2006年度公務労協情報 16 2005年12月20日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

女性職員の採用・登用指針改定の人事院回答交渉−12/19
−人事院は20日改定指針発出−

 公務労協・公務員連絡会女性連絡会(以下女性連絡会)は、12月5日に人事院に対し「『女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針』の改定にかかる申入れ」を行ってきたところであるが、19日11時から人事院人材局と改めて交渉を行い、回答を引き出した。
 人事院からは、森永職員団体審議官付参事官等が出席した。女性連絡会からは、井上女性連絡会代表や各構成組織代表が臨んだ。
 冒頭、人事院から「12月5日に頂いた申入書と各府省からのご意見を参考に検討してきたので、回答する。また、来年1月から3月までの間に各府省において計画を策定していただくことから、明日、『女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針』を事務総長通知として発出する」として、以下のように4点について回答した。
(1) 今回の改定に当たり、数値目標を義務づけてほしいとのことだったが、具体的な目標には数値目標も含まれる。各府省には実情に応じてできる限り具体的な目標設定をお願いするつもりであり、数値目標を書き込めるところは書き込んでいただき、そうではないところも、最低限拡大の方向性が示せるよう計画を立ててもらいたいと考えている。
(2) 転職者や中途採用者の初任給格付については、公務員は所掌や責任に応じて決まっているが、既に規則で弾力的運用が出来ることとなっている。これから民間からの活用を推進していきたい。定員や定数の別枠扱いについては、女性を特別扱いできるような制度とはなっておらず、現段階では難しい。
(3) メンターの導入に関しては、実効ある制度となるよう「メンター導入の手引き」を作成するなど、各府省に対して指導をしていきたい。
(4) 短時間勤務制の意見の申出については、早急に行うべく検討を進めている最中である。また、指針は来年より5年間のものなので、特に短時間勤務制について書き込む必要はないと判断した。
(5) 今回の指針は、政府の特に大切な政策の一つであり、人事院としても重要な取り組みと位置づけている。この指針に基づいて5年間取り組むこととしているが、前の5年間の達成状況を上回る成果が上がるよう取り組んでいきたい。随時みなさんの意見もお伺いしてやっていきたい。各府省に対しても成果を出すよう指導していきたい。

 以上の回答をうけ、女性連絡会は「数値目標を明示しないで、各府省に応じた適切な目標設定ということだが、具体的には何を求めるのか。この指針の推進体制として、女性職員の採用・登用拡大推進会議でしっかり検証する」ことや、メンティー・メンターの具体的なイメージを質した。それに対し人事院は、「数字でやるよりも、各府省がもっとも適切な方法をそれぞれ行うことによってより良い成果が上がると考えている。政府の女性管理職の30%という目標もあるが、大きな目標を立てすぎて駄目になるより、現実的な目標で着実に取り組むことが適当。各府省にはしっかり対応して頂くつもりである。また、進捗状況については、個々の府省について公表することは難しいが、全体の数字は出していきたい。良い取り組みがあれば紹介することも検討したい。メンティーについては必要ないという人もいるであろうから希望者ということになるであろう。メンターについては一義的には管理職が想定されるが、いろいろなケースが考えられ、今後手引きで示していければと考えている」との見解を示した。
 最後に女性連絡会から、「私どもも1年間が済んだ時点で検証するので、お互いに検証し合い、よりよい方向となるよう意見交換をしていきたい。また、真に実効ある指針となるよう各府省に対ししっかりと指導をしていただきたい」との要望を述べ、交渉を終了した。


人企−1703
平成17年12月20日



人 事 院 事 務 総 長



「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」について(通知)



 「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」が別紙のとおり定められましたので、通知します。
 各府省におかれては、この指針に基づき、これまで以上に総合的かつ計画的に取組を進められますようお願いします。
 なお、「「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」について」(平成13年5月21日人企−352)」は廃止します。


以   上



(別紙)

女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針


1.基本的な考え方

(1)男女共同参画社会の実現は、人権尊重という普遍的な基本理念に基づく要請である。このことは、男女を問わずその能力を最大限活用することでもあり、21世紀の我が国社会が、少子高齢化、社会経済の成熟化などの変化に対応し、豊かで活力ある社会を目指していく上での最重要課題の一つである。とりわけ、政策・方針決定過程への男女共同参画の推進は、男女共同参画社会の実現の基盤をなすものであり、国は女性国家公務員の採用・登用の拡大に率先して取り組む必要がある。
 本人の意欲と能力に基づく「実質的な男女平等」の実現は、多様な人材の確保・育成・活用という公務員人事管理の改革を促進するものであるとともに、勤務環境の整備等を図りつつ、取組を推進していくことは、すべての職員が働きやすく、持てる能力を最大限に発揮できる活力ある職場づくりにつながるものである。

(2)このような考え方に基づき、本指針は、国家公務員法に定める平等取扱の原則及び成績主義の原則の枠組みを前提としつつ、各府省が、「積極的改善措置」により女性国家公務員の採用・登用の拡大を図り、男女間の格差を計画的に解消していくことを目指して策定したものである。

(3)人事院は、各府省が本指針に基づく施策を実施していくに当たって、職業生活と家庭生活の両立のための必要な支援策等の施策の推進に努めることとしている。各府省は、改めて現状を分析し、勤務環境の整備等を図りつつ、女性国家公務員の採用・登用の拡大に取り組む必要がある。
 また、職員自身も、男女共同参画の実現に向けての意識と意欲を持つことが求められている。

2.計画の策定

 各府省は、平成22年度(西暦2010年度)までの目標を設定した「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定する。計画は、女性職員の採用・登用状況を把握し、現状分析を行うとともに、現状分析を踏まえつつ、府省全体及び必要であると判断される場合には、部局等の適切な区分について、目標、目標達成に向けての具体的取組等を定める。

2.採用の拡大   

(1)人事院及び各府省は、協力しつつ、有為な女性を公務に誘致するための特別な募集活動を積極的に推進する。その際、人事院は、多くの意欲ある有為の女性の公務員試験の受験を促進すること等により、採用試験の合格者に占める女性の割合を計画的に拡大することを目指し、具体的な目標を設定する。

(2)各府省は、女性の採用の拡大について、目標を設定し、目標達成に向けての具体的取組を定める。その際、目標の設定に当たっては、試験採用の合格者に占める女性の割合にも留意するとともに、できる限り具体的なものとするよう努める。
 各府省は、試験採用者に加え、選考採用者においても、女性(中途退職した有為の女性職員を含む。)の積極的な採用に努める。その際、専門的な知識経験や管理的又は監督的能力を有すると認められる女性の採用に努める。

(3)各府省は、採用時の配置について、男女で偏りがないよう配慮するものとする。

4.登用の拡大

(1)各府省は、人事院及び各府省の実施する業務研修、登用に資することを目的とした研修等へ意欲と能力のある女性職員を積極的に参加させる。その際、研修の対象となり得る職員に占める女性職員の割合にも留意することとする。

(2)各府省は、女性職員の意識・意欲の啓発・増進及び能力向上のための研修の実施に努めるとともに、人事院の実施する女性職員の意識・意欲の啓発・増進、又は能力向上のための研修への参加機会の確保に努める。

(3)各府省は、職員の意欲と能力の把握に努めつつ、職員への職務経験の付与について、男女で偏りがないよう配慮するものとする。

(4)各府省は、女性職員に助言、指導するメンターを導入するなど、女性職員の登用に資する取組を推進するよう努める。人事院は、メンターの導入の手引きを示すなど必要な支援を行うものとする。

(5)各府省は、女性職員の登用の拡大について、目標を設定し、目標達成に向けての具体的取組を定める。その際、目標の設定に当たっては、昇任・昇格前の在職者に占める女性職員の割合にも留意するとともに、できる限り具体的なものとするよう努める。各府省は、意欲と能力のある女性職員の積極的な昇任・昇格に努める。

5.勤務環境の整備等

(1)各府省は、女性職員の採用・登用の拡大を図るため、仕事の進め方の見直し及び意識の改革を推進し、女性職員、男性職員共に働きやすい勤務環境の整備に努める。

(2)各府省は、管理職員をはじめ全職員を対象に、男女共同参画の実現に向けての意識啓発に努める。また、そのための研修等の実施に努める。

(3)各府省は、人事院の実施する男女共同参画の実現に向けての意識啓発を推進する研修等への職員の参加機会の確保に努める。

(4)人事院は、職業生活と家庭生活の両立のための必要な支援策等の推進に努める。 各府省も、職業生活と家庭生活の両立支援策のため一層の環境整備に努める。

(5)各府省は、育児休業中の職員の円滑な職務復帰に資するため、知識・技能等の維持・向上のための研修・説明会等への参加、復帰後のキャリア形成などについて配慮するものとする。

(6)各府省は、官署を異にする異動を命ずる場合において、それにより子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる職員がいるときは、その状況に配慮するものとする。

6.推進体制

(1)各府省は、「女性職員の採用・登用拡大担当者」(以下「担当者」という。)を官房人事担当部局及び必要であると判断される場合には、部局等の適切な区分ごとに設置する。担当者は、人事担当責任者又はそれに準ずる者とし、計画の策定及び実施に実質的に関与する。部局等の適切な区分ごとに担当者を設置した場合、官房人事担当部局の担当者は、各担当者と緊密な連携を図ることとする。

(2)人事院は、女性職員の採用・登用に関し、女性であることを理由とした差別的取扱い等に関する苦情相談に応ずる。

(3)女性職員の採用・登用の状況、計画の進捗状況に関する情報交換等の場として、「女性職員の採用・登用拡大推進会議」を定期的に開催する。

(4)各府省は、本指針に基づく施策の実施、計画の点検・評価に努めるものとし、その状況について、人事院は定期的に把握する。
 計画、計画の進捗状況、女性職員の採用・登用拡大の事例等について、人事院は定期的に公表する。

(5)本指針は、各府省における女性職員の採用・登用の拡大の進捗状況、我が国の雇用状況・雇用環境の変化等を踏まえ、必要な見直しを行うものとする。

以上