2006年度公務労協情報 53 2006年7月10日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院が企業規模など官民比較方法の検討項目提示
職員団体審議官と幹事クラスの交渉で−7/10

 公務員連絡会は、10日、本年の勧告を巡って人事院交渉を実施した。交渉は13時30分から行われ、公務員連絡会側は幹事クラス交渉委員が参加し、人事院側は井原職員団体審議官、森永参事官らが対応した。
 冒頭、公務員連絡会の岩岬副事務局長が「6月7日に人勧期要求書を提出し、6月15日に審議官交渉を行い、先週は3日間にわたって地方ブロック代表との交渉を積み上げてきた。今日はそれに対する人事院の考え方を含めた、本年勧告へ向けた作業状況を聞かせてもらいたい」と現時点での作業状況を質したのに対し、井原審議官は@官民比較方法の見直しについての人事院としての検討項目A給与構造の見直しに関わる本年の勧告事項の作業状況、などについて次の通り答えた。

(1) 官民比較方法のあり方について
 官民比較方法のあり方については、研究会及び懇話会で引き続きご議論いただいているところであるが、研究会の最終報告の作業が相当遅れていることもあり、人事院としても具体的な検討を進める必要があることから、現在、この夏の勧告に向けて検討している主な項目をお伝えしたい。
 検討項目については、@比較対象企業規模の見直しについて(企業規模50人以上まで比較対象を拡大するかどうか)A比較対象従業員の見直しについて(スタッフ職や相当職の見直し)B級編成の再編等に伴う対応関係の見直しC特別給の官民比較方法の見直し、などである。
 これらの検討項目についての現時点での問題意識などについては以下のとおりである。
@ 比較対象企業規模については、同種同等比較の原則を確保しつつ、広く民間の実態を反映させるとの観点から、公務における組織階層と比較できる役職を有している企業まで範囲を拡大することを検討している。
A 比較対象従業員については、ライン職の役職者の要件について、公務における構成員数等を検証しつつ、広く民間の実態を反映させるとの観点から、要件の緩和を検討している。また、民間企業におけるスタッフ職従業員の拡大等の人事・組織形態の変化に対応して、要件を緩和したライン職と職能資格等が同等である従業員を比較対象に取り込むことについて検討している。
B 級編成の再編等に伴う対応関係の見直しについては、11級制から10級制への等級再編に伴う統合級の取扱い、比較対象企業規模の検討との関連を含め、対応関係を検討している。
C 月例給の比較対象企業規模の検討とも関連して、一時金の比較のあり方についても検討している。
 今後、公務員連絡会の意見も十分聞きながら、勧告までに第3者機関として責任を持って判断していきたい。

(2) 給与構造の見直し関係について
 給与構造の見直しについては、本年は、昨年の報告に沿って、広域異動手当の新設と特別調整額の定額化を勧告するべく準備を進めている。また、スタッフ職俸給表の新設についても、成案が得られれば勧告を行うべく、なお、検討を進めている。このうち、広域異動手当については、昨年の報告の内容で勧告する予定である。これ以外の事項としては、@権衡上支給すべき職員の範囲A再異動者の取扱い、等について細部の詰めを行っている。また、特別調整額の定額化についても、昨年の報告文の内容どおり勧告することで検討を進めているが、特別俸給表の取扱いについてなお検討している。

 これに対し公務員連絡会側は次の通り審議官の見解を質した。
(1) なぜ「50人以上」との比較なのか、合理的・積極的でわれわれが納得できる理由が一切述べられていない。納得いく説明ができなければ「50人にする合理的理由はない」ということだ。
(2) 7日に決定された骨太方針では「国家公務員人件費について、既に決まっている定員純減と給与構造改革を着実に実行するともに、定員・給与両面で更なる改革を行う」とした上で、「人事院において比較対象企業規模を見直すことを要請する(100人以上⇒50人以上)」と書かれている。財政論として政府が人事院に官民比較方法の見直しを要請した形である。結果論として50人以上ということになれば総人件費削減政策を受け止めたことになる。人事院としてどう考えているのか。
(3) 特別給については何を検討しているのかよくわからない。月例給については「同種同等」といいながら、特別給はラス比較をしていないというのは矛盾している。特別給もラス比較を行うべきである。

 これに対し審議官は次のとおり答えた。
(1) 研究会の中間取りまとめでは50人以上を調査することが適当である理由について、@公務の組織階層を有する規模の民間企業と比較する必要があることA30人以上に拡大すれば郵送調査となって回収率が非常に低くなる可能性があることB50人以上にすればカバー率が約65%となることC比較企業規模をあまり小さくした場合には公務の人材確保に影響する心配があること、を上げており、これらを総合的に判断すると50人以上が適当ではないかということで、それを踏まえて調査を実施したところである。同種同等の原則を確保しつつ、広く民間実態を合理的に反映できる範囲ということである。
(2) 昨年秋以降国会で与野党から指摘されるなど各方面から指摘を受けたことから、世論の動向も踏まえ検証する必要があるということで研究会等を設けて検討を行ってきたものであり、政府から要請があったから見直すというものではないし、総人件費抑制のために検討しているわけではない。
(3) 特別給については、技術的な問題からラス比較は行っていないが、企業規模の問題については月例給をどうするかとの関連も含めて検討する必要があるということである。

 以上のような人事院の説明に対し、公務員連絡会側は「同種同等というのは企業規模を含めた話であって、公務員給与を企業規模100人以上と合わせるというのと50人以上と合わせるというのでは公務員給与の社会的位置が変わってくる。人事院が決めればいいというものではない。今日の審議官の説明では全く納得できない。19日の局長との交渉ではなぜ『50人以上』なのかについての明確な説明と、各検討項目の具体的な内容について提示してもらいたい。企業規模について、われわれが納得できなければ本年の勧告での拙速な見直しはやるべきではない」と強く要請し、本日の交渉を打ち切った。
 なお、広域異動手当、特別調整額の見直しについては、具体化に向けて引き続き交渉・協議を行っていくこととした。

以上