2005年度公務労協情報 46 2005年8月11日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院総裁と交渉し2005勧告・報告内容確認−11日
委員長クラス交渉委員が地域給与・給与制度見直し勧告・報告に強く抗議

 丸山議長ほか委員長クラス交渉委員は、11日午後1時から、佐藤人事院総裁と最終交渉をもち、2005人事院勧告・報告の内容を確認した。この交渉の中で丸山議長は、地域給与・給与制度見直しに関する勧告・報告については、われわれの要求が反映されておらず「到底認められない」との態度を表明し、納得を得ないまま勧告しようとする人事院の姿勢に抗議した。公務員連絡会は、この総裁回答を踏まえ、明日(12日)午後、代表者会議と地域給与給与制度見直し闘争委員会の合同会議を開いて15日の勧告に臨む態度を協議する。そして15日の勧告日には、官房長官、総務大臣、厚生労働大臣等の給与関係閣僚に対して、@本年の給与改定勧告については勧告通り実施することA地域給与・給与制度見直し勧告・報告については実施の態度決定を見送ること、などの要求書を提出することとしている。

 人事院総裁交渉の冒頭、丸山議長は「6月23日に総裁に対して要求を提出して以降、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答を頂きたい」として、回答を求めた。
 これに対して総裁は、別記の通り本年の勧告・報告の概要を回答した。

 これらの回答に対して丸山議長は、次の通り公務員連絡会としての本年の勧告・報告に対する見解を述べ、人事院の姿勢に強く抗議した。
(1) 人勧期の交渉・協議のなかでわれわれは、@公務員労働者の賃金水準を維持・改善する給与勧告を行うことA俸給表水準を引き下げる地域給与見直しを行わないことB新たな評価制度が整備されるまでは勤務実績反映の給与制度見直しを拙速に実施しないこと、などを強く求めてきた。
 本年の給与勧告については、昨年、6年ぶりに下げ止まった俸給表が再び引下げとなるなど不満はあるが、現行制度下での官民比較の結果であり、われわれはやむを得ないものとして受け止める。
 地域給与・給与制度見直しに関わる勧告・報告内容については、地域手当の指定地域や査定昇給の段階的な実施、現給保障など、事務当局と真剣な交渉を積み上げてきた経緯もあるが、われわれが強く反対した俸給表の引下げや勤務実績反映の給与制度見直しを勧告することは、到底認めることはできない。われわれの生活だけでなく地域経済にも大きな影響を与える地域給与見直しや労使関係のあり方の基本に関わる勤務実績反映の給与制度見直しについて、措置案を提示してから3ヶ月たらずの話し合いで、多くの組合員が納得のいかないまま、勧告を強行する人事院の姿勢に強く抗議する。また、公務員連絡会は、勧告の翌日、全国の組合員が抗議の意を表す第5次全国統一行動を実施することとしているので、人事院としても組合員の怒りの声を真剣に受け止めてもらいたい。
(2) 公務員連絡会としては、勧告後は政府に対して地域給与見直しや勤務実績反映部分については実施しないよう求めていく方針であることを伝えておく。
(3) 6月23日に本年の人勧期要求を提出するに当たり、私は総裁と異例のやり取りをさせて頂いた。そのやり取りを通して、「労働市場等の大きな変化がない限り、比較企業規模等の官民比較の基本的枠組みを維持し、公務員給与の水準を確保する」という人事院の基本姿勢に変わりがないことを確認させて頂いた。次期臨時国会から来年度の予算編成期、さらには来年の勧告期など、今後も公務員給与を巡るさまざまな動きが出てくることが想定される。われわれは、これらの過程で人事院が本当に「基本姿勢堅持」の姿勢を貫くのかどうか、重大な関心を持って見守らせて頂く。
 本年の勧告に対して、「霞ヶ関キャリアのお手盛りだ」という地方の組合員の強い批判が依然としてあり、人事院に対する不信感は相当高まっている。総裁には、この点を十分ご認識頂き、今後の中立・公正な人事行政への信頼回復に全力で当たってもらいたい。

 この公務員連絡会の見解表明に対して総裁は、「ただいまの発言の趣旨はよくわかった。この間の話し合いの中で組合の意見はできるだけ反映したつもりであるが、賛成して頂けなかったことは残念だ。組合の立場として『反対』であることについては理解する。今後とも、労働基本権の代償機能をしっかり堅持し、良好な関係を維持していきたい」との見解を示した。


−別記−
人事院総裁回答

2005年8月11日


<勧告日>
 勧告日については、8月15日となる予定である。

T 今年の給与改定関係

1 官民較差
 較差は、0.3%台のマイナスになる見込みである。

2 特別給
(1)特別給は、微増の見込みである。
(2)今年度については、12月期の勤勉手当に充てる。
(3)来年度以降については、6月期と12月期の勤勉手当に充て、その一部を上位の成績区分の拡大に充てる。

3 月例給の改定内容
(1)俸給表の改定
 基本的にすべての級・号につき、同率の引下げを行う。
(2)扶養手当の改定
 配偶者にかかる扶養手当を引き下げる。

4 実施時期及び年間給与の調整
(1)実施時期
 法改正後の月の初日から実施する。
(2)年間給与の調整
 年間給与の官民均衡を図るため、15年と同様の方式で調整する。
 具体的には、4月分の各人の給与に較差率を掛けた額の施行までの月数分と、6月の期末・勤勉手当に較差率を掛けた額を、12月の期末手当で調整する。

U 給与構造見直し関係

1 俸給表・俸給制度関係
(1)俸給水準
 ブロック別官民較差の最も低い地域の3年平均値を参考として、今年の改定後  の俸給表を、5%弱引き下げる。
(2)フラット化
 30歳代半ば以上の号俸を最大7%程度引き下げる一方、若年層は引き下げず、給与カーブをフラット化する。
(3)級の統合・新設
@行政職(一)については、これまでに提案した級の統合・新設を行う。
A他の俸給表もこれとの均衡を基本に、級の統合・新設を行う。
(4)号俸の分割
 きめ細かい勤務実績の反映を行うため、現行の号俸を4分割する。
(5)号俸構成
@級間の水準の重複を減少させるため、これまでに提案した号俸カットを行う。
A枠外在職者の実態を踏まえ、これまでに説明した号俸の増設を行う。
(6)昇格時の号俸決定
 現行の1号上位方式から、基幹号俸に一定額を加算する方式に変更する。

2 地域手当・広域異動手当関係
(1)地域手当
@賃金指数95.0以上を基本として、18%から3%の6区分で指定する。
A調整手当の支給地域のうち、地域手当の対象にならない地域等に関して、当分の間の措置を講ずる。
B官署指定、異動保障の制度、大規模空港の特例を設ける。
(2)広域異動手当
 60km以上300km未満3%、300km以上6%とし、3年間を限度に支  給する。

3 勤務実績の給与への反映
(1)勤務成績に基づく昇給制度
@普通昇給と特別昇給を統合し、5段階の昇給区分を設け、職員層ごとに、昇給号俸数を設定する。
A上位の昇給区分については、人員分布率を設定する。
B下位の昇給区分については、該当事由に関する判定基準を定める。
C昇給時期を1月1日に統一する。
D枠外昇給制度は廃止する。
E55歳昇給停止措置に代えて、55歳昇給抑制措置を導入する。
(2)勤勉手当への実績反映の拡大
 本年の勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部をもって上位の成績区分の適用者の  拡大を図るとともに、その分布率を設定する。
(3)勤務成績判定についての改善
 新たな評価制度が導入されるまでの間の措置として、昇給制度、勤勉手当制度の  見直しの運用に資するための改善を行う。

4 その他
(1)専門スタッフ職俸給表の新設
 補佐級から課長級に対応する3級程度のものとする。
(2)特別調整額の定額化
@俸給表別、級別、支給区分別の定額制とする。
A地方機関の管理職に適用される三種以下については、若干の改善のうえ定額化する。
(3)本府省手当
@役職別、級別の定額制とする。
A補佐については、現行の特別調整額の水準を実質維持し、係長・係員については、それぞれ一定の割合を基礎に各級ごとに額を定める。

5 実施スケジュールと経過措置
@俸給水準の引下げは、激変緩和措置を講じつつ、18年度から実施する一方、手当の新設等の新制度の導入は、18年度から段階的に逐次実施し、22年度までの5年間に完成させる。
A18年度から21年度まで、昇給幅を1号俸抑制する。
B新昇給制度における勤務成績判定についての改善措置等の活用は、18年4月から管理職層が先行し、引き続き一般職員について行う。

V 公務員人事管理関係

 報告で、行政の専門集団として専門能力向上と国家的視野・市民感覚の保持等が求められる旨を述べた上で、次の事項等に言及する。

(1)試験制度の改革、幹部要員の採用・選抜・育成の在り方、人事交流の推進・   民間人材の活用
(2)人事評価制度の整備
(3)女性職員の採用・登用の拡大
(4)分限制度の適切な運用
(5)勤務時間の弾力化・多様化、心の健康づくり
(6)再就職規制制度の適正な運用、早期退職慣行の是正と再任用制度の活用

 このうち、勤務時間の弾力化・多様化に関しては、多様な勤務形態に関する研究会の最終報告を踏まえ、
@育児・介護のための短時間勤務制の導入について、早期に成案を得て、別途意 見の申出を行うこととするほか
A修学等のための自発的休業制度
B勤務時間の弾力的な運用のための条件整備
C実効ある超過勤務の縮減対策
D厳正な勤務時間管理のためのITの活用
 等の検討を進め、施策を推進することとしている。

以上