2007年度公務労協情報 39 2007年8月6日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

委員長クラスが人事院総裁と交渉し回答引出し−8/6
−勧告日は8月8日、ベア0.3%台、一時金も微増、来年勤務時間短縮−

 公務員連絡会福田議長ほか委員長クラス交渉委員は、6日午前11時から人事院総裁と交渉を持ち、本年の勧告内容に関わる回答を引き出した。公務員連絡会は、この回答を受けて明日、代表者会議を開いて公務員連絡会としての勧告に対する態度を確認し、当面の取組み方針を決定することとしているが、給与改善勧告についてはわれわれの要求を受け入れたものとして評価、勧告後、官房長官や総務大臣など主要な給与関係閣僚に対して直ちに勧告通り実施する閣議決定を行うよう要求する予定。
 秋季確定闘争を巡る情勢は、政府・与党が公務員給与を焦点に、さらにバッシングを強めてくることが十分想定され、勧告を巡る情勢も予断を許さない情勢にある。公務員連絡会としては、そうした厳しい情勢を踏まえた闘争態勢を確立し、秋季確定闘争を全力で進めることとしている。

<人事院総裁との交渉経過>
 午前11時から行われた人事院総裁交渉の冒頭、福田議長が「6月18日に本年の人勧期要求を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答を頂きたい」としたのに対し、総裁は次の通り回答を示した。

〈勧告日〉
 勧告日については、8月8日となる予定である。

T 今年の給与改定関係
1 官民較差
 官民較差は、0.3%台となる見込みである。
2 特別給
○ 特別給は、微増の見込みである。
○ 今年度については、増加分は12月期の勤勉手当に充てる。
○ 来年度以降については、6月期と12月期の勤勉手当に充て、その一部を上位の成績区分の成績率の引上げに充てる。
3 月例給の改定内容
(1) 俸給表の改定
 U種・V種初任給を重点的に改定し、それに準じてT種初任給及び若年層の俸給月額に限定して改定する。
(2) 扶養手当
  扶養親族である子等に係る扶養手当を引き上げる。
(3) 地域手当
 地域手当の支給割合と平成18年3月31日の調整手当の支給割合の差が大きい地域において、本年4月遡って一定率の引上げを行う。
4 給与構造改革関連
(1) 専門スタッフ職俸給表の新設
 行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、在職期間の長期化に対応する観点から、複線型人事管理の導入に向けての環境整備を図るため、専門スタッフ職俸給表を新設する。
 専門スタッフ職俸給表の新設は、平成20年4月から実施する。
(2) 地域給の支給割合
 平成20年度の地域手当の支給割合について、暫定支給割合を定めることについて報告を行う。
5 非常勤職員の給与等
 非常勤職員の給与については、同様の職務に従事しながら所属する府省によって均衡がとれていない事例も見られることを踏まえ、実態の把握に努めるとともに、実態に見合った適切な給与が支給されるよう、必要な方策について検討を進める旨を報告する。
 なお、非常勤職員の問題については、民間の状況もみつつ、その位置付け等も含めて検討を行う必要がある。

U 公務員人事管理関係
 昨今における公務員に対する国民の厳しい批判、先の国会における国家公務員法の改正、さらに政府において労働基本権の在り方を含む公務員制度全般についての検討が進められている状況などを踏まえ、
○ 新たな人事評価制度の導入
○ 専門職大学院等に対応した人材確保
○ キャリアシステムの見直し
○ 官民交流の拡大
○ 退職管理、特に高齢期の雇用問題
○ 労働基本権問題の検討 
 といった課題について本院の基本的認識を報告する。
 また、当面の課題として、勤務時間の見直しや超過勤務の縮減など勤務環境の整備に関する課題を始め、採用、育成に係るいくつかの課題について言及する。
 勤務時間の短縮については、来年を目途として、新たな勤務時間に対応した勤務体制等について入念に具体的準備を行った上で、民間準拠を基本として勧告を行うこととしたい旨を報告において言及する予定である。

 以上の回答に対し、福田議長は次の通り公務員連絡会としての見解を述べた。
(1) ただいまの総裁の回答で、6年ぶりにベア勧告が行われ、一時金についても最小単位ではあるもの月数増の勧告が行われる見通しが示されたことは、本年の民間賃金の実勢からして当然のことと考えるが、公務員給与を巡る厳しい情勢の中で「給与改善」というわれわれの要求に応えたものとして受け止め、評価したい。また、本年、所定勤務時間短縮の勧告に踏み込まなかったことは不満であるが、来年勧告する方向性を明示したことは、休憩・休息時間見直しの際の約束を実現する観点から一歩前進として受け止めておきたい。来年は、確実に勧告することを重ねて求めておきたい。
(2) しかし、@一時金の配分において、人事評価制度が確立していない現状において勤勉手当の成績上位者に重点配分することA専門スタッフ職俸給表について、複線型人事制度との関わりを十分説明しないまま勧告に踏み切ること、などは、われわれとして納得がいかない。加えて、B突如、自宅に関わる住居手当を「廃止も含め見直しに着手する」との報告を行うとしたことについても受け止めがたい。この点についてわれわれは、住居手当のあり方全般について話し合っていくことには対応していくが、はじめに「廃止」ありきの姿勢は認められない。その点を十分踏まえた交渉をお願いしたい。
 公務内の格差是正の課題として重視してきた非常勤職員の処遇改善問題や超勤縮減策については、われわれの要求に照らして不十分だといわざるを得ないが、これを第一歩として、次のステップを踏み出せるよう努力してもらいたい。その他、@高齢雇用の促進A人事評価制度とその活用のあり方等についても検討を深めるとの見解が示されたが、これらの課題はいずれも勤務条件の重要事項であり、今後、十分われわれと交渉・協議し、合意の上で施策のとりまとめを行うことを求めておきたい。
(3) ただいまの総裁回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定するが、政府に対しては公務員労働者や地域の民間労働者の生活改善につながる給与改善勧告を直ちに実施するよう求めていきたいと考えている。
 参議院選挙で与野党逆転という結果になったが、われわれ公務・公共部門を巡っては引き続き厳しい情勢が継続するものと認識している。政府・与党が、公務員給与を焦点に据え、ますますバッシングを強めることも十分に想定され、勧告の取扱いも予断を許さない情勢にある。
 政府、国会において労働基本権問題を含む公務員制度改革の議論が進められているが、現状では人事院勧告制度が公務員の唯一の生活改善の機会である。この点を十分踏まえ、われわれはわれわれで全力で取り組むが、人事院も、文字通り労働基本権制約の代償機関として、勧告通り実施されるよう最大限努力することを要請しておきたい。

 さらに交渉委員からは、「勤勉手当の配分については、まず人事評価制度というルールを決めてから、どうするか議論するのが筋だ。今回の配分は拙速だ」「非常勤については、地公も含めれば3人に1人の割合となっており、公務の戦力だ。その点を踏まえ、具体的な改善策を検討してもらいたい」と重ねて要請したのに対し、総裁は「評価の仕組みはしっかりしたものを時間をかけて作る必要があるが、能力・実績主義に対する社会的要請もあり、できるものからやっていく必要がある。非常勤については、重要性は認識しており、できるだけ早期にという気持ちも変わっていないが、地公等への影響も大きい問題で短兵急に結論出すわけにはいかない。予備的な調査をやりながら問題点を詰めていきたい」として、回答の考え方を繰り返すにとどまった。
 そのため福田議長は、「われわれの強い思いをくみ取ってもらい、着実に前進していけるよう努力してもらいたい」と、重ねて課題解決に向けて努力するよう要請し、交渉を締めくくった。