2005年度公務労協情報 24 2005年4月11日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員連絡会

地公部会が2005賃金等について全人連に要請−4/11

 公務員連絡会地公部会は、4月11日午後1時30分から、本年勧告にむけた全国人事委員会連合会(全人連)への申入れを行った。
 公務員連絡会側は、地公部会の佐藤議長(全水道委員長)、中村企画調整委員(日教組)、山本公務員連絡会事務局長、岩本地公部会事務局長と地公部会幹事が出席し、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。

 冒頭、佐藤地公部会議長は、別紙要請書を手交し、「5月連休明けからも人事委員会は民調に取り組まれることと思う。公務員をめぐる情勢は、マスコミ等による公務員バッシングのキャンペーンが繰り広げられ、公務員給与を政治の道具とする動きが顕著となり、特例条例による給与カットを実施する自治体も増大するなど、極めて厳しい状況にある。本年の最大の課題は、地域給与見直しであり、われわれとしては公務員労働者の生活を守ることを第一に交渉等を行っているところ。本年8月に人事院勧告が行われた後、各人事委員会の勧告にむけた作業も本格化することとなるが、時間的制約がある中で各組合との十分な交渉・協議を実施するよう強く求めておきたい。3月29日に総務省が策定し通知した『地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針』においては、給与・定員のさらなる適正化、行政の民間開放など、今後の自治体行政を強く規定する中身となっているが、われわれもどのような行政サービスが求められているのかという視点で取り組みを進めている。人事委員会においても、地方公務員の生活を守るという最も基本的な使命を十分認識し、その機能の発揮にむけ尽力をお願いしたい」と要請した。
 続いて、岩本地公部会事務局長は、別紙要請書のうち、以下の5点を重点課題として全人連の努力を求めた。
@ 本年春闘の最終回答として人事院総裁から「現行の官民給与比較基準によって、公務員の給与水準が適切に確保されていると認識しており、これを変更することは考えていない」ことが示されたところ。民調の比較企業規模については、人事委員会においても変更しないようお願いする。
A 公立学校教職員の給与については、公教育の社会的役割を踏まえ全国統一的な水準の確保に努めてほしい。2005年度を含め当面、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成し、提示することを要請してきたところであるが、モデル給料表の作成にあたっては、労働組合との緊密な意見交換を行うことをお願いする。
B 同一価値労働・同一賃金の原則に基づいて、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善をはかるようお願いする。
C 自治体における両立支援策の積極的な推進を要請する。
D 高齢者再任用制度については、制度創設から一定の時間が経過しているが、定着の度合いはまだまだだ。年金支給年齢との接続との観点から、今後も年齢の引上げが行われるが、希望者全員が雇用されるなど実効性ある制度として定着するよう、積極的な施策を行うべきである。
 こうした地公部会の要請に対し、内田全人連会長は以下の通り回答した。


平成17年4月11日

要請に対する全人連会長回答


 ただいまの皆様からの要請の趣旨につきましては、確かに承りました。
 早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。

 回答としては以上でございますが、本年の民間給与調査を迎える状況認識等を一言お話しさせていただきます。

 まず、最近の経済情勢を見ますと、3月16日の月例経済報告では「景気は、一部に弱い動きが続いており、回復が緩やかになっている。」とし、先行きについては「企業部門の好調さが持続しており、世界経済の着実な回復に伴って、景気回復は底堅く推移すると見込まれる。」としつつも「情報関連分野でみられる在庫調整の動きや原油価格の動向等には留意する必要がある。」としており、警戒感も示しております。
 一方、雇用情勢については、「完全失業率が高水準ながらも、低下傾向で推移するなど、雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している。」としています。

 このような状況の中、民間における賃上げ交渉は、企業業績を特別給に反映させる動きが一層明確になるなど、統一ベアが中心であった従来の春闘とは様相が大きく異なっています。

 定期昇給の見直しと成果重視型の人事制度への移行が並行するかたちで進むなど、現下の情勢からは、例月給をとりまく状況は今年も厳しいものと考えざるを得ません。

 特別給についても、本年夏分は、自動車・電機など大手企業の多くで増加するものとみられますが、全体的な支給水準の回復にはなお時間がかかるものと考えられ、景気回復のすそ野の広がりぐあい等を注視していく必要があると思われます。

 一方、地方公務員の給与を取巻く状況は、かつてないほど厳しいものがあり、多くの国民が地方公務員の給与のあり方に注目していることはご承知のとおりです。
 このような状況の下では、より一層職員と住民の双方の理解を得ていくことが必要であり、民間給与との一層的確な比較や給与制度の見直しもますます重要なものとなっております。

 また、教員給与については、昨年の国立大学法人化により、各自治体が教員給与を自主的に決定することとなりました。従って、教育職員の給料表も、最終的には各自治体がその実情に応じて決定するものとなったところです。
 全人連としては、各自治体の実情を踏まえ、17年の給与勧告に向けた各自治体の主体的な取組みを支援し、各自治体の参考となるように、教職員の給料表作成の問題も含めて調査研究を進めていく予定です。

 以上、基本的事項についての状況認識等をお示ししました。

 申すまでもありませんが、公共のため職務に尽力している公務員について給与等の勤務条件を適正に確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しているところです。

 本年も、各人事委員会におきましては、5月初旬から民間給与実態調査を予定しております。

 ただいまの皆様の要請の内容につきましては、その調査結果も踏まえて具体的に検討していくことになろうかと存じます。

以上でございます。


別紙.全人連への要請書

2005年4月11日


全国人事委員会連合会
 会 長  内田 公三 様

公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合      
中央執行委員長   人見 一夫
日本教職員組合          
中央執行委員長   森越 康雄
日本都市交通労働組合       
中央執行委員長代行 田川 隆次
全日本水道労働組合        
中央執行委員長   佐藤 幸雄
全国自治団体労働組合連合     
中央執行委員長   玉野 一彦
日本高等学校教職員組合      
中央執行委員長   早川良夫



要 請 書


 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 公務員労働者の賃金は、昨年は給料表のマイナス改定は基本的にありませんでしたが、連年の給与引下げにより生活水準の維持が困難となっています。加えて、自治体財政が危機だとして職員の給与をカットする自治体がますます増えていますが、これは人事委員会制度を空洞化させるものであり、許されることではありません。
 2005春闘における民間の賃金交渉結果は、今日時点で定期昇給相当額が確保され、一時金については多くの企業で増額となっています。
 これから人事委員会において本年の勧告に向けた作業を開始されることと思いますが、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の最も基本的な使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。



1.地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保すること。
 また、民間給与実態調査の比較企業規模は変更しないこと。
2.公立学校教職員の給与については、公教育の社会的役割を踏まえ全国統一的な水準の確保につとめること。
 2005年度を含め当面、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。モデル給料表作成に当たっては、当該の被用者の代表である労働組合との緊密な意見交換を行うこと。
3.臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善をはかること。
4.年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現を図ること。
(1)「不払い残業」をなくすとともに、所定労働時間の短縮をはかること。とくに変則・交替制勤務職場における労働時間短縮を重視して取り組むこと。
(2)実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的な施策を引き続き進めること。
(3)年次休暇の取得を積極的に促進すること。
(4)労働時間短縮のために人員確保などの施策を講ずること。
5.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。
6.自治体における男女共同参画基本計画に基づき、女性公務員の採用、幹部職員への登用、女性の労働権確立や環境整備等に関する数値目標を含めた積極改善措置(ポジティブアクション)を講ずること。また、計画等の策定にあたっては当該労働組合との十分な協議を行い合意に基づくこと。
7.育児等を行う職員の両立支援に係わる国の措置を踏まえた施策を実施するとともに、育児休業・介護休暇の男性取得促進のための施策を行うこと。
8.高齢者再任用制度が、希望するものすべてが雇用されるなど実効性のある制度として定着するよう積極的な施策を行うこと。
9.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進すること。
10.公務職場に障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
11.刑事事件で禁錮以上の刑に処せられた場合のうち、公務に関わる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう、分限条例の改正を行うこと。
12.各人事委員会の勧告に当たっては、当該労働組合と十分交渉・協議すること。また、勧告に向けた調査や作業に当たっても労働組合との合意に基づき進めること。

以上