2005年度公務労協情報 8 2004年11月16日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

地公賃金と地財確立で総務省公務員部長と交渉−11/12

 公務労協公務員連絡会地方公務員部会(以下地公部会)は、11月12日午後1時30分から、地方公務員の賃金と地方財政確立等の課題について総務省の回答を求めて公務員部長交渉を行った。
 総務省からは、須田公務員部長、上田公務員課長、園田給与能率推進室長、平野高齢対策室長、稲山定員給与調査官、佐藤財政課課長補佐等が出席、公務員連絡会地公部会からは、山本公務員連絡会事務局長、中村日教組書記長はじめ書記長クラスおよび岩本地公部会事務局長が臨んだ。
 冒頭、中村日教組書記長は、「新潟地震で被災した自治体職員も、住民の安全確保にむけて日々奮闘している。このように、自治体に従事する職員が、住民に対して安心して生活できる公共サービスを提供している実態を踏まえて、賃金・労働条件に関する諸課題につき対応いただきたい」と要請したあと、岩本地公部会事務局長が 、別紙申入書に基づき、総務省としての考え方を質した。
 これを受けて、総務省は次の通り回答した。
@ 地方公務員の給与改定については、議会の議決による条例で定めることとされており、その内容は、国及び他の地方公共団体等との均衡が失われないようにすべきものであると考えている。今後とも、このような考え方に立って、必要な助言等を行いたいと考えている。
A 地方公務員の給与については、厳しい地域経済の状況を背景に、地域の民間給与の状況をより的確に反映できるようすべきではないかといった様々な声などがあるところである。総務省としては、今後の地方公務員の給与のあり方について幅広い観点から十分な検討を行うため、10月18日に「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」を開催し、検討を開始したところである。この研究会のメンバーには、学識経験者や地方公共団体の関係者、経済界とともに労働界の代表者にも入っていただいているところである。研究会の検討状況については、必要に応じ公務員連絡会にも情報提供等をさせていただきたいと考えている。なお、臨時国会の中でも、地方公務員の給与制度について厳しい指摘を受けている。総務省としても、指摘内容に誤解があれば解くよう努めているのでご理解いただきたい。
B NPO等は、自発的に公益的活動を行う主体として、地域社会において一定の役割を果たしており、行政とNPO等が相互に連携し、協働・協調していくことが重要であると認識している。また、第27次地方制度調査会答申(平成15年11月13日)においても、地方公共団体とNPO等との協働の必要性が盛り込まれているところである。こうした中、総務省においては、「共生のまちづくり推進事業」の一つとして、地方公共団体のNPO等の活動の活性化のために要する経費等に対し、地方交付税等による地方財政措置を講じ、NPO等に対する支援を行っているところである。
C 「三位一体の改革」については、本年6月に閣議決定された「基本方針2004」において、11月半ばに全体像をとりまとめることとされており、現在重要な局面を迎えている。小泉総理大臣からは、地方の改革案の実現にむけて全力で取り組む等の指示が行われたが、10月28日に提出された各府省の意見は、地方の改革案の実現にむけたものとは言い難い状況もあり、現在、調整を行っているところである。3兆円の税源移譲とそれに結び付く補助金改革、そして財政力格差の拡大に適切に対応する地方交付税の見直しなどを確実に実現するよう努力したいと考えている。
 「三位一体の改革」の間は、財政力の弱い地方公共団体について、地方交付税により万全の措置を講じる必要があり、地方交付税制度は堅持する必要がある。また、「三位一体の改革」の成功には、国と地方の信頼関係を維持しながら改革に取り組む必要があり、地方公共団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税などの一般財源の確保は欠かせないものと考えている。これらについては、「基本方針2004」にも明記されており、この方向でしっかりと取り組みたいと考えている。
D 地方分権の進展により、住民に身近な事務を行う市町村の役割がますます重要となる一方で、少子高齢化が進み、また、厳しい財政状況下において、どのように行政サービの維持・向上をはかっていくべきか真剣に検討する必要があると認識しているところである。そうした観点から、市町村合併については、地域社会の将来を見据え、住民に十分な情報提供を行ったうえで積極的な議論を行い、判断すべきものと考えている。総務省としては、市町村が合併するかどうかは、最終的には当該市町村が自主的に判断するものと考えており、自主的な市町村合併を推進しているところである。
E 地方公務員制度の改革については、公務員制度改革大綱(平成13年12月25日閣議決定)において、「地方自治の本旨に基づき、地方公共団体の実情を十分勘案しながら、国家公務員制度の改革に準じ、所要の改革を行う。」とされており、検討に当たっては、地方公共団体等関係方面の意見も十分聴きながら、作業を進める必要があると考えている。また、非常勤職員については、地方公務員制度調査研究会 報告(平成15年12月25日) の指摘等を踏まえ、本年6月に任期付職員採用法の一部を改正し、任期付短時間勤務職員制度を創設したところであり、この制度の活用状況を見極めつつ、今後とも非常勤職員の問題については、議論したいと考えている。
 こうした回答を受けて、地公部会側から、@人事委員会の勧告がありながら、各自治体で職員給与の独自カットが多数行われていることについて、総務省としてどのように考えているのか、A「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」を設置し、同研究会に関する情報提供を行うとあったが、指摘の範囲内の対応にとどまるのか、B「骨太方針2004」等おいては、業務の民間移管を促進するとあるが、安易に対応することは住民サービスの観点から看過できないと考えるが、総務省としての見解をいただきたい、と質した。
 これに対して、総務省側は、@指摘の点については承知しているが、一方で、財政状況が厳しく、職員の給与を削減せざるをえない地方公共団体もあると考える。特例条例による職員給与の独自カットは財政状況改善策の一環として行われていると認識している、A総務省としても、自らの責任において、地方公務員の給与の在り方に関する関係者の意見を把握するとともに、情報提供を行う必要があると考えており、地公部会とは従来同様意思疎通をはかっていきたい、B民間側においては、バブル経済崩壊後、10数年にわたって効率化にむけた懸命な努力が行われている。行政側においても、民間のノウハウを活用すべきであるとの意見も多くなってきており、総務省としても同様の認識を持っている。但し、総務省としても、一律的に住民サービスの提供を民間に委ねることが適切であるとは考えておらず、民間へ委託する業務内容については精査が必要である、と回答した。
 さらに、地公部会側から、@『地方公務員の給与のあり方に関する研究会』の議論を通じて、日本経済の二極分化が進行している状況も踏まえて、地域の経済や民間労働者の賃金に与える影響を考慮した政策が大事だ。また、地方3団体との意見交換の中で、”住民サービスを格差なく、全国で提供することが可能となる環境づくりについて双方で合意がはかられるよう対応をお願いしたい。また、すべて民間が住民サービスを担うことは妥当でない”との回答があるなど、自治体の首長の中には、公務の責任において住民サービスの充実をはかることの必要性について認識している方も多数いると承知している、A特例条例による職員給与の独自カット案について、人事委員会は議会から意見を求められるような矛盾した状況となっている。人事委員会勧告機能の形骸化もさることながら、この課題については、何より地方財政の確立が重要となる。地方の財政力格差を調整することの重要性を踏まえつつ、財政難→住民サービスの低下→地方公務員の賃金水準低下という負の連鎖を断ち切るために、相互の取り組みを通じた解決をはかっていく必要がある、B『地方公務員の給与のあり方に関する研究会』の中で人事委員会の機能強化について議論が行われると聞いているが、労働基本権制約が議論の前提となるのか。もしそうなのであれば、7月の時点で政府が労働基本権制約の前提なしに公務員制度改革を議論することと矛盾することにはならないか、と総務省としての見解を質した。
 これに対して、総務省側は、@指摘の点については承るが、住民サービスを提供するうえで、民間および公務側それぞれに長所・短所がある。公務側に適する業務や役割について社会全体で認識が得られていないようであれば、誤解を解く努力が必要であると考える。同時に、民間側の良い側面も受入れる努力も必要であると考える、A補助金削減について各省の対応では不十分であり、さらに調整中である。財務省は当面の地方財政計画の改革案の中で、地財計画の圧縮による地方財源不足7.8兆円の解消等に言及しているが、賛成できない。三位一体改革を進めるうえで、地方交付税の適切な対処が必要であると考えている。また、地方交付税制度の堅持については、総務省としても同様の認識である。一方で、地方交付税制度を堅持する意味でも、ワタリなどの是正にむけた取り組みについては、協力いただきたい、B指摘の点については、現行制度の枠内における検討ということでご理解いただきたい、と回答した。
 最後に、地方公務員の賃金と地方財政確立にむけてさらなる努力を要請し、交渉を終えた。



別紙.総務省への申入書

2004年11月12日


総務大臣
 麻 生 太 郎 様

公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合     
中央執行委員長 人見一夫
日本教職員組合         
中央執行委員長 森越康雄
日本都市交通労働組合      
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合       
中央執行委員長 佐藤幸雄
全国自治団体労働組合連合    
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合     
中央執行委員長 早川良夫



地方公務員の賃金と地方財政確立等に関する申入れ


 貴職の地方自治確立と地方公務員の処遇改善に向けたご努力に敬意を表します。
 2004年人事委員会勧告が出され、自治体の賃金確定は山場を迎えていますが、行政サービスに従事する地方公務員の賃金水準の確保と、労使自治を尊重した賃金確定が求められています。
 分権・自治とそれを支える地方税財源の充実が求められていますが、厳しい地方財政の状況に加え、いっそうの地方財政計画の圧縮、交付税の減額が懸念されます。
 高い失業率や地域の雇用情勢は改善されず、雇用、所得、生活の地域間格差が拡大しています。地域における福祉、医療、保健、教育、環境、防災などの分野での雇用創出、住民ニーズへの適切な対応が自治体に求められています。
 貴職におかれましては下記事項の実現に向けてご尽力頂きますようお願いします。





1.公務・公共サービスの確保・向上のため、地方公務員の賃金が確保されるよう取り組むこと。
 また、自治体賃金の確定に当たっては、労使の交渉を尊重すること。

2.地方公務員の給与の在り方の検討を行うに当たっては、拙速な結論を避けるとともに、公務員連絡会地方公務員部会との十分な交渉・協議を行うこと。

3.地域における公正で安定的・継続的サービスを提供する自治体の責任と役割を踏まえ、市民・NPOとの協働で質の高い公共サービスの確保に努めること。

4.国庫補助負担金制度の改革、税源移譲など安定した地方税財源を確保するための制度改革を急ぎ、地方分権の推進、地方自治の確立を図ること。また、交付税制度を堅持し、交付税総額の安定的確保をはかること。

5.住民自治の観点から、住民の意向を無視した強制による市町村合併は行わないこと。

6.地方公務員制度の改革にあたっては、労働基本権を確立し、地方自治の本旨を踏まえ分権型で開かれた民主的な公務員制度とすること。また、非常勤職員の法的地位の明確化や、短時間勤務制度の実現に向け取り組むこと。

以上