2006年度公務労協情報 54 2006年7月19日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

篠突く雨の中2006人勧期第2次中央行動実施−7/19
−交渉で人事院が小規模企業との比較を強く示唆−

 公務員連絡会は、19日、2006人勧期の第2次中央行動を実施した。この第2次中央行動は、本年の勧告に向けた中間的回答を引き出す目的で実施したもの。また、地公部会は、この日午前、独自の中央集会や総務省公務員部交渉などの行動を実施した。午後1時30分から日比谷大音楽堂で開かれた決起集会には、篠突く雨の中、4千人の全国の仲間が結集し、官民比較方法の拙速な見直し反対の闘いを最後まで貫徹する意志を固めあった。そのあと行われた書記長クラスの交渉で給与局長は、「まだ決まっているわけではないが」としつつ、100人未満50人以上の小規模企業との比較について「十分可能ではないかとの感触をもっている」として企業規模の見直しを強く示唆する見解を示した。公務員連絡会は、同日早朝に行われた企画・幹事合同会議で、人事院の勧告に向けた姿勢がさらに厳しくなっている情勢を踏まえ、8.1第3次中央行動を人勧期の山場に設定し、官民比較方法の拙速な見直し阻止などの重点要求を堅持し、その実現に向け交渉・協議を一層強める方針を確認した。

 午後1時30分から日比谷大音楽堂で開かれた中央集会の冒頭挨拶にたった丸山議長は「人事院は納得いく説明なく官民比較方法の見直しを強行しようとしている。政府・与党は歳出削減や増税のスケープゴートとして公務員人件費削減を決定しており、政治の圧力に負けて人事院が勧告するようなことは絶対認められない。政治の介入を排除し、労使関係の中で賃金を決定する仕組みの構築に向けて全力を挙げて取り組まなければならない」と、基本要求を堅持し最後まで闘い抜くことを強く訴えた。激励挨拶には、公務労協国営関連部会を代表して岩ア労働条件委員長が駆けつけ、「国営の各組合は、定昇確保で今年の賃金交渉の決着を見た。しかし、勧告のゆくえによっては再交渉もあり得る情勢だ。企業規模の見直しは国営にも影響することは不可避であり、なんとしても阻止しなければならない」と、官民比較方法の見直し阻止に向け連帯して闘う意思を表明した。
 続いて山本事務局長が、19日現在、「官民比較方法の見直しに関する要請署名」が1,246,072筆を集約したことなど、これまでの取組経過を報告、8.1第3次中央行動を大きな山場に本年の勧告に向け粘り強く取組を進めるとの方針を提起。構成組織決意表明では、日教組・小西書記次長、国税労組・石塚副委員長、都市交・林中央執行委員、税関労組・藤井副委員長が登壇し、力強く闘う決意を表明した。
 集会を終えた参加者は、人事院交渉を支援する行動に移り、「企業規模の見直し反対」「公務員給与を維持・改善せよ」「育児・介護の短時間勤務制を実現せよ」と力強くシュプレヒコールを繰り返した。
 人事院前で行われた総括集会では、この日行われた職員福祉局長と給与局長との交渉経過の報告を受け、団結ガンバロウで行動を締めくくった。この総括集会には、連合の古賀事務局長が激励に駆けつけ、「労使関係を無視し、政治が公務員賃金の有り様を決定することは極めて問題だ。連合としても、皆さんの闘いを支持し、人事院への申入れ等を検討したい」と、連合としても支援の取組を進めたいとの決意を述べた。
 この日行われた書記長クラスによる職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。

<職員福祉局長との交渉経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、人事院吉田職員福祉局長と交渉をもち、育児等の短時間勤務制度の意見の申出に向けた検討状況を質した。
 冒頭、公務員連絡会側が、人事院から示された「素案」(6月20日)をふまえた「育児等の短時間勤務制度の実現に向けた申入れ」(6月27日)に関する現段階における人事院の考え方について回答を求めた。
 これに対して職員福祉局長は、「公務員連絡会から6月27日に『素案』に対する申入れを受けたところであり、各府省、制度官庁等の意見を踏まえ、検討を行っているところである。近々にも、制度官庁等の検討状況を踏まえ、再度、全体像をお示ししたいと考えている」としたうえで、以下の通り、6月27日の申入れ事項についての現時点の考え方を述べた。

(1) 介護を対象とすることについては、介護休暇の取得状況からは短時間勤務のニーズが少ないと見込まれること、育児とは休暇制度と休業制度と位置づけの違いがあり、介護休暇の取得期間も民間より長いことなどから、今回は対象外としたい。今後、休業制度へ転換することも含め全体として制度設計をどうするか検討していく必要があると考えている。
(2) 短時間勤務職員の俸給については時間比例を原則とし、さらに生活関連手当の取扱い等について検討している。
(3) 定員・共済・退職手当等の取扱いについても、なお、関係省庁と調整を行っている。
(4) 後補充の任期付短時間勤務職員については、かつて公務員だった職員を除いて厳格な能力実証を課すこと、常勤と同様の服務義務を課すこと、給与制度についてはできる限り常勤職員に近い制度とすることなどの方向で検討している。
(5) 短時間勤務制度、自己啓発等休業制度の双方については、制度設計が間に合えばこの夏の勧告の時点で意見の申出を行いたいと考えている。 
(6) その他の要求の検討状況として、総労働時間の短縮については、民調で民間企業の所定内労働時間の実態を調査中であり、調査結果を踏まえ適切に対応したい。さらに、超過勤務の縮減や厳正な勤務時間管理、職場の健康管理などについても、報告の中で言及するべく検討している。

 これらの回答を受けて、公務員連絡会側からは次の点について質した。
@ 短時間勤務制度、自己啓発等休業制度については、夏の勧告時にあわせて意見の申出を行うという回答と受け止めていいか。
A 介護職員の短時間勤務制度については、仮に今回実現しないとしても、引き続き制度実現に向けて検討していくという姿勢を示してもらいたい。
B 民間労働者を含めて短時間勤務制度に対する期待は大きい。後補充のための任期付短時間勤務職員については、共済加入、退職手当の適用を含め、しっかり対応していただきたい。
C 民調の所定内労働時間の調査結果の見通しはどういう状況か。ぜひ所定内労働時間短縮に向け、前向きの報告を行ってほしい。
D 超勤時間の縮減については、職場実態をふまえたガイドラインを出すなど実効ある施策を提言してもらいたい。

 これらの追及に対して局長は次のような見解を示した。
@ あくまで制度設計が間に合えばということであるが、人事院としては意見の申出をしたいと考えており、それに向けて努力するということである。
A 今回の報告では介護職員の短時間勤務制度については言及しないが、制度のあり方を含め引き続き検討していくということである。
B 後補充のための任期付短時間勤務職員の共済加入の問題については、年金一元化の議論の中で厚生年金を含めどのような結論となるのかに左右される。今の段階で公務が先行することは難しいが、高齢再任用に続いて今回このような制度ができる流れを踏まえれば、次のステップの話として検討課題になるのではないか。
C まだ集計結果は出ていないが、明確に所定内を短縮するというような民調結果が出ることはなかなか難しいのではないか。いずれにしろ民調結果を見て判断したい。
D 超勤時間の縮減策は、昔から言われて久しい。報告には、なるべく言葉だけで終わることのないような施策を盛り込んでいきたい。

 これらのやり取りを踏まえ、公務員連絡会側は、育児等の短時間勤務制度、自己啓発等休業制度について「本年の勧告時期に合わせて意見の申出を行うよう検討を急ぎ、8月1日の交渉では明確な回答を示す」ことを強く求め、この日の交渉を終えた。

<給与局長交渉の経過>
 関戸給与局長との交渉は、14時45分から行われ、公務員連絡会書記長クラス交渉委員が臨んだ。
 冒頭、山本事務局長が「官民比較方法の見直しに関する要請書」署名1,246,072筆を局長に提出し、「全国の組合員の意思を重く受け止めてもらいたい」と要請するとともに、「6月7日に人勧期要求を提出し、幹事クラスの交渉等を経て、きょうは局長から現時点での検討状況をお聞かせ願いたい」として、関戸局長の見解を質したのに対し、局長は「6月7日の要求を受けて、ご意見を聞かせていただいた。現時点では結論が出ている状況ではないが考え方を示したい」として次の通り答えた。

(1) 勧告へ向けての作業状況
 今年の勧告に向けての作業は今のところ例年ペースで順調に進んでいる。民間給与の実態調査は、全体でも90%程度の調査率、企業規模100人未満50人以上についても85%の調査率を確保し、現在、集計・分析作業を急いでいるところである。特別給の比較では、この夏の一時金についてはなお調査を継続している。
 今年の給与改善の見通しについては、春闘結果からみて必ずしも楽観できないが、いずれにせよ民間給与の動向を精確に把握して公務員給与に反映するという基本姿勢に変わりはない。
(2) 官民比較方法に関する検討状況等
@ 先般、官民比較方法についての検討事項をお示しし、さらに検討を進めている。これまで研究会、懇話会において精力的に議論していただいていたが、21日に研究会の最終回で報告書のとりまとめを、27日に懇話会の議論のとりまとめをお願いしている。これらの研究会等の検討状況を踏まえ、皆さんの意見も聞いて、第三者機関として責任もって判断したいと考えている。
A まだ研究会等の最終意見も出ておらず引き続き検討を続けているが、現時点での考え方をお示しする。
 公務員給与の水準は大企業等一部に偏っているのではないか等の様々な批判が寄せられており、それらに応えるには、官民の同種・同等の原則の下でいかに広く官民の給与を比較するかが求められる。同種同等比較の原則をしっかり守っていくことを基本として、50人以上100人未満の企業規模の企業の相当数にも公務と同等の組織階層がみられ、研究会中間取りまとめでも触れていたが同種・同等の職務を行う従業員が存在することが否定できず、公務員と比較することは十分可能ではないのかという感触をもっている。
 そのほか、公務における組織の構成員等の実態からみて、部長の部下数を30人以上から20人以上とすることなど民間従業員の職種の定義を一部見直すこと、民間の人事・組織形態の変化に対応してライン職と同等と認められる相当職・スタッフ職を比較対象の従業員に加えることを検討している。なお、これらの民間従業員の給与実態についても、詳細な結果が出ているわけではないが、本年の民間給与実態調査で十分に把握することができたのではないかという感触をもっている。また、本年の新設級、統合級を民間企業の従業員とどう対応させるのか、仮に100人未満の企業の従業員を比較に加えるとした場合に具体的にどう対応させるのかなどについても検討している。
 さらに、これまで一時金は月例給と同じ調査対象事業所で比較してきたが、月例給において仮に100人未満の企業規模の事業所を比較対象とする場合は、特別給についても同様に100人未満の企業規模の事業所を対象とすべきかどうかということについて検討している。
(3) 勧告・報告に向けての検討課題
 現時点ではどういう官民較差が出るかはわからないし、それがどうなるかにもよるが、俸給表の改定とともに、扶養手当の改定についても検討を行っている。
 今年の勧告に向けては、昨年の報告にそって給与構造見直しの2年目として、広域異動手当の新設、特別調整額の定額化の勧告を行うことを予定している。また、スタッフ職俸給表の新設についても、成案を得られれば勧告すべく、なお、ぎりぎりの検討を行っている。なお、この関連では、来年度から実施予定の一般職員に対する新しい能力・実績の反映システムについて、公務員連絡会の意見を十分聞かせていただいて検討することにしているが、報告で論及することなども検討している。今年の官民較差の取扱いや給与構造見直しについては、皆さんのご意見も踏まえて適切に判断していくこととしたい。

 これに対し、公務員連絡会側は次の通り局長の見解を質した。
@ 昨年、人事院総裁は、現行の比較方法による公務員給与水準は適正であるが配分に問題があるということで地域給の導入、給与制度の見直しを行いたいという見解であった。その考えに変わりはないか。
A 同種同等の原則を強調しているが、一時金は同種同等の原則に基づくラスパイレス比較ではなく、事業所単位の比較である。最も基本的な原則が担保されていない以上、月例給が仮にそうなったからといって一時金も右習えするのは矛盾しているのではないか。
B 本年勧告については、政府が総人件費改革の中で具体的な数値をあげて人事院に対し官民比較方法の見直しを要請しており、極めて異常な状況の下での勧告となる。人事院が代償機関としての使命を貫くかどうかについて注目するとともに、危惧している。毅然と対応していただきたい。
C 政府が人事院が行うべきことに手を突っ込んできている。局長の回答では「皆さんの意見を聞きながら」ということであり、政府にこれ以上手を突っ込まれないように毅然とした対応を強く求めておきたい。
D プライマリーバランスがいつ確保されるのか不透明な中で、公務員給与水準の引下げが続けば、公務への人材確保も心配であるし、地方で働いている者は切り捨てられるのではないかと心配している。去年の約束が今年守られないのであれば、今年の約束が来年また変わるのではないかとの危惧がある。

 これらの追及に対し、関戸局長は次の通り答えた。
@ この間総裁からいろいろと申し上げてきたように、当時は現行の比較方法と水準が適当という考えであり、わたしもそう考えていた。現行の比較企業規模によるカバー率が過半数を超えていることで、広く国民の方々、社会的コンセンサスを得られているという認識を持っていた。しかし、その後、国会で与野党から指摘されるなど、公務員給与の適正な水準はどういうものか、検証を行う必要があるということで、研究会等を設置するなどして検証作業を行っているところである。その結果については、第三者機関として責任を持って判断をしたいと考えている。
A 特別給の比較については、同種同等の従業員が存在する事業所で支給されている一時金と比較しており、今までと変わりはなく、それでおおかたの理解を得られてきたが、別の取扱いが可能かどうか、すなわち月例給と同様の企業規模で比較することが適当かどうかについて検討したいということである。
B 今までの人事院の姿勢とわたしの姿勢は、まったく変わっていない。そういう状況の中に現在の比較方法見直し問題はある。総人件費改革の閣議決定があり、人事院に対する要請が行われているが、人事院として政府の要請に応えるために対応しているわけではない。どういう比較方法がいいのか、真剣に考えているところだ。きょう皆さんがおっしゃられたことや100万を超える署名をしっかり受け止めて、第三者機関として対応したい。

 以上のように局長からは、なぜ50人以上なのかについて納得できる説明もなく、一時金の比較をどうするかについても明確な方向性が示されなかった。このため、最後に山本事務局長が「われわれの要求からすれば、きょうの回答はまったく納得できない。8月1日の交渉ではわれわれが納得できる明確な回答を示していただきたい」と強く要望し、本日の交渉を締めくくった。

以上