2005年度公務労協情報 36 2005年6月23日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院総裁に2005人勧期要求書を提出−6/23
−総裁から“企業規模維持し適正な水準確保”の基本見解引き出す−

 丸山議長はじめ公務員連絡会委員長クラス交渉委員は23日、13時30分から佐藤人事院総裁と交渉を持ち、公務員給与に対する人事院の基本姿勢を質すとともに、「2005年人事院勧告に関わる要求書」(別紙)を提出した。

 交渉の冒頭丸山議長は、「本日は、2005人事院勧告に関わる要求書を提出し、今後交渉・協議を積み上げていきたいと考えているが、本年は、それに先立ち、総裁から人事院の基本姿勢を改めて確認させて頂きたい」とし、次の通り、人事院の公務員給与に対する基本姿勢を質した。
(1) 政府は、21日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」を閣議決定した。その中で、国・地方の公務員給与の見直しやこの秋に「総人件費改革のための基本指針」を政府として策定することが触れられている。これは、人事院勧告に対する「政治的圧力」であり、われわれとしては極めて遺憾だと考えている。昨日(22日)、総務大臣に会って閣議決定の経緯や真意を質し、政府としての人勧制度尊重の基本姿勢に変わりはないことを確認した。
(2) このことを踏まえ、人事院には、労働基本権制約の代償機関としての本来の使命に照らした基本姿勢を明確に表明し、毅然とした姿勢を貫いてもらいたいと考えている。今後本格的に勧告に向けた話し合いを行う前提として、総裁から、比較企業規模の問題を含め官民比較のあり方に関する基本的な考え方を改めて聞いておきたい。

 これに対して総裁は、「現在、地域の民間賃金を上回る給与、ほぼ自動的に見える昇給など公務員給与に対して強い批判があり、地域給与、勤務成績に基づく昇給を柱とする給与構造見直しを進め、民間賃金の傾向と不均衡の大きい部分を適正化することによって、公務員給与の納得性を確保していくことが目下の急務と考えている。皆さんと更に意見交換しながら検討を進めていきたい。官民比較のあり方については、我が国の労働市場、賃金構造の動向に留意しつつ常にその妥当性を検証する必要があるが、現行の比較企業規模は、民間会社の従業員の過半数をカバーしており、このような状況に大きな変化がなければ適当なものと考えている」との見解を示した。

 これに対して丸山議長は、「3月22日の春闘段階の交渉で総裁は『現行の官民給与比較基準によって、公務員の給与水準が適切に確保されていると認識しており、これを変更することは考えていない』との見解を示している。本日の総裁の見解は、春の段階の見解を前提としているとの認識に立ち、労働市場等の大きな変化がない限り『比較企業規模等の官民比較の基本的枠組みを維持し、公務員給与の水準を確保する』との基本姿勢を表明したものとして受け止め、われわれとしても今後の人勧期の話し合いに真摯に対応していきたい」と、人事院総裁が、官民比較の基本的枠組みを維持し公務員給与の水準を確保する、との基本姿勢を表明したことを受け、今後、公務員連絡会として人勧期の交渉・協議に対応していくとの考え方を示した。
 そして、本年の課題である地域給与・給与制度見直しについては、「われわれとしては、措置案にあるような@ブロック別官民較差に基づいて俸給表水準を引き下げる地域給与の見直し案やA新たな評価制度が整備されないまま勤務成績に基づく昇給制度を導入することは、到底認められないと考えている。今後、交渉・協議を積み上げさせて頂くが、人事院としてもわれわれの理解と納得(合意)を得るよう誠実に対応してもらいたい。今回の見直しは勤務条件の重大な変更でもあり、一方的に勧告するようなことはやめてもらいたい」と、十分交渉・協議、合意することを強く求め、一方的に勧告することは認められない、との考え方を表明した。
 これに対して総裁が「公務員連絡会の考え方は重く受け止め、人事院として今後真摯に対応していきたい」と応えたことから、要求事項を巡るやり取りに移り、山本事務局長が、@地域給与・給与制度見直しAベア・一時金等の給与改善B介護・育児職員の短時間勤務制度など重点課題を説明、今後交渉を積み上げ、しかるべき段階に総裁から回答するよう求め、交渉を終えた。

 公務員連絡会は、この後、企画調整・幹事の合同会議を開き、@22日の総務大臣の人勧制度尊重A本日の人事院総裁の企業規模と水準確保、の回答によって、2005人勧期闘争を本格的に進める最低条件はクリアされたとし、6月7日に決定した人勧期方針どおり、今後、人事院との交渉・協議や諸行動に全力で臨んでいくことを確認した。


(別紙)

2005年6月23日


人事院総裁
 佐 藤 壮 郎 殿


公務員労働組合連絡会  
議 長  丸 山 建 藏



2005年人事院勧告に関わる要求書


 常日頃から公務員労働者の処遇改善に向けてご努力いただいていることに敬意を表します。
 政府は、21日閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」で、より一層、公務員の総人件費を削減する方針を明確にしており、公務員給与はいまや完全に「政治の道具」として取り扱われています。政府が公務員給与の見直しや水準引下げを方向付けることは、自らが労働基本権制約の代償機能を否定するものであり、許されることではありません。
 われわれは、本年の勧告を巡る具体的な交渉・協議を開始するに当たり、貴職が官民比較方法の基本的枠組みの維持や公務員給与の水準確保などについて、改めて基本姿勢を明確にすることが不可欠だと考えます。
 また、本年の最重要課題である地域給与・給与制度見直しについて、貴職は、5月18日、勧告に向けた「措置案」を提示しました。われわれは、この間、俸給表水準を引下げる地域給与の見直しを行わないことや、新たな評価制度が整備されるまでは査定昇給制度等は拙速に勧告しないよう求めてきましたが、こうしたわれわれの意見が全く受け入れられず、素案と基本的に同様の「措置案」が一方的に示されたことは極めて遺憾といわざるを得ません。貴職には、6月3日に提出した申入れ事項の実現に向け、最大限努力することを強く求めます。
 以上のほか、本年は、@公務員労働者の給与水準を維持・改善する勧告を行うことA一時金を増額することB育児・介護を行う職員の短時間勤務制度導入の意見の申出を行うこと、など重要課題が山積しています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、2005年人事院勧告に関わる下記事項を実現することを強く要求します。



1.賃金要求について

(1) 地域給与・給与制度の見直し等について
@ 地域給与見直しに当たっては、地域別官民較差に基づく俸給表水準の引下げを行わず、合意できる見直し案を提示すること。
A 職務・職責重視の給与制度見直しに当たっては、納得性のある職務評価や格付け手法と手続きを検討すること。昇給カーブのフラット化については、その根拠を明確にするとともに、段階的に進めること。
B 「勤務実績の給与への反映」等の給与制度見直しについては、4原則2要件を具備した評価制度を確立することとし、本年については拙速な勧告は行わないこと。
C 地域給与・給与制度見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議、合意し、一方的な勧告は行わないこと。

(2) 本年の給与勧告について
@ 2005年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の月例給与の水準を維持・改善し、体系・配分等について十分な交渉・協議を行い、合意に基づく給与勧告を行うこと。
A 一時金については、民間の実勢を踏まえ、月数増を勧告すること。

2.労働諸条件の改善について

(1) 短時間勤務制度の実現等について
@ 育児・介護を行う職員の両立支援策の残された法制度改正事項の早期実現を図ること。そのうち、育児・介護を行う職員の短時間勤務制の実現を最優先させ、本年の勧告時までに意見の申出等を行うこと。
A 「多様な勤務形態に関する研究会」最終報告も踏まえ、常勤職員の短時間勤務制度の実現に向けた施策や徹底した勤務時間管理体制の構築による抜本的な超過勤務縮減策をとりまとめること。

(2) 労働時間短縮、休暇・休業制度の改善について
 公務におけるワークシェアリングの実現に向け、@年間総労働時間1800時間体制Aゆとり・豊かな時代にふさわしい個人の価値を尊重する休暇制度の拡充B少子・高齢社会に対応し、自己啓発・自己実現や社会貢献を促進するための総合的な休業制度、などを実現すること。

(3) 男女平等の公務職場の実現について
@ 「子ども・子育て応援プラン」を踏まえ、取得率の数値目標等を明確にした育児休業の男性取得の促進策をとりまとめること。
A 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の確実な実施に向け、勤務条件を所管する立場から、必要かつ適切な指導を行うこと。

(4) その他の事項について
 公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。

以上