2007年度公務労協情報 7 2006年11月13日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院へ2007年度基本要求を提出−11/13
−比較企業規模を100人以上に戻すことなど公務員給与改善と時短を要求−

 公務員連絡会は、11月10日に給与法改正法案が成立したことを受けて、人事院、総務省に対して2007年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出し、12月中旬までにそれぞれ誠意ある回答を示すよう求めることとし、本日は人事院に対する申し入れを行った。
 本年度の勧告において、人事院が企業規模を従来の100人以上から50人以上に一方的に見直し、その結果として賃金改定が見送られたことから、来年度には100人以上に戻すことや所定勤務時間の短縮を行うことを最重点課題に位置付けて、要求の実現を迫っている。

<人事院職員団体審議官との交渉経過>
 人事院への「2007年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(別紙資料)提出交渉は、14時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、人事院からは井原職員団体審議官、森永参事官が対応した。
 冒頭、公務員連絡会の岩岬副事務局長から、「給与法が成立したので、公務員連絡会としては官民比較方法の見直しには異議があるという立場に変わりはないことを踏まえつつ、来年度に向けた基本要求事項を申し入れる」として、基本要求の重点事項を次の通り説明し、12月のしかるべき時期には回答するよう求め、現時点での人事院の見解を質した。

(1) 給与については、今年の給与勧告を踏まえて要求事項をとりまとめた。一方的な比較企業規模の見直しは容認できないという立場で、企業規模100人以上に戻して勧告してほしいということが基本であり、加えて連合も来春闘に向けてベアを勝ち取る方向での議論を進めていることを踏まえ、公務員給与について、期末・勤勉手当を含めて改善する勧告に向けた作業を求める。
(2) 給与構造改革については、移行期間中の較差の取り扱いなど、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意を得ながら進めていただきたい。
(3) 育児を行う職員の短時間勤務はまだ実現しておらず、総務省からは通常国会に法案を出し早期実現に努めるという回答をもらっているが、人事院としても意見の申出をした立場で努力していただきたい。また、これを機にもう一歩踏み込んだ本格的な短時間勤務制度の議論ができるようにしていただきたい。
(4) 所定勤務時間の短縮については、民間実態をきちんと調査して、1日7時間45分という意見の申出ができるよう作業を進めてほしい。勤務時間を短縮した場合の影響に関する各府省調査結果についても提示してもらうなど、着々と準備してもらいたい。
(5) 総合的休業制度については、育児短時間勤務や自己啓発等休業制度の整備を踏まえ、次の段階の検討に移っていただきたい。
(6) 福利厚生について、自殺が増えていることなどを深刻に受け止めて「メンタルヘルス」に初めて言及したので、人事院として取り組みを強化していただきたい。
(7) 男女平等の課題については、これまでの取り組みを踏まえ、着実に前進したことが見える施策に取り組んでいただきたい。
(8) 新たな評価制度の試行について、中立・公正の観点から、人事院としてきちんと対応するよう改めて要請しておく。

 これに対し、井原審議官は、「本日の申し入れ内容は承ったので、よく検討してしかるべき時期に回答したい」として次の通り見解を示した。
(1) 給与構造の見直しの具体化については、職員団体の意見を十分聞いて進めていきたい。
(2) 育児を行う職員の短時間勤務制度等については、早期実現に向けてできる限りの取り組みを進めていく。
(3) 勤務時間の短縮については、「勤務時間の短縮が各府省の行政サービスに与える影響等を調査するなど必要な検討を行う」と勧告時の報告で述べており、引き続き検討していく。
 その他の事項についても、十分検討して回答することとしたいし、回答に向けて皆さんの意見を十分聞いて参りたい。

 審議官の見解に対し連絡会側は、さらに@官民比較方法について、今後もしっかり議論していくことを約束していただきたいA基本要求を出発点として次年度勧告に向けて議論をしていくというルールで進めてきているが、この間、イレギュラーな形でいろいろな課題が提起されている実態になっているが、来年度についてはそうしたことは行わないことを明確にしてもらいたいB非常勤・パートの給与についても何らかの勧告をすべきではないかC今年、民間では賃金が上がったのに国家公務員は据え置きとなり、地方公務員は下がるところも出た。来年民間が上がるとすれば、公務員も上がると受け止めていいかDセクハラについて、男女雇用機会均等法の予防措置義務が来年4月に施行されることを踏まえ、公務でも今まで以上のしっかりした予防策と2次被害防止を実効あるものとしてしていただきたいE来年は選挙があるが、政治的におかしなことにならないよう、中立機関としての機能をしっかり発揮してほしい、と要望した。
 これらについて、人事院は@官民比較方法については、同種同等の原則に基づいて十分慎重に対応してきた結果でありご理解願いたい。ご意見は承っていくA情勢が情勢であるだけに絶対ということはないが、基本要求事項に沿って議論していきたいB非常勤・パートについては一般の事務補助員が最低賃金を下回ることはないと把握しているが、多種多様な職種があり、何らかの勧告ということは難しいのではないかC公務員給与を民間に合わせていくというスタンスに変わりはなく、どのくらいかということはあるが民間が上がれば上がるということになるDセクハラ対策は民間に先んじて行ってきたし、引き続き努力していく、との考えを示した。
 最後に、公務員連絡会から「本日は申し入れを行ったので、十分検討して、誠意ある回答をお願いしたい」と要望したのに対し、井原審議官が「十分検討して回答したい」と答え、提出交渉を終えた。


資料.人事院への基本要求書

2006年11月13日



人事院総裁
 谷  公 士 殿


公務員労働組合連絡会
議 長 福 田 精 一


2007年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済は、大企業を中心として好調を持続しているのとは対照的に、勤労者の所得は企業規模や雇用形態による二極化が進行し、全体としても低迷を余儀なくされています。疲弊の度を強めた地域経済も少なくなく、若者の雇用も改善されず、勤労国民の将来不安は一層募っています。
 こうした状況の中で、貴院は本年勧告において、わたしたち公務員連絡会の反対を押し切って、官民給与比較方法を一方的に見直しました。このような措置は公務員労働者の生活に大きな影響を及ぼすのみならず、労働基本権制約の代償機関として本来中立・公正であるべき貴院の立場を大きく損ねたと言わざるを得ません。
 さらに、中小・地場企業に働く労働者の賃金抑制を招き、勤労国民の所得低迷と格差拡大という悪循環となることを強く懸念しています。
 こうした意味で、政府の総人件費削減要請に応じた官民比較方法の見直しは、公務員給与への信頼回復に役立つどころか、官民格差論に基づく「公務員バッシング」を一層募らせるものと言わざるを得ません。
 2007年度の基本要求事項を申し入れるに当たって、社会的に公正な官民給与比較方法確立のための抜本的見直しと、当面の措置として企業規模100人以上との比較を行うこと、そのことによって公務員給与を改善することが最重要課題であることを強調しておきたいと思います。
そのほか、本年の基本要求事項には、所定労働時間の短縮、本格的短時間勤務制度の検討なども重点課題として盛り込んでいます。
 以上のことから、貴職におかれては、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、給与に関わる事項
1.給与水準及び体系等について
(1) 給与水準の確保
 @ ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容にふさわしい社会的に公正な月例給与水準を確保すること。
 当面、2007年度の給与勧告においては、公務員の生活を維持・改善する給与水準を確保すること。
 A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握した月数を確保すること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求に基づき、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
 官民給与比較方法について、社会的に公正な仕組みとなるよう、抜本的に改善することとし、2007年度においては比較対象企業規模を100人以上とすること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.「給与構造の改革」に関わる具体的措置について
(1) 2007年4月の俸給の特別調整額の定額化、広域異動手当の新設については、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて実施すること。
(2) 複線型人事管理及び在職期間の長期化に資するよう、スタッフ職俸給表について、早急に成案を得て、2007年度に勧告すること。
(3) 新給与制度への移行期間中の諸手当のあり方やベアの取扱いなど、給与勧告・報告のあり方については、その都度公務員連絡会と十分交渉・協議、合意すること。
 なお、本府省手当の新設は行わないこと。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
1.育児のための短時間勤務制度の早期実施と本格的な短時間勤務制度の早期実現について
(1) 育児のための短時間勤務制度を早期に実施するよう法制化作業等必要な取組みを進めること。
(2) (1)の実施を踏まえ、公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現するため、常勤職員の本格的な短時間勤務制度の実現をめざし、制度の具体的な検討に着手すること。

2.年間労働時間の着実な短縮について
 公務における年間総労働時間1800時間体制の実現をめざし、次の事項を実現すること。
(1) 来年度の民調において、民間企業の所定労働時間労働調査を実施し、来年勧告時に、所定勤務時間を1日7時間45分に短縮する意見の申出を行うこと。
(2) 超過勤務についても着実に縮減することとし、IT等を活用して現場における厳正な勤務時間管理を行うこと。また、超過勤務手当の割増率を引き上げるとともに、全額支給すること。
(3) 人事院規則で超過勤務の上限時間を規定するなど、より実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめること。

3.休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充、総合的休業制度、などについて、以下の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ・リカレント休暇を新設すること。
(3) 自己啓発等休業制度の早期実施に努めること。それを踏まえ、総合的休業制度の検討・研究に着手すること。

4.勤務時間制度について
 勤務時間制度に関わっては、当面、次の事項を改善すること。
(1) 休暇の取得手続きについては、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
(2) 官庁執務時間と勤務時間の関係については、「閣令6号」に基づく一律・画一的な官庁執務時間体制を改め、官庁執務時間と勤務時間を切り離して、実態に則した官庁執務時間に改めること。

三、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応して、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり対策の着実な推進をはかること。

四、男女平等の公務職場実現に関わる事項
1.公務の男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、職業生活と家庭生活の両立支援、女性公務員の採用、登用の拡大、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。

2.改定された「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な推進を実現すること。

3.セクシュアル・ハラスメントの実態を把握し、より実効性のある防止策及び対応策の改善に努めること。

4.女性の労働権確立にむけ、次の事項を実現すること。
(1) 女性が働き続けるための職場環境の整備に努めるとともに、職務範囲を拡大すること。
(2) 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。

5.「子ども・子育て応援プラン」及び育児のための短時間勤務制度の導入を踏まえ、取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、育児のための短時間勤務等の取得促進策を取りまとめること。

6.次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。

五、その他
1.新たな人事評価制度の整備に当たっては、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、必要な役割を果たすこと。

2.民間における高齢者継続雇用制度の導入など高齢者雇用の進展を踏まえ、高齢再任用制度の定着と拡大のための施策を引き続き推進し、雇用と年金の接続をはかること。

3.本年4月に施行された改正障害者雇用促進法に沿って、障害の種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。

4.公務における外国人の採用を拡大すること。

5.非常勤職員及びパート職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき改善すること。

以上