2004年度公務労協情報 18 2004年2月19日

公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

寒冷地手当見直しで職員団体審議官交渉−2/19
−見直しの明確な根拠示されず再度見解求める−

 公務員連絡会賃金・労働条件専門委員会は、19日午後1時から寒冷地手当見直し問題で人事院交渉を行った。寒冷地手当の見直しについては、1月26日に人事院から見直しの基本方針が提示されたことから、公務員連絡会は2月3日に申入書を提出しており、今回の交渉は第1回交渉であり、基本方針の考え方を明確にするよう人事院を追及したもので、人事院は鈴木職員団体審議官、宮本参事官が対応した。
 冒頭、小林委員長が以下のとおり、人事院の見解を質した。
(1) 1月26日に示された基本方針の考え方について、「いま、なぜ抜本的見直しを行うのか」、また、「どうして民間準拠に変えるのか」を明確に説明していただきたい。
(2) 議員立法によって寒冷地手当法が成立した経緯や寒冷地手当制度の趣旨をどう考えているのか。
(3) 寒冷積雪地の生活実態について、人事院としてどのように考えているのか。
(4) 基本方針の中に「民間準拠を基本」との表現があるが、具体的にはどのようなことを意味しているのか。また、これを支給基準とすることの意味を明確にしていただきたい。従来は、「生計増嵩費を含めた総合判断」と説明してきたが、この考え方はどうなったのか。
 これに対し、鈴木審議官は以下のとおり見解を示した。
(1) 公務員給与は、「民間準拠の原則」で国民の納得を得ている。各給与種目についても、国民の納得が得られるかどうかが、ますます求められるようになってきており、寒冷地手当についても「民間準拠」で考えていくことが最も適切であると考えている。民間と比べて公務員だけが有利な措置は、なかなか納得されにくい。
(2) もともとこの手当は議員立法により昭和24年に設置されたが、当時のエンゲル係数(消費支出に占める飲食費の割合)は60%を超えており、給与水準に比べて大きな燃料費を本俸で賄うことは困難であり、寒冷生計増嵩費を手当で見る必要があった。これに対し、今ではエンゲル係数は20%程度であり、本俸で寒冷生計増嵩費を賄うことが可能である。個別の生計費について、個別に手当で見る必要性は希薄になっている。ただ、そうは言っても、民間で広く普及している個別の手当については、公務でも支給することが認められるものと考えている。議員立法であり、個別法で支給されているが、寒冷地手当自体は給与法で支給されている手当と変わらないし、公務員に対する給与であることは変わりない。
(3) 生活実態をどう考えているかだが、家計調査を中心に寒冷地とそうでない地域の生計費を分析している途中だが、傾向としてそんなに大きな寒冷生計増嵩費があるという状況にはなっていないとの見通しをもっている。
(4) 「民間準拠を基本」の意味は、地域指定・支給額について、民間の状況を基本に考えていくことが適当であるということである。これまでは、「生計増嵩費」と言ってきたのにどうしてかとのことだが、それを賄うという趣旨は変わらないが、それをどこまで手当で見る必要があるのかということについては、設置当時とは変わってきている。今日時点で見る際には、民間の同趣旨の手当がどうなっているかで考えるのが最も適当であると考えている。
 審議官の見解に対し、連絡会側は、@人事院としては、寒冷生計増嵩費は燃料費を含めて本俸で賄うべきであり、本来必要ないと考えているのか、それとも手当で賄う必要があると考えているのか。手当の原則に関わる話であり、そこをはっきりさせるべきだ、A寒冷積雪地では、これまで現行の手当が支給され、それで家計を賄っている現実がある。支給解除になったり、大きく下がることになれば、生活に影響を与えることになる。情勢の推移を踏まえながらも、生活が激変しないよう配慮していくという原則も確認していただきたい、B「民間準拠を基本」というのは、民間調査結果が手当の額ということではなくプラスアルファがあると理解してよいか。これまでの「寒冷生計増嵩費を含めた総合判断」は、立法経緯や生活実態を踏まえて、こうした考えを示したものであるがどうなったのか、などとさらに明確な考えを示すよう厳しく追及した。
 これらに対し審議官は、@個別の生計費について、個別に見ていく必要性は希薄になっているが、いろいろな議論があるとしても、民間で広く普及している手当については重みがありその状況を踏まえつつ公務で支給することの合理性や納得性が認められるということである、A生活実態については、どういうお金がかかっているか、家計調査で見る必要があるが、現在支給されている実態を見てほしいというのは考え方が違う、B民間調査結果がそろっていろいろ分析しないといけないが、民間の傾向と著しく違う措置をしようとするのであれば、別途の明確な根拠、誰もが納得できる合理的な根拠がなければならない。民間の手当も「寒冷生計増嵩費」に対応するものとして支給されており、増嵩費は民間実態に含まれているのではないか、と答えるにとどまった。
 このように本日の交渉では、納得できる明確な説明がなかったことから、次回交渉では、@これまでの手当支給の基準を「民間準拠を基本」に変えるのはどうしてか、A人事院として寒冷地手当支給の原理をどのように考えているのか、などについて、再回答するよう強く求め、本日の交渉を終えた。

人事院が「退職時特昇の可及的速やかな廃止」を提案

 人事院は、19日午後の寒冷地手当交渉の際、退職時特昇(人事院規則9−8第39条第3号)について、「可及的速やかに廃止する方向で見直しを検討することとしたいので、皆さんからご意見を伺いたい」と、公務員連絡会に対して提案した。
 これについて、連絡会は、「唐突であり、なぜ本日廃止の提案をするのかの理由も述べられておらず、極めて遺憾である。本日は提案があったということで、持ち帰って検討したい」とし、提案を聞くに止めた。

 この退職時特昇の見直し問題は、昨年来からマスコミ等が取り上げていたもので、本年に入りさらにキャンペーンが強まっていたものである。また、国会でも取り上げられる情勢となっており、人事院はこうした情勢を踏まえ「廃止の方向で検討」との提案をしたものと思われる。
 公務員連絡会としては、今後、人事院に明確で納得のいく説明を求めながら、どのようなスタンスで交渉を進めていくのか協議することとしている。

以上