2007年度公務労協情報 26 2007年4月25日
公務公共サービス労働組合協議会

専門調査会が「議論の整理」とりまとめる−4/24

−労働基本権について「改革の方向で見直すべき」ことを明記−

 行政改革推進本部の下に置かれた専門調査会(座長佐々木毅学習院大学教授)は、24日、首相官邸内で第9回会議を開催し、別紙「専門調査会における議論の整理」(以下「議論の整理」という。)を確認し、今後は学者5名で構成する「シミュレーション検討グループ」を設け、公務員に労働基本権を付与する場合の具体的モデルについて検討し、秋以降の最終報告に向けた議論に資することを決定した。
 この調査会は、連合と政府の間での政労協議を踏まえて、昨年6月に公務員の労使関係・労働基本権のあり方等を検討するため設置されたもので、連合推薦で古賀連合事務局長、岡部公務労協議長、丸山総評会館理事長(前国公連合委員長)が参加し、労働側は国際基準に則った労働基本権付与を含む労使関係制度全般の改革を求めてきた。
 これに対し、「議論の整理」では、「改革の方向」として「労働基本権を含む労使関係の問題についても、改革の方向で見直すべきである」ことを明記し、団結権、団体交渉権・団体協約締結権、争議権の付与を具体的に検討することを明らかにしている。
 検討グループは、佐々木座長のほか、清家篤座長代理(慶応大学教授)、稲継裕昭委員(早稲田大学大学院教授)、小幡純子委員(上智大学大学院教授)、西村健一郎委員(京都大学大学院教授)で構成され、シミュレーションは夏休み前を目途に行われ、調査会に報告されることになっている。
 なお、政府は24日夜、能力・実績主義と再就職規制を内容とする「国家公務員法等改正法案」と全体パッケージとして「公務員制度改革について」を閣議決定しており、公務労協は「公務員制度改革関連法案の閣議決定・国会提出についての見解」を発表した(対策本部ニュースNo191参照)。
 公務労協としては、引き続き、連合高木会長を本部長とする対策本部に結集し、3委員と連携しながら、労働基本権付与を前提とした民主的公務員制度実現に向け、全力を挙げて取り組むことにしている。


<別紙>

専門調査会における議論の整理


平成19年4月24日
行政改革推進本部専門調査会
座 長 佐々木 毅


 本専門調査会は、公務員の人事管理制度の骨格についての議論なしにその任務を果たし得ないとの認識に立ちつつ、以下のような議論の整理を行う。

(改革の必要性)
○ 国民の公務員に対する信頼は揺らいでいる。公務員については、年功序列的人事、縦割り意識、サービス意識の欠如、業務効率の低下などが指摘され、国民の公務部門を見る目は厳しくなっている。

○ 公務員の労使関係については、長年の積み重ねにより労使間において良好な関係が築かれているとの見方もある。しかし、人事管理の甘さ、労働組合との覚書問題などへの国民の不信感も強く、主権者である国民への説明責任は不十分である。

○ このような現状を放置していては、公務部門が永続的な国民の信頼を得ていくことはできない。このことは、社会的インフラともいえる公務部門に優秀な人材を集めることができなくなるという深刻な事態をも招きかねず、国民生活や国の国際競争力にも重大な影響を与える。
 したがって、国民や社会の要請に応えうる質の高い行政を確保するために、公務員制度の改革に直ちに取り組む必要がある。

(改革の方向)
○ 公務員制度を改革するには、主権者である国民の目線にたって議論する必要がある。また、官と民の役割分担とともに、政と官との関係を踏まえて検討しなければならない。

○ 人事管理のあり方については、根本的な意識・制度改革が必要である。特に、国家公務員の人事管理体制は、人事院、総務省、財務省等に分かれ、使用者として一元的に責任を果たす組織がない、若しくは内閣総理大臣の下で最終的な使用者責任をとる立場の者がいないなどの問題がある。これでは国民に対する説明責任が果たせない。この点は労働基本権制約の見直しに関わらず議論すべきである。

○ 公務員の労働基本権の制約については、国民主権、財政民主主義等を根拠として必要やむをえない限度で制限を加えることに充分合理的な理由があるとした全農林警職法事件最高裁判決があり、判例として定着している。しかし、この判決は、現行制度は憲法違反ではない旨を判断したものである。この間労使関係をめぐる環境も変化している。現時点において改めて、制約理由の意義を捉え直す必要がある。

○ 公務員の勤務条件の基本は国民の代表者により構成される国会が定める法律、予算によるべきであるとの判決の考え方は今日においても妥当であるが、公務員の地位の特殊性、職務の公共性、市場の抑止力については議論が分かれた。

○ このような観点から、公務員制度について、国民の視点にたって改革すべき点が多々ある。労働基本権を含む公務員の労使関係の問題についても、改革の方向で見直すべきである。

(今後の作業)
○ 専門調査会では、「論点の柱立て」に沿って第1周目の議論を行ってきたが、今後、第2周目の議論を行い、「『簡素で効率的な政府』における公務の範囲及びそれを担う従事者の類型化とそれぞれのあり方」「国民主権・財政民主主義の原理と労使関係のあり方」「労働基本権を含む労使関係のあり方」等について更に検討を進める。

○ 第1周目の議論において十分に検討できなかった公務員の類型化に関する課題については、仮に類型化を行うとすると、職務の性質による類型化とは別に、例えばドイツの官吏と非官吏のように公務員の種類による類型化も可能であり、引き続き検討を行う。

○ 公務員の労働基本権のあり方については、今後、更に具体的な議論が必要なことから、労働基本権を付与した場合の具体的仕組みや諸課題の検討を、以下の項目を中心に専門調査会シミュレーション検討グループ(以下「検討グループ」という。)で集中的に行う。専門調査会においては、検討グループの検討結果を踏まえ、可能な限り意見集約に向けた議論を行う。

・団結権については、制限の必要性、付与した場合の影響等に関し検討する。

・団体交渉権・団体協約締結権については、付与する職員の範囲、協約締結事項の範囲、交渉の当事者、団体協約の効力、交渉不調の場合の調整方法、人事院・人事委員会のあり方など付与した場合の具体的仕組みに関する複数のパターンを検討する。

・争議権については、付与した場合の国民生活への影響等に関し検討する。