2008年度公務労協情報 34 2008年6月18日
公務公共サービス労働組合協議会

地方分権改革にともなう国の出先機関見直しで申入れ−6/18
−雇用と労働条件を確保するための仕組みを設けることなどを要請−

 公務労協は、18日13時30分から、内閣府の地方分権改革委員会事務局次長交渉を実施し、別紙の「地方分権改革にともなう国の出先機関見直しに関する申入れ」を提出し、申入れ事項の実現を迫った。
 この交渉は、地方分権改革委員会(委員長:丹羽宇一郎伊藤忠取締役会長)が5月28日に首相に提出した地方分権改革に向けた第一次勧告の中で「国の出先機関の改革の基本方向」を示すとともに、夏には「中間報告」を取りまとめ、本年中に第二次勧告を行う予定とされていることから実施したもので、公務労協側は吉澤事務局長と関係構成組織書記長等が参加し、地方分権改革委員会事務局側は松田敏明事務局次長らが対応した。
 冒頭、吉澤事務局長が申入れの趣旨と内容を説明し、委員会事務局の見解を求めたのに対し松田次長は次の通り考えを示した。

(1) 各府省設置法に基づいて出先機関で仕事をしていただいていることが前提であるが、地方分権改革の中で国の組織、職員の移行が含まれる場合に皆さんが関心を持たれることは理解する。職員の皆さんが不安を持つことがあってはいけないと思っているので、どういう移管の方法があるか、一つひとつ考えながら検討を進めていきたい。
(2) 皆さんの意見については、事務局として伺っていくのでよろしくお願いしたい。委員会の場で聞くかどうかについては、要請があったということを受け止めておきたい。

 さらに公務労協側は、次の通り、昨日報道された丹羽委員長の記者会見内容を質すとともに各関係組織書記長が要請を行った。
(1) いま、府省間配置転換が進められて3年目になり、これ自身厳しい問題であるが、出先機関がどうなっていくのかは大変厳しい問題だ。昨日の新聞に、丹羽委員長が「国の出先機関の職員のうち10〜11万人が二重行政と指摘した」との記事が出ていたが、人の配分をどうするかは出口の問題だ。どういう趣旨か。
(2) 今、農林水産省と北海道開発局では府省間配転に対応しているが、当事者が納得できる形で進めないと職員のモチベーションが下がり、その結果、国民サービスの向上につながらないことを危惧している。また、事務・事業の仕分けに当たっても、国民はもちろん働いている職員からみて納得できるように進めてほしい。農業に関して言えば、自給率向上とWTOへの対応もあり、国の役割は大きいということを踏まえていただきたい。
(3) 国土交通省の出先機関は、道路と河川の問題が具体化すると大きな影響を受ける。知事会から合理化意見が出され、職場ではどの機関がどうなっていくかについて心配している。道路特定財源の問題も大きく取り上げられているのでなおさらだ。仕分けによって、基準に該当しないところは切り捨てられるのではないかという声も出ている。道路、河川の管理水準をどう考えるかの問題であるが、切り分けることで効率化が図られるという考えには疑問がある。災害への対応についても、地域だけでは無理なので、そういった点も含めて検討していただきたい。
(4) 二次勧告へ向けたスケジュールはどうか。

 これに対し委員会事務局側は、次の通り、見解を示した。
(1) 事務・事業、権限の仕分けをした上であるべき役所の組織をどうするかということになる。今は、まだはじめの段階だ。記事は知事会から出ている意見のことではないかと思うが、どういう仕分けで数字を出しているのかは明らかにされていない。国の出先では、今ある定員で仕事をしており、まず業務や組織がどう変わるかの話があり、その後、定員がどれだけ落ちるかということになる。ステップを踏んだ作業をしてまいりたい。誰かがどう言ったからどうするということではない。
(2) 職員が納得しないと士気が落ちるということについては、いろいろな移管の方法があると思うが、雇用・労働条件についていい形で着地点を見いだしていきたい。動かしたけれど何もいいことがなかったということにならないようにしたい。
(3) 道路や河川のように権限を動かすことのほか、二重行政解消の問題もあり、職員が実際に働いているのでどういう整理ができるか、これから検討していきたい。
(4) スケジュールについては、「中間報告」は8月初旬を考えているが、委員会としてどうしていくかについて決まったものはない。二次勧告がどういうタイミングになるかは、検討作業を進める中で定まっていくものと思う。

 最後に吉澤事務局長が「公務労協としても、地方分権改革は重要な問題と受け止めており、効率的で良質な公共サービスをどう提供していくかという問題意識を持っているので、政府として雇用・労働条件の確保に責任を持ちながら作業を進めてもらいたいし、委員会の場でも意見を聞いていただきたい」と要請したのに対し、松田次長は「皆さんの意見も踏まえながらこれから検討していくので宜しくお願いしたい」と答えたことから、これを確認し、申入れ交渉を終えた。

(別紙)

2008年6月18日


地方分権改革推進委員会
 委員長  丹羽 宇一郎 殿

公務公共サービス労働組合協議会
議 長   中 村   讓


地方分権改革にともなう国の出先機関見直しに関する申入れ


 常日頃から、「地方分権改革」に向けて邁進されていることに心から敬意を表します。
 貴委員会は、去る5月28日、地方分権改革に向けた第一次勧告を取りまとめ、政府に提出されました。政府は、これを受けて近々にも地方分権改革推進本部決定を行う予定と拝聞しています。
 もとよりわたしどもは、社会経済情勢の変化に対応した形で国と地方自治体行政の役割分担が見直され、より地域に密着した地方自治体が国民生活に不可欠な公共サービスを住民のニーズに沿った形で実施する地方分権改革は積極的に進めるべきものと考えています。とりわけ国の行財政改革路線によって公共サービスが切り捨てられ、もはや放置できないぐらいに拡大した「地域格差」の是正は、大胆で実効ある地方分権改革によってこそ実現できるものと確信しています。
 さて、この第一次勧告では、「国の出先機関の改革の基本方向」も示され、今後、国の事務・権限の仕分けを行い、本年夏には「中間報告」を取りまとめ、本年中には第二次勧告を行う予定と聞いています。国と地方自治体の二重行政の解消の観点から行われる国の出先機関の見直しに当たっては、国の機関の廃止や縮小を自己目的化するのではなく、国民生活の安心・安全を支える公共サービスの確保と国・地方自治体の適切な役割分担という観点から、事務・事業の十分な検証を行い、結論を得るべきものと考えます。また、見直しに当たっては、国の機関の職員が仕事や生活に不安感を持つことがないよう、公務員の使用者たる政府が雇用と労働条件の確保に責任を持ち、それを確約することが不可欠であることはいうまでもありません。
 以上のことから、貴委員会が国の出先機関の見直し作業を進めるに当たって、下記事項の実現に最大限尽力されるよう、強く要請します。



1.国の出先機関の見直しに当たっては、国の機関の廃止や縮小を自己目的化するのではなく、国民生活の安心・安全を支える公共サービスの確保と国・地方自治体の適切な役割分担という観点から、事務・事業の十分な検証を行うこと。

2.国の出先機関の見直しに当たっては、国の機関の職員が仕事や生活に不安感を持つことがないよう、公務員の使用者たる政府の責任において雇用と労働条件の確保を確約し、それを実現するための仕組みを設けること。

3.「中間報告」の取りまとめに向けて、当該労働組合の意見を聞く機会を設けること。

以上