2006年度公務労協情報 33 2006年3月16日
公務公共サービス労働組合協議会

総人件費改革に伴う配置転換等の仕組みについて行革推進事務局と交渉・協議

 公務労協は、3月14日10時から、総人件費改革の実行計画に係る「配置転換、採用抑制等の枠組み」に関して、行政改革推進事務局との交渉・協議を実施した。公務労協からは山本事務局長ほか各構成組織書記長が出席し、行政改革推進事務局からは上田公務員制度等改革推進室長らが対応した。

 はじめに、山本事務局長が「3月10日に行政改革推進法案が閣議決定され、職員の雇用保障などが明記されなかったことは遺憾である。本日は、配置転換、採用抑制等に関する現段階の考え方に関して聞かせていただきたい」と室長の考えを質した。
 これに対して、室長は、「法案で事務事業の合理化について個別に指摘があった事項に関して、行政減量化有識者会議では3月30日頃に中間とりまとめを行なうことになっている。このため、それまでには配置転換等の仕組みについての政府方針を固める必要性があると考えているが、全体の合理化計画が固まっていないのであくまでポイント的なものに止まる。その間、有識者会議や組合の皆さんの意見を聞きながら作業を進めていきたい。16日の有識者会議には現段階のたたき台をお示しし、意見を頂きたいと考えている。皆さんからも意見を頂きたい」と述べた上で、次の通り現段階の考え方を示した。

配置転換、採用抑制等の枠組みのポイント(案)


1 定員純減に伴う配置転換、採用抑制等の実施
(1)採用抑制の実施
・要合理化部門は、削減の内容に応じ退職後不補充・抑制
・その他の部門は、長期的な雇用戦略等にも配慮しつつ職員の受入れが見込まれる職域・職種について一定の採用抑制
(要合理化部門所管府省は、一層の自主的努力)
(2)配置転換・研修の実施
・要合理化部門からその他の部門への配置転換
・配置転換の実施に当たっては必要な研修を実施(効果的な研修の在り方について検討)

2 計画の策定及び実施体制
(1)配置転換・採用抑制の全体計画・各年度実施計画の策定
・定員の純減に係る個別実施計画の内容を踏まえ、6月に全体計画を策定
・次年度の実施計画を各年初に策定(18年度分は全体計画決定後速やかに策定)

(2)実施計画の策定及び実施のための体制
・国家公務員雇用調整本部(仮称)の設置
・本部幹事、地方推進協議会(仮称)の設置

(3)当面実施する事項
・本部の発足、全体計画の策定等に向けた諸準備
・当面の採用に関する暫定方針の提示

3 その他
(1)全体計画の確実な実施
・配置転換対象者への説明、説得
・配置転換の進捗状況を踏まえ、全体計画の確実な実施を図るための方策を検討

(2)国の行政機関以外への移籍等・
・国の行政機関以外への移籍等が可能となるよう、必要な取組

 また、室長はこの考え方について次の通り、補足説明した。
@採用抑制については、要合理化部門は「退職後不補充」で対応し、その他の部門は職域・職種について「一定」の採用抑制で対応することとしたい。「一定」のについては今後真剣に検討したい。
A配置転換については、必要な研修を実施することとし、効果的な研修のあり方については、人事院と総務省で準備していただくことにしたい。
B配置転換・採用抑制の全体計画については、個別実施計画の内容を踏まえ、6月に策定したい。次年度の実施計画は各年初に策定することとし、平成18年度分は全体計画決定後速やかに策定することとしたい。全体計画が6月策定とすれば、平成18年度は残り9ヵ月の計画となる。
C計画の策定及び実施のための体制は、内閣全体の責任とするため「国家公務員雇用調整本部(仮称)」を設置することを検討したい。また、国家公務員雇用調整本部の「本部幹事」の設置とともに、ブロック単位の「地方推進協議会(仮称)」を設置し地域ごとの対応をすることとしたい。
D当面の採用に関する暫定方針としては、3月30日前後で「一定の目安」を示したい。
E計画の確実な実施のためには、「配置転換対象者への説明、説得」が第一義的である。また、配置転換の進捗状況を踏まえながら、計画の確実な実施を図るための方策を弾力的に検討していきたい。
F配置転換を一義的に考えていくが、地域的事情も考慮して、自治体や民間など国の行政機関以外への出向・移籍等も選択肢として考える必要がある。

 これを受けて、公務労協側は次の通り室長の見解を質した。
@独立行政法人、特殊法人など国家公務員以外の職員の雇用については、なにも触れられていないが、政府の政策として決定するものであり、それらについても政府の責任で雇用確保策について検討すべきではないか。
A提起されている雇用調整本部については、本部長に総理大臣があたり、全閣僚で構成する体制を整備すべきだ。これについて3月中・下旬に行なわれる予定の3大臣との政労会見のなかで中馬行革担当大臣から責任を持った回答をいただきたい。

 これらに対して、室長からは、次の回答があった。
@独立行政法人、特殊法人など国家公務員以外の職員は、この枠組みには含まない。法人の経営主体はそれぞれの法人であり、経営は、それぞれの法人に委ねられている。経営体として、それぞれの世界で対応すべきものと考える。かりに大量の雇用問題が発生すれば別であるが、法律で要請している人件費の5%の削減は、経営体の努力のなかで十分に対応可能な数字と考える。現段階では、それぞれの経営主体が、その構成員に負担をかけないよう取り組んで頂けるものと考えている。
A雇用調整本部には、少なくとも政治家が入ることは実現したいと考えている。政労会見の時に回答せよという要請は、中馬大臣に伝えるが、いまの段階でどのようなメンバーになるかまでは約束できない。
 これらの見解に対して公務労協側は「3月末に配置転換、採用抑制等の枠組みが固まったあとについても、細部の施策の検討や実施の問題がある。引き続き公務労協との協議を最重視して対応すること」を強く求め、室長はこれに基本的に同意した。

 続いて公務労協側は、「最近与党から能力等級制法案の国会提出を行うべきだという国会質問があり、中馬大臣も努力すると答弁している。2004年12月の閣議決定では、公務員制度改革関連法案については『関係者との調整に努力する』との趣旨の決定が行われている。その閣議決定の趣旨を十分踏まえ、われわれと交渉・協議、合意できるような条件整備をまず行った上で、慎重に対応してもらいたい」と、安易な能力等級制法案等の動向には閣議決定の趣旨を踏まえ、慎重に対応するよう求めた。
 これに対して室長は「条件整備が何かということを含め、よく話し合っていきたい。中馬大臣は、ほおってはおけないという気持ちを述べられたものと思う」と、今後十分公務労協と話し合っていくとの考え方を示した。
 最後に公務労協側は、くれぐれも公務員の雇用不安が起きないよう、政府として万全の体制を確立するよう強く要請し、交渉・協議を終えた。

以上