2006年度公務労協情報 7 2005年11月15日
公務公共サービス労働組合協議会

公務労協、第1回「闘争委員会」を開催−11/15
−闘争態勢の確立、当面方針を決定し「組合員へのアピール」採択−

 公務労協は15日朝、第1回「公共サービスと雇用・労働条件確保のための闘争委員会」を開催し、闘争態勢を確立し当面の取り組み方針を決定するとともに「組合員へのアピール」(資料1)を発した。
 この「闘争委員会」は、11月10日の第19回運営委員会決定に基づき、公務労協全構成組織の委員長・書記長・事務局役員によって構成されるもので、政府の経済財政諮問会議が14日夕刻の会議で「総人件費改革の基本指針」を正式決定したことに抗議し、基本指針の具体化に対する取り組みが急務との判断に基づき開催されたものでる。
 公務労協は、政府の「総人件費改革の基本指針」案が具体化されるならば公務員等関係労働者に深刻な雇用不安、賃金労働条件の悪化をもたらし、公共サービスが解体させられることに強い危機感を持ち、この間、官房長官、総務大臣、経済財政担当大臣、行政改革担当大臣らへの緊急申入れ、地元選出国会議員への要請行動等に取り組んできた。
 しかし、政府は、当該労働組合との協議や意見を聞くこともなく一方的に「基本指針」を決定した。
 政府は、行革担当大臣の下で実行計画を取りまとめ、12月中下旬に「行政改革の重要方針」を閣議決定するとの方針を決定しており、通常国会への関連法案の提出等具体化作業を急いでおり、重大局面に突入している。
 公務労協は、本日の闘争委員会で「組合員へのアピール」を採択し、決定された方針に基づき緊急職場集会の開催と抗議打電行動に取り組むことを皮切りに、11月22日の5000人規模の中央集会を軸とした中央行動など、通常国会を視野に収め中央・地方一体となった取り組みを総力で推し進めることとしている。

総人件費改革の基本指針取りまとめに係り、与謝野経済財政・金融担当大臣に申入れ−11/14午後


 公務労協は、当面の最重要課題となっている「総人件費改革の基本指針」取りまとめに向けて、当事者の意見を聴取することや雇用・労働条件を確保することなどを求め、関係大臣への緊急申入れに取り組んできた。
 この日の与謝野大臣への申入れは、総務大臣(10日)、官房長官(11日)に続いて行われたもの。申入れの経過は下記の通り。
 与謝野大臣への申入れは14日14時55分から大臣室で行われ、公務労協からは岡部議長、森越・丸山副議長らが出席した。
 冒頭、岡部議長は「政府は公務員の総人件費の改革について5年で5%、10年で20%の純減目標や市場化テストの導入などなどを打ち出している。労働組合としては、労働基本権制約の中で、働くものの現場の声が反映されないまま、政策目標や数値目標だけが設定されていくことには納得できない」として5点の申入れ事項(資料2)について説明し、その実現を求めた。あわせて、組合側から「目標達成のためには分限解雇ということになるのか。また、省庁間異動などの際の条件整備などについても、議事録を読む限り議論されておらず、極めて遺憾」として、大臣の見解を質した。
 これに対し与謝野大臣は「当然労働組合としては、そういうでしょう。5%、20%というのは大変な数字だ。普通は5年で1.5%が精一杯だ。具体的には(一律ではなく)どの部署を切り込むかという問題だ。本日基本指針が決定されるが、その後は中馬大臣のところでやる。(経済財政諮問会議は)数値目標だけであり、具体的にやったわけではない。多分余っているだろうということでやっている。これは財政を立て直すための多くの手段の中の一つに過ぎない。自民党でも労働基本権の話はどうなっているという議論は出ている。それを含め、中馬大臣のところで答えを出すことになる。公務員も家族を抱えていることは承知してやっている」との見解を表明した。
 これを踏まえ組合側から、重ねて「有識者会議で年内に決定して、年明けに諮問機関にかけるのか。関係閣僚懇談会を設けるのか」等々と質し、「決定過程に労働代表が出ていない。働く側の論理を踏まえるべきである」との主張に対し、「中馬大臣と有識者会議で決めていく。議論は年明けにも続くだろう。中馬大臣のことだから丁寧にやるだろう。わたしからも中馬さんによく言っておく」との見解が示され、申入れを終えた。


資料1.「公共サービスと雇用・労働条件確保のための闘争委員会」アピール

組合員へのアピール


(1)11月14日夕刻に開催された経済財政諮問会議は「総人件費改革の基本指針」を正式決定した。同方針には、「5年間で5%定員純減」、公務員賃金水準の見直し、市場化テスト法の制度化と導入などを柱とし、削減対象を行政関係一般職公務員に限らず、国会職員、会計検査院、人事院、特殊・独立行政法人、更に自衛官等を含める方針を明記している。地方公務員についても4.6%以上の削減をはじめ国と同様の措置を求め、国が定員基準を定めている警察官、教員、消防職員、福祉関係職員等の基準の見直しによる削減、地方公営企業の非公務員化・民営化等々、包括的・網羅的に提起している。
 更に、政府は、「基本指針」に基づき行革担当大臣の下で実行計画を取りまとめ、12月中下旬を目途に「行政改革の重要方針」として閣議決定すると表明している。
(2)基本指針の内容は、ナショナルミニマムとして保障されるべき公共サービスの水準、量、質、供給主体と形態、行政の役割などについての検討もなく定員削減と賃金引き下げを自己目的化し公共サービスを解体するものと断ぜざるを得ない。指針は国民生活に対する政府の責任と役割を放棄するもので、増税への政治的条件づくりと市場万能主義により公共サービスを営利追求の対象とする政策の許し難い政治的狙いが明白である。 
(3)基本指針を決定した経済財政諮問会議には財界の代表が複数参加している。しかし5300万人の雇用労働者の代表は全く排除され、その意見が全く聞かれることもなく基本指針は決定された。
 また、雇用・賃金労働条件は本来労働契約であり、公務員にあっても労使対等の立場で決定すべきことは国際的にも確立された原則である。ILOからも累次の勧告において、日本の公務労使関係制度は国際基準を満たしていないことが指摘され、その改善が求められているにも関わらず、かかる事態が黙殺され、労働基本権が蹂躙され、当事者の意見が全く聞かれることもなく一方的に決定されたことに、公務労協は強い憤りと抗議の意を表明するものである。
(4)公務労協は、11月10日第19回運営委員会において、公共サービス解体・総人件費削減に反対し雇用と労働条件確保のため組織の総力を結集した取り組みが急務と判断し、全構成組織委員長・書記長による「闘争委員会」を立ち上げることを決定した。
 本日開催された第1回闘争委員会は、通常国会を視野におさめつつ、当面、実行計画取りまとめと12月下旬の「行政改革の重要方針」閣議決定期に照準を定め、不退転の決意で取り組みを進めることを総意で決定した。

 組合員の皆さん。全ての職場で緊急集会を開催し、抗議電報を集中させ、22日の中央行動を成功させましょう。公共サービスの解体を許さず、雇用と労働条件の確保のために、全ての職場から闘いに立ち上がり、民間の仲間、地域住民と連携し「労働を中心とした福祉型社会」を実現する国民的な運動へ大きく前進させましょう。

2005年11月15日
公務公共サービス労働組合協議会
第1回「公共サービスと雇用・労働条件確保のための闘争委員会」



資料2.与謝野金融・経済財政担当大臣への要請書

2005年11月14日


金融・経済財政担当大臣
 与謝野 馨 殿

公務公共サービス労働組合協議会
議 長 岡 部 謙 治


「公務員の総人件費改革の基本指針」取りまとめに係る緊急要請


 貴職には、日頃よりわたしどもに対しご理解を賜り敬意を表します。
 さて、自民党行革推進本部は10月26日、国と地方の公務員定員を10年間で20%純減目標を掲げ国家公務員について「2006年度から5年間で5%純減」の中間目標を、地方公務員についても10年間で61.7万人の純減目標を決定しました。あわせて行政組織の統廃合、市場化テスト法案の策定などを含む実行計画を取りまとめました。
 また、経済財政諮問会議においても「公務員の総人件費改革の基本指針」の取りまとめに向けて精力的な審議が行われ、「定員純減、事務・事業の廃止・民営化、公務員賃金を財政事情にリンクさせること等」についても検討され大詰めを迎えていると報道されています。
 当事者の意見が全く聞かれることなく急ピッチで進行する一連の動きは、わたしども公務関係労働者に雇用や生活設計に対する深刻な不安を広げ、働く士気に大きな影響を与えています。賃金等は労使間で取り決められる労働契約であり、公務員にあっても労使対等の立場で決定することは国際的にも確立された原則です。ILOからも累次の勧告において、日本の公務労使関係制度は国際基準を満たしていないことが指摘され、その改善が求められていることはご承知の通りです。かかる事態が黙殺され、労働基本権が蹂躙されることには強い憤りと遺憾の意を表明せざるを得ません。
 定員削減問題等は、ナショナルミニマムとして保障される公共サービスの水準、量、質、供給主体と形態、行政の役割などについての検討の結果明示されるべきものであり、国民的論議と合意形成抜きに一部財界人と学者の意見で拙速に決定するべきではありません。
 つきましては基本指針取りまとめにあたって、以下の点を実現されますよう緊急に申し入れ致します。



一、定員純減、公務員賃金問題は直接の労働条件であることから、当該関係者の意見表明の機会を保障すること。

一、基本指針策定にあたっては、行政活動の人的基盤である公務員の定員・総人件費削減を自己目的化せず、雇用労働条件の確保を明記すること。

一、労使関係制度の改革と合わせ公務員賃金のあり方、決定制度などの基本的方向を確定するための「政労協議の場」を設置すること。

一、ILO国際労働基準に基づき労働基本権を付与し、国民・市民への説明責任を果たす公務労使関係制度確立を含む透明で民主的な公務員制度への改革を進めること。

一、公共サービスを企業利益追求の手段とし、利用者の参画とコントロールが効かない民営化への横断的手法となる市場化テストの導入や法制化を行わないこと。

以上