2004年度公務労協情報 37 2004年6月16日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員連絡会

人事院総裁に2004人勧期要求提出−6/16
−公務員給与バッシング、骨太方針閣議決定の厳しい情勢の中で交渉スタート−

 公務員連絡会丸山議長ほか委員長クラス交渉委員は16日、11時30分から佐藤人事院総裁と交渉をもち、「2004年人事院勧告に関わる要求書」を提出した。
 本年の人勧期を巡っては、山場に入りつつある寒冷地手当見直しの闘いに加え、「骨太方針2004」の閣議決定によって国家・地方公務員の地域給与の見直し問題が急浮上するなど、緊迫した情勢を迎えつつある。公務員連絡会は、本日の総裁交渉を機に交渉や行動を強め、給与水準の維持・改善などの要求実現に向けた取り組みを進めることとしている。

 要求書提出に当たって丸山議長は、次の通り見解を述べた。
(1) 民間春闘の結果は、一時金を含め昨年より上向いている。しかし、日本経済は景気上昇局面にあるといわれているものの、それは大企業・製造業を中心とした輸出主導の企業業績の回復にすぎず、雇用不安の解消や勤労者所得の上昇に結びついたものではない。また、公務員給与バッシングはますます強まる傾向にあり、その点で、2004年の人事院勧告を巡る情勢は依然として厳しいものがあると認識している。
(2) 本年の人事院勧告・報告をめぐっては、@「今年こそ」公務員労働者の給与水準を維持・改善する勧告を行うことA手当制度維持と寒冷積雪地の生活が防衛できる寒冷地手当見直し案とすることB短時間勤務制度を含む多様な勤務形態のあり方について方向性を提起すること、など重要課題が山積している。これらの課題解決のためにも、十分な交渉・協議と、われわれが納得し、合意しうる勧告・報告が必要だ。
(3) そうした中で政府は、6月4日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」を閣議決定し、その中で、国家・地方公務員の総人件費の抑制と地域における公務員給与水準の見直しに具体的に言及した。経済財政運営に関する基本方針とはいえ、政府が当事者の意見を一切聞かず、財政再建の観点からのみ、一方的に公務員の給与・勤務条件の見直し方針(それも極めて重大な勤務条件の変更)を決定することは、決して認められることではない。
 社会経済情勢の大きな変化の中で、人事院勧告制度が労働基本権制約の「代償機能」として引き続き機能できるか否かが、いま、大きく問われている。人事院勧告制度に対するわれわれの不信感もかつてなく高まっている。
 労働基本権制約の代償措置としての人事院は、こうした点を十分認識し、政府の方針決定に左右されることなく、中立・専門的人事行政機関としての見識を発揮し、毅然として対応すべきである。その意味で、地域給与や給与制度見直しについては、本年、拙速な報告・勧告を行うことなく、われわれとの十分な交渉・協議と合意に基づいて検討作業を進めるよう、要請する。
(4) 本日の要求提出を機に、実務レベルで水準・配分、制度見直し内容等の万般について、われわれが十分納得いくまで交渉・協議を積み上げ、最終的には後日、総裁から直接回答をいただきたい。
 このあと山本事務局長が、@6年連続の年収マイナスとならない給与勧告A地域給与見直しへの慎重な対応B短時間勤務制度実現に向けた積極的な方針提起、など本年の人勧期要求のポイントを説明した。

 これに対して総裁は「要求は十分承った。問題は多岐にわたっているので、これからいろいろなレベルでよく話し合っていきたい」と、今後交渉を進めていくことに同意した。また、給与制度・地域給与見直し問題については、「人事院としてかねて問題意識を持ち、研究会での検討の経緯もあり、検討を進めてきている。難しい問題点はあるが、今勧告に向けてできるだけ具体的な方針を示したいと考えている。その間、みなさんとの意見交換を進めていきたい」とし、「骨太方針については、政府の要請は要請として受け止めるが、中立第3者機関、労働基本権制約の代償機関としての立場を十分踏まえ検討していきたい。これらの点を含め、各府省を含む関係者とは引き続き率直に話し合っていきたい」と、本年の勧告にむけて積極的に作業を進めていきたいとの見解を示した。
 公務員連絡会側は、「今年具体的な方針提起を行うということでは、人事院が骨太方針に応えたことになる。われわれは政府申入れを行ったが、一度も意見聴取さえなかった。地域給見直しといっても職務給とどう整合性をとるのかなど問題は多くあり、とても今年の勧告までに結論が出る問題ではない。骨太方針決定の経緯からみても、慎重に対応してもらいたい。今年、拙速に報告・勧告することはやめてもらいたい」と、強く求めたのに対し、総裁は、「骨太方針はあくまで人事院への要請だ。その点で、人事院の基本的立場は尊重されていると考えている。今年については、とても具体的詰めには時間が足りないと感じている。どこまで方針を書くかだが、具体化の中身はこれからの話し合いにかかっている」との見解を示した。
 公務員連絡会側は、重ねて「今後の話し合い次第と受け止めていいか」と確認を求めたのに対し、総裁は「人事院としての現時点での考え方は書かざるを得ないが、幅広くとらえていきたい」と、「具体的な方針」の中身を含め今後の公務員連絡会との話し合いを踏まえて対応するとの考え方を示した。
 最後に公務員連絡会側は「政治の名の下にルールが無視される傾向が強まっているときであり、あくまで労働基本権制約の代償措置としての役割を逸脱しないよう、慎重に対応してもらいたい。公務員は今年こそ生活改善となる給与勧告を求めていることを踏まえ、今後しっかり作業してもらいたい」と、交渉を締めくくった。


(別紙)2004人勧期要求書

2004年6月16日


人事院総裁
 佐 藤 壮 郎 殿

公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏



2004年人事院勧告に関わる要求書


 常日頃から公務員労働者の処遇改善に向けてご努力いただいていることに敬意を表します。
 さて、日本経済は景気上昇局面にあるといわれていますが、それは大企業・製造業を中心とした輸出主導の企業業績の回復にすぎず、雇用不安の解消や勤労所得の上昇に結びついたものとはいえません。また、本年の人事院勧告をめぐる情勢も依然として厳しいものがあり、公務員給与バッシングはますます強まる傾向にあります。
 そうした中で政府は、6月4日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」を閣議決定し、その中で、国家・地方公務員の総人件費の抑制と地域における公務員給与水準の見直しに具体的に言及しています。経済財政運営に関する基本方針とはいえ、政府が当事者の意見を一切聞かず、財政再建の観点から一方的に給与水準の見直し方針を決定することは、決して認められることではありません。
 労働基本権制約の代償措置としての貴職は、こうした政府の方針決定に左右されることなく、専門的人事行政機関としてのルールと考え方に基づき、毅然として対応すべきものと考えます。その意味で、地域給与や給与制度見直しについては、本年、拙速な報告・勧告を行うことなく、われわれとの十分な交渉・協議と合意に基づいて検討作業を進める姿勢を堅持することを強く求めます。
 以上のほか、本年の人事院勧告・報告をめぐっては、@公務員労働者の給与水準を維持・改善する勧告を行うことA手当制度維持と寒冷積雪地の生活が防衛できる寒冷地手当見直しを行うことB短時間勤務制度を含む多様な勤務形態のあり方について方向性を提起すること、など重要課題が山積しています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、2004年人事院勧告に関わる下記事項の実現に向けて最大限努力されることを強く要求します。



一、賃金要求について
1.本年の給与勧告について
(1) 2004年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の月例給与や一時金の水準を維持・改善し、体系・配分等について十分な交渉・協議を行い、合意に基づく給与勧告を行うこと。
(2) 行政職(二)表の現行水準を維持すること。
(3) 国立大学法人化とそれに伴う関連法改正による社会的影響、人事院勧告の果たしてきた役割を考慮し、関係者の意向を踏まえ、教育職(二)(三)表を参考資料として示すこと。
(4) 寒冷地手当の見直しに当たっては、寒冷積雪地の生活を防衛し、手当制度を維持することとし、十分な交渉・協議、合意に基づいて成案を得ること。

2.地域給与・給与制度の見直し等について
(1) 地域給与のあり方や給与制度見直しの検討に当たっては、行革推進事務局の人事制度の検討との関わりを明確にし、公務員連絡会との「交渉・協議の場」を設置するなど、十分交渉・協議を行い、合意しながら作業を進めること。
(2) 本年については、拙速な勧告・報告を行わないこと。


二、労働諸条件の改善について
1.短時間勤務制度の実現等について
(1) 「多様な勤務形態に関する研究会」の中間報告を急ぎ、公務におけるワークシェアリングの実現の観点から、本年の勧告に向けて本格的な短時間勤務制度の実現に向けた検討を行うこと。
(2) フレックスタイム制の拡大については、行政サービスの向上、職業生活と家庭生活の両立に資するものとし、具体的な職種・職務の範囲、その形態、実施時期等については、十分交渉し、合意すること。
(3) 裁量労働制は導入しないこと。

2.労働時間短縮、休暇・休業制度の改善について
(1) 公務におけるワークシェアリングの実現に向け、@年間総労働時間1800時間体制Aゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度の拡充B少子・高齢社会に対応し自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを実現すること。
(2) 当面、本年については次の事項を実現すること。
 @ 所定内労働時間に関する民間実態調査結果に基づく所定内労働時間の短縮等についての検討
 A 徹底した勤務時間管理体制の確立と実効ある超過勤務規制並びに超過勤務手当の全額支給制の導入
 B 長期連続休暇と年休取得促進

3.男女平等の公務職場の実現について
(1) 政府の「少子化対策プラスワン」を踏まえ、職業生活と家庭生活の両立に向けた支援策として取得率の数値目標等を明確にした育児休業の男性取得促進策を報告すること。
(2) 次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」の策定に当たって、勤務条件を所管する立場から、関係省庁と連携し、積極的な役割を果たすこと。
(3) 民間における育児・休業制度改正の動向を踏まえ、公務においても速やかに必要な改正を行うこと。

4.その他の事項について
 公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。

以上