連合官公部門情報
2003年6月6日

第5回「公務員共済年金財政単位一元化研究会」の概要−6/6


 第5回公務員共済年金財政単位一元化研究会が、6月6日午前10時30分から千代田区平河町・ルポール麹町で開催された。
 研究会は、事務局から昨年11月の第4回研究会で示された「たたき台」で検討課題とされた、@年金給付に支障を来さないための財政調整について、A財政調整のシミュレーションについて、B「国共済と地共済の長期給付に係る財政単位の一元化に関する考え方(案)」(別紙。以下「考え方(案)」という)について説明が行われた。

 「たたき台」では、共済制度を全体で支え合う仕組みとして、費用負担平準化のために独自給付費用率による財政調整を行うこととしたが、両制度間の積立比率の違いによる運用収入の差や被扶養配偶者比率の差などで収支に赤字が生じ、将来的に積立金が枯渇することもあり得るとして、国共済・地共済が組織・制度として独立したままで両制度の年金給付に支障を来すことにないよう、給付財源を枯渇させない仕組みを検討する必要がある、とされた。
 それを受け事務局より提起されたものは、「国共済・地共済は組織、制度として独立したままで財政単位の一元化を行う以上、現有積立金をいたずらに減少させることは回避することが適当であり、単年度の収入と支出に着目して年金給付に支障を来さないような調整を行うこととする。」とし、具体的には、支出については当該年度の年金給付等費用(基礎年金拠出金等は含むが、費用負担平準化のための財政調整拠出金の交付は含まない。)を対象とし、収入については当該年度のすべての収入(保険料収入、公経済負担、積立金運用収入、追加費用、基礎年金交付金、費用負担平準化のための財政調整拠出金の受け入れ)を対象とする、というもので、シミュレーションを交えて説明が行われた。次いで、今までの議論を踏まえたものとして、「考え方(案)」が示された。

 その後、座長から委員に異存がなければ研究会として収斂していきたいとして質疑応答を行った。
 委員から出された質疑と事務局からの回答は以下の通り。
委員:提案された財政調整によれば、両制度の財政は将来にわたって安定的に推移すると試算されるので評価できる。また、単年度の収支による措置についても各々の関係者の合意形成に対する配慮として理解するところである。しかし、積立金を減少させることを回避することが適当という表現があるが、財政単位の一元化のもとでの積立金の性格について研究会として明確にしておく必要があるのではないか。
事務局:積立金については、共済制度では将来の保険料負担の上昇を抑えるため積立金の運用収入を見込んでいる。しかし、文面に書き込むことがいいのかどうか、公的年金制度の全体の議論との関係で整理したい。
委員:「2 基本的な考え方」の「なお書き」以降、「たたき台」では、公的年金制度の見直し内容等によっては、改めて検討とあったが、「考え方(案)」では、給付設計が見直されても基本的に有効で、見直し内容によっては改めて検討する必要が生じることもあり得ることに留意するに変わった。その理由は。また、公的年金の制度改正において、既裁定者の年金や3号被保険者制度の見直しが行われた場合などはどうなるのか、などもあり、「なお書き」の表現に工夫がいるのではないか。
事務局:基本的に今回の研究会は、保険料率と財政調整の方法について意見をまとめる場なので、昨年12月に厚生労働省が出した「年金改革の骨格に関する方向性と論点」をみるかぎり、改めて検討する必要がないと考えた。しかし、今後、こちらの「考え方(案)」の文面を変えざるを得ないような大きな改革課題が出てきたときには、検討する必要が生じるといえる。表現については考えたい。
委員:「3 保険料率の一本化」の項で、両共済で同一の保険料率となることの法的な担保措置とあるが、両共済の保険料率は定款で当事者が民主的に規定することとなっている。それとの整合性はどうなるのか。また、「4 財政調整の仕組み(3)年金支給に支障を来さないための財政調整」のなお書き以降に「制度の安定のために必要」とあるが、「5 今後の方向性」の項にある「必要に応じた見直し」と整合性がとれているのか。
事務局:両共済で相互に連絡をとりあったり、齟齬が生じないような体制を整備するという意味で書いた。それぞれの制度の定款に抵触するつもりはない。また、「4 財政調整の仕組み」のなお書きは、年金給付に支障を来さないための財政調整という範囲内のもので、「 5今後の方向性」については、年金制度全体としてのもの、と理解して頂きたい。

 また、意見として、「両共済が助け合う、今回の制度改正を関係者全員でしっかり確立していって頂きたい。あまり50年、60年先の見通しを立てても、いずれ見直す時期が来ると思うが、それはその時の世代にお任せした方がいい。地共済は、この一元化によって本来の保険料率より高くなる。組合員の理解を得るために行政当局も地共済もきちんと説明していかなければならない。そのことを御理解いただきたい」「今回の財政単位の一元化が更なる一元化に対応するかどうか問われてくる。その時に、公務員共済の将来にわたる健全性をきちんとアピールできるかどうか。今後の方向性の項で、公務員制度の一環あるいは、公務の特性についてしっかりと明記しておく必要がある」「それを含めて、今後の方向性の最後のパラグラフ、このため以降少し書き直した方がいいのでは」などが出された。

 その後、座長よりまとめとして、「貴重な質疑、意見が出された。概ね理解して同意して頂けたと思う。ただ、『2 基本的考え方』の最後のパラグラフと『5 今後の方向性』の最後のパラグラフについては、皆様から頂いた意見を参考に書き加えることとするが、座長と事務局に任せて頂きたい。それも含めて今回で、この研究会としての議論をいちおう終え、『考え方(案)』を出していきたい。また、この『考え方(案)』は現行制度を前提としたものであり、年金制度の変更により見直しが必要な場合は、改めて研究会を開催し議論をお願いしたい」旨の発言があり、委員全員でこれを了解した。
 最後に、西尾座長、総務省自治行政局森公務員部長、財務省主計局杉本次長よりあいさつがあり、本日で一応区切りをつけた。なお、最終文書は近日中に公表予定。

 連合官公部門連絡会は、2004年度から始まる国共済と地共済の財政単位の一元化について、今回の「考え方(案)」 に沿って、公務員制度の一環としての公務員共済年金制度の確立を目指していくこととしている。



別 紙 

国共済と地共済の長期給付に係る財政単位の一元化に関する考え方(案)

平成15年6月6日
公務員共済年金財政
単位一元化研究会


1 背景
 公務員の共済年金に関しては、平成13年2月28日の公的年金制度の一元化に関する懇談会報告「公的年金制度の一元化の更なる推進について」を受け、平成13年3月16日に閣議決定された「公的年金制度の一元化の推進について」では、「国家公務員共済組合及び地方公務員共済組合については、ともに公務員という職域に適用される年金制度であることから、両制度の財政単位の一元化を図る。このため、速やかに具体的な枠組みについて検討を進め、次期再計算はこの財政単位の一元化を前提として実施する。」とされている。

 当公務員共済年金財政単位一元化研究会では、この懇談会報告及び閣議決定を踏まえ、平成13年10月から国共済と地共済との間の財政調整の仕組み及び国共済と地共済の保険料率の一本化の時期などについて、5回にわたる意見交換を重ねてきた。

 これまでの当研究会に出席した関係者の国共済と地共済の長期給付に係る財政単位の一元化に関する意見は以下のとおりである。

2 基本的考え方
 ここでいう「財政単位の一元化」とは、複数の年金制度の財政単位を一体のものとして捉え、これを計算の基礎として年金財政を運営していくことであるが、国共済・地共済の間においては、財政単位の拡大及び共通部分についての費用負担の平準化を図ることを目的とし、組織、制度として独立したままで、両制度間で財政調整を行うとともに、最終的に保険料率を一本化することとする。
 その際、国共済・地共済それぞれが年金給付に支障を来すことのない仕組みをつくることは当然であるが、それは、公務員という職域に適用される共済年金制度を全体で支え合う仕組みとすることを基本的な考え方とする。
 なお、現在、次期財政再計算にむけて、年金財政方式、給付設計を含む公的年金制度の見直しが検討されている。
 この「考え方」は、年金の給付設計が見直されても基本的には有効であると考えられるが、公的年金制度の見直しの内容によっては改めて検討する必要が生じることもあり得ることに留意する必要がある。

3 保険料率の一本化
(1)一本化保険料率の算定方法
 財政単位の一元化という主旨にかんがみ、財政再計算において、国共済と地共済の給付額及び標準報酬総額をそれぞれ合算し、全体として一本の保険料率を算定する。
 一本化保険料率の算定にあたっては、地共済において財源率として含まれている公務上の障害共済年金等については除いて算定する。
 なお、両共済で同一の保険料率となることの法的な担保措置を講じた上で、財政再計算については、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会相互に情報交換を図りながら、それぞれで行うとともに、その結果についても相互に検証することとし、保険料率は、従前どおり国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会の定款で規定する。

(2)保険料率の一本化の時期
 公的年金制度の一元化に関する懇談会の議論を踏まえ、保険料率の一本化は速やかに実施することが望ましいが、地共済の保険料率は保険料率の一本化により平成11年財政再計算で見込まれることから、激変緩和のため、平成16年から段階的に一本化を実施することとし、平成21年に同一の保険料率とする。

4 財政調整の仕組み
(1)財政調整の範囲
 国共済と地共済については、ともに公務員という職域に適用される年金制度であり、給付設計もほぼ同一であることから、財政調整の範囲は、職域部分を含む長期給付全体とする。なお、公費負担で賄われている公務上の障害共済年金等については除くこととする。

(2)費用負担平準化のための財政調整
 成熟の度合いが違うことにより異なってくる国共済と地共済の費用負担を平準化するため、基礎年金部分を除いた指標である独自給付費用に着目して財政調整を行う。 具体的には、独自給付費用率が実質的に同一となるよう、独自給付費用率の低い精度から高い制度に対して費用負担平準化のための財政調整拠出金を交付する。
 注:独自給付費用とは、ある年度の実質的な支出のうち、保険料拠出によって賄う部分(国庫・公経済負担を除いたもの)から基礎年金拠出金を控除したものである。したがって、長期給付費用全体からは、追加費用相当額、基礎年金交付金相当額、基礎年金拠出金(このうち1/3は公経済負担)が除かれている。独自給付費用が当該年度の標準報酬総額に占める割合を独自給付費用率という。

(3)年金給付に支障を来さないための財政調整
 上記(2)の財政調整を行っても、両制度間における積立比率の相違による運用収入の差、被扶養配偶者比率の差等により、収支に赤字が生じ、将来的に積立金が枯渇することはあり得る。
 このため、国共済・地共済が組織・制度として独立したままでも、それぞれの制度において今後発生する年金給付に支障を来すことのないようにすることが必要であり、第2の財政調整を行うこととするが、両共済が独立している以上それぞれが有する積立金をいたずらに減少させることは回避することが適当であることから、単年度の収入と支出に着目してこれを行うこととする。
 この場合の支出については当該年度の年金給付等費用(基礎年金拠出金等は含むが、費用負担平準化のための財政調整拠出金の交付は含まない。)を対象とし、収入については当該年度のすべての収入(保険料収入、公経済負担、積立金運用収入、追加費用、基礎年金交付金、費用負担平準化のための財政調整拠出金の受け入れ)を対象とする。
 なお、保険料率を一本化することにより、仮に年金給付に支障を来さないための財政調整拠出金の交付・受け入れに当面偏りが生じることがあったとしても、将来にわたって公務員全体としての制度の安定化を図るために必要であることに留意すべきである。

(4)財政調整の方法
 平成16年の次期財政再計算による保険料率の改定時以降、新たな組織を設けずに国家公務員共済組合連合会及び地方公務員共済組合連合会の間で、毎年度、費用負担平準化のための財政調整拠出金と年金給付に支障を来さないための財政調整拠出金を一本にして財政調整拠出金を交付し又は受け入れることとする。
 この場合、財政調整拠出金の額については、各年度毎の独自給付費用率・収支に基づいて算定するものとする。

5 今後の方向性
 平成13年3月16日の閣議決定「公的年金制度の一元化の推進について」では、「さらに、被用者年金制度の統一的な枠組みの形成を図るために、厚生年金保険等との財政単位の一元化も含め、更なる財政単位の拡大と費用負担の平準化を図るための方策について、被用者年金制度が成熟化していく21世紀初頭の間に結論が得られるよう検討を急ぐ。」とされている。
 また、今回の財政単位一元化における仕組みでは、両共済が対等の関係にあることを前提に、お互いが助け合うことを旨としている。
 このため、財政単位一元化の今後のあり方については、被用者年金制度全体の動向、年金制度の改正、今回の仕組みの運用の状況などを踏まえつつ、必要に応じて見直しを行うこととする。

以上