2005年度公務労協情報 51 2005年9月21日
公務公共サービス労働組合協議会

総務省人事・恩給局が国公退手制度見直しの最終案提示−9/21
−公務労協退手対策委員が人事・恩給局長と交渉−

 公務労協退職手当制度見直し対策委員会の企画調整委員と労働条件専門委員会正副委員長は、21日午後3時から総務省戸谷人事・恩給局長と交渉をもち、国家公務員の退職手当制度見直しに関わる事務レベルの最終交渉を行った。
 この席上総務省側は、別紙の通り、「国家公務員退職手当制度の構造面の見直しについて(案)」とする退職手当制度見直しの最終案を公務労協に提示した。退職手当制度の見直しに関しては、6月17日に公務労協が退手制度見直しに関する要求書を提示、8月4日には対策委と人事・恩給局長との交渉で総務省側の見直しの考え方が示され、以降実務レベルの協議が積み重ねられてきた。21日の最終案は、これらの交渉や協議の経緯をふまえて提示されたもの。
 内容は、@支給率カーブのフラット化を中心とした見直しA役職別の貢献度を反映する調整額の新設、などが主な内容となっているが、来年度から俸給表水準が引き下げられることを前提にした制度見直しとなっている。
 この間公務労協は、公務員給与を取り巻く厳しい情勢等を踏まえた慎重な検討を求め、@行(一)4〜6級の低位の区分の調整額の引上げA他の俸給表の対応関係の改善B特労法適用職員の労使交渉を尊重した規定のあり方C育児休業や在籍専従期間の通算期間のカウント方法の改善、など制度見直しに関わる要求を提出して協議を積み重ねてきた。21日の最終案は、不十分ではあるが部分的には公務労協の制度改善要求をも反映したものとなっている。懸案であった育児休業の通算期間のカウントは、子が満1歳に達するまでの期間について1/2から2/3に改善されることとなったが、在籍専従期間については見送られた。しかし、全体的には、キャリア優遇の調整額の設定となっている点や制度の抜本見直しに踏み込んでいないなど、問題も多い。
 21日の交渉では、戸谷局長が「8月4日に見直しの考え方を示し、それ以降皆さんの意見も踏まえ検討を重ねてきたが、本日は総務省としての最終案を提示したい」としたのに対して、公務労協側は「『国営企業等の職員については各法人の給与構造の改革の進捗状況を踏まえ、改正法案の施行日から1年を超えない範囲で政令で定める日』とあるが、給与構造見直しについて総務省から各法人に対して圧力等を加えることなく、法人内の労使交渉が整うのを見守ってもらいたい。各府省に対しても同様の趣旨を伝えてもらいたい」と、法人内の労使交渉を尊重することを強く求めた。これに対して局長は、「引き続き協力はお願いするが、趣旨はわかっている」とし、総務省としても労使交渉を尊重する姿勢であるとの見解を示した。
 また、公務労協側が「慎重に対応すべきとのわれわれの考え方は変わっていない。中身については、われわれの意見を反映した点は踏まえたいが、基本的には問題も多い。本日の最終案は、この間の交渉・協議の到達点として確認するが、今後の改正法案等の対応は責任を持ってしっかり進めてもらいたい」としたのに対して、局長は「公務労協の主張はしっかり受け止め、対処していきたい」との見解を示した。
 今後、総務省は人勧取り扱いと一緒に退手制度見直し方針も閣議決定し、給与法改正法案と合わせて退職手当法改正法案を国会提出する意向で作業を進めていくこととしている。公務労協は、22日の運営委員会で人事・恩給局長との交渉経過を報告し、今後の対応方針を決定することとしている。


(web表示の都合上、現資料とレイアウトが一部異なるので注意されたい)

国家公務員退職手当制度の構造面の見直しについて(案)


平 成 17 年 9月
総務省人事・恩給局

1 趣旨

 国家公務員の退職手当制度について、国家公務員制度改革における指摘や給与構造の改革の状況等を踏まえ、在職期間中の貢献度をより的確に反映し、人材流動化や在職期間長期化にもより対応できる制度となるよう構造面の見直しを行う。

2 内容

(1)支給率カーブの見直し
基本的考え方
・ 勤続年数に応じ過度に累進的になっている等と指摘される支給率カーブの構造を見直し、国家公務員について中途採用等が増加する場合に、退職手当制度が支障にならないようにする。(人材流動化等により対応できる制度)

 中期勤読者の支給率を引き上げ、支給率カーブのフラット化を行う。
 @定年・勧奨・任期終了・公務外死亡・通勤災害傷病等 → フラット化(中期勤続者(↑増)、長期勤続者(→横ばい・↓微減))
 A自己都合 → 短期勤続者を除きフラット化(短期勤続者(↓微減)、30歳半ば〜40歳代職員に相当する中期勤続者(↑増)、長期勤続者(→横ばい・↓微減))
 B整理・公務上死亡傷病(法5条)→ 定年・勧奨等と合わせる観点から、中・長期勤読者の一部を微減
 C定員の減少・勤務官署の移転等(法4条)→ 中・長期勤読者は@と統合(勤続10年までは現行と同じ、勤続11年以上は@と同じ)
 D公務外傷病 → フラット化(中期勤続者(↑増)、長期勤続者(→横ばい・↓微減))

(2)調整額の創設
基本的考え方
・ 勤続年数が過度に重視されている、役職別の在職期間の差異が反映されない等 の指摘を踏まえ、勤続年数に中立的な形で一定期間における職務の経歴を勘案で きるようにし、在職期間中の貢献度をよりきめ細かく勘案できるようにする。(在 職期間中の貢献度をより的確に反映し、任期付任用の増加等にもより対応できる 制度)

 官職の職制上の段階、職務の級その他職員の職務の複雑、困難及び責任の度に関する事項を考慮して定める区分に応じて調整額の月額を定め、職員の在職期間のうち、その月額の高い方から5年分(60月分)の合計額を調整額として加算する制度を設け、退職手当の算定方式を以下のとおりとする。

退職手当額 = 退職日俸給月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率 + 調整額
※ 調整額を除いた部分が基本額である。

(注1)早期退職特例措置は基本額についての特例とし、調整額については対象としない。
(注2)勤続年数10年未満の自己都合退職者及び自己の非違による退職者については、調整頓の加算は行わない。
(注3)勤続10年以上24年以下の自己都合退職者及び勤続5年未満退職者(自己都合退職者以外)については、調整頓の半額を加算する。
(注4)特別職幹部職員等については、基本額に6/100を乗じて得た額を調整額とする。

(3)算定方式の特例
基本的考え方
・ 在職期間長期化等に伴い俸給月額が下がる場合(本人同意の下に降格して定年 まで在職し続ける場合など)に、早期退職する場合等よりも退職手当額が大きく 下がることがないようにし、複線化する人事管理に対応できる制度とする。
 俸給が給与改定以外の理由で下がった場合において、退職日俸給月額が、減額前の俸給月額を下回る場合には、基本額の算定方式の特例を適用する。

(退職日の俸給が減額前の俸給よりも下がった場合の特例)
退職手当額 = 減額前俸給月額 × 減額前の勤続期間に応じた支給率 + 退職日俸給月額
   ×(退職日の勤続期間に応じた支給率 − 減額前の勤続期間に応じた支給率)+ 調整額

(注)給与改定による低下と、それ以外の理由(降格等)による低下が同時にあった場合、降格等の理由のみなかったと仮定した俸給月額を減額前の俸給月額とする。

(4)その他
 ・ @学術研究等の業務に従事させるための休職で一定の要件を満たすもの及びA育児休業をした期間(当該育児休業に係る子が一歳に達した日までの期間に限る。)について、退職手当の計算上の取扱いの特例を設ける。

(5)施行日
 平成18年4月1日とする。
 なお、国営企業等の職員については、各法人の給与構造の改革の進捗状況等を踏まえ、「退職手当法の一部改正法の施行目から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」から適用することとし、適用日前の国営企業等の職員の退職手当の算定は、従前の例(現行制度)によることとする。

(6)経過措置
 @新制度で算定した額(新制度算定額)が、仮に新制度切替日の前日に同じ退職理由で退職したと仮定して算定した場合の額(新制度切替日前日額)より低くなる場合には、新制度切替日前日額を保障する。
 *新制度切替日=職員が初めて新制度の適用職員になった日(特労法適用職員でなければ、一般的には施行日)
 A新制度算定額が、仮に旧制度が維持されたと仮定して算定(ただし算定基礎は新制度切替日前日の俸給月額で算定)した場合の額(旧制度算定額)より高くなる者については、その増額分が段階的に増額されるよう措置する。

以上