2007年度公務労協情報 45 2007年9月19日
公務公共サービス労働組合協議会

 公務員労働組合連絡会

人勧取扱い、地方確定などで秋闘第1次中央行動実施−9/19
−人事・恩給局長交渉のほか、民主・社民・公明各党に人勧実施等を要請−

 公務員連絡会は、19日、本年の給与勧告の取扱いなどを巡って2007秋季闘争第1次中央行動を実施し、中央集会を開催したほか、総務省人事・恩給局長交渉及び交渉支援行動を実施し、給与改善勧告の完全実施などを迫った。また、これらの行動と併行して民主党、社民党、公明党に対する要請行動を行い、@給与改善の完全実施A新たな人事評価の労使協議実施B労働基本権確立を含む公務員の労使関係の改革、を求めた。
 11日、代表質問を目前にして安倍総理が突然辞任を表明し政局が混迷、政治空白が生じて、本年の人事院勧告の取扱いは作業の遅れを余儀なくされている。この日の行動は、こうした不透明な情勢の下で、@本年の給与改善勧告について直ちに勧告通り実施するとの閣議決定を行うことA地方公務員給与を改善し自治体間格差を拡大しないことB人事評価の構築に向け、公務員連絡会と交渉・協議し合意することC「専門調査会」の最終報告を踏まえ、公務労使関係の抜本改革に着手することなどを求めて実施したもの。
 中央集会は、13時30分から開かれ、社会文化会館ホールに全国から1千人の仲間が集まり、要求実現に向けた決意を固め合った。
 冒頭、主催者を代表して福田議長は「安倍総理の無責任な政権投げ出しで政治は混迷し、国民生活はもとより人勧完全実施、地方確定に悪影響を及ぼしており、政策の転換が必要だ。連合に結集し全力で取り組もう。人事院勧告を取り巻く情勢は予断を許さず、不退転の決意で取り組まなければならないし、この秋には公務員制度改革も最終局面を迎える。基本権回復と労使関係の抜本改革をめざそう」と力強く秋季闘争への決起を訴えた。続いて山本事務局長が基調提起を行い、「安倍総理の辞任により小さな政府路線は動揺しているが、公務員の総人件費削減路線は変わっていない。公共サービスを再構築することを軸とした政策転換の取り組みが重要だ。公務員連絡会は、本日の合同会議で10月15日に第2次中央行動を実施することを決定した。秋闘課題の実現のためにがんばろう」との方針を提起した。
 構成組織決意表明には自治労・菅谷茨城県本部書記長、国税労組・百武企画調整委員、全水道・山本関東地本書記長、税関労組・松本東京地区本部調査分会副分会長が登壇し、人勧完全実施、地方確定の促進、労働基本権の回復などに全力で取り組むとの決意を述べた。
 最後に福田議長の発声で「団結ガンバロー」を三唱、集会終了後、参加者は、総務省前に移動し、「人事院勧告を早期に完全実施しろ」「地方の賃金格差拡大反対」「人事評価制度で交渉・協議を行え」「労働基本権を回復しろ」などと、シュプレヒコールを上げ、交渉支援行動を繰り広げた。
 この日実施した書記長クラスによる総務省人事・恩給局長交渉、政党要請行動の経過は以下の通り。

<総務省人事・恩給局長交渉の経過>
 総務省藤井人事・恩給局長との交渉は、14時45分から行われ、公務員連絡会からは書記長クラス交渉委員が出席した。
 最初に山本事務局長が、本年人事院勧告の政府における検討状況、取り扱い決定のスケジュール、総務省の基本姿勢を質したのに対し、藤井局長は次の通り答えた。
(1) 8月8日の勧告を受けて8月10日に第1回の給与関係閣僚会議が開かれ、人事院勧告を尊重すべきとの意見、最近の厳しい財政状況を考慮すべきとの意見、現下の経済状況との関係をどう整理するかとの意見、さらに国民がどう考えていると見るかなどの意見があり、関係省庁が引き続き検討作業を進めようということになった。
(2) 取扱い決定の見通しについては、政府内での検討を詰めていくことが第一であり、その上で日程を調整し閣僚会議を開き政府としての方針を決め、然るべき時期に法案を国会に提出させていただくことになるが、今の段階でいつまでにという時期を申し上げるところまでは至っていない。事務的に粛々と作業を進めているところだ。
(3) 総務省としての基本姿勢であるが、給与法を所管する立場で皆さんと意見交換をさせていただいているが、人事院勧告制度は、国家公務員の労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであり、同制度を尊重するとの基本姿勢に立って対処してきているところである。本年度の人事院勧告についても、勧告通り実施するという従来からの基本姿勢の下、国民の理解を得られる結論を得るよう努力しているところである。

 これに対し公務員連絡会側が「人事院勧告制度自体が国民の理解の下にある仕組みであるが、その実施についてさらに理解を得ていくというのは一体どういうことか」と藤井局長の見解を質したところ、局長は「公務員の労働基本権制限の代償措置としての人事院勧告制度については尊重するとの基本姿勢で臨んできているが、その時々の財政状況や国民のコンセンサスはどこにあるかということを見ながら対応していくということである」として、結論が必ずしも完全実施ではないとも受け取れる考えを示した。これについて、連絡会側はさらに「国民の声というのはマスコミの意見を聞くということか」「昨年、人事院はわれわれの反対を押し切って政府の比較企業規模見直し要請に応えた。今年の勧告はそれを踏まえたものであるのに、完全実施しないというのでは下げることだけが目的ということになる。勧告通り実施すべきというスタンスで臨むべきだ」と厳しく追及。山本事務局長が「局長の見解は、総務省が完全実施のスタンスで臨み、結果について国民の理解を得るよう努めるとの考えであると受け止める」として、この問題を締めくくった。
 続いて@改正国公法に基づく人事評価制度の政令制定にかかる交渉・協議の実施A「定年延長」についての総務省の見解B「専門調査会」の最終報告を踏まえて総務省として労使間帰依の抜本改革に着手すること、について局長の見解を質し、藤井局長は次の通り答えた。
(1) 人事評価制度は公布から2年以内に施行されることとされており、間に合うように全体の作業を進めており、その中で政令案の検討も行われることになる。信頼性の高い人事評価制度の構築に当たり、評価結果のフィードバックや苦情処理の仕組みのあり方は、大きな論点であると認識している。試行を担当する総務省としても、制度設計を担当する行革事務局と連携・協力して検討を進めてまいりたい。
(2) 今後のスケジュールについては、施行に間に合うように進めていくこととしており、政令案についての職員団体との協議については、行革事務局が対応することになると認識しているが、職員団体と十分に話し合うことは必要であると考えている。
 総務省としては、これまでの試行や検討により得られた知見を行革事務局に提供し、政令案にそれらが反映されるよう、連携・協力しながら検討を進めることとしている。職員団体の皆様とも十分話し合ってまいりたい。
(3) 皆さんの苦情処理についての要望は承知しており、人事評価制度の設計に係る協議、苦情処理の仕組みに関する協議については、地方支分部局等・専門職種の試行への準備等の対応状況を踏まえ、日程や議題等について相談してまいりたい。
(4) 「定年延長」については、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」で議論されることになっており、総務省としてはそれを踏まえて検討していくことになる。
 懇談会の委員には、労働界からも高木連合会長が就任されており、幅広い観点から自由かつ活発な御意見をいただくものと認識している。本年秋までにまとめられる報告をもとに、誠実に実施していくことにしたい。
 また、労働基本権を含む労使関係の在り方については、行政改革推進本部専門調査会の最終報告が出された段階で、検討に着手して参りたい。

 これらの回答に対して、公務員連絡会側は@第3次試行までは評価結果の開示と労働組合が参加する苦情処理システムが整備されていないが、人事評価の任用、給与、人事管理への活用や国民への良質な行政サービスの提供がうまくいくために、来年に予定されるリハーサルではぜひ実現してもらいたいA雇用と年金の接続のためには「定年延長」だけでなく、再雇用の義務化も含めた大がかりな話であり、制度所管省として主体的に責任を持って対応すべきだ、として局長の見解を求めた。これについて藤井局長は「年金と雇用の関係は重大な問題と受け止めている。民間の実態をつかんだ上で、再就職、賃金体系などをどうするかも問題意識を持っており、職員の意識や民間動向を研究して参りたい」との考えを示した。
 最後に山本事務局長が「定年延長などの検討に当たっては組合の意見も十分聞いていただきたい」と要請した上で、「われわれが実現を求めている課題が実を結ぶよう引き続き最大限の努力をお願いしたい」と強く要求し、交渉を締めくくった。


<民主・社民・公明各党要請行動の経過>
○ 民主党
 民主党・直嶋正行政調会長(参議院議員)、原口一博ネクストキャビネット総務大臣(衆議院議員)への要請行動は、10時から議員会館内で行われ、公務員連絡会からは福田議長、佐藤・森両副議長、山本事務局長が参加した。
 福田議長が別紙「要請書」を手交し、要請事項の実現に対する尽力を求めたのに対し、直嶋政調会長は「要請趣旨はしっかり承った。人事院勧告については完全実施すべきとの松本政調会長談話に基づいて対応する。公務員制度改革については、皆さんとの話し合いの場を設けたいと考えているし、行政改革調査会を立ち上げて考え方を改めて整理し、政策として取りまとめたいので皆さんの意見を伺いたい」と、原口NC大臣は「公務員制度改革をつまみ食いし、公共サービスを食い破る勢力とたたかっていく。一緒に公共サービス基本法を検討させていただいており皆さんの期待に応えたい」との考えを示し、意見交換をしながら対応していくことで一致した。

○ 社会民主党
 社民党の日森文尋副幹事長(衆議院議員)、菅野哲雄労働委員長(衆議院議員)への要請行動は11時から社民党本部内で行われ、公務員連絡会からは福田議長、佐藤・森両副議長、岩本副事務局長が参加した。
 福田議長が別紙「要請書」を手交し、要請事項の実現に対する尽力を求めたのに対し、日森副幹事長は「われわれも皆さんと同じ思いで対応してきた。4野党が政策協議を行いながら共同行動をしようという呼びかけを行っている。要請事項については、そういう場を通じて実現できるよう努力してまりりたい 」として、要請に沿って努力していくことを約束した。

○ 公明党
 公明党の斉藤鉄夫政調会長(衆議院議員)への要請行動は16時から議員会館内で行われ、公務員連絡会からは森越・井津井・竹林の各副議長、岩岬副事務局長が参加した。
 冒頭、森越副議長は、「公務員バッシングの風潮が強まっているが、そうした感情で人事院勧告の取扱いが議論されてはならない。労働基本権制約の代償措置としてきちっと勧告通り実施するよう政府に働きかけてもらいたい。また、公務員制度改革もこの秋山場となるので、公務員の役割を見据えた抜本改革の方向を打ち出してほしい」と、申入れの趣旨を説明した。
 これに対して斉藤政調会長は、「われわれは公務員バッシングに与するつもりはない。国造りのために官民協力していかねばならないという立場だ」としながら、要請事項については「労働基本権制約の代償措置である人事院勧告を勧告通り実施することは当然だ。われわれも皆さんの声を踏まえ、与党の中でしっかり主張していきたい。公務員制度改革については、今後どうなるか不透明なところはあるが、方向付けられた方向で、要請の趣旨を踏まえ対応していきたい」と、要請の趣旨を踏まえ与党の中で努力するとの明確な見解を示した。


<別紙資料>=各党への要請書=

2007年9月19日

        殿

公務員労働組合連絡会
議 長 福 田 精 一


本年の人事院勧告の取扱い等に関わる要請書


 常日頃、公務員労働者の処遇改善にご努力頂いていることに心から感謝申し上げます。
 さて、人事院は8月8日、月例給を1,352円、0.35%、一時金の月数を0.05月引き上げることを中心とする本年の報告・勧告を行いました。本年の給与勧告については、民間賃金の実勢からみて当然のことであり、人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であることを踏まえ、直ちに勧告通り実施すべきものと考えます。この人事院勧告の実施は、公務員労働者だけでなく中小企業に働く労働者の生活改善や疲弊する地域経済にも好影響を与えるものと考えています。
 また、公務員制度改革を巡っては、政府はこの秋にも専門調査会や懇談会の報告を受け、来年の通常国会に基本法を提出するとしていますが、われわれは、公務員制度の抜本改革のためには労働基本権の確立を含む公務における労使関係の改革や、透明で信頼される人事評価制度の構築が不可欠だと考えています。
 総人件費削減政策の実施や公務員バッシングの中においても、公務員労働者は、日々、国民に良質な公共サービスを提供すべく懸命の努力を続けています。貴職におかれては、以上の点を十分認識され、下記事項の実現に向けて最大限努力されるよう要請します。



1、本年の給与改善勧告については、直ちに勧告通り実施するよう政府に要請すること。
2、透明で信頼される人事評価制度の構築に向け、十分労使協議を行うよう政府に要請すること。
3、公務員制度の抜本改革に向け、労働基本権の確立を含む公務の労使関係の改革に速やかに着手するよう政府に働きかけること。

以上