2006年度公務労協情報 8 2005年11月15日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

地公賃金と地財確立で総務省公務員部長と交渉−11/9

 公務労協公務員連絡会地方公務員部会(以下地公部会)は、11月9日11時から、地方公務員の賃金と地方財政確立等の課題について、総務省からの回答を求め公務員部長交渉を行った。
 総務省からは、小笠原公務員部長、松永公務員課長、高橋高齢対策室長、赤穂定員給与調査官、三橋給与能率推進室課長補佐、宮川合併推進課課長補佐、出口財政課課長補佐等が出席した。公務員連絡会地公部会からは、山本公務員連絡会事務局長ほか構成産別書記長クラスが臨んだ。
 冒頭、地公部会側から、「国、地方とも財政が厳しい中であるが、公共サービス水準が担保できるよう、地方公務員の賃金水準の確保と地方財政の確立をはかっていただきたい」と述べたあと、山本地公部会事務局長が 、別紙申入書に基づき、総務省としての考え方を質した。
 これを受けて、総務省は次の通り回答を行った。

1.地方公務員の給与改定については、議会の議決により条例で定めることとされており、その内容は、国及び他の地方公共団体との均衡が失われないようにすべきもの。今後とも、このような考え方に立って、必要な助言等を行ってまいる所存である。なお、それぞれの地方公共団体における給与改定に当たっては、関係者との真摯な協議がなされるものと思料している。
2.「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」では、人事委員会機能の強化方策など、地方分権時代に即した地方公務員給与のあり方について更に検討を進めており、本年度中に最終報告を予定しているところ。なお、研究会の検討状況については、必要に応じ公務員連絡会にも情報提供等をさせていただきたいと考えている。
 また、地方公務員給与においては、地域の民間給与の状況がより的確に反映されるように見直すことは、基本的にはそれぞれの地方公共団体の職員の給与水準そのものの問題となるところであるが総務省で設置している「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」の提言(基本的方向性)や昨今の国民・住民からの厳しい指摘等をふまえると、速やかな見直しが必要と考えており、既に通知でお願いしているところである。各団体においては、真摯な協議がなされるものと思うが、使用者側、職員団体にも同様の問題意識を共有していただきたい。
3.「総人件費改革のための基本指針」は11月中の策定をめざし、作業が行われているところであるが、総務省としては、策定に当たって、労働基本権との関係について留意するとともに、地方公共団体における定員の削減について、教職員、警察、福祉など各省庁が所管する事務処理の義務づけや人員配置基準のあり方に立ち返った検討も重要であることなどの意見を申し上げている。
4.地方税財源の課題については、相異がないと思っている。「三位一体の改革」は、地方の自由度と責任を拡大していくものである。地方団体の安定的な財政運営に必要な交付税などの一般財源総額を確保するとともに、財政力格差が拡大しないよう交付税による確実な調整措置を講じることとしているところである。
5.総務省としては、自主的な市町村合併を積極的に推進しているところであり、市町村合併するか否かは、最終的には当該市町村が自ら判断すべきもの。ただし、厳しい財政状況を見ると、合併を真剣に検討することが必要ではないかと考える。地域において十分な議論を行い、ご判断していただきたい。
6.労働基本権の問題については、公務員の特殊性、公共性もあり、慎重に考えるべきであるが、いずれにせよ、最近、様々な場で議論されていることもあり、こうした場も含めて、幅広い議論は行ってまいりたい。

 こうした回答を受けた後、地公部会側から、「今後の給与のあり方の検討のなかで、地方自治法の204条(手当の列記規定)を無くしていくというのは許容の範囲か」と質したのに対して、「研究会として、いろいろな意見がある中で、分権化のなかでは法改正も含めどう考えていくのか議論の対象になり得ると考えている」と回答した。また、「人事委員会の体制、機能の強化が重要になってくるのではないか」と質したのに対しては、「人事委員会の体制強化の必要性の議論はあるが、効率的でなければならず、定員抑制をしているなかで人事委員会だけ人員を増やすことができるのかといった課題もある」と回答した。
 この他、地公部会側からは、「国の基準をはずしていくことよって、国の標準的なサービスが崩れていくこともある。『国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』との憲法上の要請もある。原理、原則をふまえた対応をしていただきたい」、「9月28日の事務次官通知(人事院勧告閣議決定を受けた通知)を含め、様々な通知が国から自治体へ発せられているが、これらは基本を理解していただくための助言であり、最終判断は自治体に任せるべきである」、「当該の者が納得しないなかで、国が自治体に条例化を指導することは、止めていただきたい」、「総務省の研究会では、労働基本権も検討の対象になり得る。最初からフタをすべきではない。ただし、基本権は返さない、能力、成果主義は入れていくという一方的な議論には絶対に反対である」との意見、要望を述べ、今後の総務省の努力を要請し、交渉を終了した。


別紙:総務省への申入書

2005年11月9日


総務大臣 
 竹 中 平 蔵 様

公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 岡部謙治
日本教職員組合
中央執行委員長 森越康雄
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 山岸 晧
全日本水道労働組合
中央執行委員長 佐藤幸雄
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合
中央執行委員長 早川良夫


地方公務員の賃金と地方財政確立等に関する申入れ


 貴職の地方自治確立、地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 2005年の人事委員会勧告が出され、自治体の賃金確定は山場を迎えていますが、行政サービスに従事する地方公務員の賃金水準の確保と、労使自治を尊重した賃金確定が求められています。
 また、政府の骨太方針2005では、国・地方の総人件費の削減を図るとしており、公共サービスのあり方についての議論を抜きにした定員・賃金の引下げが懸念されます。また、国の歳出削減策は地方財政計画の圧縮、交付税の大幅削減により、自治体サービスの縮小や質の低下を招くおそれがあります。
 いま、雇用、所得、生活の地域間格差が拡大し、地域の二極分化を招いています。こうした中にあって、少子高齢社会における社会保障の水準確保や教育、環境、防災など地域における住民ニーズに適切に対応する自治体の役割強化が求められています。
 貴職におかれましては、下記事項の実現に向けてご尽力頂きますようお願いします。




1.自治体サービスの確保・向上のため、地方公務員の賃金水準が確保されるよう取り組むこと。また、自治体賃金の確定に当たっては、労使の交渉を尊重すること。

2.地方公務員の給与の在り方についての結論を出すに当たっては、公務員連絡会地方公務員部会との十分な交渉・協議を行うこと。また、自治体における給与構造見直しに当たっては、国の地域給は導入せず、十分な労使交渉・協議に基づいて進めること。

3.公共サービスのあり方や給与決定方式の検討を抜きに定員・給与削減を自己目的化する「総人件費改革」の策定を行わないこと。

4.公共サービス分野の規制改革については、公共サービスを企業利益追求の手段とすることなく、公共サービスの質と水準の維持・向上を基本とすること。地域における公正で安定的・継続的サービスを提供する自治体の責任と役割を踏まえ、公共サービスの利用者である市民の関与と統制が効かない市場化テストの導入や法制化を行わないこと。

5.国庫補助負担金制度の改革、税源移譲など安定した地方税財源を確保するための制度改革を急ぎ、地方分権の推進、地方自治の確立を図ること。国庫補助負担金制度については、国としての最低保障のあり方や国と地方の役割分担を踏まえ、個々の事業を精査し必要な改革を進めること。また、交付税制度を堅持し、交付税総額の安定的確保をはかること。

6.住民自治の観点から、住民の意向を無視した強制による市町村合併は行わないこと。

7.地方公務員制度の改革にあたっては、労働基本権を確立し、地方自治の本旨を踏まえ分権型で開かれた民主的な公務員制度とすること。

以上