2008年度公務労協情報 23 2008年3月12日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

公務員連絡会が2008春闘中央行動実施−3/12
−書記長クラスが総務省・人事院の各局長と交渉し明確な見解を迫る−

 公務員連絡会は、2008春季生活闘争の回答指定日を一週間後に控えた12日、春季要求の実現をめざした中央行動を実施した。午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた3.12中央集会には、会場からあふれる全国の仲間1,000人が結集し、国・地方の財政赤字を背景として公共サービスが切り捨てられ、格差拡大に歯止めがかからない中で、公務員の雇用、労働条件に大きな影響を及ぼしている現状に対する認識を統一するとともに、民間賃上げ動向を踏まえた公務の賃金改善や所定勤務時間の短縮をめざし、19日の回答指定日に向け闘う決意を固めあった。この日行われた書記長クラスと総務省人事恩給局、人事院の各局長との交渉では、公務員給与バッシングや政治の圧力に毅然と対応し、民賃を反映した給与改善を行うことや臨時・非常勤職員の雇用確保・処遇改善を約束するよう求めたが、客観情勢の厳しさを反映して総務省、人事院の姿勢は堅く、要求を満たす明確な見解は示されなかった。公務員連絡会では、この日昼に開いた企画・幹事合同会議で総務大臣、人事院総裁回答の獲得目標を設定し、書記長クラスの交渉経過を踏まえつつ、19日に向けて詰めの交渉・折衝にはいることとしている。

 午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた中央集会では、冒頭主催者を代表して挨拶に立った福田議長が「本年の春季生活闘争の柱は格差是正とワーク・ライフ・バランスの実現だ。賃金の改善とともに、連合方針を支持し、公務内の臨時・非常勤職員の雇用確保、処遇改善に努める。小さな政府と総人件費削減政策に対しては、対抗軸を明確にして取り組む必要があり、良い社会をつくる公共サービスキャンペーン運動を軸に全力で進める。また、公務員賃金の社会的合意形成、労働基本権確立による労働条件決定システムの確立をめざしていく。その他、課題は山積しているが、全力で取り組もう」と全力で闘うことを訴えた。
 続いて激励挨拶に駆けつけた山口連合副事務局長は、「今日は先行組合の回答日であり、大変厳しい結果になりつつあるが、民間組合は最後まで粘り強く取り組む決意だ。民間組合の成果である民間賃上げ相場が公務に反映されるよう、連合としても取組みを強化することを約束する」と、国営部会の岩ア労働条件委員長(林野労組書記長)は、構成組織それぞれが組織の再編等で厳しい状況にあることを報告した上で、「国営部会は1,000円以上の賃金改善を求めることとし、自主交渉・自主決着を基本に有額回答をめざした取組みを進めている。公務員連絡会と連携し、全国の職場で闘っていきたい」と、それぞれ闘う決意を述べた。
 このあと基調提起に立った吉澤事務局長は、民間賃上げをめぐる状況を報告し、地域で民間と連帯して取り組むことを要請するとともに、公務員制度改革で労働基本権を確立していく闘いが正念場を迎えていることを訴え、本日午後の人事院の各局長との交渉で要求の重点事項について誠意ある回答引き出しをめざす決意を述べた。
 構成組織決意表明には、森下全農林中央執行委員(国公総連)、徳茂自治労副委員長、山本日教組副委員長が登壇し、それぞれの組織が取り組んでいる課題を報告するとともに全力で闘い抜く決意を述べた。
 集会を終えた参加者は、人事院前に移動し、「公務員の賃金を改善しろ」「労働時間を短縮せよ」「非常勤職員の労働条件を改善せよ」とシュプレヒコールをあげ、人事院交渉を支援し、交渉終了後その場で交渉報告を受け、この日の公務員連絡会の行動を終えた。
 この日行われた総務省人事・恩給局長、人事院給与、職員福祉局長との交渉経過は次の通り。

<総務省人事・恩給局長交渉の経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員と総務省人事・恩給局藤井局長との交渉は、12日午前11時から総務省内で行われた。公務員連絡会側は、本日段階での総務省の見解を求め、局長は「去る2月15日に要求書を受け取り、皆様の要求を真摯に受け止めて検討を行ってきたところである。本日は、現段階における考え方を主な要求事項に沿ってお答えしたい」として、次の通り回答した。

1 総人件費削減の実行計画について
 総人件費改革に伴う国家公務員の配置転換については、先日の国家公務員雇用調整本部において取組みの3年目となる21年度の実施計画が決定され、来年度の取組みに向けた作業が始まっていると承知している。
 総務省としても政府全体としての取組みが円滑に進むよう、今後とも積極的に協力していく所存であるが、1〜2年目は順調に進んできたが、3年目は厳しくなると考えられ、職員団体においても、取組みをめぐる状況が非常に厳しいものであることをとの認識を共有し、雇用の確保を図るという観点から真摯な対応をお願いしたい。
 なお、直接の所管ではないが、独立行政法人の見直しにかかわる雇用問題等については、今後、行革事務局等でしかるべく適切な対応が図られるべきものと考えている。

2 2008年度の賃金改善について
 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢であることに変わりはない。総務省としては、20年度の給与改定に当たっても、従来同様、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ、職員団体とも十分に意見交換を行いながら、適切な給与水準となるよう対処してまいりたい。

3 労働時間、休暇及び休業等について
 所定内労働時間の短縮については、大事なことであるとの認識を持っており、勤務条件に関わることであり、人事院において今後勧告についての判断が行われるものと考えるが、総務省としても関心を持って見守ってまいりたい。
 また、超過勤務の縮減については、@業務量を減らす取組みA厳正な勤務時間管理を行うことB現場における業務効率の向上等の取組みを行うこと、が重要と考えている。既に対策として取りまとめている「国家公務員の労働時間短縮対策について」に基づく様々な取組みが、各府省や現場において進められているところであり、総務省として徹底してまいりたい。

4 新たな人事評価制度の実施について
 新たな人事評価制度の設計に当たり、総務省として、これまでの試行や検討により得られた知見を行革事務局に提供してきており、それらも踏まえて信頼性の高い人事評価制度を構築するべく行革事務局が中心となって制度設計が行われているところである。その中で、評価結果の開示や苦情処理の仕組みに関しては大きな議論があったと認識しており、総務省としても、行革事務局と連携・協力しつつ検討を進めることとしている。
 来年度は21年度施行に向けリハーサル試行を実施することも必要と考えており、今後とも職員団体と十分話し合っていきたいと考えている。

5 新たな高齢者雇用施策について
 今後、公的年金の受給開始年齢の段階的な引上げが行われることにより、60歳定年退職者についていわゆる無年金期間が発生することから、公務においても、雇用と年金の連携を図り、職員が高齢期の生活に不安を覚えることなく、職務に専念できる環境を整備することが必要であると考えている。
 先般提出された「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」の報告では、当面、再任用制度の拡充により雇用機会を確保することなどが提言されているところであるが、総務省としても、今後、高齢者雇用の推進を図る方向で研究を行ってまいりたい。

6 退職手当の支給のあり方について
 「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(平成19年10月30日閣議決定)に基づき、不祥事を起こした国家公務員に対する退職手当の支給の在り方等を見直すため、昨年11月末以降、有識者からなる検討会を開催し、退職手当の不支給・返納制度に関する法制上の課題について専門的な検討を行っており、今年の春までを目途に結論を得ることとしている。 
 1月に公務労協からご意見を伺ったところであるが、今後の検討に際しても、公務労協・公務員連絡会からのご意見は十分伺ってまいりたい。

7 非常勤職員等の労働条件の改善について
 非常勤職員も様々な職場において事務の一部を担ってもらっており、常勤職員の給与との権衡を考慮した給与の支給等の適正な処遇を図っていく必要があると思っている。
 非常勤職員の実態については、現在、人事院において各府省から聴取していると聞いている。総務省としては、人事院とは別に調査を実施するということではなく、人事院に対し政府としての必要な協力を行っていくことによって、まずはその実態が明らかになることが必要と考えている。

 これらの回答に対し、公務員連絡会側は次のとおり考え方を質した。
(1) 国家公務員の配置転換については時間の経過とともに状況は厳しくなるという認識は同様である。われわれも努力するが、総務省としても使用者の責任においてミスマッチのないように主体的な対応を求める。また、独立行政法人見直しに関わる雇用問題については、直接の所管ではないとのことであるが、雇用確保の責任は政府にあることを踏まえ、行革事務局と連携し、政府全体としての統一的対応が必要である。
(2) 昨年度の人事院勧告が結果として不完全実施となったことには遺憾の意を改めて表する。その上で、@官民比較方法の見直しについて人事院への圧力を直ちにやめることA本年、改善勧告があれば、勧告の尊重と完全実施へ最大限努力すること、を約束してもらいたい。また、昨年閣議決定の際、「国民の理解が得られるかどうか」を検討するとした政府の対応は、法制度として確立されている人勧を尊重するという基本姿勢に矛盾すると考えているが、いかがか。
(3) 本年、人事院が所定勤務時間短縮の勧告を行った場合には、直ちに法改正してもらいたい。また、超過勤務縮減について具体化をはかるとともに実効性ある施策を明らかにすることを求める。
(4) 人事評価制度については、評価結果の全面開示と職員代表や労働組合が参加する苦情処理システムの確立は最低限必要であることを強く申し上げる。公務員連絡会との十分な交渉・協議・合意を重ねて求める。
(5) 高齢者雇用施策を主体的・積極的に検討することを求める。
(6) 退職手当の支給のあり方に関する検討会に対して意見聴取の機会を再度設定すること、および今後の総務省での法案化等にあたって、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意を求める。
(7) 国の非常勤職員に対する人事院調査は処遇についてのものでしかない。仕事や雇用を含めた全体像を把握するための実態調査が必要と考えており、使用者としての責任において積極的に対応すべきではないか。

 これらの点について、総務省側は次のとおり考え方を示した。
(1) 独立行政法人の雇用責任は、一義的には独立行政法人にあり、ついで所管省庁、独法改革を推進する行革本部にあるが、総務省としては雇用確保を大切な観点として見守っていきたい。
(2) 本年の勧告についての現段階でのコメントには限界があるが、人勧尊重の基本姿勢は今後とも変わるものではない。昨年は、国家公務員の不祥事に対し、事実として国民からの批判はあった。官民比較方法の見直し要請については、中立・第三者機関としての人事院がどう判断するかであり、われわれが圧力をかけたものとは考えていない。
(3) 所定勤務時間の縮減については人事院における検討状況を注視しつつ、適切に対応していきたい。また、超勤縮減の具体化には、制度面だけではなく、職員の意識改革も必要である。ワーク・ライフ・バランスの観点からも、職員団体への協力をお願いしたい。
(4) 新たな人事評価の具体的制度設計にあたっては、今後とも職員団体との十分な協議を行っていく。また同時に、行革事務局との意見交換は今後引き続き行う必要があると考える。
(5) 高齢者雇用については、民間はすでに義務化される中で、国家公務員についてどうするかという問題意識を持っている。
(6) 「検討会」での組合の意見再聴取は、ある程度論点が固まった段階で行う方が効果的と思うが、どの段階で行うかは最終的には検討会委員の判断である。
(7) 国の非常勤職員については、人事院調査への協力がまずは必要と考える。

 この回答に対し、公務員連絡会側は、再度、「非常勤職員の問題は人事院だけのものではない。責任を明確にし、大きな課題と認識してもらいたい」「地方分権改革推進委員会において国の地方支分部局(出先機関)のあり方が検討されていることについて、地方分権を進めるという本来の目的よりも国家公務員の定員削減が優先されて検討されかねないことを憂慮しており、雇用問題が発生しないよう対処してもらいたい」と考え方を質した。
 しかし総務省からは、これ以上明確な見解は示されなかったことから、公務員連絡会側は、「本日の回答で納得できるものではない。19日の最終回答まで、再検討を強く要請する」と求め、交渉を終えた。


<人事院給与局長との交渉経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、14時45分から、出合給与局長と交渉を行った。
 冒頭、吉澤事務局長が「2月15日に総裁に要求書を提出し、3月3日には幹事クラスの交渉を行った。今日は19日の総裁回答に向けて、今日段階の局長回答を伺いたい」と見解を求めたのに対し、出合局長は次の通り考え方を示した。

1 本年の民間春闘の状況について
 年明け以降の円高、原材料価格の高騰などを背景に経済の先行きに対する不透明感が増しており、2月の月例経済報告におけるわが国経済の基調判断は、一転慎重なものとなっている。その後も悪い状況が続いており、このような状況を受けて経営側の対応は厳しくなるものと考えられ、一方労働側については、既にベア要求を行っている大手企業の要求額は、昨年とほぼ同様であり、連合集計では昨年を下回っているという結果もでている。このように春闘状況は不透明感が増していると認識しており、今後の回答・妥結の動向を例年以上に注視していきたい。

2 本年勧告へ向けての基本姿勢について
(1) 人事院としては、例年と同様、情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で、その実態を適切に公務員給与の水準に反映させるという基本姿勢に立って今年も勧告作業を進めていきたい。
 なお、政府の官民給与比較方法の検討の要請に関しては、総裁が国会で答弁を申し上げているように、人事院としては、まずは現在進めている給与構造改革を着実に実施していくことが肝要であると認識しているが、公務員給与の在り方については、情勢適応の原則に基づき常に検討を続けているのであって、政府からの要請を含め、広く各方面の意見を聴きながら公務員の適正な給与の確保に向けて、様々な側面から検討を行い、その責任を果たして参りたい。
(2) 比較対象企業規模に関しては、18年に行った比較方法の見直しにより、同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下で、民間企業従業員の給与をより広く把握し、反映させることができたものと考えており、現行の50人以上という規模は、現時点では妥当なものであると考えている。
(3) 配分については、例年職員団体と議論をしつつ、判断・決定しており、本年勧告における給与構造見直し実施分の具体的内容を含め、検討を進めていきたい。本年の較差がどうなるかが見えてきた段階で具体的な議論をさせていただきたい。
 なお、給与構造改革の最後の課題である本府省手当については、本年の勧告も視野に入れ具体化に向けて準備を進めているところであり、今後皆さんの意見も十分に聞きながら検討を進めたい。
 また、昨年報告をした、特地勤務手当の見直し及び自宅に係る住居手当の廃止については、今後皆さんのご意見も聞きながら議論をし検討を進めていきたい。

3 非常勤職員の処遇改善について
 現在、非常勤職員の給与に関しては、この春闘でも社会的な議論になっており、公務でも重要な課題であると考えており、昨年の報告を踏まえ、各府省から実態等を聴取しつつ、必要な方策について検討を進めているところである。具体的には、各府省が非常勤職員の給与を決定する際に考慮すべき事項を示すガイドラインの策定について、鋭意検討を進めており、本年夏の勧告時を目途として結論を得たいと考えている。案が示せる段階になったら、できるだけ早く皆さんにお示して議論をしたいと考えている。
 なお、非常勤職員の問題は多岐にわたる項目の検討を必要とするものであり、給与はその一部分に過ぎず、その中には定員、予算など人事院の所掌を超えるものもある。今後、民間の状況もみつつ、非常勤職員の位置付け等も含めて、幅広く検討される必要がある課題であると考えている。

4 新たな人事評価の活用について
 新たな人事評価制度の施行を21年4月に控え、任用・給与への活用の在り方等については、職員団体を始め関係各方面のご意見を十分に伺いつつ、検討を進めてまいりたい。

 回答に対し、公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 春闘の状況について、厳しいのは中小地場であり格差問題に関わっている。政府も賃上げへの期待を表明しているが、人事院としても方向を見守るだけでなく、もう少し踏み込んだ見解を示してほしい。
(2) 給与勧告については、較差があれば勧告するとの基本的立場を明確にしていただきたい。
(3) 官民比較方法については、政府が見直しを要請したことは言語道断で、第三者機関として毅然と対応すべきだ。具体的に検討することはないということをはっきり言ってほしい。
(4) この間、較差が勧告直前まで明らかにならず、配分交渉が十分に行えていない。本年は十分な議論をさせていただきたい。
(5) 本府省手当は認められない。本府省の特殊性というが、まずは超勤を縮減した上で全額支給を行うべきだ。特地勤務手当は3年ごとに見直すことにされており、従来通りのスケジュールで行うべきだ。また、自宅にかかる住居手当については、「廃止ありき」の見直しは認められないので、十分に議論をさせていただきたい。また、諸物価高騰が、中央・地方を含めて生活に影響を与えているので、手当全般について検討し改善をしていただきたい。
(6) 非常勤職員の給与についてガイドラインを示すとのことだが、夏の勧告時ということになれば、現実的には再来年からということになってしまう。もっと早く示していただきたい。給与以外の課題については「検討される必要がある」とのことであるが、非常勤職員の問題について誰に責任があるのかが不明だ。少なくとも政府に要請するなど人事院として主体性、積極性をもって対応していただきたい。
(7) 人事評価については、タイムリミットを迎えているが、活用については人事評価の信頼度の高まりに応じて段階的に進めるべきだ。真摯で十分な交渉、協議と合意に基づいて進めていただきたい。

 これに対し局長は次の通り答えた。
(1) 春闘の状況については、広がりはあるかなと思っているが、公務が引っ張るわけにはいかないので、民間の実情を踏まえて対応していきたい。
(2) これまでもプラスでもマイナスでも較差があれば勧告をしており、まずはきちんと較差をつかまえて、それを公務にどう反映していくかということだ。
(3) 政府の見直し要請については、要請は様々なところからくるが、人事院として独立第三者機関としてきちんと検討し、判断をしていくという姿勢で対応していく。
(4) 配分について十分な議論が行われていないとのことであるが、平成11年以降はマイナスになったりして必ずしも十分議論する下地が作りにくかった。配分は職員全体に関わる問題なので、職員団体の皆さんと十分議論できるよう努めたい。
(5) 本府省手当については、給与構造改革で提案し、最後に残された課題となっており、今年か来年しかないので準備を進めることにした。特地勤務手当と住居手当は、身のある議論をしっかり積み上げていきたい。その他の手当については、今年の較差がどうなるかによるし、民間の手当の状況も踏まえて検討して参りたい。
(6) 非常勤職員の問題については、今まで各省にお任せし、業務も各省が設けているので常勤の官職とは異なっている。ガイドラインは何度も出し直すというわけにはいかないので、慎重に検討している。しかし、いったん出せば影響があるので、しっかりしたものを作りたい。考えが整理できた時点で説明し、論議していきたい。
(7) 人事評価制度については、長い間議論をさせていただいたし、試行も何度も行われ、当初よりは信頼度も高まってきている。職員の働き方、将来を決める重要なものなのでその成熟を見ながら活用を検討していきたい。改正国公法の施行に合わせて活用できれば一番いいと思っているので、まずはそれに向けて検討していくことにしている。
(8) 非常勤職員の位置づけなどの問題の検討は、総裁も国会で答弁しているように人事院だけでは判断できないので、政府部内で幅広く検討しないといけない。

 これらの見解に対し、公務員連絡会側は@官民比較方法は今年の見直しはないと受け止めるがどうかA本府省手当は、本府省勤務の特殊性があるとのことだが、働き方を見直すことが先だし、地方でも100時間を超える超勤をしている職場があり、本府省だけの問題ではないB自宅にかかる住居手当は影響が大きいので「廃止ありき」ではない検討を重ねてお願いしたいC非常勤職員は地方公務員でも増えており、国の問題について人事院としてしっかり対応していただきたい、と重ねて局長の見解を求めた。
 この公務員連絡会の追及に対し局長は、@官民比較方法見直しの検討については、まずは給与構造改革を進めるということが肝心ということだA本府省には人が来ない現実があり、働き方を見直すのは当然だが、それでも残る特殊性については、処遇上、手を入れたいということであり、仕事の中身を見ながら検討していきたい、との考えを示した。
 最後に吉澤事務局長が「本日、要望をしたことを含めて、十分に検討をしていただいて、19日には総裁から前向きな回答をお願いしたい」と強く要望し、給与局長交渉を締めくくった。

<人事院職員福祉局長との交渉経過>
 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、同日15時30分から、吉田職員福祉局長と交渉を行った。
 冒頭、公務員連絡会吉澤事務局長が回答を求めたのに対し、吉田局長は「職員福祉局関係の検討事項のうち、主要な3点について説明したい」として次の通り考え方を示した。

1 所定勤務時間短縮について
 所定勤務時間の短縮については、昨年の報告でも言及しているが、新たな勤務時間に対応した適切な勤務体制等や関連諸制度の検討等の所要の準備を十分行った上で、本年の民間企業の所定労働時間の調査結果を考慮して、民間準拠を基本として勤務時間の見直しに関する勧告を行いたいと考えている。
 なお、公務員に対しては、国民から厳しい目が注がれ、批判がなされているところであり、所定勤務時間の見直しについても国民の理解を十分に得ながら進める必要がある。

2 超過勤務の削減について
 超過勤務の削減については、昨年勧告時の報告で在庁時間について問題指摘を行ったが、各職場を含め政府全体の取組みが必要である。現在、各府省の実態に即した具体的な取組みがなされるよう、内閣官房及び関係機関を中心に各府省との間で協議を行いつつ、取組みの計画、スケジュール等について検討を進めており、早ければ本年春から各府省において何らかの具体的施策を実施できるよう最後の詰めを行っているところである。

3 新たな高齢雇用施策について
 60歳定年退職者について無年金期間の生ずる平成25年を見据え、昨年9月から「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」を開催し、公務における高齢期の雇用確保策について鋭意検討を進めているところであり、現時点では、平成21年7月を目途に報告をとりまとめるというスケジュールで検討を進めている。
 なお、検討に当たっては、必要に応じ、職員団体を始め関係者の意見を伺い、その理解を得ていくことが重要と考えている。

 以上の回答に対し公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 所定勤務時間の短縮については、本年勧告するとの明確な見解を示してもらいたい。
(2) 研究会の検討と総理懇の報告との関係を明らかにしてほしいし、研究会で意見表明の機会を設けていただきたい。また、雇用と年金に乖離が生じるまでにあと5年しかないので、雇用と年金の接続という原則についてどう認識しているかの見解を示してほしい。

 これらの質問に対し、局長は以下の通り答えた。
(1) 勤務時間の短縮については、今年の民調の結果を踏まえ、積極的に取り組んでまいりたい。ただし、いろいろな客観的な状況があるので、皆さんにも厳しさがあることを認識していただいて、一緒に取り組んでいただきたい。
(2) 高齢雇用施策については、基本的なスタンスとしては雇用と年金の接続をいかにして確保するかということであり、間に合うように検討し対策を取っていきたい。研究会が判断することであるが、研究会の場で皆さんの意見を聞くようにしたい。総理懇報告については、「当面」と「中長期」をどう読むかだが、大きな流れとしては定年延長がある一方、一気にということではないとの趣旨を踏まえ、研究会で議論していく。

 最後に、吉澤事務局長から「総裁回答では、明確で前向きな回答をいただけるよう努力願いたい」と申入れ、職員福祉局長交渉を締めくくった。

以上