2006年度公務労協情報 38 2006年4月20日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院と民調作業方針をめぐって交渉−4/20
−100人未満の小規模企業調査の実施に強く抗議し、反対の打電行動実施へ−

 人事院は、4月20日、本年の民間給与実態調査に関する方針が固まったとして、公務員連絡会・労働条件専門委員会にその骨格を提示した。
 本年の民調について、人事院は企業規模100人未満の小規模企業を調査する考え方を明らかにし、3月23日の総裁交渉でもその方針が示され、公務員連絡会はあくまで反対であることを明確にして、回答の受け取りそのものを拒否、抗議の要請打電行動を実施してきた。
 この民間給与実態調査は、夏の人事院勧告に向けた基礎作業として例年5月の連休明けから実施されており、公務員連絡会は4月にその内容を確認する交渉を行ってきたことから、本年もその提示がなされたものである。
 冒頭、人事院の森永参事官は「勧告に向けた作業は例年通り進んでおり、民調作業の内容も固まった」として、次のとおり基本的な骨格を明らかにした。

1.調査期間については、5月1日(月)〜6月16日(金)の47日間。
2.調査対象事業所は、企業規模50人以上で、事業所規模50人以上とする母集団約53,000事業所(昨年は約40,000事業所)から抽出した約10,200事業所(同約8,300事業所)。小規模企業を調査することに伴い、調査対象事業所数が増えている。
3.調査職種は76職種(うち初任給関係18職種)であり、昨年と同様である。
4.調査項目については、初任給調査、個人別給与調査、事業所単位の賞与等の支給状況や給与の支給総額、事業所における給与改定の状況などを調査する。調査項目の概要は次のとおり。
(1) 本年の給与改定の状況について、ベース改定、定期昇給、賃金カットの状況などを調査する。
(2) 例年同様、最近における民間賃金制度の動向を把握するための制度調査を行う。
(3) 雇用調整の状況については、例年どおり調査する。
(4) 家族手当については、昨年同様に調査する。
(5) 住宅手当についても支給状況を調査する。
(6) 本年は新たに特殊作業手当と退職金制度の状況を調査する。
(7) 一時金については、昨年同様民間企業における昨年8月から本年7月までの1年間の支給水準を精確に把握するとともに、平成17年冬季賞与の配分の状況(一定率分、考課査定分)および考課査定分の反映状況について調査する。
(8) 休憩・休息時間見直しの経過を踏まえ、1日当たりの所定内勤務時間を調査する。
(9) 比較対象職種の役職要件の緩和とスタッフ職の調査を新たに実施する。

 これらの内容に対し、公務員連絡会側は次の通り人事院の見解を質した。
(1) 100人未満の小規模企業を調査することは、昨年来の総裁の見解と異なるものであり、納得できない。研究会の中間とりまとめを見ても、なぜ企業規模を50人以上に拡大するのかについての納得できる説明はない。
(2) 特殊作業手当を調査する目的と内容はどうか。
(3) 退職金制度の調査は何のためか。
(4) 小規模企業はどのような基準で抽出したのか。

 これに対し、森永参事官は次の通り答えた。
(1) 昨年の勧告時点の総裁回答では、「企業規模100人以上、事業所規模50人以上」と比較することで社会的合意が得られていると認識していたが、その後、与野党を問わない議論などがあり、社会的合意が維持されているとは言い難い状況になってきたので、国民にきちんと説明するためにはどうしたらいいか、研究会を設置して検討してもらってきた。どう比較すべきかを検討するためには、調査することが必要ということなので、今回、小規模企業の調査を実施することにしたものである。比較方法をどうするかについては、職員団体の皆さんと十分話し合って検討することにしているのでご理解願いたい。
(2) 特殊作業手当は公務の方で見直しを進めているところであり、民間で公務と同等の職務があった場合について、給与上特別の措置をしているかどうかを調べることにしている。
(3) 今、政府と与党の間で公務員の年金について議論がなされ、退職手当も定例調査の時期になっているので、予備的な調査として、企業年金制度、退職金制度それぞれの有無と20年以上勤続退職者の状況を調べることにしている。
(4) これまでの100人以上での比較と同等の誤差率を維持するために必要な事業所数を抽出し、1,800事業所ほど増えている。

 以上のように参事官は、あくまで100人未満の企業について調査し、その上で比較方法をどうするかについては別途検討するという姿勢は変えず、調査そのものに反対している公務員連絡会の主張には応じなかった。このため、公務員連絡会は、最後に「この間の交渉経過を踏まえても、なぜ官民比較方法を見直す必要があるのかについて納得できる説明はなされていない。比較企業規模は、歴史的に社会的合意が作られてきたものであり、われわれは昨年の勧告以降、見直さなければならないような新たな状況の変化が生じているとは考えていない。比較方法は労働基本権制約の代償措置としても人事院勧告制度の根幹であり、人事院の権限で一方的に見直せるものではない。今日提起された小規模企業の調査には反対であり、従前通りの比較方法を維持すべきである」とし、「本日の小規模調査を強行するとの回答に対し、強く抗議する。その意思を表すため、抗議打電行動を実施するので、きちっと受け止めてもらいたい」と、小規模企業調査の一方的実施に強く抗議し、本日の交渉を打ち切った。

 公務員連絡会では、この交渉経過を踏まえ、21日に人事院に対して小規模企業調査の一方的実施に抗議する打電行動を全国から集中することとしている。また、今後、地方人事委員会への対応も一段と強めることとしている。

以上