえ著しく低下させ、文字通り公務員労働者を無権利に等しい状態とするような人事制度の見直し案の検討が一方的に進められています。そうした意味では、これまでの労働基本権制約の立法政策を根本から見直した賃金・労働条件決定制度の抜本改革こそ、焦眉の課題だといえます。
 こうした中で、ここ数年、「公務員の利益保護」という貴職の基本的な使命が十分果たされないまま推移してきていますが、われわれは、人事院勧告制度が現行の賃金・労働条件決定制度である限り、それを完全に機能させ、社会経済情勢の変化に対応した形で公務員の処遇を確保・改善するのが貴職の最も重要な役割であると考えます。
 そうした観点から、2003年度の賃金・労働条件改善に関わる基本的な要求事項を下記の通り申し入れますので、誠意を持って協議に応じ、諸課題の解決に全力であたられるよう要請します。



一、給与に関わる事項
1.「地域における公務員給与のあり方」の検討について
(1)「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」については、公務員連絡会に対する意見聴取を十分行うなど、公正な運営に努め、報告等のとりまとめに当たっては公務員連絡会と十分協議すること。
(2)地域における公務員給与のあり方に関する貴職としての施策の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意を得ること。また、事柄の重要性に鑑み、慎重な検討を行うこととし、拙速な勧告・報告を行わないこと。

2.「公務員給与制度の基本的見直し」等について
(1)公務員給与制度の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意しながら作業を進めること。
 また、俸給表構造や昇給制度など、給与制度の根幹に関わる事項については、行革推進事務局の新人事制度の検討との関わりを明確にし、当面、具体的な検討は行わないこと。
(2)これまで公務員連絡会が求めてきた@昇格機会の少ない教育、医療職俸給表の水準確保A諸手当のあり方に関する総合的な検討の着手と諸手当の支給要件や水準の改善、など当面の課題の早急な改善を図ること。また、自宅に関わる住居手当のあり方の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

3.給与水準及び体系等について
(1)給与水準の確保
@ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容にふさわしい社会的に公正な給与水準を確保すること。
A当面、2003年度の給与勧告においては、公務員の生活を維持・防衛する給与水準を確保すること。
Bこれらを実現するため、勧告作業並びに官民比較方法を抜本的に改めること。
C男女共同参画促進のための処遇上の改善措置について総合的に検討すること。
(2)公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求に基づき、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。

二、ワークシェアリングの実現、労働時間並びに休暇、休業に関わる事項
1.公務のワークシェアリングについて
(1)別記に基づき、2005年度までに公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現し、新たに35万人の雇用を創出すること。
(2)ワークシェアリングの実現に向けた制度的な検討・研究に着手することとし、そのために労働組合が参加する「研究会」を早期に設置すること。
(3)2002年の公務員制度改革に関わる報告の中で提言した短時間勤務制度の発足や非常勤職員制度の抜本的な整備に向け、直ちに検討に着手することとし、その実現に向けて公務員連絡会との協議を開始すること。

2.労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 公務におけるワークシェアリングの実現に向け、@年間総労働時間1800時間体制Aゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度の拡充B少子・高齢社会に対応し自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを別記通り実現すること。

3.勤務時間制度について
 勤務時間制度に関わっては、当面、次の事項を改善すること。
(1)勤務時間の弾力化に当たっては、当局の恣意的な判断で効率面や管理面だけを優先して進めるのではなく、個々人の生活や働き方を優先した労働時間の編成とすること。
(2)休暇の取得手続きについては、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
(3)官庁執務時間と勤務時間の関係については、「閣令6号」に基づく一律・画一的な官庁執務時間体制を改め、官庁執務時間と勤務時間を切り離して、実態に則した官庁執務時間に改めること。
(4)勤務時間の「割振り」の変更に当たっては、重要な勤務条件事項として必ず事前に労働組合と交渉・協議すること。

三、福利厚生施策等に関わる事項
 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。

四、男女平等の公務職場実現に関わる事項
1.公務の男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、職業生活と家庭生活の両立支援、女性公務員の採用、登用の拡大、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
2.「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」に基づいて各府省ごとに策定された「女性職員の採用、登用拡大計画」が着実に実現するよう各府省を指導すること。
3.女性の労働権確立にむけ、次の事項を実現すること。
(1)職場環境の整備を進めること。また、女性の職務範囲を拡大すること。
(2)産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
4.職業生活と家庭生活の両立に向け、取得率の数値目標等を明確にした育児休業の男性取得の促進策を早急にとりまとめること。

五、公務員制度改革に関わる事項について
 内閣官房行政改革推進事務局への意見として表明した「公務員制度改革が向かうべき方向について」の報告については、公務員連絡会と十分協議を行うとともに、その実現に向けて努力すること。

六、その他
1.高齢者再任用制度の定着と円滑な運用のため、必要な施策を引き続き推進し、雇用と年金の接続を確保すること。
2.公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。そのための職場環境の整備を進めること。
 また、非常勤職員及びパート職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき改善すること。



別記

公務におけるワークシェアリングの要求について


一、公務のワークシェアリング実現に向けた基本的要求について

1.社会全体の厳しい雇用情勢を踏まえ、公務部門において労働時間を短縮し、仕事を分かち合うことによって雇用を創出する雇用創出型のワークシェアリングを実現すること。その際、現下の公務をめぐる厳しい情勢を踏まえ、総人件費と総定員は増やさないことを前提とした政策・制度を設計すること。
2.同時に、職業生活と家庭生活の両立支援、地域における市民的活動への積極的参加、職員個人の能力開発・自己実現による行政の質の向上などを目指し、柔軟かつ多様な働き方を選択できる仕組みを導入し、多様就業型ワークシェアリングを実現すること。
3.このため、超過勤務の縮減など総労働時間短縮、短時間公務員制度(仮称)の新設、家庭生活と職業生活の両立支援策、能力開発等を推進するための休業・休暇制度等を改善・整備し、加えて臨時・非常勤職員制度を抜本的に見直すこと。
4.雇用創出型・多様就業型ワークシェアリングの下における雇用は、「同一価値労働同一賃金」の原則により、雇用・勤務形態(正規・臨時、常勤・非常勤、定期・不定期、無期・有期等)、勤務時間の違いによる処遇の格差を一掃し、真の均等待遇を実現すること。

二、ワークシェアリング実現に向けた具体的要求について

1.年間総労働時間の短縮
 年間総労働時間1800時間体制を実現するため、以下の措置を講じること。
(1) 公務員の労働時間を1日7時間30分、1週間37時間30分に短縮すること。とりわけ厳しい勤務実態にある交替制・不規則勤務職場では、直ちに実現すること。
(2) 超過勤務を原則禁止し、真にやむを得ない場合にあっても年間150時間に制限し、その厳守に努めること。
 また、超過勤務手当を150/100に、深夜・休日勤務の場合には200/100に引き上げることとし、「サービス残業」は禁止すること。
 その他、国会対応の改善、休日勤務の場合の振替・代休の徹底等に努めること。
(3) 年次休暇の完全取得のため、職員の要求に基づく計画的・連続的取得を一層促進するとともに、業務運営方法の点検・改善、要員確保など環境整備を図ること。
 あわせて、子ども看護休暇、介護休暇の改善、非常勤職員等への特別休暇等の適用を拡大すること。
(4) 夏季休暇を年間5日に改善すること。

2.短時間公務員制度の導入
 正規の職員として短時間公務員制度を導入し、勤務時間及び勤務時間に比例した賃金以外はフルタイム職員と同様に扱うこと。
(1) 1週間の勤務時間は現行の短時間勤務再任用職員の例を参考として、勤務時間の割り振りを含めて本人の選択に任せること。
 また、短時間勤務とフルタイム勤務の選択を可能とすること。
(2) 職責が同一である職員に対しては、勤務時間の多寡にかかわらず勤務時間1時間当たりの賃金単価を同一とすること。
(3) 休日・休暇・育児休業等は、フルタイム職員と同様に適用すること。なお、休日・休暇等の性質上必要がある場合には勤務時間割合を配慮すること。
(4) 共済組合制度の組合員資格をあらため、短時間勤務職員にも組合員資格を付与すること。
(5) 兼職禁止など服務のあり方を弾力化し、短時間勤務に相応しい仕組みに改めること。

3.臨時・非常勤職員制度の抜本的改善
 上記2の短時間公務員制度の活用を含め、正規職員化・定員化を図り、雇用・勤務形態・勤務時間等による身分、処遇、休日・休暇・休業、福利厚生上の差別的取扱いを解消すること。

4.働き方の改革
 働き方を抜本的に改革し、職業生活と家庭生活の両立、市民活動への積極的参加、自発的能力開発・自己啓発等を促進すること。
(1) 勤務時間・勤務日の選択など勤務形態の弾力化を図るため、短時間勤務制度の導入に加えて、フレックスタイムの適用範囲の拡大や休暇・休業制度の整備を図ること。
(2) 職業生活と家庭生活の両立支援のため、育児時間、育児休業、育児部分休業、介護休暇、子ども看護休暇等を改善すること。
 あわせて、育児休業の男性取得促進策を具体化すること。
(3) 自発的な能力開発や自己啓発、海外ボランティア活動が可能となるよう、リカレント休暇、海外ボランティア休業、長期自己開発・啓発休業、一定の範囲で自由に取得できる総合的休業制度などを検討・整備すること。
(4) 人事管理制度においても、職員が希望する働き方を尊重できるよう、キャリアパスを複線化するなど、弾力化を図ること。

5.直ちに実現すべき事項
 上記1〜4の課題については、計画的かつ着実な実現をめざすこととし、当面、次の事項を直ちに実現すること。
(1) 政府・自治体の責任・主導によって120万人の雇用を新たに創出することとし、そのため、所要の措置を講じること。
(2) 超過勤務の年間上限時間を150時間とすること。
 また、超過勤務単価を改善するとともに、必要な予算を確保すること。
(3) 夏季に10日間程度の計画的連続休暇を取得できるよう条件整備や啓発活動に取り組み、年休の完全消化を促進すること。
(4) 臨時・非常勤職員の給与について、最低保障制度として、高卒初任給水準を確保すること。



<資料2>

2002年11月8日


総務大臣 片山虎之助 殿

公務員労働組合連絡会  
代表委員 北岡勝征
代表委員 丸山建藏


2003年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済は、国民にだけ痛みを強要する小泉構造改革路線の失敗が明らかとなり、金融不安の再燃とあいまってデフレがさらに深刻化し、勤労者の間には雇用不安と生活不安が一層高まっています。
 現在、不利益不遡及の原則に抵触する給与法改正法案が国会で審議されようとしていますが、われわれは2002年の人事院勧告に基づくこの給与法改正法案こそ、公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度の歴史的・制度的な欠陥を如実に露呈したものと受け止めています。加えて、行政改革推進事務局の進める公務員制度改革では、現行の不十分な代償機能さえ著しく低下させ、文字通り公務員労働者を無権利に等しい状態とするような人事制度の見直し案の検討が一方的に進められています。そうした意味では、これまでの労働基本権制約の立法政策を根本から見直した賃金・労働条件決定制度の抜本改革こそ、焦眉の課題だといえます。
 貴職におかれては賃金・労働条件決定制度の抜本的な改革を含め、下記の2003年度の賃金・労働条件改善に関わる基本的な要求事項の実現に向け、最大限努力するよう要請します。



一、給与に関わる事項
(1)ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容にふさわしい社会的に公正な給与水準を確保すること。当面、2003年度においては、公務員の生活を維持・防衛する給与水準を確保するよう使用者の責任において努力すること。
(2)退職手当制度の見直しに当たっては、別途提出した要求書に基づき、連合官公部門連絡会と十分交渉・協議を行い、その合意に基づくこと。退職手当改正法案の一方的な閣議決定・国会提出を行わないこと。
(3)超過勤務等に対する予算を増額し、実態に見合った支給を行うこと。
(4)2003年度予算編成に当たっては、独立行政法人を含め公務員給与改定財源を確保すること。

二、ワークシェアリングの実現、労働時間並びに休暇に関わる事項
1.公務のワークシェアリングについて
(1)別記(人事院の別記と同じにつき省略)に基づき、2005年度までに公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現し、新たに35万人の雇用を創出すること。
(2)ワークシェアリングの実現に向け、直ちに政府と連合官公部門連絡会の間で協議の場を設置すること。

2.労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 公務におけるワークシェアリングの実現に向け、@年間総労働時間1800時間体制Aゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度の拡充B少子・高齢社会に対応し自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを別記通り実現すること。

三、福利厚生施策等に関わる事項
(1)公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2)改定された「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し使用者としての責任を明確にし、積極的に対応すること。
(3)2003年度の予算編成に当たっては、職員厚生経費をはじめ、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を増額すること。

四、在職期間の長期化並びに高齢者再任用制度に関して
(1)高齢者再任用制度の定着と円滑な運用のため、再任用実態の把握に努めるとともに、必要な施策を引き続き実施し、雇用と年金の接続を確保すること。
(2)早期勧奨退職慣行見直し・在職期間の長期化を進めるに当たっては、天下りを廃止し、国民から信頼される透明で民主的な仕組みとすること。

五、男女平等の公務職場の実現に関わる事項
(1)公務の男女平等参画の促進を人事行政の重要事項と位置づけ、女性公務員の採用、登用の実態を正確に把握・公表し、採用や幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2)「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」に基づいて各府省ごとに策定された「女性職員の採用、登用拡大計画」が着実に実現するよう各府省を指導すること。
(3)職業生活と家庭生活の両立に向け、育児休業の男性取得を促進すること。

六、公務員制度改革に関わる事項
(1)われわれとの十分な交渉・協議もなく、内容上も極めて問題のある「公務員制度改革大綱」を撤回し、改めて広く国民的議論を行い、民主的で透明な公務員制度改革案をとりまとめること。
(2)その検討に当たっては、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。

七、その他の事項
(1)公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。そのための職場環境の整備を進めること。

以上