2005年度公務労協情報 4 2004年11月2日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院が「給与構造の基本的見直し(素案)」を提示−11/2

−公務員連絡会は、交渉の強化、緊急打電、はがき行動、署名行動等の実施確認−

 公務員連絡会は、2日、人事院交渉を実施し、地域給与・給与制度見直しの検討状況を質した。公務員連絡会は「地域給与・給与制度見直し闘争委員会」の下の構成組織書記長クラスで構成する対策委員会メンバーが参加し、人事院は山野給与局長、鈴木職員団体審議官らが対応した。
 冒頭、山本対策委員会委員長(公務員連絡会事務局長)が「10月18日に開いた公務員連絡会の第2回総会で『地域給与・給与制度見直し闘争委員会』を設置し、その下に各構成組織書記長で構成する『対策委員会』、事務局等で構成する『実務作業委員会』を設置した。給与構造見直しに関わっては、この『対策委員会』が中心となって節々で給与局長と、日常的には職員団体審議官と実務作業委員会との交渉をお願いしたい。本日は、夏の人事院報告後の作業状況を示してもらいたい」と現段階での作業状況を質した。
 これに対し、山野給与局長は「現時点で検討中の素案を提示したい。人事院としては、さらに皆さんや各府省など関係者との議論を進め、来年の勧告に向けて具体化していきたい」と述べ、鈴木審議官が資料「給与構造の基本的な見直し(素案)」を説明した。
 説明に対し、山本委員長が、@本年の報告の「たたき台」から「素案」に変わった意味はなにかA公務員制度改革との関わりはどうかB評価制度についてどう考えているのか、と質したのに対し、給与局長は、以下のとおり答えた。
(1) 「たたき台」から「素案」という表現になったことには特段の意味はなく、皆さんに示して十分ご意見をいただいて成案を得たいということで、実務上そういう表現にしたものだ。
(2) 公務員制度改革とは連携が必要であり、人事院としても対応していくが、皆さんにも公務員制度改革の当事者として進めてほしいと思っている。
(3) 評価制度の整備は極めて重要であることは人事院としても主張してきたところであるが、給与だけでなく任用や研修などにも関わる話であることから、公務員制度改革全体の中で検討していく必要があり、人事院として積極的に対応していきたい。

 さらに公務員連絡会は、@公務員制度改革は2006年度実施ということになっているが、この給与構造見直しはどうするのか、A「来年の勧告に向けて具体化していきたい」との見解は、人事院として来年勧告するとの意思表明か、B評価制度については人事院として研究会を設けて検討してきた経緯があるが、その延長上の話なのか。それとも、行革推進事務局が具体案を出すのを待つつもりか、C見直しの方向性として「民間準拠」「水準引下げ」というのは納得できない。公務員賃金はこうあるべきだという議論をすべきではないか。民間賃金の低いところに合わせるという考えはこれまでと根本的に違うのではないか、D全国1本の俸給表が前提と理解してよいか、E人勧制度の下で行うのか、基本権を見直す中で行うのかでは評価制度のありようも異なるが人事院としてはどう考えているのか、と人事院の姿勢を追及した。
 これに対し、山野局長は@2006年度は1つの目標であり、これまでそれに基づいて進めてきたがどこまで具体化できるかは関係者との話し合い次第であり、2006年度を前提とするとか、2006年度に間に合わせなければいけないということではなく、いい案を作りたいと考えている、A皆さんと十分話し合うことを前提に来年の勧告を目指して具体化作業を進めると言うことであり、勧告の意思表明ではない、B評価制度について、給与に関わる評価制度については給与局としてとりまとめを行い、打ち出したいと考えているが、今の段階でそれがいつになるかは申し上げられない。公務員制度改革全体に関わるので関係者と議論していきたい、Cトータルの官民比較の中で、どう配分するかという基本姿勢に変わりはない。地域間でどう配分するかというとき、今の調整手当の最高は12%だが、ブロック別較差を見ると小さすぎる。では、20%ぐらいにしたらどうかということで、その原資を生み出すために俸給表を5%下げるという話で、従来の考え方の延長上にあり、基本的手法としては継続性がある、D人事院としては全国共通俸給表を維持し水準を引き下げるという本日提案した内容がベストと考えているが、良いものがあれば検討することにやぶさかではない、E労働基本権の問題は人事院として言う立場にない。現在の人勧制度の下での検討として行っているが、そのもとでいろいろ制度を改善していくことを否定するものではない。今でも交渉権はあるので十分話し合っていけばよいと思う、との見解を示した。

 これらのやり取りを踏まえ、最後に山本委員長が、「給与構造見直しについては、人事院の報告の際にもわれわれの基本的見解を明らかにしてきたが、残念ながら本日の素案にそれが反映されていないのは極めて遺憾である。後日、素案に対する公務員連絡会としての考え方について申入れを行うが、本日は基本的な点だけを要請しておきたい。一つには、給与構造の見直しは重大な勤務条件の変更であることから、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて検討作業を進めることだ。合意のないまま、一方的な勧告を行うことは断じて認められない。二つには、地域別官民較差を考慮した全国共通俸給表水準の切下げ案は撤回を求める。その上でわれわれが合意できる見直し案を提示していただきたい」と要請し、本日の交渉を終えた。


公務員連絡会は第1回対策委員会で当面の行動強化を確認

 交渉終了後、公務員連絡会は「地域給与・給与制度見直し第1回対策委員会」を開き、本日の人事院提案を踏まえて次の通り取り組みを強化することを確認した。
(1) 11月11日、公務員連絡会として@交渉・協議、合意することA俸給表水準引下げ案は撤回することB評価制度についての交渉・協議を行うこと、などを中心とした申入れを行い、交渉・協議を一段と強化する。
(2) 11月4〜5日にかけて各構成組織の各級単位で緊急要請打電(レタックス)行動に取り組む。
(3) 11月4日から30日にかけて全組合員参加の要請はがき行動を実施する。
(4) 12月から個人署名行動に取り組む。
(5) 各構成組織・地方官公部門単位で公務員連絡会発行のパンフ等を活用し徹底した学習会を組織する。



〔資料〕

給与構造の基本的見直し(素案)


2004年11月2日
人  事  院


○ 公務部内の不均衡を是正するとともに、国民から納得される公務員給与となるよう地域における公務員給与水準をより民間実態に即したものとする。
○ 職務給にふさわしい俸給表構造に改めるとともに、職務・実績に応じた処遇の強化を図る。
○ 複線型人事に資するよう給与制度を整備する。

1 俸給水準の引き下げと地域に応じた適切な給与調整の実現
 地域における国家公務員の給与水準について、地域ごとの民間賃金の水準を的確に反映したものとなるよう、次の措置を講じる。

(1) 民間賃金の低い地域(ブロック)の官民給与比較の結果を考慮して、全国共通俸給表の俸給水準を引き下げる。

(2) 地域の民間賃金との均衡を図るため、民間賃金の相対的に高い地域に勤務する職員に対し、地域手当(地域調整額)を支給する。地域手当(地域調整額)による調整は、官民給与の地域差を考慮して俸給等の20%程度を上限とする。

(3) 円滑な転勤運用を確保するため、転勤手当を新設する。現行の調整手当及び異動保障は廃止する。

2 俸給表構造の見直し
 より職務・職責を反映し得るよう、級間の水準差の是正、級構成の再編、昇給カーブのフラット化などの俸給表構造の見直しを行う。

(1) 級間の水準差の是正と級構成の再編
 各級の水準の重なりが大きいことが、公務員給与が年功的と受け取られる要因となっていることを踏まえ、級間の水準の重なりを少なくする方向で見直すとともに、行政職俸給表(一)の級構成の見直しを行う。
 その他の俸給表はこれとの均衡を考慮しつつ必要な措置を行う。

(2) 昇給カーブのフラット化
 年功的な給与処遇の是正を図るため、次のように昇給カーブのフラット化を進める。
 民間の同年齢層の給与水準と比べ高い水準にある各級の高位号俸の水準を引き下げる。(水準の引き下げ幅については、民間の中高齢層との水準格差を踏まえ、地域調整のための一律引き下げ分とも合わせ、均衡を図る。)
 高位号俸の水準引き下げにより生ずる原資を用いて、前半号俸の引き上げを行う。適用者のきわめて少ない4級以上の各級の若い号俸については号俸カットを行う。

3 勤務実績の給与への反映
(1) 実績評価に基づく昇給制度の導入
 勤務実績が昇給額に適切に反映されるよう、毎年の職員の勤務実績に基づいて昇給額を決定する昇給制度(査定昇給)を導入し、現行の普通昇給と特別昇給を廃止する。
@ 昇給幅の細分化等
 勤務実績をきめ細かく昇給に反映させるため、現行の号俸を細分化し、勤務実績に応じた昇給の基準を設定する。また、現在4半期に1回とされている昇給期を年1回とする。
A 枠外昇給制度の廃止
 職務給の徹底を図るため、いわゆる枠外昇給制度を廃止する。

(2) 勤勉手当への実績反映の拡大
 民間における特別給の考課査定分の動向を踏まえつつ、勤務実績を支給額により反映し得るよう、標準者の支給月数の引き下げなどによりプラス査定のための財源を確保するとともに、成績率及びその分布割合の基準を設定する。


(3) 昇格(降格)基準の見直し
 下位の級での勤務実績に関する具体的要件(例えば、昇格前一定期間又は一定の回数の実績評価の結果に表れた勤務実績が標準を上回っていること等)を設定するなど昇格(降格)の基準の明確化を図る。

4 その他の課題
(1) 行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、高度の専門能力を持つスペシャリストがスタッフとして活躍できる処遇の枠組みを準備するとともに、在職期間の長期化への対応として、職員が専門的な能力・経験を活かしつつ多様な働き方ができるよう、複線型の人事制度の導入に向けての給与制度上の環境整備として、3級構成程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表を新設する。

(2) 職務・職責をより反映するという観点から、本府省職員に対する手当の新設及び俸給の特別調整額の定額化を行う。

以上