2008年度公務労協情報 26 2008年4月14日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

本年勧告に関わる民間給与実態調査等について地公部会が全人連に要請−4/14

 公務員連絡会地公部会は4月14日、本年勧告に関わる民間給与実態調査等についての全人連要請を実施した。
 午後2時から行われた要請には、佐藤地公部会議長(全水道委員長)はじめ地公部会幹事等が出席し、全人連側は、内田会長はじめ都道府県人事委員会のブロック代表及び政令市の代表者が対応した。
 冒頭、佐藤地公部会議長が要請書(別紙)を手交して「2008春闘は現在、中小・地場組合が交渉中だが、これまでの結果を見る限りでは昨年をわずかに上回る程度であり、昨年を上回る条件が揃っていたにもかかわらず残念な結果となっている。各人事委員会におかれては、民間の給与実態を精確に調査されるよう要請する。その上で、何点か申し上げる」として、以下の通り要請した。
(1) 春季の総務大臣回答を見るまでもなく、今日、地公賃金に対する抑制の動きが強まっていると認識している。2006年の総務省の地方公務員の給与あり方研究会報告では、制度は国公、水準は地場民賃、人事委員会機能の強化が提起された。これを受ける形で先月公表された人事委員会機能強化等の検討会報告では、その目的である人事委員会機能強化には触れることなく、賃金抑制に向けた内容となっている。さらに技能労務職の給与引下げのための研究会設置の動きにあるが、交渉権・協約締結権を有している労働組合に対する不当な介入と言わざるを得ない。今後、地公の標準的給与確立に向けて率直な話し合いを行っていきたいことを改めて要請する。
(2) また人事院は、春の回答で国家公務員の住宅手当のうち、持ち家については廃止の方向で今後協議することを表明した。国公と地公の住宅政策の違い、国公は配分問題であることなど制度の違いもあることから、地公の実態を十分に理解の上、慎重な取扱いを要請する。
 続いて、藤川地公部会事務局長が要請書の課題について説明し、全人連としての努力を求めた。
 こうした地公部会の要請に対し、内田全人連会長は次の通り回答した。
<全人連会長回答>

2008年4月14日

 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。私から、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 あらためて申すまでもありませんが、公務に従事する職員の勤務条件を適正に確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しており、本年も、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を適切に果たしてまいりたいと考えております。
 さて、本年の民間給与実態調査を迎えるにあたりまして、現在の状況認識等について、一言、申し上げます。
 まず、最近の経済状況を見ますと、政府の3月の月例経済報告では、「景気回復は、このところ足踏み状態にある。」とし、景気の基調判断を2カ月連続で下方修正し、景気が踊り場的な状態にあることを表明しております。
 先行きについても、「輸出が増加基調で推移し、景気は緩やかに回復していくと期待される。」とする一方、「アメリカ経済の減速」等から、「景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要がある。」として、引き続き警戒感を示しております。
 また、日銀の3月の企業短期経済観測調査(短観)においても、景況感を示す業況判断指数は、日本経済をけん引してきた大企業製造業で8ポイント低下するなど、企業の景況感の大幅な悪化を示しております。
 このような中、賃上げを巡る本年の春季労使交渉では、要請にもありますように、3月中旬の大手企業の回答は、ほぼ前年と同水準となっており、今後の中小企業の回答を含め、本年の春季労使交渉結果に注目していきたいと考えております。
 現在、各人事委員会におきましては、5月初旬から、民間給与実態調査を人事院と共同で実施していくことを予定しており、民間の賃金水準の適切な把握に努めてまいります。
 要請をいただいた個々の内容は、各人事委員会において、その調査結果や各自治体の実情等を踏まえながら、本年の勧告に向けて検討をしていくことになるものと思います。
 全人連といたしましても、必要な点については、人事院や各人事委員会と十分意見交換や連携ができるよう、努めてまいりたいと考えております。

(別紙)全人連への要請書

2008年4月14日


全国人事委員会連合会 
 会 長  内 田 公 三 様

公務員連絡会地方公務員部会
議 長  佐 藤 幸 雄


民間給与実態調査等に関わる要請書


 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 民間の2008春闘における賃金交渉は、サブプライムローン問題、原油などの原材料費の高騰、急激な円高など厳しい経済環境をめぐる中においても、ほぼ前年並みの回答状況となり、三年連続の賃金改善となりました。また、今後中小企業等の賃金水準引上げやパート労働者の均等待遇に基づく格差是正・処遇改善が期待されます。
 公務においても引上げ傾向にある民間の賃金水準を反映した賃金改定が求められます。特に、ここ数年の地方公務員賃金の削減は、地方経済にマイナスの影響を与えています。そのため、比較企業規模の復元等による公務員賃金の社会的合意の再確立と賃金水準の確保、職務給の原則を踏まえた地方公務員の標準的給与を確立する取組みが必要であると考えます。
 2007確定では、厳しい財政事情を理由に人事委員会の勧告を完全実施しない自治体が相次ぎ、労働基本権制約の代償措置としての人事委員会勧告制度の空洞化が一層深刻化し、許すことのできない事態であると考えております。
 ついては、民間給与実態調査実施などにあたって、下記のとおり要請しますので、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の使命を十分認識され、要請事項の実現に向け最大限の努力を頂きますようお願いします。



1.民間給与実態を精確に把握し、地方公務員の生活を改善するための賃金水準を確保すること。

2.2008年民間給与実態調査において、比較企業規模を100人以上とすること。また、一時金の公民比較は、比較企業規模を100人以上とするとともに同種・同等比較とすること。公民比較方法のあり方の検討に当たっては、職員団体との十分な交渉・ 協議に基づくこと。

3.自宅に係る住居手当及び特地勤務手当の見直しに関しては、地方公務員の住宅制度や勤務の困難性を踏まえ、廃止または引下げを行わないこと。

4.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。そのため、全国人事委員会連合会の体制・機能の強化や人事委員会相互の連携方策などについて、公務員連絡会地方公務員部会との意見交換を進めること。

5.公立学校教職員の給与について、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。モデル給料表の作成に当たっては、関係労働組合との意見交換を行うこと。

6.「不払い残業」の一掃、超過勤務縮減の具体策、所定労働時間の短縮(変則・交替制勤務職場における労働時間短縮の重視など)に取り組むこと。

7.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、職員団体との交渉・協議、合意に基づき進めること。

以上