2006年度公務労協情報 41 2006年5月9日
公務公共サービス労働組合協議会

民間企業の退職金・企業年金等実態調査で人事院に申入れ−5/9

 公務員連絡会の書記長クラス交渉委員は、9日、人事院の吉田職員福祉局長と交渉を持ち、被用者年金制度見直しに伴う共済年金の職域部分のあり方の検討に向けた民間企業の退職金・企業年金等の実態調査について、別紙の申入れを行った。
 公務労協は、今回の退職手当水準や年金制度見直しの課題については公務労協全体として取り組むことを確認してきているが、調査実施機関が人事院となったため、全体の取り組みの一環として公務員連絡会名で申し入れたもの。申入れ内容については、公務労協労働条件・社会保障の両専門委員会正副委員長会議で協議・確定したもの。
 また、この日の申入れは、政府が4月28日に「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針」を閣議決定(2006年度公務労協情報40参照)し、共済年金について「現行の公的年金としての職域部分(3階部分)は、平成22年に廃止」し、「新たに公務員制度としての仕組みを設ける」こととし、「人事院において諸外国の公務員年金や民間の企業年金及び退職金の実態について調査を実施し、その結果を踏まえて制度設計を行う」こととなったことを受けておこなわれたもの。
 冒頭、公務員連絡会山本事務局長が「この調査は、われわれの勤務条件に大きな影響を与えることになるし、賃金を含めた民間準拠の具体的なあり方にも関わってくるので、大きく3つの点について申し入れる」として、@調査対象企業は、退職金・企業年金制度が整っている企業規模1,000人以上とすることA官民比較を行う場合は、同種・同格の原則によるラスパイレス比較方式を採用することB調査結果や官民比較の結果を公務員連絡会に提示し、政府に意見を提出する場合には、事前に十分交渉・協議、合意すること、を要請し、局長の現段階での見解を求めた。
 これに対し、吉田局長は「この問題については、折に触れて申入れの内容も含めて皆さんと話し合いながら検討を進めていくこととしたい」としたうえで、次の通り答えた。

(1) 4月28日の閣議決定の日に、官房長官から人事院総裁に対し、「被用者年金制度の一元化に関する基本方針については、4月28日に閣議決定がなされ、職域部分について、平成22年に廃止をし、新たな公務員制度としての仕組みを設けることされたので、諸外国の公務員年金並びに民間の企業年金及び退職金の実態を踏まえて、具体的な制度設計を行う必要があるので、貴院において調査を実施していただくとともに、貴院の見解を承りたい」との要請があった。
(2) 人事院としては、この依頼を受けて調査を行っていくこととしたいと考えており、早急にという要望もあるので急いで検討をして参りたい。

 吉田局長の見解に対し交渉委員は、@本年は総務省が行う退職金調査の年でもあるがそれとの関係はどうか。意見を求められているのは年金だけのように思われるが退職金も調査することでもあり退職金への意見はどうするつもりかA諸外国の公務員年金も調査することになっているがスケジュールはどうかB共済組合制度の適用を受けるのは地方公務員も含めて相当多く、それを全部カバーする調査になると思うので、地方公務員等にも十分配慮していただきたい、と局長の考えを質した。
 質問・要請に対し吉田局長は、@人事院が今回行う調査は年金と退職金両方を調査するので総務省の退職金調査は行わないことになるのではないか。人事院に求められているのは年金についての見解であるが、退職金と合わせて総額を比較する話であり、退職金についてものを言うかどうかは程度問題ではないかAスケジュールについては、できるだけ早くということ以外に固まったものはないB地方公務員など影響が大きいことの重みを十分踏まえて作業を進めて参りたい、との考えを示した。
 最後に、公務員連絡会山本事務局長が「これから作業をするということであるが、公務員バッシングに対しては毅然と対応しつつ、本日の申入れ内容を踏まえながら十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて進めていただきたい」と強く要望したところ、局長が「皆さんとは十分話し合いながら検討して参りたい」と約束したことから、これを確認し、本日の申入れ交渉を終えた。


別紙:人事院への申入書

2006年5月9日


人事院総裁
 谷  公 士 殿


公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏



民間企業の退職金・企業年金等の実態調査に関する申入れ


 常日頃から公務員労働者の賃金・労働条件の改善に向け、ご努力頂いていることに心から感謝申し上げます。
 さて、このたび貴院は、「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針」の閣議決定に基づく政府の要請を受けて、民間企業の退職金・企業年金等の実態調査を実施する方針であると拝聞しています。
 この調査は、共済年金の職域部分の廃止に伴う民間の企業年金に相当する新たな年金制度のあり方や、退職手当の水準に影響するものであり、その結果によっては勤務条件の重大な変更となる可能性をもった重要な調査です。
 したがって、調査に当たっては、下記事項の実現に向け最大限努力するとともに、われわれと十分交渉・協議し、合意の上で実施するよう強く申し入れます。




1.調査に当たっては、客観性、正確性、透明性を確保することを基本に、下記の通り実施すること。
(1) 調査対象企業は、退職金・企業年金制度が整っている企業規模1,000人以上とすること。
(2) 調査対象職種は、行政職(一)対応の事務・技術職とすること。
(3) 調査対象者は、調査対象期間に退職した勤続20年以上の退職者全員とすること。
(4) 調査方法については、正確性・信頼性を確保するため、訪問調査割合を5割以上とすること。
(5) 年齢別、学歴別、勤続年数別、職務段階別に調査すること。
(6) 調査については、給付建て調査を基本とし、退職一時金のほか、厚生年金基金(単独型、連合型、総合型)、確定給付企業年金(規約型、基本型)、適格退職年金、確定拠出年金(企業型)に加え、相互扶助・互助的年金(企業負担分があるもの)および退職記念品等の現物給付など、退職後の支給総額すべてを正確に把握すること。
(7) 調査の実施に当たっては、拙速を避け、調査期間を十分確保すること。

2.官民比較を行う場合は、同種・同格の原則によるラスパイレス比較方式を採用すること。

3.調査結果や官民比較の結果を公務員連絡会に提示し、政府に意見を提出する場合には、事前に十分交渉・協議、合意すること。

以上