2004年度公務労協情報 52 2004年8月6日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院が内閣と国会に2004勧告・報告−8/6
−公務員連絡会は声明発表し、政府に申入れ−

 人事院は、6日午後2時45分から内閣総理大臣、衆参議長に対して2004人事院報告・勧告を提出した。
 政府はこれを受けて午後3時20分から、第1回目の給与関係閣僚会議を開いて勧告の取り扱いを協議したが、この日は結論を得るに至らず、次回以降に持ち越された。次回は未定。
 公務員連絡会は、勧告後直ちに声明(資料1)を発表するとともに、総務大臣、厚生労働副大臣に対して「勧告通り実施すること」を申し入れた(資料2)。官房長官、財務大臣に対しても、来週以降順次申し入れる予定。

<総務大臣申入れの経過>
 麻生総務大臣への申入れは、午後3時50分から、丸山議長ほか委員長クラス交渉委員が出席して行われた。
 冒頭丸山議長は、次の通り申入れの趣旨を説明した。
(1) 人事院は本日、月例給・一時金を据え置き、国立大学の大学法人化に伴う教育職俸給表の改廃などの給与勧告と寒冷地手当見直しの勧告を行った。
 民間賃金の動向からして、月例給の据え置きについては当然のことといえるが、一時金の据え置きについては期待が大きかっただけに納得がいかない。また、寒冷地手当の見直しについても、該当地域にとって極めて厳しい内容であり、不満といわざるを得ない。しかし、人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であること、公務員給与を巡る極めて厳しい状況のなかで6年ぶりに年間総収入が確保されたことなどを踏まえ、われわれとしては、本年の人事院勧告については勧告通り実施すべきものと考える。政府としては、人事院勧告尊重の基本姿勢にたって速やかに人事院勧告の取り扱いを決定してもらいたい。
(2) 本年人事院は、地域給与見直しの報告をおこなったが、その中で提言されている地域別官民較差に基づいて俸給表水準を一律に引き下げる方法や、ブロック別に俸給表を分ける方法については、われわれとしては、勤務条件の重大な変更につながり、現場の人事管理にも大きな影響を与えることから、基本的には行うべきではないと考えている。給与構造の見直しは労使関係にも重大な影響を与える問題であり、政府においてもわたしどもと十分協議し、それを踏まえた使用者としての適切な対応をお願いしたい。
(3) 厚生労働大臣にも努力頂き、5月13日に公務員制度改革に関する政労会談が行われ、政府と組合で十分話し合って改革案を取りまとめていくことで合意された。今後の公務員制度改革案作り、改正法案作りにおいて、その約束が果たされるよう引き続き努力頂きたい。

 これに対して大臣は、「先ほど勧告を受け取り、給与関係閣僚会議を行った。本日は結論を得るに至らなかったが、総務省としては人事院勧告制度は労働基本権制約の代償措置の根幹であり、勧告尊重の基本姿勢にたち、国政全般を考慮しながら誠意を持って対応したい。私としては、勧告通り実施すべきと考えており、ただいまの組合の意見を十分配慮して検討し、早急に結論を得たい」と、勧告通りの実施に向け努力していくとの見解を表明した。また、地域給与見直し問題についても、「政府としてみなさんと話し合う機会は作っていきたい」と、この問題についての協議に対応する考え方を示した。

<厚生労働副大臣申入れの経過>
 厚生労働省への申入れは、大臣が公務出張のため谷畑副大臣へ、午後4時過ぎから行われ、丸山議長ほかが出席した。
 冒頭丸山議長が申入れの趣旨を説明したのに対して、副大臣は「ただいまの申入れは真剣に受け止めたい。給与関係閣僚会議でも、私からは労働基本権制約の代償措置であり勧告は完全実施すべきと発言した。地域給与見直しについては、厚生労働省として態度表明するのは難しいが、地方分権の時代であり、地方に人材が集まることは大事だ」と、厚労省としては勧告通り実施する方向で努力するとの見解を示した。



資料1.公務員連絡会の声明
声  明


1.人事院は本日、月例給・一時金の改定を据え置き、国立大学の法人化に伴う教育職俸給表の改廃や寒冷地手当見直しの勧告、俸給表水準の引下げや査定昇給の実施などの地域給与・給与制度見直しの報告を行った。
2.2004人事院勧告期の取り組みに当たってわれわれは、公務員給与バッシングに加え、政府が骨太方針2004で地域給与の引下げ方針を決定するという、かつてない厳しい情勢のもとで、@6年連続の年収マイナスを阻止し公務員労働者の賃金水準を維持・改善することA寒冷積雪地の生活実態を踏まえ、制度を維持することを明確にした寒冷地手当見直しの成案を得ることB拙速な地域給与見直しの勧告・報告を行わないこと、などを重点課題に設定し、最終盤までその実現を目指してねばり強く取り組みを進めてきた。
3.その結果、本年の給与勧告で、月例給の改定が見送られたことについてはやむを得ないと考えるが、一時金が据え置かれたことについては民間賃金の動向からしても納得がいかず、不満が残る内容である。
 寒冷地手当勧告については、支給地域・支給額の見直しのいずれについても該当地域にとって極めて厳しい内容であり、寒冷積雪地の生活実態を無視した不満なものである。しかし、公務労協・全国寒対協一体の体制を確立し、地域における様々な運動にねばり強く取り組んできたことによって、寒冷地手当制度の維持という最低限の目標が実現できたことや一定の激変緩和措置を設定させたこと、公務員給与を巡る厳しい情勢などを総合的に判断し、これらの勧告内容についてはこれまでの取り組みの到達点として受け止めざるを得ないものである。
 地域給与・給与制度見直しについては、最終盤ギリギリまで交渉・協議を進め、「本年勧告」という政府の圧力の中で報告に止めさせ、今後のわれわれとの交渉・協議の中で具体化していくとの基本スタンスを明確にさせることができた。しかし、人事院が地域別の官民較差を公表し俸給表水準を引き下げる手法を提言したことについては、極めて遺憾である。われわれは、こうした手法で総人件費削減を目的として地域給与見直しを行うことについては反対である。また、「査定昇給」などの給与制度見直しについては、その前提となる評価制度のあり方と同時に議論すべきである。いずれにしろ、給与構造の見直しは勤務条件の重大な変更事項であり、労働基本権制約の代償措置である人事院が、「政治」や使用者の意向だけに基づいて検討を進めることは到底認められることではない。われわれとしては、地域給与見直しの手法や具体化の時期を含め、十分に交渉・協議し、文字通り合意の上で検討作業を進めることを強く求める。
4.以上のことから、われわれは、人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であること、公務員給与を巡る極めて厳しい状況下で年間総収入が確保されたことなどを踏まえ、本年の勧告内容については人勧期の取り組みの到達点として確認し、今後、政府に対して勧告通りの実施を求めていくこととする。
 確定期の取り組みは、総人件費抑制政策が強められ、公務員給与バッシングが継続するもとでの予断を許さないものとなる。これから本格化する地方自治体の確定闘争、独立行政法人や政府関係特殊法人等の闘いを含め、全力で進めていかなければならない。
 また、地域給与・給与制度見直しを巡っては、本年の人事院報告で緊迫した新たな段階に突入したことを認識し、直ちに地域における取り組みや中央における交渉・協議など本格的な取り組みを開始していかなければならない。そのため、秋の総会において「地域給与等に関する闘争委員会」(仮称)を立ち上げ、文字通り組織の総力を挙げて取り組みを進める体制と方針を確立することとする。
 公務員制度改革を巡っても本年の秋が大きな山場となる。能力等級制度と天下りのまやかし改革で事態を収束させようとする政府・与党の思惑を許さず、労働基本権確立を含む民主的な公務員制度の実現に向けて全力で取り組みを進めていかなければならない。
 骨太方針2004に明確に現れているように、小泉内閣の進める構造改革路線は、社会保障や福祉、公共サービスを切り捨て、国民や公務員に犠牲を強要して財政再建を進める道である。われわれは、これらの山積する課題への取り組みを通して、公務労協が進める公共サービス確立の対抗戦略キャンペーンに結集し、連合の仲間や国民と連携し、こうした小泉構造改革に反撃する闘いに大きく踏み出していかねばならない。
2004年8月6日

公務員労働組合連絡会




資料2.政府への申入書

2004年8月6日


          殿

公務員労働組合連絡会 
議 長 丸 山 建 藏


本年の人事院勧告・報告に関わる申入れ


 常日頃、公務員労働者の処遇改善にご努力頂いていることに心から感謝申し上げます。
 さて、人事院は本日、月例給・一時金を据え置き、教育職(二)(三)表を廃止するなどの給与勧告と寒冷地手当見直しの勧告を行いました。
 民間賃金の動向からして、月例給については当然のことといえますが、一時金の据え置きについては期待が大きかっただけに納得がいきません。また、寒冷地手当の見直しについても、該当地域にとって極めて厳しい内容であり、不満といわざるを得ません。しかし、人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であること、公務員給与を巡る極めて厳しい状況のなかで6年ぶりに年間総収入が確保されたことなどを踏まえ、本年の人事院勧告については勧告通り実施すべきものと考えます。
 地域給与見直し報告に対しては、われわれは、地域別官民較差に基づいて俸給表水準を一律に引き下げる手法については反対です。貴職におかれても、給与構造の見直しが重大な勤務条件の変更事項であり、人事管理にも大きな影響を与えることを認識し、使用者としての立場と責任において人事院に対して拙速な勧告を行わないよう申し入れることを求めます。
 以上のことから、下記事項を申し入れますので、その実現に向けて最大限努力されるよう、強く要請します。



1.本年の人事院勧告については、勧告通り実施すること。

2.地域給与・給与制度見直しに当たっては、使用者の立場と責任を踏まえ、われわれと十分交渉・協議のうえ、人事院に対して拙速な勧告を行わないよう申し入れること。



資料3.連合事務局長談話

2004年8月6日


人事院勧告に対する事務局長談話


日本労働組合総連合会
事務局長 草野 忠義


1.人事院は本日、政府と国会に対して、国家公務員の月例給と一時金の改定を据え置くこと(俸給表にもとづく昇給は既に実施済み、年間一時金4.4ヶ月)を中心とする勧告を行った。民間組合のこれまでの解決状況をほぼ反映したものと言えるが、一時金については、連合集計などと比べ抑制的な勧告内容である。

2.これに付随して、「給与構造の基本的見直し」の報告も行われた。その主なポイントは、@地域別の官民格差を考慮して俸給表水準を引き下げる、A査定昇給の導入など年功的給与の見直し、などである。人事院は、この報告をたたき台に職員団体と十分協議を行い、今後具体化をはかっていくとしている。

3.これから賃金改定を行う民間企業への影響を考えると、昨年まで続いた5年連続の年収マイナス勧告に歯止めがかかったことは大きい。しかしながら、「給与構造の基本的見直し」の報告内容は、国家公務員の問題にとどまらず、地域の官民の賃金決定に重大な影響を与える恐れがあり、人事院が一方的に検討を進めることは認められない。連合は、当該労使間で十分な交渉・協議が行われるよう公務労協との連携を強化するとともに、公務員制度等改革対策本部で今後の対応を協議する。

以 上




資料4.民主党の談話

2004年8月6日


2004年度人事院勧告に対する談話


民主党 政策調査会長 仙谷由人


 人事院は本日、国会および内閣に対して、今年度の国家公務員一般職給与を、月例給、期末・勤勉手当(ボーナス)ともに昨年度の水準に据え置くことなどを内容とする勧告を行った。これにより、5年連続で引下げが続いた国家公務員の年間給与が、下げ止まることとなった。
 給与水準に関する勧告の内容は、人事院が専門機関として官民比較調査を行ったうえで勧告したものであり、民間給与実態を反映したものと理解する。よって政府には、本勧告の速やかな完全実施を強く求める。
 また、寒冷地手当の見直しについても、各種手当を含めた公務員の給与水準を民間並に近づける観点より、妥当と認める。
 給与構造の基本的見直しについては、地域ごとの官民格差是正問題や、公務員の仕事への意欲を高める観点から検討が必要であると考える。その際には、ILO勧告を踏まえ、労働基本権のあり方および公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度自体の見直しをすすめることや、労働者の納得を得るための十分な対話・試行を行うことが重要である。
 再就職ルールの適正化については、天下りの規制対象を特殊法人、独立行政法人(大学教官等を除く)などの政府関係法人等にまで拡大することはもちろん、制限期間を離職後5年間とするなど、民主党の天下り禁止関連4法案をベースに、より厳格な姿勢で臨むべきである。

以上




資料5.社民党の見解

2004年 8月 6日


2004年度人事院勧告・報告についての見解


社会民主党公務員問題対策特別委員会


1.公務員給与を巡り厳しい情勢が続いてきた中で、今回の人事院勧告は、月例給・一時金ともに水準改定なしの結果となり、6年連続しての年収マイナスはストップされた。しかし、特に一時金が据え置かれたことなどについては、民間の動向や「景気回復」との政府の認識を考えれば、不満が残る。

2.今次勧告の大きな焦点となった寒冷地手当の取り扱いは、この間の組合側の運動の積み上げによって、制度そのものを残すことができ、また所要の経過措置も講じられることになった。とはいえ、寒冷・積雪地の生活実態を無視した「抜本的な見直し」によって、支給地域・支給額ともに厳しい結果となっている。寒冷・積雪地において困難を強いられている実態への十分な配慮を求めたい。

3.職務・職責重視の給与制度、能力本位の任用の推進、実績を踏まえた給与処遇、新たな評価制度の導入などが強調されるとともに、来年の勧告に向け、全国共通俸給表の水準引き下げや地域手当の新設、査定昇給への転換、昇級カーブのフラット化、専門スタッフ職俸給表の新設、本府省手当の新設、一時金における成績査定の強化などの俸給・手当の全面見直しが打ち出されている。しかし、人件費削減・総人件費抑制ありきの立場での給与構造の見直しは、労働基本権制約の代償の第三者機関である人事院の存在意義にもかかわる問題である。

4.これら勤務条件の重大な変更に際しては、今後の検討・具体化の作業自体、関係労働組合との十分な交渉・協議を経て、合意を得ていくことは当然である。特に、地域別の官民較差を考慮して全国共通俸給表の水準を引き下げていくことは、「同一労働・同一賃金」の原則を揺るがす問題である。しかも自治体労働者の賃金・労働条件の見直しにも波及し、民間と公務員の相互の給与引き下げのマイナスの連鎖、疲弊している地域経済への多大な影響を与えかねないことが危惧される。

5.「職業生活と家庭生活の両立支援策」として、勤務時間の弾力化・多様化が盛り込まれている。国民が求める良質で効率的な行政サービスを実現するためにも、職員の勤務意欲に応え、職業生活と家庭生活を両立できる勤務時間制度に変えていくことが必要である。本格的短時間勤務制の実現、長時間勤務の解消、非常勤職員制度の抜本的改善なども含め、今後の具体化に注目したい。

6.公務員制度改革大綱で打ち出されていた、各大臣による天下りの承認が、内閣によるものとして軌道修正されている。本来、中立・公平な第三者機関での管理・チェックとすべきであり、本格的な天下り問題の解決を求めたい。社民党は、労働基本権の保障を含む透明で民主的な公務員制度への抜本改革の実現を求め、公務労働運動及び国民との共闘の一層の強化を図っていく。

以上