2008年度公務労協情報 35 2008年6月20日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院総裁に2008人勧期要求提出−6/20

 公務員連絡会福田議長ほか委員長クラス交渉委員は、20日11時から、谷人事院総裁と交渉を持ち、@所定勤務時間短縮の勧告A給与改善勧告B非常勤職員の処遇改善施策の実施、などを重点課題とする「2008人事院勧告に関わる要求書」を提出した。これにより、2008人勧期の取組みは正式にスタートした。以後、公務員連絡会は交渉・協議を強め、7.8第1次、7.23第2次中央行動などを実施し、人事院に要求実現を迫ることとしている。

 11時から行われた谷人事院総裁との交渉には、福田議長ほか委員長クラス交渉委員が出席して行われた。
 冒頭、議長は要求書(別紙)を手交しながら、次の通り見解を述べた。
(1) 本年の春季生活闘争は、全体としてみれば3年連続の賃金改善となったが、歪んだ分配構造を是正し、格差拡大にストップをかけるまでには至らない不十分なものに終わっている。
 一方、公務を巡っては、総人件費削減政策のもとで配置転換や独立行政法人の整理合理化などが進められ、加えて昨年の人事院勧告取扱いの閣議決定の際に、官民比較方法の見直しを人事院に再要請するなど、政府の公務員給与抑制策がさらに強められようとしている。
 こうした状況の下で公務員労働者は、職務遂行のため恒常的な長時間労働を余儀なくされ、健康の維持に支障を来しかねないほどの状態にあり、給与・勤務条件の改善を切望する声は例年以上に高まっている。
(2) 以上のことから、本年の報告・勧告にあたっては、まず第1に、昨年からの懸案である所定勤務時間短縮の勧告を必ず実現すること、第2に、民間相場を精確に反映した公務員給与の改善勧告を行うことや非常勤職員等の処遇改善に向けた施策を実施に移すこと、などが重要課題であると認識している。これらに加えて、いくつかの手当の見直しや新設も課題となっているが、いずれの課題についても、われわれと十分交渉・協議し、合意に基づく報告や勧告を行うことを強く求めておきたい。
 また、2009年度からの新たな人事評価制度の本格実施に向けて、評価制度自体はもとより、任用や給与への活用のあり方についても、公正で納得性があり、なによりスムースに実施に移れるような制度や運用にすることが不可欠だ。そのために、われわれの納得を得て成案を得るよう人事院としても最大限努力してもらいたい。
(3) 公務員制度改革基本法が成立し、今後、具体的な法制化作業が進められることになるが、公務員制度にとって人事行政の中立・公正性の確保は極めて重要だ。また、協約締結権付与や自律的な労使関係制度のあり方も検討されることになっているが、実際にそれが動き出すまでは人事院勧告制度が労働基本権制約の唯一の代償機能である。それらの点を十分認識され、人事院の役割を十全に果たしてもらいたい。
(4) 本日の要求提出を機に、事務レベルで交渉を積み上げさせていただくが、しかるべき時期には総裁から直接要求に対する回答をいただきたいと考えているので、よろしくお願いする。

 続いて吉澤事務局長が要求書の重点事項を説明。これを受けて総裁は、「要求は承った。公務を巡る状況はますます厳しくなってくると思うが、勧告に向けては民間給与調査を行ったところである。承った要求については、皆さんと十分意見交換を行い、しかるべき時期に回答したい」と、今後十分交渉・協議を積み上げ、しかるべき時期に回答するとの見解を述べた。

 本日の要求提出により、人勧期の取組みは正式にスタートする。
 本年の人勧期をめぐっては、不況の影響を受けて民間賃金の動向が思わしくないことに加え、タクシー券問題などで公務員批判が一段と厳しい状況にある。一方で、公務員労働者は総人件費削減政策のもとで長時間労働を余儀なくされており、例年以上に給与・勤務条件の改善を求める声には切実なものがある。公務員連絡会は、こうした状況を踏まえ、7.8第1次、7.23第2次中央行動を配置して人事院との交渉を強め、何としても要求の実現を図るべく、取組みを強めることとしている。


(別紙)2008人勧期要求書

2008年6月20日


人事院総裁
  谷  公 士 殿

公務員労働組合連絡会
議 長  福 田 精 一


2008年人事院勧告に関わる要求書


 本年の春季生活闘争は、全体としてみれば3年連続の賃金改善となりましたが、「労働分配率の反転」を実現し、格差社会の是正に結びつけていくまでには至りませんでした。
 一方、公務を巡っては、総人件費削減政策のもとで配置転換や独立行政法人の整理合理化などが進められ、加えて、昨年の人事院勧告取扱いの閣議決定の際に官民比較方法の見直しを改めて人事院に要請するなど、政府の公務員給与抑制策がさらに強められようとしています。
 また、2009年度から新たな人事評価制度が本格的に実施され、任用や給与などの人事管理に活用されることから、職員に信頼され納得できる公平・公正な制度をつくり、円滑に実施していくことが大きな課題となっています。
 こうした状況の下で公務員労働者は、職務遂行のため恒常的な長時間労働を余儀なくされ、健康の維持に支障を来しかねないほどの状態にあり、給与・勤務条件の改善を切望する声は例年以上に高まっています。
 以上のことから、本年の報告・勧告にあたっては、昨年からの懸案である所定勤務時間短縮勧告を必ず実現するとともに、@民間相場を正確に反映した公務員給与の改善勧告A非常勤職員等の雇用や処遇改善のための施策提言B新たな人事評価制度への積極的対応、などの当面する重要課題について、中立・第三者機関としての機能を十全に果たすことがなにより強く求められています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、2008年人事院報告・勧告に関わる下記事項を実現することを強く要求します。



1.賃金要求について

(1) 月例給与の改善勧告について
@ 2008年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の月例給与の水準を改善する勧告を行うこと。また、較差の配分等については、できるだけ早い段階から十分な交渉・協議を行い、合意すること。
A 燃料費の高騰及び民間の支給実態を踏まえ、通勤手当のうち交通用具使用者に対する手当を引き上げること。

(2) 一時金について
 一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、支給月数を維持・改善すること。

(3) 住居手当の見直しについて
 住居手当については、全額支給限度額、最高支給限度額を引き上げるなど総合的に改善すること。また、自宅に係る手当については、国・地方における支給実態を十分踏まえるとともに、財形貯蓄制度との関わりを含め手当の意義を検証するなど、廃止ありきではなく、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて慎重に検討すること。

(4) 特地勤務手当の見直しについて
 特地勤務手当については、前回見直しの経緯を踏まえ、離島、山間へき地等の生活環境・生活実態と人材確保を重視した慎重な検討を行うこととし、本年の報告で拙速な見直しは行わないこと。

(5) 給与構造の見直し事項について
@ 「本府省手当」導入のための勧告を行わないこと。
A 地域手当の支給割合の引上げに当たっては、十分交渉・協議、合意すること。

(6) 非常勤職員等の処遇改善について
@ 非常勤職員等の処遇改善に向けて、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、給与等の決定に係る指針を本年勧告時までに具体化すること。
A 非常勤職員等の位置づけや雇用・任用など制度の在り方について、関係者間で検討する場を設け、本格的な検討を開始することを本年の報告で提言すること。


2.労働諸条件の改善について

(1) 労働時間の短縮等について
@ 民間企業の所定労働時間の実態に基づき、2009年4月から、所定勤務時間を1週間当たり38時間45分、1日当たり7時間45分に短縮する勧告を行うこと。また、具体的措置内容については、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
A 本府省における在庁時間の削減目標の着実な達成にむけ、各府省を指導すること。また、本府省以外の職場の実効ある超過勤務縮減策を早急に提言すること。

(2) 男女平等の公務職場の実現について
@ 「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な実施に向けた指導、メンター制度の実効性確保に向けて必要な取組みを行うこと。また、「女性の参画加速プログラム」(2008年4月8日男女共同参画推進本部決定)の具体化に向けて、所要の施策を講じること。
A 育児休業及び育児のための短時間勤務について、数値目標を設定した男性取得の促進策をとりまとめること。

(3) 新たな人事評価制度の整備と評価結果の活用について
@ 新たな人事評価制度が、職員に信頼され、納得できる制度となるよう、専門的人事行政機関として関係者に積極的に働きかけること。
A 評価結果の活用に向けた検討に当たっては、「『人事評価の結果の活用に関する措置素案』に対する申入れ」(5月12日付)に基づき、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意のもとに進めること。

(4) 新たな高齢者雇用施策について
 新たな高齢者雇用施策については、雇用と年金の接続の形態として「定年延長」を基本とすることを明示した報告を行うとともに、具体的な施策の内容、実施時期等については、公務員連絡会との十分な交渉・協議と合意に基づいて検討作業を進めること。


3.その他の事項について

 公務職場に外国人の採用、障がい者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。

以上