2007年度公務労協情報 18 2007年2月20日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

委員長クラス交渉委員が総務大臣に2007春季要求書を提出−2/20

 公務員連絡会は、20日、委員長クラス交渉委員が菅総務大臣と会い、春季要求書を提出した。要求書では、総人件費改革において雇用を確保することや公務員給与の改善、臨時・非常勤職員の雇用・処遇の改善などを強く求めている。今後、3月2日の幹事クラス交渉、3.13中央行動時の書記長クラス交渉などを節々で配置し、3月22日には回答を引き出すこととしている。
 総務大臣交渉の経過は次の通り。

<総務大臣交渉の経過>
 20日12時10分から行われた菅総務大臣との交渉には、福田議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料1、2)を手交した。
 要求提出に当たって福田議長は、次の通り述べ、総人件費改革において雇用を確保することや公務員給与の改善、さらに格差是正のために公務部内でも臨時・非常勤職員の雇用・処遇の抜本的改善を行うよう強く求めた。
(1) 日本経済は、「いざなぎ越え」と言われるなど大企業を中心に好調な業績が続いているものの、それが中小企業の業績や勤労者の所得に波及しない状態が続いている。また、政府が進める構造改革路線によって、格差と二極化が見られ、地域社会はまさに崩壊の危機にある。夕張市はその最たる例だ。
 こうした日本社会の危機とも言える状況を打開するためには、「格差問題」に正面から立ち向かい、行き過ぎた市場万能主義的な政策を抜本的に変えていく必要があると考えている。連合は2007春季生活闘争において、ゆがんだ配分構造を是正するため、ベアを含む賃金改善はもちろんのこと、非典型労働者の雇用問題や「均等待遇」原則に基づく処遇改善、そしてワークルールの確立などを最重点に、取組みを進めている。
(2) 公務員を巡っては、政府が進める総人件費削減政策のもとで昨年大幅な純減が決定され初年度目の配置転換が進められる一方、昨年、われわれが強く反対したにもかかわらず比較対象企業規模の見直しが強行され、公務員給与が実質的に抑制されてきた。これは、労働基本権制約の代償機能を大きく歪めるものであり、われわれは決して容認することができないし、「政治」が中立・公正な第3者機関であるべき人事院に圧力を加えるようなことは絶対あってはならないと考える。
(3) そうした観点も踏まえ、本年の春季生活闘争にあたっては、@引き続き公務員の雇用確保に万全を期すとともに、A民間相場を正確に反映した給与の改善、B公務内の格差問題の解決に向けた非常勤職員等の雇用・処遇の抜本改善に向けて、使用者を代表する立場の総務大臣の特段のご努力を要請したい。
(4) 公務員連絡会は、1月29日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、2007年春季の要求を提出する。本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月22日には、大臣から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたいと考えているのでよろしくお願いしたい。

 続いて地公部会を代表して山岸議長が次の通り述べた。
(1) 昨年の地方公務員の給与改定は、人事院の比較企業規模引き下げと、地域民間給与に準ずるべきだとする地場賃金圧力により、賃金水準の引き下げとなり、また自治体間格差を拡大する結果となった。
 同じ職務に従事する地方公務員が勤務する自治体が異なるからといってそのまま格差が拡大して良いことにはならない。総務省として、処遇の改善や格差を拡大させないための対応をお願いしたい。
(2) 地方公務員の給与を国の人事院勧告に準拠することに批判がある中で、私たちは全国人事委員会連合会の体制・機能強化をはかりつつ「地方公務員の標準的給与」を確立する必要があると考える。それぞれの人事委員会や自治体当局に対しても要請することとしている。総務省として、地公部会との意見交換・協議を行うとともに、自治体への情報提供や助言等の対応をお願いしたい。
(3) 今年、労働界全体として、臨時・非常勤、パート労働者の待遇改善を掲げて取り組んでいる。自治体における臨時・非常勤、パート労働者の待遇改善の実があがるような総務省としての対応をお願いしたい。
(4) 格差の拡大や地域の疲弊は深刻な状況にある。こうした中で住民福祉を実現する自治体の役割はますます大きくなっている。一方で自治体の税財源が厳しく、サービスの切り捨てや水準低下を余儀なくされている。自治体が役割を果たしていくために、交付税総額の確保はもとより地方税財政の確立のために、総務省として万全の取り組みをお願いしたい。
 これに対して大臣は、「要求は承った。要望事項については、3月下旬の回答に向けて真摯に検討したい」と述べ、交渉・協議を積み上げていくことに同意した。


(資料1)

2007年2月20日


総務大臣
 菅  義 偉 殿


公務員労働組合連絡会
議 長 福 田 精 一



要  求  書


 日本経済は、大企業を中心に好調な業績が続いているものの、それが中小企業や勤労者の所得に波及しない状態が続いています。また、政府が進める構造改革路線によって、格差と二極化が極限まで進行し、夕張市に見られるように地域社会はまさに崩壊の危機にあります。2007年春季生活闘争においては、こうした格差を是正するため、ベアを含む賃金改善と非典型労働者の「均等待遇」原則に基づく処遇改善、そしてワークルールの確立などが求められています。
 公務員を巡っては、政府が進める総人件費削減政策のもとで初年度目の配置転換が進められる一方、われわれが強く反対したにもかかわらず比較対象企業規模の見直しが強行され、公務員給与が抑制されてきました。これは、労働基本権制約の代償機能を大きく歪めるものであり、われわれは決して容認することができません。
 以上のことから、本年の春季生活闘争にあたっては、公務員の雇用確保や民間相場を正確に反映した給与の改善はもとより、公務内の格差問題に正面から立ち向かい、非常勤職員等の雇用や処遇を抜本改善することが最重要課題となっています。
 公務員連絡会は、1月29日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2007年春季の要求を提出いたします。貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。



1.総人件費改革の実行計画等について
 配置転換等公務員の総人件費改革の実行計画の具体化や官民競争入札の実施に当たっては、良質な公共サービス及び適正な労働条件を確保するとともに、使用者の責任において公務員の雇用・労働条件を確保すること。これらについて公務員連絡会と十分交渉・協議、合意すること。

2.2007年度の賃金改善について
(1) 2007年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の賃金水準を改善すること。
(2) 非常勤職員及びパート職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき抜本的に改善することとし、国に雇用される労働者の最低賃金を行政職(一)表高卒初任給並みに引き上げること。また、国が民間事業者等に業務委託等、事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の確保に努めること。
(3) 公務員給与のあり方について、社会的合意が得られるよう、政労トップ会談を行うこと。

3.退職手当について
 退職時給付調査結果及び人事院の意見を踏まえ、現行の退職手当水準を維持すること。

4.国際労働基準・労働基本権等の確立について
(1) 公務、公務員及び労使関係のあり方に関する専門調査会の審議を促進し、労働基本権の付与を柱とする民主的で透明な公務員制度改革案をとりまとめるよう、中央人事行政機関として努力すること。
(2) ILO勧告に基づき、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。また、国際労働基準違反と指摘された現行法制の見直しについて直ちに協議を行うこと。
(3) 国際労働基準確立の観点からILO第151号条約を批准すること。
(4) 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

5.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 本格的短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、常勤職員の本格的な短時間勤務制度について、公務員連絡会との協議を行うこと。
(2) 労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 当面、@年間総労働時間1,800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B自己啓発等休業制度の早期実施を踏まえた総合的な休業制度、などを実現すること。また、直ちに超勤命令の徹底等厳格な勤務時間管理、超勤上限時間設定等により「国家公務員の労働時間短縮対策について」を充実・強化し、超過勤務の着実な縮減を実現すること。

6.天下り規制強化、在職期間の長期化並びに公務の高齢対策の推進について
(1) 天下りの事前規制を撤廃し自由化する法案の検討を直ちに中止し、規制を強化することとし、引き続き在職期間の長期化に積極的に取り組むこと。
(2) 民間における高齢者雇用の進展や年金支給開始年齢の段階的な引上げを踏まえ、定員の弾力的扱いなどを含め高齢再任用制度の定着と拡大に取り組み、雇用と年金の接続をはかること。また、総人件費削減政策下における実効性を確保するため、再任用者の実態調査や在職者の再任用希望調査を行い、抜本的な制度改善を含めた検討を開始 すること。

7.男女平等の公務職場の実現、女性労働者の労働権確立について
(1) 公務職場における男女平等参画の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備を行うこととし、政府全体として取り組むこと。
(2) 取得率の数値目標を明確にした育児休業及び育児のための短時間勤務の男性取得の促進、次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」の着実な実施に向け、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 改定された女性職員の採用・登用拡大の指針の実現に向け、使用者として必要な取り組みを行うこと。

8.新たな評価の試行について
(1) 新たな評価の第2次試行については、実施状況の点検と必要な指導を行うこと。
 第2次試行結果の正確な集約を行い、そのデータを共有化し、問題点の把握に努めること。
(2) 苦情処理システムのあり方に関する「協議の場」においては、労使双方が集約した苦情の分析を行い、労使が参加する苦情処理システムを各府省ごとに設置するなどの施策の取りまとめを行うこと。
(3) 新たな評価制度の確立に向け、今後の試行や本格実施の全体像、実施スケジュール等を早急に提示し、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。

9.その他の事項について
 公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。そのための職場環境の整備を進めること。


(資料2)

2007年2月20日


総務大臣
 菅  義 偉 殿

公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合     
中央執行委員長 岡部謙治
日本教職員組合         
中央執行委員長 森越康雄
日本都市交通労働組合      
中央執行委員長 山岸 晧
全日本水道労働組合       
中央執行委員長 佐藤幸雄
全国自治団体労働組合連合    
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合     
中央執行委員長 小林政至

要  求  書


 貴職の地方分権推進、地方公務員の処遇改善に向けたご努力に敬意を表します。
 地方公務員の賃金は、昨年の比較企業規模の引下げや厳しい地場賃金圧力のもとで、いっそうの水準低下と自治体間格差の拡大をもたらしています。また、地方財政の逼迫を理由に給与をカットする自治体が後を絶たず、人事委員会勧告制度の空洞化が進んでいます。
 こうした中で、自治体行政の第一線で働く地方公務員の賃金改善、自治体が参考としうる「地方公務員の標準的給与」の確立が求められます。
 自治体にとって、深刻化する社会の格差拡大の克服や住民生活の安定、安全・安心を支える公共サービスの確立が重要な課題です。そのため、自治体の行政責任を果たすとともに、地方分権の着実な推進とそれを支える地方税財政制度の確立、地方交付税制度の堅持と交付税総額の確保が必要です。
 貴職におかれましては、地方公務員の生活の改善をはじめ、下記事項の実現に尽力されますよう要求します。



1.地方公務員の生活の改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。

2.自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使の自主的交渉を尊重すること。

3.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取り組みを行うこと。その際、公務員連絡会地方公務員部会と十分交渉・協議すること。

4.地方財政危機を公務員賃金や行政サービスにしわ寄せしないこと。また、分権の推進と地方財政確立のために税財源の地方への移転を図るとともに、必要な交付税総額を確保すること。

5.労働基本権を保障した民主的地方公務員制度を確立すること。ILO151号条約を批准し、公務員の賃金・労働条件を団体交渉によって決定する制度を確立すること。

6.自治体における人事・給与制度に係わる新たな評価制度の導入に当たっては、十分な労使協議を行うこと。

7.自治体において職員の育児のための短時間勤務制度および自己啓発休業制度を導入できるよう早期に法整備を行うとともに十分な情報提供を行うこと。

8.自治体の臨時・非常勤職員について、雇用の安定と均等待遇原則による賃金・労働条件の改善、法律にもとづく災害補償制度の整備をはかること。また、非常勤職員の法的地位の明確化や短時間公務員制度実現に向け取り組むこと。

9.年間総実労働時間1,800時間のために、所定内労働時間の計画的な短縮および時間外労働の縮減と年休取得の促進を図ること。とくに、恒常的な時間外労働が生じている職場をなくすために必要な措置を講ずるとともに、「不払い残業」の実態把握を行い、その解消に向けて助言を行うこと。時間外労働の縮減について、36協定締結義務職場での締結促進のための施策を講ずるとともに、労働基準法33条3項の「公務のために臨時の必要がある場合」について、厳格な運用を推進すること。

10.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇・有給教育休暇の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。また、育児休業、介護休暇の男性取得促進のための措置を講ずること。

11.高齢者再任用制度については、民間における高齢者雇用安定法の改正を踏まえ、用と年金の接続の考え方から希望者全員を雇用するとともに、賃金・労働条件、職種・職務のあり方、定数管理等については労使合意を基本に円滑な運用と定着に必要な情報提供等を行うこと。

12.自治体職場での男女平等・共同参画のための諸施策を推進すること。

13.刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務にかかわる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう分限条例の改正を促進すること。

14.公的年金制度の抜本改革に向けて努力するとともに、被用者年金の一元化に当たっては関係者の合意を図り対応すること。

15.地方行革指針等に基づく自治体での行政改革については、自治体の自主性を尊重するとともに、行政サービスの水準や住民生活への社会的規制を確保するため、業務の安易な民営化や民間委託を行わないこと。また、市場化テストの導入を自治体に強要しないこと。

16. 自治体における雇用創出・多様就業型のワークシェアリングの実現に向け、検討を行うこと。

17.自治体職場の安全衛生体制を確立するとともに、メンタルヘルス対策を充実するよう取り組むこと。

以上