2004年度公務労協情報 50 2004年8月4日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院総裁と交渉し2004勧告・報告内容確認−4日

 丸山議長ほか委員長クラス交渉委員は、4日午後4時から、佐藤人事院総裁と最終交渉をもち、2004人事院勧告・報告の内容を確認した。公務員連絡会は、この総裁回答を踏まえ、明日(5日)午後、代表者・幹事合同会議を開いて6日の勧告に臨む態度を協議する。

 人事院総裁交渉の冒頭、丸山議長は「6月16日に総裁に対して要求を提出して以降、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答を頂きたい」として、回答を求めた。
 これに対して総裁は、次の通り本年の勧告・報告の概要を回答した。

<勧告関係>
1 勧告日
 勧告日については、8月6日となる予定である。
2 官民較差
○較差については、数十円程度の極めて微小なもので、官民給与はほぼ均衡していると見込まれる。
○なお、これは、寒冷地手当の見直しを含んだもので、これを含まない前の較差は、わずかなマイナスとなる見込みである。
○したがって、月例給の改定は見送る予定である。
3 特別給
 官民の支給月数はおおむね均衡していると見込まれ、支給月数の変更はない見込みである。
4 寒冷地手当
 民間準拠を基本として、次のように見直すこととする。
@支給地域
 北海道及び北海道と同程度の気象条件が認められる本州の市町村とする。
A支給額
 民間の支給実態にあわせて、支給額を約4割引き下げる。
 最高支給額は131,900円となる。
B支給方法
 一括支給から、11月から3月までの5か月間の月額制に変更する。
C実施時期等
 本年の寒冷地手当から実施する。
 実施に当たって、所要の経過措置を講ずる。
5 国立大学法人化等に伴う給与法の規定の整備
 @教育職(一)は1級を削除して存置する。教育職(二)及び(三)は廃止する。教育職(四)は名称を教育職(二)とし、4級、5級を削除して存置する。
 A指定職俸給表は12号俸を削除する。これと関連して、任期付研究員等の俸給月額の上限を指定職11号俸相当に変更する。
 B義務教育等教員特別手当等の教育職員関係手当については、廃止等の所要の改正を行う。
<報告事項関係>
6 給与構造の基本的見直し
 報告で、次の検討項目等に言及する。
 @俸給表の全体水準の引下げと地域に応じた適切な給与調整の実現
・民間賃金の低い地域における官民給与較差を考慮して全国共通俸給表の水準を引き下げ
・民間賃金の高い地域には地域手当(仮称)を新設
・転勤手当(仮称)を新設
 A俸給関連の課題
・専門スタッフ職俸給表(仮称)の新設
・俸給表構造の見直し(級の新設・統合による級構成の再編、昇給カーブのフラット化)
・昇格基準の見直し等
・実績評価に基づいた昇給(査定昇給)の導入等
 B手当制度関連の課題
・勤勉手当への実績反映の拡大
・本府省手当(仮称)の新設
・俸給の特別調整額の定額化
 これらについては、来年勧告に向けて、各府省・職員団体等関係者との議論を進め、具体化していきたい。
7 官民比較方法の見直し
○来年の官民比較から、比較給与種目について、通勤手当を外し、俸給の特別調整額を入れる等の見直しを検討する旨報告で言及する。
○併せて、民間の人事・組織形態の変化に応じた官民比較方法の検討にも言及する。
8 公務員人事管理
 報告で、次の事項等に言及する。
○能力・実績に基づく人事管理の推進、再就職ルールの適正化
○キャリアシステムの見直しの検討、セクショナリズムの是正、民間人材活用及び人事交流の促進等
○勤務時間制度の弾力化・多様化、心の健康づくり対策、再任用制度の活用等
○試験制度改革、女性公務員の採用・登用の拡大、能力開発・研修等
 このうち、勤務時間制度等に関しては、多様な勤務形態に関する研究会の中間取りまとめを踏まえ、育児を行う職員の部分休業の拡充、短時間勤務の導入、男性職員の育児参加促進策等を検討し、職業生活と家庭生活の両立支援策を推進していきたい。
 この回答に対して丸山議長は次のように述べ、今後、地域給与・給与制度見直しに当たっては十分交渉・協議、合意することを強く求めた。
(1) 2004年人勧期の要求の中でわれわれは、公務員給与をめぐる厳しい情勢を踏まえつつも、6年連続の年収マイナスをストップすることを目標に、@公務員労働者の賃金水準を維持・改善することA寒冷地手当見直しに当たっては、寒冷積雪地の生活実態への配慮と制度を維持することB拙速な地域給与・給与制度見直し勧告・報告を行わないこと、などを求め、ギリギリの段階まで事務レベル交渉を進めてきた。
(2) ただいまの総裁回答は、月例給の改定が見送られたことについてはやむを得ないと考えるが、一時金が据え置かれたことについては、民間賃金の動向からしても、また組合員の月数増に対する期待の大きさからしても納得がいかず、不満が残る内容である。とはいえ、人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であること、現下の厳しい公務員給与を巡る情勢の中で俸給表水準や年間総収入が確保されたことなどから、ただいまの総裁回答を受け止め、今後は政府に対して勧告通りの実施を求めていくこととしたい。
(3) 寒冷地手当勧告については、支給地域・支給額の見直しのいずれについても該当地域にとって極めて厳しい内容であり、寒冷積雪地の生活実態を無視した不満なものである。しかし、寒冷地手当制度の維持という最低限の目標が実現できたことや一定の激変緩和措置が設けられたこと、公務員給与を巡る厳しい情勢などを総合的に判断し、これらの勧告内容についてはこれまでの交渉・協議の到達点として受け止めざるを得ないと考えている。
(4) 多様な勤務形態に関する研究会の報告に基づく、育児・介護制度に関わる施策の拡充策については、今後われわれと十分話し合い、早急に必要な措置を実施してもらいたい。
(5) 本年人勧期の最大の課題となった地域給与・給与制度見直しの報告については、今後のわれわれとの交渉・協議の中で見直し案を具体化していくとの基本スタンスを明らかにしているものの、地域別の官民較差を公表し俸給表水準を引き下げる手法を提言したことについては、極めて遺憾といわさざるをえない。われわれは、地域別の官民較差に基づいて俸給表水準を引き下げるという地域給与見直しの手法には、反対だということを明確に態度表明しておきたい。また、査定昇給などの給与制度見直しについても、その前提となる評価制度のあり方と同時に議論すべきであることを強調しておきたい。
 いずれにしろ、給与構造の見直しは勤務条件の重大な変更事項であり、労働基本権制約の代償措置である人事院が、「政治」や使用者の意向だけに基づいて検討を進めることは到底認められることではない。われわれとしては、地域給与見直しの手法や具体化の時期を含め、十分に交渉・協議し、文字通り合意の上で検討作業を進めることを強く求める。
(6) 公務員連絡会として本日機関会議を開いて、ただいまの総裁回答を報告し、今後の対応を協議することとしたい。

 また、森越副議長は、教育職俸給表の改廃に関わって、「この間、人事院に対し、公務労協・日教組及び全人連等関係者が、俸給表の改廃が勧告される場合は、人事院勧告が果たしてきた役割などを考慮し、教育職俸給表(二)(三)表を参考資料として示すよう強く要請してきたのに対し、参考資料として示すとの方針で努力頂いたことは評価したい。ただいまの総裁回答によれば、俸給表の改定はない予定とのことから、結果としては教育職(二)(三)表が参考資料として示されることはないものと承知している。今後も、専門機関として引き続き必要な対応をお願いしたい」と述べた。

以上