2008年度公務労協情報 11 2007年11月21日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

総務省・人事院へ2008年度基本要求を提出−11/21

 公務員連絡会は、21日、総務省、人事院に対して2008年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出し、それぞれ誠意ある回答を示すよう求めた。本年度の人事院勧告が指定職の改定見送りという不完全実施となったことから、総務省には人事院勧告取扱いの基本姿勢の再確認を求め、人事院には政府からの再度の比較方法見直し要請への毅然とした対応を迫り、12月中旬に明確な回答を示すよう要請した。
 それぞれの申入れの経過は次の通り。

<総務省人事・恩給局との交渉経過>
 総務省への「2008年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料1参照)交渉は、10時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、総務省からは阪本人事・恩給局次長らが対応した。
 要求提出に当たって、公務員連絡会側は、「給与法案の成立の見通しがついてきたので、2008年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出したい」と述べたうえで、基本要求の重点事項を次の通り説明し、12月の中旬までには誠意ある回答を示すよう求めた。
(1) 人事院勧告制度尊重の基本姿勢に基づいた公務員給与水準の改善、人事院に対する官民比較方法の見直し要請の問題、これらが今年の論点になる。本年の人勧の取扱いでも、人事院勧告制度の本旨からはずれた「国民の理解」などの考え方が政府に見られ、閣議決定が大幅に遅れたり、勧告が不完全実施となったりするなど、誠に遺憾である。人事院勧告尊重の基本姿勢について改めて明確な見解をいただきたい。
(2) 10月30日の閣議決定では、再度、官民比較方法のあり方等の見直しを人事院に要請しているが、これは人事院への政治的圧力であることから、われわれとしては到底認められない。給与構造改革は実施中であり、その結果を検証することなく、ただ地域の地場賃金と乖離があるとの指摘があることを理由に人事院に見直しを要請するのは問題である。公務員給与に対する使用者としての責任を果たしていただきたい。
(3) 総理の下の懇談会や人事院の研究会で新たな高齢者雇用施策の検討が始まっている。当面する大きな課題となっており、われわれと十分に議論し、合意のもとで施策の検討を進めていただきたい。
(4) 公務員制度改革については、専門調査会の報告を踏まえ、行政改革推進本部と連携し、非現業国家公務員に労働協約締結権を付与するための法制化作業に、直ちに着手していただきたい。
(5) 新たな人事評価制度については、評価結果の本人開示と苦情処理制度の2つが大きな問題となっている。これらの課題の解決を強く求めたい。改正国家公務員法の施行に向けては、試行のあり方の検討、政令案の策定などについて十分に交渉・協議、合意のうえでの対応をお願いしたい。
(6) 不祥事を起こした公務員の退職手当の取扱いについては、総務省の中に検討会を開いて検討するとのことだが、重要な勤務条件でもあり、難しい論点もあるので、是非、検討会が公務員連絡会から意見聴取するよう働きかけてもらいたい。
(7) 総人件費削減計画にもとづく配置転換については、これまでは比較的順調に進んできているが、それでも退職した者や死亡している者がいる。これからが大変なので、後半2年間は今まで以上の条件整備に努力してもらいたい。また、独立行政法人の見直しが検討されているが、政府として統一的な体制で雇用問題に対処していただきたい。

 これらに対して、阪本次長は「要求書は多岐にわたっているので、今後、検討して回答したい」として、次の通り現段階の見解を述べた。
(1) 本年の給与法改正法案に関わっては、指定職の改定が見送られるなど皆さんにとっては不満な点もあったと思う。政府としては、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢は変わらない。総務省としては、この基本姿勢に立って、国政全般を考慮し職員団体の皆さまとも十分に意見交換し、適切に対応していきたい。
(2) 給与構造改革、官民給与の比較対象企業規模の見直しがあったところであるが、地域によっては地場と比べて国家公務員の給与が高いのではないかとの指摘があり、「基本方針2007」でも地域の民間給与の更なる反映が言及されている。閣議決定の意味するところは、人事院に主体的に検討することを期待するということであり、政治的圧力をかけるものではない。人事院は、中立第三者機関である。
(3) 「国家公務員退職手当の支給の在り方等に関する検討会」は、すでにメンバーを確定し、11月28日に初会合を開く予定だ。座長の判断となるが、われわれとしては職員団体からも意見を聴くことは必要と考えているので、そのように努力したい。
(4) 配置転換については、皆さんの協力を得て進めてきた。いわれるとおりこれからが肝心なので、組合の意見を聴きながら対応したい。

 これらの見解を踏まえ、公務員連絡会は最後に「本日は要求書の提出なので、今後検討していただき、12月中旬には、来年度の賃金・労働条件改善に結びつくような回答をお願いしたい」とし、要求提出交渉を終えた。

<人事院職員団体審議官との交渉経過>
 人事院への「2008年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料2参照)提出交渉は、11時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、人事院からは井原職員団体審議官、松尾参事官が対応した。
 冒頭、公務員連絡会の岩岬副事務局長が「給与法改正法案は現時点では成立していないが、来週にも成立する見通しとなったので、2008年度の基本要求を提出する」と述べ、2008年度要求の重点事項について、次の通り説明し、12月中旬に回答するよう求め、現時点での人事院の見解を質した。

(1) 人事院勧告取扱いの閣議決定で、政府が人事院に対し、再度、官民比較方法の見直しを求めたことは人事院勧告制度の建前から認められないことだ。地域の公務員の給与が民間より高いのではないかということがいわれ、それに対応するため俸給表水準を引き下げるなどの給与構造改革を今進めているにもかかわらず、それを検証せず、再度、高いという指摘があるからと言って見直しを求めるのは朝令暮改であり、人事院に政治的な圧力をかけるものだ。人事院総裁も国会で「人事院として主体的に判断する」と答えており、人事院の存在をかけて断るべきだ。また、比較企業規模については、昨年50人以上への一方的な見直しが行われたところであり、改めて100人以上とすることを求める。
(2) 諸手当については、自宅に係る住居手当の見直しは、始めに廃止ありきではなく、住居手当制度を総合的に改善することとし、慎重に対応していただきたい。現実に財形貯蓄をしている組合員がいることも含め、公務員連絡会の意見を十分聞くなど原点に返った議論をさせていただきたい。また、特地勤務手当は昨年議論を行い、本年4月に見直したばかりであり、3年ごとの定期見直しを前倒しして見直すとの提案は拙速で納得できない。なぜ、今見直すのかについて納得できる説明がない限り具体的な議論には入れない。明確にしていただきたい。
(3) 2008年度は所定勤務時間の短縮が大きな課題であり、本年の報告で来年勧告するという人事院の姿勢は明確であるが、勤務時間を短縮する勧告を確実に行っていただきたい。超過勤務の短縮も重要であり、内閣府で検討が進められていると聞いているが見えてこない。きちんとした対応をお願いしたい。
(4) 新たな人事評価制度については、評価結果の開示と職員団体が参加する苦情処理制度が大きな焦点であり、人事行政を所管する人事院として新たな評価制度が機能しない、不公平な仕組みとならないよう対応していただきたい。評価結果の活用については、勤務条件の重要な事項なので中身について公務員連絡会ときちんと話し合って、合意に基づいて進めていただきたい。
(5) 高齢雇用施策については、総人件費削減政策の下で現在の再任用制度は破綻していることから、新たな制度を確立することを基本とすべきだ。研究会で公務員連絡会の意見を聞いていただきたいし、退職管理全般や職員の生活を踏まえた意見を取りまとめていただきたい。
(6) 非常勤職員の課題については、人勧期に議論を行い、報告でも触れられているが、その内容を直ちに実施してもらいたい。さらに、当面の処遇改善と同時に任用などを含めて本格的な検討を求めておきたい。

 申入れに対し、井原審議官は「申入れ内容は承ったので、よく検討してしかるべき時期に回答したい」として、次の通り現時点での見解を示した。
(1) 政府からの見直し要請に対しては、総裁が国会で答えているとおりである。
(2) 給与構造の見直しの具体化については、平成22年の完成に向けて段階的に進めているところであるが、今後も職員団体の意見を伺ってまいりたい。
(3) 職員の所定勤務時間については、来年を目途として民間準拠を基本とした勤務時間の見直しに関する勧告を行うことができるよう、新たな勤務時間に対応した適切な勤務体制等を整えるための入念な準備等を行っているところである。
(4) 新たな人事評価制度の設計に関しては、人事院として、人事行政の公正の確保や職員の利益保護の観点から必要な意見を述べるとともに、評価結果の給与等への活用に当たっても、関係者のご意見を伺いつつ適切に対処していく。
(5) 非常勤職員に関しては、本年の勧告時報告で述べた認識に立って、現在その実態についてさらに聴取を行いつつ問題点の整理を行っており、どのような方策をとることができるか検討を進めていく。

 これら審議官の見解に対し公務員連絡会側は、さらに@V種試験の応募者が減るなど公務員をめざす者が減っているのは深刻な事態だ。人材を確保するためにも勤務条件の改善が重要であり、その意味でも比較企業規模を100人以上に戻すべきではないかA自宅に係る住居手当が廃止されると地方公務員への影響が大きいので、そうしたことも含めた慎重な検討が必要だB特地勤務手当は3年ごとの見直しがルール化されており、昨年の見直し議論でも確認してきた。文科省がへき地手当を見直すからと言って前倒し見直しをするのは納得できない。議論を始めるためには、対象職場の組合員が納得できる説明が必要だ、と重ねて要望した。
 これらについて、人事院側は@人材確保は重要と考えているが、比較企業規模は昨年各方面の意見などを踏まえつつ人事院の判断で見直したのでご理解願いたいA自宅に係る住居手当については本年の報告で「廃止も含めて、その見直しに着手する」ことにしたものであり、皆さんの意見も聞きながら今後検討してまいりたいB特地勤務手当の見直しについては、今後皆さんと議論をしていくこととしたい、との考えを示した。
 最後に、公務員連絡会から「本日は申入れを行い意見交換を行った。人事院勧告制度が危機にあるという認識を持ち、人事院としての矜持を守っていただきたい。申入れ内容を十分検討して、12月中旬には誠意ある回答をお願いしたい」と要望したのに対し、井原審議官が「十分検討して回答したい」と答え、提出交渉を終えた。


資料1.総務省への基本要求書

2007年11月21日


総務大臣
 増 田 寛 也 殿

公務員労働組合連絡会
議長 福 田 精 一


2008年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済は、アメリカにおけるサブプライムローン問題を引き金とした不安要因を抱えてはいるものの、企業業績は全体として安定基調にあります。しかし、その一方で労働者の賃金は低迷し、非正規労働者も増え続け、一般労働者の長時間労働は一向に改善されていません。また、特定の地域を除いた地域経済の低迷は相変わらずであり、日本社会全体の格差拡大の流れに変化は見られません。
 こうした状況の中で、本年、久しぶりに月例給与を引き上げる内容となった人事院勧告は、「国民の理解」を口実に取扱いの決定が先延ばしにされ、10月30日にようやく決定されたものの、指定職の改定が見送られたことで、10年ぶりの「不完全実施」となりました。たとえ指定職に限られるとはいえ、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を政府みずからが否定するものであり、極めて遺憾です。
 さらに、政府は同閣議決定の中で、人事院に対し「地域における官民給与比較の在り方を含め、民間給与のより一層の反映のための更なる方策」を検討するよう要請しています。昨年、人事院が政府の要請に応じ、比較対象企業を一方的に見直したことはまったく容認できない措置でしたが、さらに本年、政府が公務員給与のあり方について再度の要請を行ったことは人事院勧告制度への政治的介入以外の何ものでもなく、強く抗議します。
 このように、わたしたち公務員労働者を取り巻く情勢には極めて厳しいものがあるだけに、公務員の雇用や処遇を確保・改善するための使用者としての貴職の役割はますます重要となっています。
 2008年度の基本要求事項では、公務員労働者に相応しい賃金・労働条件の確保を基本としつつ、府省間配置転換をはじめとした雇用問題への対応、新たな人事評価制度への対応などを重点課題としています。
 貴職におかれては、誠意を持って交渉・協議に応じ、諸課題の解決に全力で当たられるよう要請します。



一、公務員の総人件費と給与等に関わる事項
(1) 公務員総人件費削減政策の具体化に当たっては、良質な公共サービスを確保する観点から、事務・事業のあり方を検証するとともに、公務員連絡会と十分協議すること。
(2) 定員削減にともなう配置転換等の実施に当たっては、真に本人の希望に基づくものとなるよう、引き続き雇用調整本部と公務労協・公務員連絡会との間で十分交渉・協議すること。また、独立行政法人見直し等行政改革の推進に伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。
(3) ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保すること。当面、2008年度においては、民間の実勢を踏まえ、人事院勧告尊重の基本姿勢に基づき公務員給与水準を改善すること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 官民比較方法の見直し要請などの人事院勧告制度に対する政治的介入を直ちにやめ、公務員給与に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
(1) 労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B総合的な休業制度、などを実現すること。
 このため、2008年度においては、所定勤務時間を短縮すること。あわせて、「国家公務員の労働時間短縮対策について」の着実な実施に加えて、人事院の2007年報告を踏まえ、政府全体として、超過勤務の縮減に向けた体制を確立し、実効ある超過勤務縮減策を実施すること。
(2) 本格的短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。

三、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応した心の健康づくり対策の着実な推進や復職支援施策の拡充をはかること。
(3) 2008年度の予算編成に当たっては、職員厚生経費をはじめ、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を増額すること。

四、新たな高齢者雇用施策に関わる事項
 現行再任用制度が、総人件費削減政策のもとで、雇用と年金を接続する仕組みとして有効に機能していないことから、民間における高齢者雇用継続制度の整備など高齢者雇用の進展を踏まえ、新たな高齢者雇用施策の検討に着手し、早期に実施すること。また、雇用の確保は最も重要な勤務条件であることから、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

五、男女平等の公務職場の実現に関わる事項
(1) 公務の男女平等参画の促進を人事行政の重要事項と位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 「子ども・子育て応援プラン」及び育児のための短時間勤務制度の導入を踏まえ、取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、短時間勤務等の取得を促進すること。
(3) 使用者の立場から、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行を 図るよう指導すること。

六、公務員制度改革に関わる事項
(1) ILO勧告に基づき、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。
(2) 「公務、公務員及び労使関係のあり方に関する専門調査会」の報告について、公務の労使関係を抜本的に改革する方向で具体化するため、労使協議の場を設置することとし、非現業国家公務員に労働協約締結権を付与するための法制化作業に直ちに着手すること。
(3) キャリア制度の廃止をはじめとして公務員制度を抜本的に改革するため、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」において、公務員労働者代表の意見を聴取すること。

七、「新たな人事評価制度」に関わる事項
(1) 新たな人事評価制度については、公正・公平性、透明性、客観性、納得性が具備され、苦情処理制度、労使協議制度などが整備されたものとすること。とりわけ、評価結果の本人開示、労働組合が参加する苦情処理制度を実現すること。
(2) 改正国家公務員法の施行に向けた、今後の試行のあり方の検討、政令案の策定等に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意の上で実施すること。

八、その他の事項
(1) 障害者雇用促進法に基づき、障害の種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
(3) 不祥事を起こした国家公務員に対する退職手当の取扱いの検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。


資料2.人事院への基本要求書

2007年11月21日


人事院総裁
 谷  公 士 殿

公務員労働組合連絡会
議長 福 田 精 一


2008年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済は、アメリカにおけるサブプライムローン問題を引き金とした不安要因を抱えてはいるものの、企業業績は全体として安定基調にあります。しかし、その一方で労働者の賃金は低迷し、非正規労働者も増え続け、一般労働者の長時間労働は一向に改善されていません。また、特定の地域を除いた地域経済の低迷は相変わらずであり、日本社会全体の格差拡大の流れに変化は見られません。
 こうした状況の中で、本年、久しぶりに月例給与を引き上げる内容となった人事院勧告は、「国民の理解」を口実に取扱いの決定が先延ばしにされたうえ、指定職の改定が見送られたことで、10年ぶりの「不完全実施」となりました。たとえ指定職に限られるとはいえ、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を政府みずからが否定するものであり、極めて遺憾です。
 さらに、政府は「不完全実施」の決定に加えて、貴院に対し「地域における官民給与比較の在り方を含め、民間給与のより一層の反映のための更なる方策」を検討するよう要請しています。昨年の比較企業規模見直しに加え、貴院が政府の要請を受け入れることとなれば、労働基本権制約の代償機能としての人勧制度はまさに有名無実と化すことは間違いありません。政府の人勧制度への政治的介入に対しては、毅然として対応することを強く要請します。
 2008年度の基本要求事項では、社会的に公正な官民比較方法の確立による公務員労働者の生活改善を最大の課題としつつ、所定勤務時間短縮の実現や新たな高齢雇用施策、人事評価制度への対応などを重点課題としています。
 以上のことから、貴職におかれては、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、給与に関わる事項
1.給与水準及び体系等について
(1) 給与水準の確保
@ ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保すること。
 当面、2008年度の給与勧告においては、民間実勢を踏まえ、公務員給与水準を改善すること。
A 期末・勤勉手当については、民間実態を正確に把握した月数を確保すること。
(2) 公正・公平な配分
 配分については、別途人事院勧告期に提出する要求に基づき、公務員連絡会と十分交渉し、合意すること。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
@ 政府の官民比較方法の見直し要請に対し、労働基本権制約の代償機関としての立場を堅持し、毅然として対応すること。
A 官民給与比較方法について、社会的に公正な仕組みとなるよう、比較対象企業規模を100人以上とすることをはじめとして抜本的に改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.諸手当の見直し・検討について
(1) 住居手当については、全額支給限度額、最高支給限度額を引き上げるなど総合的に改善すること。また、自宅に係る手当については、国・地方における支給実態を十分踏まえるともに、財形貯蓄制度との関わりを含め手当の意義を検証するなど、廃止ありきではなく、慎重に検討することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 特地勤務手当については、前回見直しの経緯を踏まえ、離島、山間へき地等の生活環境・生活実態と人材確保を重視した慎重な検討を行うこととし、拙速な見直しは行わないこと。

3.「給与構造の改革」に関わる具体的措置について
 新給与制度への移行期間中の諸手当のあり方やベアの取扱いなど、給与勧告・報告のあり方については、その都度公務員連絡会と十分交渉・協議、合意すること。
 なお、本府省手当の新設は行わないこと。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
1.年間労働時間の着実な短縮について
 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 民間企業の所定労働時間の実態に基づき、来年勧告時に、所定勤務時間を1日7時間45分に短縮する勧告を行うこと。また、具体的措置内容については、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 超過勤務を縮減するため、2007年報告に基づき、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに行い、政府全体として、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を取りまとめ、実施すること。また、超過勤務手当の割増率を引き上げるとともに、全額支給すること。

2.本格的な短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。介護のための短時間勤務制度導入のための検討を促進すること。

3.休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充、総合的休業制度などについて、以下の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇、リカレント休暇を新設すること。
(3) 総合的休業制度の検討・研究に着手すること。
(4) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
(5) 官庁執務時間と勤務時間の関係について、「閣令6号」に基づく一律・画一的な官庁執務時間体制を改め、官庁執務時間と勤務時間を切り離して、実態に則した官庁執務時間に改めること。

三、新たな人事評価制度の施行に関わる事項
(1) 新たな人事評価制度については、公正・公平性、透明性、客観性、納得性が具備され、苦情処理制度、労使協議制度などが整備されたものとすること。とりわけ、評価結果の本人開示、労働組合が参加する苦情処理制度を実現すること。
(2) 改正国家公務員法の施行に伴う新たな人事評価制度の制度設計及び整備に当たっては、人事院として、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、必要な役割を果たすこと。
(3) 新たな人事評価による評価結果の任用、給与等への活用の具体化に当たっては、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づき、評価制度の信頼度に応じて段階的に進めること。

四、新たな高齢雇用施策の検討に関わる事項
(1) 現行再任用制度が、総人件費削減政策の下で、雇用と年金を接続する仕組みとしては有効に機能していないことから、民間における高齢者雇用継続制度の整備など高齢者雇用の進展を踏まえ、「雇用と年金の接続」を基本とした、公務員労働者の高齢期の生活の安定を保障する高齢雇用施策を早期に実施すること。また、雇用の確保は、最も重要な勤務条件であることから、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」における検討に当たっては、高齢期の公務員労働者の生活実態や要望等を十分反映できるよう、公務員連絡会から意見を聞くこと。

五、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応して、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり対策の着実な推進や復職支援施策の拡充をはかること。

六、非常勤職員制度等の改善に関わる事項
 非常勤職員制度等のあり方を抜本的に改善することとし、次の事項を実現すること。
(1) 本年報告した非常勤職員等の処遇改善について、公務員連絡会と交渉・協議を行い、速やかに措置すること。
(2) 国会附帯決議(5月8日:参議院総務委員会)に基づき、臨時・非常勤職員の職務内容や任用・給与等の実態調査を実施すること。
(3) 非常勤職員等の処遇改善、雇止めなどの雇用問題や任用のあり方について抜本的に改善するため、「研究会」を設置するなど検討に着手すること。
(4) 当面、常勤職員と同等の勤務を行っている日々雇用の非常勤職員の給与を俸給表に位置づけるとともに、国に雇用される労働者の最低 給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。

七、男女平等の公務職場実現に関わる事項
(1) 公務の男女平等の実現を人事行政の重要事項と位置づけ、職業生活と家庭生活の両立支援、女性公務員の採用、登用の拡大、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 改定された「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な推進を実現すること。
(3) セクシュアル・ハラスメントの実態を把握し、より実効性のある防止策及び対応策の改善に努めること。
(4) 女性の労働権確立にむけ、次の事項を実現すること。
@ 女性が働き続けるための職場環境の整備に努めるとともに、職務範囲を拡大すること。
A 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(5) 「子ども・子育て応援プラン」及び育児のための短時間勤務制度の導入を踏まえ、取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、育児のための短時間勤務等の取得促進策を取りまとめること。
(6) 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。

八、その他
(1) 障害者雇用促進法に沿って、障害の種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
(3) 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上