2008年度公務労協情報 17 2008年1月18日
公務公共サービス労働組合協議会

"退職手当支給の在り方検討会"で意見表明−1/18
−交渉事項であることを踏まえ「慎重な上にも慎重な検討」を求める−

 公務労協は、18日、総務省に設置されている「国家公務員退職手当の支給の在り方等に関する検討会」(以下、「退手検討会」という。座長は塩野宏東京大学名誉教授)の第4回会議のヒアリングで別紙の「退職手当の支給の在り方の検討に対する意見」を表明し、退職手当は勤務条件に他ならず交渉事項であることを踏まえ、慎重な上にも慎重な検討を行うよう求めた。
 この退手検討会は、2007年人事院勧告の取扱いの閣議決定において、「不祥事を起こした国家公務員に対する退職手当の取扱いについて、総務省において制度の在り方に関する検討会を開催し、来年の春までを目途に結論を得る」旨言及されたことを踏まえて、昨年11月に設置され、本年4〜5月頃に結論を出すべく議論を進めている。この検討について、公務労協は人勧取扱いと併せて検討することにしたことは政治的な意図に基づくものとして強く批判しながらも、退職手当が重要な勤務条件であり交渉事項であることから、意見を聞くよう要請してきたものである。
 ヒアリングには、吉澤公務労協事務局長と岩ア労働条件専門委員長が対応し、「警察官や守屋前防衛事務次官の不祥事という個別の問題について、あたかも公務員全体の問題であるかのように捉え、しかも人勧取扱いと一体的に考えることは不適切である。他方、退職手当の取扱いについて国民の批判があるとすればきちんと応える必要がある」との考えを明らかにした上で、「重要な勤務条件であり交渉事項であることを踏まえた慎重な上にも慎重な検討を行う」よう求めるなど、資料に沿った意見表明を行い、その後、若干の意見交換が行われた。その中では、検討会委員から@返納等を行う場合の民主的手続きの必要性A民間均衡と公務の特殊性のバランスを確保することが重要であること、について理解する旨の発言があった。
 退手検討会では、今後、取りまとめに向けて個別論点の意見交換を行うことにしており、公務労協としてはその動向を注視しながら、必要な対策を講じていくことにしている。


別紙資料
退職手当の支給の在り方の検討に関する意見

2008年1月18日
公務公共サービス労働組合協議会

 慎重な上にも慎重な検討を
 今回の退職手当の支給の在り方(支給制限及び返納)の検討は、2007年人事院勧告の取扱い決定の際、政治的に決まったものであるが、第1に退職手当が重要な勤務条件であって交渉事項であること、第2に新たな課題への対応も含めて国家公務員法など他の関係法令等との整合性など多くの問題があること、などを踏まえ、慎重の上にも慎重を期した検討を行い、軽々に結論を得るべきではないと考える。

 退職手当が、勤務条件であり、交渉事項であることに配慮した検討を行うべき
 国家公務員の退職手当は、民間企業の退職金と同様に基本的には「賃金の後払い」であり、退職後の「生活保障」的な役割を果たしていると考えている。「勤続報償」的な性格があったとしても、公務の特殊性を過度に強調すべきではない。
 退職手当の性格をめぐる議論は意見が分かれているが、退職手当が重要な勤務条件であり交渉事項であることは異論のないところである。
 したがって、支給のあり方を検討するに当たっても、本来は勤務条件たる交渉事項として労使間の交渉で結論を得るべきものであることを十分尊重し、今後の検討を行っていただきたい。

 支給制限、返納を検討する場合は、公平・公正な民主的な仕組みを保障すべき
 現在、不支給とし、または返納を求めることができる要件の1つである「禁錮以上の刑」の確定については、これに相当する場合を認定することは制度上できないと考えられることから、返納等を検討する場合は、「在職していれば、当該行為について懲戒免職処分が発令されることが確実なとき」などと厳密に規定した上で、以下の点の実現を求めておきたい。

(1) どのような条件の下で、どのような行為が該当することとなるのか、その具体的要件を、これまでの懲戒免職の実例や判例にしたがって法律に明記すること
(2) 「懲戒免職に相当する場合」の認定及び支給制限・返納の決定は、公平性・公正性を確保するため、任命権者ではなく第三者機関(人事院)が行うこととし、事前に元職員または遺族並びに関係者の意見を聴取する仕組みを設けること
(3) 「認定」に不服がある場合には、元職員または遺族が行政不服審査法に基づく異議申立ができること、また、「認定」に基づいてなされた退職手当の不支給処分または返納処分に対しても同様に異議申立ができること
(4) 退職手当は、退職後の職員及び家族の生活の安定に必要不可欠なものであることから、返納を求められるのは、例えば退職後5年以内など、期限を設けること

 なお、国家公務員法82条が職務上、外の別を問わず、「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」を懲戒の理由とし、退職手当法8条が懲戒免職の場合に退職手当を全額不支給としていることは、「著しい背信行為」がなければ不支給が許されない民間との均衡において疑問なしとしないところであり、懲戒免職の場合であっても一律全額不支給とするのではなく、公務に対する影響度合いを勘案した一部不支給措置を検討すべきである。
 このこととの関わりにおいて、懲戒のあり方についても検討が必要である。

以上