2005年度公務労協情報 28 2005年5月18日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院が「給与構造の基本的見直し(措置案)」を提示−5/18

−公務員連絡会は、上申書提出、職場決議、個人要請はがき行動等実施へ−

 公務員連絡会は、18日、人事院交渉を実施し、地域給与・給与制度見直しの検討状況を質した。公務員連絡会は「地域給与・給与制度見直し闘争委員会」の下の構成組織書記長クラスで構成する対策委員会メンバーが参加し、人事院は山野給与局長、吉田給与局次長、鈴木職員団体審議官らが対応した。
 冒頭、山野給与局長から、「給与構造の基本的見直しについては、昨年11月2日に素案を提示し、11日には公務員連絡会から申入れをいただき、その後、いろいろな形で意見交換を行ってきた。今回は、議論を具体化するために現時点で検討している案を提示したい。これに基づいて、今後、本年の勧告に向けて皆さんと協議して案を詰めて参りたい。これからいくつもの山があると思うが、人事院としては、誠心誠意対応したいと考えているのでよろしくお願いしたい」との発言があり、続いて吉田次長が別紙「給与構造の基本的見直しについて(措置案)」の内容を説明した。

 説明に対し、山本対策委員会委員長(公務員連絡会事務局長)から「公務員連絡会としての基本的考え方は昨年11月に申し入れたとおりであるが、俸給水準を5%引き下げるという提案が変わっていないことは遺憾である。国家公務員は9割が地方に勤務しているし、地方公務員の場合には極めて大きな影響を及ぼすことになる。今回の引下げは、仕事の量が減ったわけではないし、懲戒処分を受けたわけでもないのに、どうして引き下げられるのか納得できないというのが、おおかたの組合員の声である。地域別の官民給与の均衡を図る必要性については否定するものではないが、俸給水準を下げること以外の方法がないのかどうか検討すべきである。政府は今後2%の経済成長を前提にしており、当然給与も上がることになるので、その中で均衡を図っていくという考え方も成り立つのではないか。そういう意味では、人事院の提示された案は、勤務意欲に重大な影響を及ぼすものであり、納得できない」と、基本姿勢を表明した上で、以下のとおり人事院の見解を質した。

(1)「民間賃金の低い地域と民間賃金の高い地域との賃金格差を踏まえ、俸給水準を5%程度引き下げる」としているが、地域別官民較差に基づいて俸給水準を設定するということではなくて、公務員給与の地域別配分の見直しとして行うものであることを明確にしていただきたい。
(2)俸給水準引下げとフラット化で合わせて最高7%程度の引下げになるが、その根拠は何か。また、枠外はどうするのか。
(3)地域手当の指定基準はいつ頃示すつもりか。早く示してもらわないと判断できない。また、5万人以上の市ということだが、未満のところは対象にならないのか。
(4)広域異動手当の「原則として」はどういう意味か。
(5)評価制度の整備は引き続き検討するということであるが、その整備や労使関係制度の改善がないまま、査定昇給制度を導入することには反対である。

 これらの質問に対し、人事院側は次のとおりの見解を示した。
(1)これまで、人事院の民調方式で見た場合、民間給与の地域格差は20%ぐらいあるのではないかということを申し上げてきたが、それとブロック別に見た場合最大5%程度の官民逆較差があるということが一致している。ブロック別の較差で自動的に水準を決めるというものではないが、参考資料ということではなく、大きな要因である。現行の12%を18%にするときの極めて重要な判断基準がブロック別較差の5%ということである。ベアがあれば、俸給水準引下げではなく、地域手当の上積みで地域格差を調整するというのがオーソドックスな手法であるが、すでに3〜4年かけて検討してきているし、現下の経済情勢を踏まえるとベアがあったときに行うという手法はとれないため、異例の形を取らざるを得ないということである。
(2)7%の根拠としては、全体で5%下げるがこれに加えて、40代後半や50代の給与水準は全国ベースで民間がさらに6%弱低いので、フラット化で民間に近づけようということである。それを一気にやるということではなく、民間との逆較差が大きい50代についてさらに2%下げるということだ。枠外は最高号俸に切り替えるので7%以上下がる。
(3)地域指定の基準については調整した上でなるべく早く示して議論を進めたい。また、これまでは10万人の市は単独で指定してきたが、経済活動が安定的に行われているまとまりとしては5万人以上が適当ではないかということだ。
(4)広域異動手当の「原則として」は、転居しさえすれば必ず支給するということではないということである。
(5)査定昇給制度については、評価制度が整備されるまでは、「特に良好」などの分布率は2割程度にすることなどを示したいということだ。現在の普通昇給が4号俸昇給であるのに対し、「特に良好」な場合は8号俸昇給になる。ただ、持ち回り的運用については、課長通知等でその是正を求めてきたにもかかわらず直っていないということがあり、そこは「判断基準」などを示したい。

 以上のように、俸給水準引下げや査定昇給制度の導入について人事院から再検討するとの見解が示されなかったことから、最後に山本対策委員長から「今回の措置案でも公務員連絡会の主張が全く反映されておらず、今まで聞いていたのとは異なって枠外在職者はさらに大幅な引下げともなる、極めて遺憾な内容だ。今後は『措置案』をもとに交渉・協議して行かざる得ないが、本日段階では、第1に地域給については合意に基づき、一方的見直しを行わないことを求める。第2に評価制度の整備や労使関係制度の改善がないまま査定昇給制度等を本年拙速に勧告しないことを強く求める。これから組織内で議論をするが、われわれの対応はかなり厳しいものになることを申し上げておきたい。なお、『措置案』に対する公務員連絡会の考え方は後日提出するので、それに基づく交渉・協議を要請する」と述べ、局長が誠意ある協議を行うことを約束したことから、本日の交渉を終えた。

別紙−人事院の「措置案」

給与構造の基本的見直しについて(措置案)


平成17年5月
人 事 院


1 俸給表構造の見直し
 現行の俸給水準は、官民給与の全国平均水準をベースに設定されている。地域の公務員給与がそれぞれの地域の民間賃金水準をより適切に反映したものとなるよう、民間賃金の低い地域と民間賃金の高い地域との賃金格差を踏まえ、俸給水準を5%程度引き下げることとする。同時に、年功的な給与上昇を抑制し、職務・職責に応じた給与とするため、級構成、号俸構成及び水準カーブの改正を行う。

 行政職俸給表(一)について次のような改正を行う。

(1) 級構成の再編
 次のような級構成の見直しを行い、現行の11級制から10級制の級構成とする。
ア 職責の同質化が進み、人事管理上も別々の級として存続させる必要性の少なくなった現行1・2級及び現行4・5級を統合する。
イ 平成13年1月の省庁再編に伴い従前よりも多数の職員を抱え広範かつ高度な業務を担うことになるなど、従来の本省課長の職責を上回る職務が生じてきていることから、これらの職務を適正に評価するため、新たな級(新10級、現行12級相当)を設ける。

(2) 号俸構成等
ア 昇給制度の見直しに伴い、勤務実績を反映させやすくするため現行の号俸を4分割する。
イ 初任の級を除く現行4級以上の各級について、職務給の観点から級間の水準の重複を減少させるため初号等の号俸をカットする。
ウ 年功的な給与制度を見直し、各職務の級における職務・職責の違いを明確化するため、いわゆる枠外昇給制度を廃止する。

(3) 俸給水準是正
 俸給水準を全体として5%程度引き下げる。
ア 現行4級以上の各級について、民間水準を上回る傾向が見られはじめる30歳代半ばの職員が適用されている号俸以上の号俸については、水準をさらに最高2%程度引き下げる。他方、現行4・5級等の前半号俸の水準引下げを5%未満に抑制する。
イ 現行1級・2級及び3級の前半号俸については引下げを行わない。3級の後半号俸については4級以上の水準引下げを踏まえ必要最小限の引下げを行う。

(4) 昇格時の号俸決定方式
 昇格時の号俸決定方式について、1号上位昇格方式に代えて、昇格前の俸給月額に職務の級別に一定額を加算した額を基礎とする俸給月額となるような方式に改める。

(5) 切替方法
ア 切替日の前日に受けていた号俸等及び当該号俸等に係る経過期間に応じ、新俸給表における細分化された号俸に切り替えることを基本とする。
イ 枠外昇給制度を廃止することに伴い、枠外在職者は全て最高号俸に切り替える。
ウ 級統合に伴う切替については、現行1級及び4級在職者については、現行俸給表上の2級及び5級における直近上位の額の号俸を基礎として、ア及びイに従って切り替える。
エ 新10級の新設に伴う切替については、切替日において新9級(現行11級)から新10級に昇格したものとした場合に得られる号俸に切り替える。

(6) 指定職俸給表
 行政職俸給表(一)11級と同程度の引下げを行うとともに、下位号俸をカットする。

(7) 行政職俸給表(一)及び指定職俸給表以外の俸給表の見直し
ア 級構成については、行政職俸給表(一)の取扱いとの関係を踏まえ、各俸給表ごとに適用される各職種における運用実態を考慮しつつ見直す。
イ 号俸構成は、行政職俸給表(一)との均衡を基本として見直す。
ウ 水準是正については、行政職俸給表(一)との均衡を基本として行う。

2 地域手当及び広域異動手当の新設
(1) 地域手当の新設
 公務員の俸給水準を民間賃金の低い地域の水準のベースに引き下げることに併せて、調整手当を廃止し、民間賃金の高い地域に勤務する職員に対し、地域手当を支給する。
ア 支給地域の指定は、民間事業所が集積し、経済活動が比較的安定的、継続的に行われている地域を単位として行うとの観点から、人口5万人以上の市を単位として行う。
 地域の一体性を考慮して、支給地域に近接する地域の指定について検討する。
イ 民間賃金の高い地域を決定する指標については、現行の調整手当制度における支給地域等の見直しにおいて用いられてきたこと等を考慮して、賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の特別集計による賃金指数を基礎資料とする。
ウ 東京都区部の現行給与水準を維持できる水準を上限としつつ、現行の調整手当との連続性等を考慮して、支給区分を3%、6%、10%、12%、15%、18%の6段階とする。
エ 地域指定は、俸給水準が5%程度引き下げられることを考慮した新たな基準に基づいて行う。
オ 地域手当の支給区分が下位の地域に異動した職員については、一定期間手当の特例を検討する。

(2)広域異動手当の新設(転勤手当の名称を「広域異動手当」とする。)
 俸給水準の引下げに伴い、円滑な人事管理の実現に資するため、転勤のある民間事業所(広域展開企業)の賃金水準等を考慮して、転勤を行った職員に対し、最大3年間を限度に3〜6%程度の広域異動手当を支給する。
ア 原則として、転居を伴う勤務地を異にする異動を行った職員に支給する。
イ 地域手当との併給調整を行う。また、特地勤務手当に準ずる手当と広域異動手当が併存する場合には、両手当間で併給調整を行うことについて検討する。
ウ このほか、異動者に対する措置として、民間事業所における単身赴任手当の支給実態を考慮して、単身赴任手当の額の在り方について検討する。

3 勤務実績の給与への反映
(1) 勤務成績に基づく昇給制度の導入
 勤務成績を昇給により反映させやすくするため、現行の号俸を4分割し、特別昇給と普通昇給を一本化する。
ア 昇給のための勤務成績判定期間を1月1日〜12月31日とし、昇給時期を全府省共通の年1回、1月1日に統一する。
イ 職員を初任層、中間層及び管理職層に区分し、当該職員層に応じて勤務成績に応じた昇給号俸数及び「特に良好」以上の分布率を設定する。その際、管理職層は、それ以外の職員層よりも「良好(標準)」の場合の昇給号俸数を抑制する。
ウ 55歳昇給停止措置については現行どおり維持することとする。
エ 初任給決定方法については、基本的には現行の考え方を維持する。

(2) 勤勉手当への実績反映の拡大
 勤勉手当について、勤務実績を支給額により反映し得るよう、「標準」の成績区分の成績率を引き下げることにより得た原資によって、「特に優秀」及び「優秀」の成績区分の人員分布率を拡大する。また、あわせて、当該人員分布率の基準を設定する。
ア 成績区分別の成績率については、「標準」の成績区分の成績率を5/100引き下げる(一般職員70/100→65/100、特定幹部職員90/100→85/100)。これに伴い、懲戒処分を受けた職員等「標準未満」の成績区分の成績率を引き下げる。
イ 成績区分別の人員分布率の基準を設定する。

(3)昇格基準の整備
 本格的な昇格基準は新評価制度の導入にあわせて整備する。それまでの間の暫定的な措置として、以下のとおり現行制度の枠内での昇格運用の改善措置を進める。
ア 昇格の要件として勤務成績が良好であることを明示し、昇格に係る勤務成績の判定に当たって以下のような運用を行う。
@ 昇格に係る勤務成績判定のための基礎資料の一つとして、勤務評定記録書等とともに昇給及び勤勉手当に係る勤務成績の判定結果を活用する。
A 昇格前1年間における勤務成績が「不良」又は「要努力」に該当していないこと。
イ 級別資格基準表については、職務の級の再編等に応じて修正した上で、昇格のための勤務成績を総合的に判断するための期間として当面存置する。

(4)給与決定のための勤務成績の判定についての改善
 評価システムの整備については引き続き検討を行うこととするが、当面、昇給、勤勉手当における勤務成績の判定をより実効あるものとするとの観点から、従来から各府省で行われている給与上の勤務成績の判定手続をベースにその明確化を図る。
 上位の勤務成績の判定は、現行制度と同様に定められた予算枠内で相対的な判定を行うが、判定を行いやすくするとの観点から判定の着眼点、成績の判断基準等の例示について検討する。「良好(標準)未満」の勤務成績の判定には枠は設けず、懲戒処分や矯正措置を受けた場合など全府省共通の統一的な運用の基準を示すことについて検討する。

4 その他の課題
(1) 専門スタッフ職俸給表の新設
 行政の多様化、複雑・困難化に対応するとともに、複線型の人事制度の導入に向けての給与制度上の環境整備として、専門的な能力の活用を目的として、3級構成程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表の新設を検討する。

(2) 俸給の特別調整額の定額化
 特別調整額について、年功的な給与処遇を改め、管理職員の職責等を端的に反映できるよう、民間企業において役付手当が定額化している実態も踏まえ、定率制から定額制に移行する。
ア T種〜X種の適用官職については現行どおりとする。本府省補佐の特別調整額(8%)について本府省手当に改める。
イ 手当額は、職務の級別・支給区分別の定額制とする。
ウ V種〜X種の手当額については、管理職昇任前の超過勤務手当が支給される職員との関係を考慮し、地方機関の超過勤務手当の支給実績を考慮した改善を行う。

(3) 本府省手当の新設
 本府省における職務の特殊性・困難性、人材確保の必要性に配慮し、本府省課長補佐の特別調整額を本府省手当に改め、措置の必要性が認められる課長補佐以下の職員を対象とする。
なお、手当額は、職務の級別(役職段階別)の定額制とする。

(4) 民間の同種手当の動向等に鑑み、特別調整額を官民比較の給与種目に加え、通勤手当を比較給与種目から除く。

以上