2004年度公務労協情報 26 2004年3月31日
公務公共サービス労働組合協議会

寒冷地手当見直しの基本方針で人事院勤務条件局長と交渉
「合意に向け努力」を約束するも固い姿勢に終始−3/31

 公務員連絡会及び全国寒対協は、31日11時から、人事院交渉を実施し、寒冷地手当見直しに係る基本的考え方を質した。交渉には、公務員連絡会側から公務労協の書記長クラス交渉委員が、全国寒対協からは山口・岩間副会長、堀田事務局長らが出席した。人事院側は、山野勤務条件局長、鈴木職員団体審議官らが対応した。
 冒頭、山本事務局長が、「1月26日には、人事院から寒冷地手当見直しの基本方針の提示があり、2月3日にはわれわれの考え方を申し入れた。その後、署名運動を行い、地域代表の要請行動を含めて、交渉・協議を積み重ねてきた。今日は、その経過を踏まえて、局長から寒冷地見直しの基本的考え方を伺いたい」として、局長の考えを質した。
 これに対し、山野局長は、以下のとおり答えた。
(1) 1月に提起したとおり、寒冷地手当の見直しに当たっては、「民間準拠を基本とし、抜本的な見直しを行う」という方針は変えない。
(2) 公務員連絡会・寒対協が、寒冷積雪地の生活実態への配慮や寒冷地手当制度の維持を求めていることについては十分留意する。
(3) 4月中には、支給対象地域等の見直しの考え方を提示し、公務員連絡会・寒対協の意見を十分聞きながら作業を進めていきたい。

 局長の見解は、これまでの交渉で組合側が問題視してきた「民間準拠を基本」とする考えを変えず、寒冷地手当制度の維持を中心とした組合側の要求に明確に応える内容ではなかったことから、組合側は「われわれが繰り返し主張してきた『寒冷積雪地の生活実態への配慮』や『手当制度維持』の方向性が全く明らかにされておらず、いま、なぜ『民間準拠を基本とした抜本的な見直しを行うのか』十分納得のいく説明が行われることなく、『基本方針を変えない』との見解が示されたことは極めて遺憾と言わざるを得ない」とし、以下のとおり、人事院の姿勢を厳しく追及した。

(1) 96年見直しの際は、「寒冷生計増嵩費及び民間における同種手当の支給動向のみならず、寒冷地手当をめぐる経緯や職員の生活実態を含めて総合的に勘案する」との基本姿勢で行われた。今回の提案は、「民間準拠を基本として、抜本的な見直しを行う」というものであるから、人事院として寒冷地手当制度に対する考えを変えたとしか認識できない。しかも、はじめから「抜本的見直し」ありきという姿勢では、納得できない。
(2) 給与全体は民間に準拠しているのであるから、手当をどうするかはあくまで労使間の配分問題である。民間労使が最も能率が上がる方法として決めた配分に、公務がそのまま合わせるというのは筋違いである。全体としての民間準拠・官民均衡の中で、公務では、公務能率の向上と公務員の働く意欲をどう確保するかという論理で配分すべきであり、民間準拠一辺倒では、人事院はいらない。
(3) 温暖化などで寒冷積雪の度合いが下がったというが、例えば積雪が減ったからといって、生活の維持にかかる費用が即減るものではないし、2〜3年暖かかったからといって生計増嵩費が減るわけではない。気象が変わったから下げるというのでは納得できない。

 これらの追及に対し勤務条件局長は、次のとおり見解を示した。
(1) 「民間準拠」は国公法に示された大原則であり、寒冷地手当のみならず勤務条件を考える場合の基本である。そうした原則の下で、公務員としての特殊性がある場合については、公務員連絡会・寒対協との具体的な話し合いの中で十分意見交換をしていきたいと思っている。
(2) 制度は常々見直す必要があり、民間準拠の原則に基づいて、民間調査結果を踏まえてそれに合わせるとともに、公務の実態を加味するという、基本原則が変わったわけではないし、生計増嵩費やその他の事情も無視するわけではない。そういう意味で、96年時点と基本的な考え方を大きく変えるものではない。
(3)「抜本的」という意味は、気象の変化や民間の支給状況の変化にあわせて見直す場合に、はじめから一定の枠をはめてその範疇で見直すということではなくて、手当制度のあり方を含めて見直そうということであり、出てくる結果が「抜本的見直し」になることもあるという趣旨である。
(4) 公務員給与を巡る厳しい状況の中で、較差内の配分問題とはいえ、民間と異なる部分については国民にわかりやすいものにして理解と納得を得なければ堪えられないと思っている。人事院としては、組合から十分意見を聞くということと国民に納得してもらうということと、両面で考えていきたい。
(5) 気象条件の変化は民間企業でも同様であるのに、どうして公務員だけがもらっているのか、納得できる理由を示さないといけないと考えている。
(6) 4月中旬には指定対象地域の提案をしたいと考えているし、皆さんと話し合って合意が得られるよう努力したい。

 以上のように勤務条件局長は、寒冷地手当見直しについての姿勢は前回見直しの96年当時の基本的考え方と変わるものではないとし、「民間準拠」一辺倒で機械的に見直すものではないとの考えを示したものの、公務を巡る厳しい状況変化を踏まえ、それについても国民の理解が得られるものとする必要があるとの姿勢に終始し、見直しの基本方針や支給基準についてのやりとりは平行線をたどった。
 このため、最後に公務員連絡会山本事務局長は、「現下の情勢を総合的に判断し、4月以降の話し合いには応じることとするが、その過程でも引き続き『見直し基準』の問題を追及する。今後も、十分に交渉・協議することは当然のことであり、『合意』に基づく見直しとなるよう最大限努力することを重ねて要望しておく。なお、近々に、公務労協と全国寒対協が共同の『対策委員会』を設置することにしている。今後の交渉・協議も公務員連絡会書記長クラス交渉委員が中心になって行うので人事院側もそれに応じた体制を固めてもらいたい」と強く求めたのに対し、局長から「寒冷地手当の見直しは極めて重要な問題と認識しているので、お互いに納得できる見直しとなるよう十分努力していきたい」との考えが示され、「合意」に向けて努力することを確認し、本日の交渉を終えた。

 公務労協と全国寒対協は、寒冷地手当をめぐる厳しい情勢の中、本日の交渉においても人事院の固い姿勢に大きな変化がなかったことから、4月以降の交渉や運動をさらに強化する必要があるとの認識のもとに、4月5日には共同で「寒冷地手当見直し対策委員会」を発足させ、4月以降の取組方針について協議することとしている。

以上