2008年度公務労協情報 32 2008年6月6日
公務公共サービス労働組合協議会

国家公務員制度改革基本法案が参議院で可決、成立−6/6
−推進本部に組合参加の協約締結権付与の検討機関設置へ。公務労協は「労働基本権の確立をめざす」との見解を公表−

 国家公務員制度改革基本法案は、与党・民主党合意に基づいて修正された後、衆議院を通過し、参議院で審議が行われていたが、3日及び5日に内閣委員会で審議が行われ、6日の10時から開かれた参議院本会議で可決され、成立した。
 労働基本権については、修正により協約締結権の付与の方向が政府原案より明確になるとともに、審議を通じて法案成立後に発足する国家公務員制度改革推進本部のもとに労働組合が参加する検討機関を設置し、3年以内に必要な法制度改正を行うことなどが明らかになった。
 今後は、推進本部のもとの検討機関での具体的作業が本格化することになるため、公務労協は、別紙1の「国家公務員制度改革基本法案の成立に対する見解」を公表し、連合と連携しながら、引き続きILO基準を満たした労働基本権の確立と民主的公務員制度改革実現に向けて取り組むことにしている。また、連合も別紙2の「国家公務員制度改革基本法案の成立に関する談話」で、透明で民主的な公務員制度実現のために全力を傾けることを明らかにしている。
 参議院段階における審議の状況は、以下のとおりである。

<参議院内閣委員会における審議状況>
 衆議院において、民主党と与党の協議によって修正された国家公務員制度改革基本法案は、5月30日の参議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、3日の内閣委員会で本格的な審議が開始された。
 3日の審議では、民主党議員の「『自律的労使関係制度を措置する』というのは、どれくらいの時間軸でやろうとしているのか」との質問に対し、渡辺大臣は「法的な措置が必要な事項は、3年以内を目途に法制上の措置を講ずることになる。『自律的労使関係制度を措置する』の『措置』には、当然法制上の措置が含まれる。そのため、3年以内を目途に法制上の措置を講ずる、法案を提出することが政府の責務である」と答弁した。
 引き続いて行われた5日の審議では、質問に立った民主党の神本美恵子議員が、労働基本権問題に関わって、@大臣は衆院内閣委で「職員団体を含む関係当事者の意見を十分聞いて検討」と答弁しているが、具体的な検討体制はどうするのかA同委員会で大臣は「基本法成立後、速やかに次のステージで検討」とも答弁しているが、「速やかに」には検討機関の設置も含んでいるのかB3日の審議で「3年以内に政府の責務で法案を提出する」と答弁しているが、再確認をさせてもらいたいC4条では改革に必要な措置を法施行後5年以内を目途に講ずるとされており、3年以内に法案を提出し、必要な措置を5年以内に講じていくという理解で良いか、などと追及した。
 これら質問に対し、渡辺大臣から、@法案成立後1ヵ月以内に設置する国家公務員制度改革推進本部のもとに、労働組合を含めた関係者の参加する検討機関を設置する。行革推進本部専門調査会が政令で位置づけられたことから、この検討機関も政令で設置することが妥当である。検討機関のメンバーは、公労使または労使の構成が考えられるA国家公務員制度改革推進本部の立ち上げとともに、検討をスタートするB3年以内を目途に法制上の措置を講ずることが政府の責務であると、また、修正基本法案の共同提案者から、C(3年以内の法制化を前提として)12条の自律的労使関係制度の確立に必要な措置は、5年以内に講ぜられるものである、との答弁がされた。
 これら質疑の後、修正基本法案に対する採決が行われ、与野党の全会一致で可決され、本会議に送られた。


(別紙1)
国家公務員制度改革基本法案の成立に対する見解


1.4月4日に閣議決定された国家公務員制度改革基本法案(以下、「法案」という。)は、衆議院で修正され、参議院に送られていたが、6月6日の本会議で可決、成立した。
2.公務労協は、法案の国会提出以降、その内容が専門調査会報告及び総合改革懇談会報告が指摘した改革の水準に至らないものであり容認できないという立場で、連合と連携し、法案審議段階における対応を強化してきた。とくに、法案の修正に向けた民主党との協議に精力的に取り組むとともに、社民党、国民新党への要請を行った。
 また、連合は5月8日の政労会談で、福田総理に対し国会における法案協議の指示を行うよう求めるなど、対策を強化してきた。
 こうした取組みの結果、5月27日の与党・民主党実務者協議において法案修正が合意され、労働基本権については「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」との修正が行われた。政府原案では「政府は、(中略)検討する」という、「現状維持のための結論先送り論」となっていたことに対し、これを修正し具体化に向けた礎を築いたことは、公務労協と連合の取組みや参議院における与野党逆転を背景とした民主党の対応の成果として評価できるものである。しかし、公務労協、連合が、前提条件のない非現業公務員の協約締結権の付与の明確化を求めてきた立場からすれば、今後の検討に課題を残すものであり、決して十分なものとはいえない。
3.修正案の衆議院通過後の参議院段階においても、協約締結権の付与をさらに明確にしていくため、国会対策などに全力で取組んできた。
 その結果、労働基本権について、政府から@国家公務員制度改革推進本部のもと、労働組合を含め関係者の参加する検討機関を設置し、その場で具体的な検討を行うA法案施行後3年以内に改正法を国会に提出し、施行後5年以内に実施する、との答弁を引き出し、協約締結権の付与に向けての足場を築くことができた。
4.法案の成立を受けて、1月以内に推進本部が発足、そのもとに検討機関が設置され、具体化に向けた作業がいよいよ本格化することになるが、協約締結権の実現に対しては依然として根強い抵抗がある。公務労協としては、与野党合意に基づいて修正案が可決、成立したことを重く受け止め、連合と連携しながら、ILO勧告をみたした労働基本権の確立と民主的公務員制度改革の実現をめざし、全力で奮闘するものである。
 2008年6月6日

公務公共サービス労働組合協議会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部



(別紙2)

2008年6月6日

国家公務員制度改革基本法案の成立に関する談話

日本労働組合総連合会
事務局長 古賀 伸明


1.本日、国家公務員制度改革基本法案(以下、基本法案)が可決・成立した。戦後60年余が経過し、日本の諸制度は大きな変化を遂げつつあるが、今なお抜本的な改革がなされていないのが公務員制度であり、与党・民主党の修正協議を経て、基本法案が成立したことは今後の抜本改革に向けたステップとして大きな意義がある。政治主導のもとでの民主的公務員制度確立という理念に基づきなされた法案修正の政治的合意は重い。
2.4月4日閣議決定の政府原案は、明確な改革の方向性を打ち出すものとなっていなかった。そのため連合は、少なくとも行政改革推進本部専門調査会報告および公務員制度の総合的な改革に関する懇談会報告が提言する改革の水準を満たすよう、民主党などと連携し、法案審議段階における対応に全力を挙げて取り組んできた。霞が関改革の必要性を求める世論も踏まえ、与党・民主党が精力的に修正協議を行い、幹部人事等の内閣一元化、65歳への定年の段階的な引き上げの検討、労働基本権などについて、より改革の方向性を強めるかたちで修正がなされたということは評価できる。特に、幹部候補者の原案を各府省が作成するなど、曖昧にされていた幹部人事の内閣一元化について、内閣官房長官が名簿を作成するなど、一元化を明確にし、より内閣の人事管理機能を強化するとの修正がなされたことは、省庁割拠主義、省益優先の弊害を排除し、真に国民本意の行政運営を確立していく上で、大きな意味を持つものである。
3.とりわけ労働基本権については、政府原案第12条では「検討する」として、現状維持、結論先送りとなっていたが、「協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置する」と修正し、3年以内を目途に法案化をはかるとしたことは、今後の礎となるものと評価できる。しかし、報告等が求めている改革の水準に照らせば、依然として曖昧さが残っており、国際基準に適合した労働基本権の保障を求めている連合としては、残念と言わざるを得ない。今後、基本法成立を踏まえて設置される国家公務員制度改革推進本部のもと、労働組合の代表も参加する場において、第12条に係る具体的検討が行われるが、詳細の制度設計に向け対応を強化していく。
4.基本法は今後のプログラムを示すものであり、改革の具体化のための個別関連法改正については、今後の課題となる。これまでの官僚主導の行政運営とそれを支えてきた公務員制度は、すでに機能不全に陥っており、改革は喫緊の課題である。政治には、これを基点として、広く英知を結集して国民の求める抜本的な改革を進めることを求めたい。連合は、この間の民主党をはじめとする関係者および国際労働運動の支援と連帯に感謝するとともに、引き続き、抜本的な改革、透明で民主的な公務員制度実現のために全力を傾けるものである。

以上